米国株式投資の真実を伝える [Vol.47]2022年5月16日配信
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
米国株式投資の真実を伝える
[Vol.47]2022年5月16日配信
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
***目次***
マーケット振り返り
今週のピックアップ記事
川田の気になる銘柄
投資のヒント
お散歩
ちょっと一息「FAの視点」
超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
活動情報
社会人になって40年以上読み続けている日経新聞の中から気になる記事をピックアップしコメントする企画だ。毎週土曜日午前9時〜9時45分にズームへの参加形式で実施している。
参加は無料なのでご興味あるかたはPeatixでお申込みください。
以下は先週土曜日にカバーした記事の表題をいくつか。
皆様が資産形成で成功するために一緒に学び啓発し合うオンラインサロンです。大好評のメルマガ「メディアで鍛える米国株式講座」だけでは伝えきれない内容や、米国株式投資の魅力を体感できる会員向けのセミナーを提供します。
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
1.マーケット振り返り(5月9日~5月13日)
<主要指数>
・NYダウ -2.1%
・S&P500指数 -2.4%
・ナスダック総合指数 -2.8%
=駆け足バージョン=
インフレ懸念による長期金利の上昇を受けて下落で始まり、水曜日の消費者物価指数が市場の予想を上回ったことで、大型ハイテク株を中心に一段安となりましたが、金利上昇が一服したことや値頃感から、週末は反発しました。
=ちょっとだけ詳しく=
根強いインフレ懸念を背景に長期金利が一時3.2%台に乗せたことが嫌気されて、大幅な下落で始まりました。
その後、長期金利が3.0%を下回ったことは安心材料でしたが、大幅な利上げ、ウクライナ戦争、中国のロックダウンなどの懸念材料が多く、上値を抑えました。
水曜日に発表された消費者物価指数は前年同月比+8.3%でコア指数は+6.2%となり、市場予想を上回ったことから強い引き締め姿勢が続くとの見方から、大型ハイテク株を中心に成長株が大きく売られました。
しかし、長期金利の低下に加え、4月の輸入物価が市場予想を下回って前月比横ばいとなってインフレがピークアウトしたとの見方が広がり、これまでの下落による値頃感もあって金曜日は大幅に反発しました。
S&P500指数チャート1年間
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 資産所得より金融資産重視を 5/13
金融所得を増やす政策を導入する際の留意点が2つ:
第1は格差拡大を助長しない。家計資産総額の第十分位の利子・配当所得が全体の約60%を占め、5年前より上昇したと指摘。つまり当然ながら資産家層が有利な状況だ。
現役層による有価証券を使った資産形成を助ける仕組みが重要。NISAの拠出上限を引き上げ、制度を恒久化するなど「貯蓄から資産形成へ」の流れを拡充すべきだ。
第2は近視眼的な解決策を求めないこと。個人金融資産2千兆円の3分の2を保有する高齢者に、預貯金を下ろして株式や投資信託を買わせるだけの解決策なら賛成できない。現役層の資産拡大策と合わせて、後見人が資産を管理するルールの導入や有価証券の相続時評価額の是正など、高齢者が有価証券を長く保有できる施策も必要になる。(フィンウェル研究所代表 野尻 哲史)
【川田コメント】
岸田首相はロンドンの金融街の「シティー」で、「新しい資本主義」を提唱し、貯蓄から投資への移行を促して「資産所得倍増を実現する」NISAの拡充などで預貯金を資産運用に回すようにすると訴えた。
この記事はそれを受けた野尻さんの提唱だ。野尻さんの意見に異論はないが、私は資産家層はもっと大胆にマーケットのリスクをとって積極的に資産を増やし、その資産を資産家自らの意思でもっと社会に還元すべきだと思う。
ただし、平均的なサラリーマンの定年時の金融資産はせいぜい数千万ではないか?それでは市場リスクをとって金融資産を積極的に増やすことはできない。
富裕層は正しく大胆にリスクを取る
したがって社会に積極的に富を還元できるのは金融資産数億円以上の資産家だろう。この層にはぜひ積極的にリスクを取って賢明な運用で資産を増やしてほしい。
その際には仕組み債やハイフライング銘柄の頻繁な売買などは控えて、大半をS&P500指数に連動した投信、ETFで着実に増やしてほしいと願っている。
富裕層の皆さんには正しくそして大胆にリスクを取ってもらい、大いに資産を増やしてそれを社会に大いに還元!
