米国株式投資の真実を伝える [Vol.46]2022年5月9日配信
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米国株式投資の真実を伝える
[Vol.46]2022年5月9日配信
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川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
***目次***
マーケット振り返り
今週のピックアップ記事
川田の気になる銘柄
投資のヒント
お散歩
超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
活動情報
休刊日:5月30日
社会人になって40年以上読み続けている日経新聞の中から気になる記事をピックアップしコメントする企画だ。毎週土曜日午前9時〜9時45分にズームへの参加形式で実施している。
参加は無料なのでご興味あるかたはPeatixでお申込みください。
皆様が資産形成で成功するために一緒に学び啓発し合うオンラインサロンです。大好評のメルマガ「メディアで鍛える米国株式講座」だけでは伝えきれない内容や、米国株式投資の魅力を体感できる会員向けのセミナーを提供します。
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
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1.マーケット振り返り(5月2日~5月6日)
<主要指数>
・NYダウ -0.2%
・S&P500指数 -0.2%
・ナスダック総合指数 -1.5%
=駆け足バージョン=
様子見姿勢が強かった株式市場は、0.5%の利上げ決定後は不透明感が和らいで大幅高となりました。しかし、金融引き締めに対する警戒感が再び広がって4月の雇用統計の発表後も続いたため、成長株を中心に売られました。
=ちょっとだけ詳しく=
週前半は世界的な景気後退懸念が上値を抑えたものの、金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に様子見姿勢が強く、値を保ちました。
FOMCでは0.5%の利上げと6月1日からの量的引き締め策の実施が決まりましたが、市場で一部懸念されていた0.75%の利上げに関して、FRBのパウエル議長が否定的な見方を示したため、FOMC終了直後は金融政策に対する不透明感が和らいで大幅高となりました。
しかし、インフレ抑制のための金融引き締めが後手に回っているのではないかとの見方がすぐに広がり、引き締め懸念から成長株を中心に再度売り込まれました。
金曜日に発表された4月の雇用統計では労働市場の逼迫が引き続き示され、急速な引き締めに対する警戒感から続落となりました。
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2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 教育岩盤 揺らぐ人材立国(4)「合格歴競争」格差を再生産 難関突破、親の経済力次第 5/5
2月1日、私立中学の最難関、開成中(東京・荒川)の入試会場に向かう受験生を小4男児と父母が見つめていた。2年後の本番に向けた「見学」という。小1からの塾通いに月10万円かける母親(41)は「東京大に受かるためなら高くない」と言い切る。
東大合格者は私立中高一貫校の卒業生が多数を占め、学生の54%は年収950万円超の家庭出身だ。耳塚寛明・青山学院大特任教授(教育社会学)は「学歴くらいしか努力で手に入るものがないからだろう。ただし出身家庭による不平等は大きい」と話す。
米ハーバード大のマイケル・サンデル教授は、米国では恵まれた境遇で育ち難関大に入った「能力主義的エリート」が特権を享受し、敗れた層を見下していると指摘。軽んじられた人々の怒りが米社会の深刻な分断を生んだとする。
似た環境で育った「エリート」だけでは複雑化する社会のかじ取りは難しい。格差を研究する橋本健二・早稲田大教授は「弱者の側で物事を考えられる人材を育てなければならない」と話す。平等な機会の提供と有為な人材の育成という役割を果たせるか。学校が問われている。
【川田コメント】
教育問題は日経新聞が常に扱うテーマで、今回は「教育岩盤」というシリーズだ。現状のシステムが明治以来の慣習や伝統、さらには既得権とも相まって時代の要請に応えていないというのが問題意識の出発点だろう。
学歴信仰はどの国にもあるが、日本や韓国そして中国でもその傾向が強いと