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
今週の銘柄
テスラ<ティッカー:TSLA> Tesla, Inc.
概要
電気自動車を中心とする電動式の輸送機器を製造・販売する会社です。完成車の生産に加えて電気自動車に必要なリチウムイオン電池の生産工場を保有するほか、ソーラーパネルなどの太陽光エネルギー事業なども手掛けています。
同社の魅力
市場の急速な拡大
都内でもテスラの電気自動車(EV)が走っているのを見かけるようになり、電気自動車は本格的な普及期に入ってきたようです。世界で2022年には800万台以上の電気自動車が販売されると予想されていますが、2030年までには約4000万台に増加するとの見通しも見られます。
こうした見通しの要因として、搭載する電池の性能向上、安価な走行コスト、環境問題を背景とした各国の政策、EV専業メーカーだけでなく既存メーカーの参入、充電インフラの充実に伴う走行距離に対する不安の解消が挙げられます。また、今後は低価格化が市場拡大の要因になると思われます。
これらの要因の中でも充電インフラの充実は重要で、ちょうどインターネット網の整備(地域拡大や高速化)に伴ってインターネットを使ったサービスが急増したように、インフラの充実→EVの販売増→インフラの充実、という正のループの入り口が近づいているように思われます。
(図1:テスラが販売しているモデルX)
トップ企業としての強み
テスラはEV市場の約20%を占めています。EV本体の魅力、専業のトップメーカーとしてのブランド力、先行する生産体制などが高い市場シェアの要因として挙げられます。
EV本体は、ユーザー側からは外観、内装、コストなどの点で魅力的に感じられるほか、生産側にとっても、内燃機関のエンジンによる自動車よりも部品が少なく(約3万の部品が約2万に減るとも言われています)、生産コスト低い点が魅力になっており、テスラにとって既存の自動車メーカーよりも有利な点になっています。
テスラにとっての課題は需要に対応するための生産体制の充実ですが、米国内に加えて上海では既に最大の工場が稼働しているほか、ドイツのベルリンやテキサスでの新工場の立ち上げも順調に進んでおり、本格的な生産が始まっています。
(図2:テスラの自動車工場=稼働中のものと計画=)
(図3:モデルYのボディ生産の様子)
すでに黒字化しており、上値余地が大きい
2003年に創業したテスラは、EVの開発、試作段階を終え、すでに量産体制を築いています。販売方法はディーラー経由ではなく消費者への直販体制を取っており、この点でも従来の自動車企業と一線を画しています。
2018年第3四半期に初めて純利益が黒字となった後、2020年には年間を通じて純利益が黒字となりました。スタートアップの新興企業とは異なり、事業拡大の段階にあります。
(図4:販売台数の推移=百万台、12カ月移動平均=)
(図5:純利益と調整後EBITDA=百万ドル、12カ月移動平均=)
(図6:営業キャッシュフローとフリーキャッシュフロー=百万ドル、12カ月移動平均=)
2026年の目標株価は1600ドル
市場の拡大に加えてテスラの市場シェアが一定だと想定した場合、今後の販売台数は、2021年の約100万台から2026年には600万台を超えると見込まれています。テスラのEVの粗利益率は約30%と高く、これらを基に2026年の1株当たり利益が約55ドルになるとの計算も市場では見られます。現在、株価収益率(PER)は約60倍ですが、半分の30倍になったとしても、1600ドル前後が目標株価になります。
リスク
テスラという企業と最高経営者(CEO)であるイーロン・マスク氏の関係は普通の企業以上に密接に結びついていて、マスク氏の言動がテスラ株に与える影響には大きなものがあります。現在話題となっているツイッターの買収に関連して、マスク氏のテスラ株の売却とその思惑が株価に影響しました。
また、高値からは下落しているものの、依然として割高感はあります。成長株の代表銘柄となっているテスラ株はこの点からも値動きが大きくなる可能性は十分あります。また、長期的なファンダメンタルズ面では、他社との競争激化による収益力の悪化などが考えられます。
(図1~6は会社資料より)
TSLAの基本データ(出所:会社データ、Yahoo! Finance)
(5月13日現在)
株価 769.59ドル
時価総額 77973億ドル
総収入 621億ドル
予想PER 61.73倍
予想利回り N/A
本社:テキサス州 オースティン
上場:2010年6月
株価チャートは5年
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
「直近の相場概観」
先週木曜日の朝の時点でS&P500指数は史上最高値から19.6%下落し、弱気相場入りの一歩手前まで売られた。その後は反発し、木曜日の取引時間中の安値から金曜日の終値まで、同指数は4.3%上昇した。またハイフライング銘柄を象徴するETFである、アーク・イノベーションETF<ARKK>は同じ時間内に24%急騰した。
前号に続き、乱高下している相場のチェックポイントを確認しておきたい。
S&P500指数の過去5年間チャート
先週木曜日の朝の時点で、1月3日の史上最高値からマイナス19.6%下落。
ナスダック100指数の過去5年間チャート
昨年11月19日の史上最高値から先週金曜までに25.5%下げている。
5月12日(木)のナスダック総合指数は2%超の乱高下を3度経験した。
時価総額上位10銘柄:コロナ前の高値と直近株価の比較
アップルやマイクロソフト、アルファベットやテスラは、現時点でもコロナ前の高値より大幅に上にある。一方でアマゾンやメタ、そしてビザもマイナスだ。
今年4月1日以降の主要指数の騰落率
橙(緑)色が濃くなるほど下落(上昇)率が大きい。直近はナスダック指数の乱高下が激しくなっている。先週の金曜日の上昇が、目先の投げ出尽くしのサインになるか?
ナスダック100指数:過去の大幅下落局面
先週木曜日時点で、最高値から27.9%も下落した。2018年秋から年末にかけての下落率の22.9%をとっくに超えた。
弱気派のモルガンスタンレーが予想株価引き下げ
モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソンは先週、2023年6月末のS&P500株価指数を3900(直近は4023)と予想するリポートを出した。従来予想は2022年末で4400だったが、低調な相場が2023年前半まで続くとみる。
同氏は「市場は企業業績の伸び鈍化を織り込んでいない」と指摘する。現時点でS&P500指数の1株当たり利益(EPS)は、2022年が前年比10%増の227ドル、2023年も10%増の250ドルと、連続で過去最高を更新すると予想されている。
これに対して、ウィルソン氏は2022年は8%増、2023年は5%増と、1桁の伸びにとどまるとみる。米連邦準備制度理事会(FRB)の急ピッチの利上げで景気が減速すれば、売上高は伸び悩む。また、人件費や原材料費などコスト上昇も考慮すれば、市場予想は高すぎるというのだ。
S&P500指数の予想PER(株価収益率)は5月13日終値で17.2倍。年初からの急低下で過去10年の平均(16.9倍)にほぼ並んだ。だが、PERを計算する際の分母になるEPSが下振れするなら、相場には割高感が残ることになる。
4月時点のストラテジスト予想
前述のように、モルガン・スタンレーの2023年6月末のS&P500株価指数の予想は3900になった。
米個人投資家協会(AAII)の週間調査
個人投資家へのアンケート調査では、今後6カ月の相場に対する「強気」と「弱気」の割合をみると、極端な弱気に傾いている。投資家心理は極端に悪い。2006年以降、全体的なセンチメントがこれほど弱くなったのは金融危機と2015年後半から2016年前半にかけてだ。
これらの投資センチメントは、相場の大底で弱気が最大化するのが経験則だ。先週の弱気の減少を受け、次回(5/18)の調査結果はどうだろうか?
全米個人投資家協会 6か月後の市場センチメント
CNN でもマーケット情報を提供している
今回の急落でいろいろ調べていて初めて知った、CNNのFear&Greed Index(恐怖と強欲指数)では、極端なリスク回避モードだ。
バリュエーション(PER)はかなり下がってきた
昨年末の21倍超から既に17倍まで低下。長期平均の15倍近くまで低下している。
下げ相場は長く続かない
直近は2020年に約1か月で34%下げたことが記憶に新しい。それ以前の急落は1987年のブラックマンデー(34%)だろうか。
今回は高値(今年1/3)を付けてから先週木曜日まで約18%で、半年は経っていない。このままなら1961年や1966年が類似パターンだろうか。
2007年の金融危機では2009年3月に大底を打つまで何度か踏ん張ったが、最終的に56%下落した。今回はそうならないことを願っている。
今週の注目
この間の下落で株価は割高感が収まってきた。今後はインフレ圧力がピークを迎えたかどうかの確認指標を吟味することになる。今週は火曜日に住宅市場指数、小売売上高、水曜日に住宅着工件数、さらに木曜日は景気先行指数の発表がある。
相場は相当に弱気に傾いている。これだけ長く下落が続いた後だけに、金曜日に見られたような底値買いが持続するのか?注目したいところだ。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
5.お散歩コーナー
◇◇最近行ったお店、映画、美術館、書籍編◇◇
~熊倉 貫宜の巻~
元証券マンで読書家である熊倉貫宜さんの寄稿です。
ばらまき 河井夫妻大規模買収事件全記録/ 中国新聞「決別 金権政治」取材班
おもちゃ 河井案里との対話 / 常井 健一
「民主主義国家においては国民はその程度に応じた政府しかもちえない」
私は同じような意味の警句をいろいろとうろ覚えしていたのですが、検索してみたところ、上記は松下幸之助の言であると知りました。
無知以外の何者でもなく、お恥ずかしい限りです。
しかしながら偉大なる経営者、幸之助翁が義憤に駆られ、国民の情操教育=PHP(Peace and Happiness through Prosperity)運動と、良識ある政治家の育成=松下政経塾という大きな翼を私財を投じて広げながら、あの程度の政治家しか生まなかった点では、上記の警句も実に皮肉に響きます。
今回の二冊に共通する登場人物、河井克行前衆議院議員&受刑者も松下政経塾(第6期)の出身です。
私がこの事件に興味を覚えたのは、第一に令和の御世で現金を配るという古典的な金権政治が何故に生き残っていたのかという点にあります。
第二に、その金権政治の核である、河井氏とその配偶者たる河井案里(あんり)前参議院議員の人物像にあります。
この事件については、多様な報道も為されており記憶にも新しいところですが、時系列に事実関係を整理して調査報道を進めた地元、中国新聞取材班による労作「ばらまき」と、河井案里と取材上の関係を築きつつ、その生い立ちや政治活動をまとめた「おもちゃ」、この二冊を並行して読むことにより、理解が進みました。
同じ事件を外側から詰めていく前者と、登場人物の肉声を伝えながら内側から迫っていく後者、硬貨の裏表を確かめるような感覚でしょうか。
基本は地域ボス・市議会・県議会・国会議員と連なる利益誘導マシーンの中で、岸田現総理に代表される政治を家業とするような選民(エリート)への対抗心から、「地盤・看板・鞄」を持たない政治屋が金をばらまくことで集票を目指した温故知新、田中角栄型事件という印象を受けます。
現金を受け取る側も、曖昧で自分勝手な法解釈の下で、懐に入れる様はいささかグロテスクなものです。
法的なグレーゾーンの下、地方政界の参加者が現金で踊るとすれば、これはもう古典的な金権政治がこの広島選挙区で生き残っていたのではなく、全国どこの選挙区でも現存するという疑問が生まれ、いささか暗澹たる思いに囚われます。
さて、登場人物ですが、川井克行氏は秘書や運転手への暴行暴言、官僚への罵詈雑言と、お世辞にもまともな人間とは言えず、典型的に上に弱く下に強い、夜郎自大ぶりで笑わせてくれます。
自分の女房を国会議員に据え選挙区での勢力を盤石にしようとする、その当の女房は政治家と政治家の妻という二つの顔を最大限に利用し自分自身の野心を推し進めていく、この夫婦の共犯・相互依存関係は河井案里という特異な人物により、その歪みが一層、際立ちます。
政治を志ながら何を目指し何に対し重責を負うのか不明朗で空虚な人物が参議院議員にまで昇りつめ、事件後は国民への説明も謝罪もなく、自分は被害者と振る舞うさまは、稀代の悪女でも男社会の犠牲者でもなく、単なる地方出身のイイとこのお嬢さんの自己顕示欲の破綻、自業自得です。
いずれにせよ双方の書を通読して強く感ずるのは、インナー・サークル=仲間内の中で、自分たちの論理とルールで物事を決めて利益を付け合う、このような輪が幾重にも重なり合って構成されているのが日本社会なのではという懸念です。
もし、そうであるならば国民の声を丁寧に聞き、個性と多様性を尊重し、みんなで助け合う社会の実現なんぞ夢のまた夢ということでしょうか?
また、民間の企業社会において多様な人材の創出、地方創生、自由で開かれた国際秩序の再構築等々、こちらもお題目なのでしょうか?
根は深そうです。
【熊倉 貫宜】
1980年大和証券入社。企業派遣留学としてシカゴ大学経営大学院にてMBA取得。シンガポール、香港駐在を通しアジアビジネスに関わる。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
6. ちょっと一息「FAの視点」
ファイナンシャルアドバイザーの本橋竜一さんが資産運用に関してお客様の疑問に答えるコーナーです。
Q:創造的破壊企業って何ですか?
A:「創造的破壊」は、経済学者シュンペーターが提唱した言葉です。従来型の経済活動の延長でプレーヤー達がパイを奪い合うビジネスモデルでは、古く硬直的な商慣習の打開や市場の拡大は期待しにくいものです。
そこで昨今注目されているのが「創造的破壊企業」とも呼ぶべき企業です。内なる企業文化や旧来の秩序・組織の改革で生産性を高め、新たな付加価値を提供して既存の経済圏を拡大したり、ビジネス自体を全く異なる価値観へと変えたりする企業だといえます。
創造的破壊企業には、自社の活躍でこれまでの社会常識や秩序を大きく変え、人々のワクワク感を創造する「主役型」、既存産業の後方支援などを通じて、業務効率アップやより上質なサービス提供に資する「黒子型」など、多様なタイプがありますが、その多くが海外の新興企業群、とりわけテクノロジー分野から生まれています。
資本主義の象徴かつ金融先進国の米国では、高い成長が期待できる創造的破壊企業を投資対象としたテーマ型ETF(上場投資信託)も登場し、投資家の絶大な人気を博した時期もありました。
※もしかしたら、アークのETFシリーズは今でも人気は健在かも?
不透明な国際情勢と景気動向から、最近では遠い将来にワクワクできる成長企業群より、地に足のついた目先の堅実企業群が再評価されていますが、その底流では新しい社会や産業を創造しうるヒーロー(破壊的企業)が渇望されていることは想像に難くありません。
************************************************************************************
今回のコラムのネタ本はこちらです。
もしかすると2025年後の私は、ズームを買収したグーグルの「Google Zoom」でWEB面談をし、テスラの「ロボタクシー」で都内へらくらく通勤、出張先では自分好みの快適空間でオモテナシの「アップルホテル」に滞在しているかもしれないのです。
勿論、お馴染みのGAFA+Mだけではありません…
未来の世界では、工夫して生き残るべき業種や企業についてヒント満載!
「まさか、いくら何でもコレは…」と思いつつも、終始SF小説のように、ワクワクしながらグイグイ読み進めてしまう内容でした。
ただ単に、「どんな企業に投資すれば儲かるのか」という観点だけでなく、「これからの社会がどんな風に便利に、より快適に変わっていくのかなぁ」と、将来の社会を考えるにはとても有益な1冊です!
【本橋竜一】
1998年に大学を卒業後、横浜銀行にて金融業界でのキャリアをスタート。その後、外資系金融機関UBSのプライベートバンカーへ転身。間もなく世界を震撼させるリーマンショックが勃発し、第一線のセールスとして成功を諦め、正統派な資産運用を伝えるファイナンシャルアドバイザーを目指そうと決意。数名の顧客を頼りに約20年の金融機関勤務から独立。信用・人脈ゼロながら、海外のPB・FAビジネスモデルを徹底研究、顧客体験の向上に資する創意工夫を重ねる日々。
現在は、特定の金融機関に属さず、真にお客様の価値観を大切にした資産運用・形成サポートを専業とする、独立系ファイナンシャルアドバイザーとして、お客様へのプライベート金融コンサルティングに従事している。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
7. 超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
IFAに特化した営業支援を行っている市川宏さんが、超富裕層が活用している投資戦略を、皆様に簡単にお伝えするコーナーです。
前回は、アクティブファンドの選び方をお伝えしました。「インデックスファンドも良いけどアクティブファンドも気になる!」といった方もいらっしゃると思うので、今回はそのアクティブファンドの運用手法についてお話しします。
アクティブファンドで使われる二つの運用手法
アクティブファンド運用には、大きく分けると二つの手法が存在します。ジャッジメンタル運用とクオンツ運用です。どちらかが運用手法として優れているというものではなく、それぞれに特徴やメリット、デメリットが存在します。今回はその二つの手法を簡単にご紹介します。
ジャッジメンタル運用
ジャッジメンタル運用は裁量運用とも言われるもので、人間(ファンドマネジャー)が自分で判断して運用するものです。
例えば、企業の財務状況や業績動向を分析し、ファンドマネジャーが「この会社は業績が良くなり株価が上がりそうだ」と判断したら、その銘柄を買います。一般的なファンドのイメージはこちらではないでしょうか。
ジャッジメンタル運用の特徴
ジャッジメンタル運用のメリットとしては、ファンドマネジャー独自の感性や知識、経験を総動員し、個性的な運用ができる点です。世界的に有名な投資家のウォーレン・バフェット氏や日本の著名ファンドマネジャーである藤野英人さんが用いている手法も、このジャッジメンタル運用です。
また、投資家に運用成果を報告する際にも、メリットが表われされます。「本社や工場を見学し、経営者と会い、決算資料だけではわからない会社の魅力や成長性を感じた」と言われたら、誰でも納得してしまうのではないでしょうか。
デメリットとしては、ファンドマネジャーへの依存度が高いこと、そして実力の評価が難しい点が挙げられます。ファンドマネジャーもひとりの人間ですので、病気の時や家庭トラブルなどがあった時など、いつも同じように合理的で冷静な分析や判断ができるとは限りません。しかしそのようなときでもマーケットは動いており、常に判断を迫られることになります。
ファンドマネジャーの実務経験が重要
2013年以降の株式市場は、2018年末の下落や2020年のコロナショックを除けば概ね上昇傾向にあり、株式投資家にとって比較的明快なマーケット環境だったと言えます(2022年は今のところ大荒れですが・・・)。
従って、2008年のリーマンショックという未曽有の金融危機を経験していないファンドマネジャーは株式投資に対して楽観的な印象を持っており、リーマンショックのような株価急落時にどのように行動すれば良いのかわからないと非難されることがあります。
ただ、このような経験不足については言いだしたらキリがないです。ファンドマネジャーの若い才能は、パフォーマンスが良かったとしても評価されづらくなってしまいます。また、もっとベテランの方は「リーマンショックだけでなく、ITバブルを経験していないとダメ」とも言いますので、キリがありません。
クオンツ運用
もう1つの運用手法であるのが「クオンツ運用」です。 クオンツとは、Quantitative(数量的、定量的)から派生した言葉で、高度な数学的手法を用いて金融市場を分析することを指します。
このような分析手法を用いて投資することを、「クオンツ運用」といいます。例えば、日経平均株価の日々のデータは蓄積しており、何十年分ものデータがあります。 その値動きは一見ランダムに動いていて予測不可能に見えますが、コンピューターを使ってデータ分析することで、値動きの中に何らかの規則性を見つけ出すことができると考えられており、その規則性を利用して投資を行うことをクオンツ運用と呼んでいます。
クオンツ運用の特徴
さらに具体例を出すと、各曜日の上昇確率を検証し、月曜日が他の曜日に比べて明らかに上昇しやすいという分析結果になったので、「月曜日に日経平均株価を買い、火曜日に売る」という投資戦略に繋がるということです。
もちろん実際にはこんな単純なものではなく、色々と複雑な分析や計算と検証が必要ですが、大量のデータをコンピューターで統計的に分析し、投資判断を行う運用のことです。
クオンツ運用の大きなメリットの1つが、過去のシミュレーションができることです。 統計的に分析して考案した投資戦略は、「Aという条件を満たしたら買う」といった数式のようなもので定義されます。
この数式を過去のマーケットに当てはめることで、仮に2008年のリーマンショック時に運用していたらどんなパフォーマンスになったのか、シミュレーションすることが可能なのです。 これにより、自分が生まれる前の時代でさえもバックテストすることができるのです。
再現性の高いクオンツ運用
そして、仮にファンドマネジャーが急に亡くなったとしても、定められた数式を使うことで他の人でも同じ運用をすることができます。もちろん戦略のアップデートは必要ですが、ファンドマネジャーの頭の中にあるものとは異なり、戦略が数式として形に残されており、再現性が高いというのもメリットの一つです。
パフォーマンスが良いアクティブファンドも存在する
ずっと金融業界にいる立場だと、いろいろなファンドマネジャーに会う機会があります。基本的にアクティブファンドはインデックスファンドより手数料は高いです。運用パフォーマンスもインデックスに負けているもの、勝っているもの、様々です。
とはいえ、常にインデックスに勝ち続けているアクティブファンドも存在します。そういったアドバイスを専門的に行う金融事業者も存在します。自分でファンド選びを行っても良いですし、そういったプロに頼ることも必要な局面なのではないでしょうか。
【市川宏】
株式会社Winviser代表取締役。SMBC日興証券にて茨城、福岡、東京の各支店にて資産運用コンサルティングに従事した後、超富裕層向け金融商品のマーケティングを行う。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)業者に転籍し、超富裕層の資産運用のアドバイスを行った後、日本の金融業界の発展のためIFAに特化した支援会社を設立。現在は、IFAを支援する傍ら、自身の経験を元に個人投資家に資産運用のサードオピニオンを行っている。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
8. 今後の活動情報
◇ストックボイス:5月18日(水)11:00
◇日経CNBC:5月19日(木)電話インタビュー(改野さん)
5月24日(火)スタジオ出演(露口さん)
───────────────────────────────
★ご質問は、以下の【質問ルール】をご一読後、
info@kawata-magazine.comまでお願いします。
【 質問ルール 】
◆全ての質問への回答はいたしかねます。あらかじめご了承ください。
◆いただいた質問は、当社サイト、YouTube動画等のSNS・書籍等に、個人を特定できない形で掲載する可能性があります。
◆ご購読が確認できない方の質問には回答いたしません。
◆明らかな広告・宣伝とみなされる部分は割愛する対象となります。
◆未購読にもかかわらず悪質な質問を投稿された方には、然るべき措置をとらせていただきます。
───────────────────────────────────
★免責事項
◆当社は、本メールマガジンにて提供する情報にて、株式、債券、ファンド、ETF等の有価証券、およびセクター等に関する売買等の推奨はしておりません。また、投資判断はメールマガジン購読者(以下、会員)の責任にて行うものであり、当社は一切の保障責任を負わないものとします。
◆当社は、会員が当社の提供するメールマガジンを利用して被った損害について、一切の保障責任を負わないものとします。
◆当社は、当社が提供する本サービスにおいて、会員間で生じたトラブル(違法又は公序良俗に反する行為の提案、名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害、脅迫、誹謗中傷、いやがらせ等)に関して、一切の責任を負わないものとします。
◆当社は、本サービスの情報の内容が会員若しくは第三者の権利を侵害し、又は権利の侵害に起因して紛争が生じた場合、その侵害及び紛争に対して何らの責任も負わないものとします。
◆当社は、本サービスの停止又は中止、本サービス内容の変更によって受ける損害について、賠償する義務を一切負わないものとします。
───────────────────────────────────
■ 発行元:株式会社日比谷テクノロジー・ファイナンス
■ 川田重信のありがとうアメリカ株式
https://www.kawataamekabu.com/
■ Twitter:https://twitter.com/ShigenobuKawata
■内容に関するご意見・ご要望、購読解除はこちらから
【メール】info@kawata-magazine.com
■メールが届かない場合などは迷惑メール等に分類されている場合もありますので予めお確かめください。
───────────────────────────────────
よろしいですか?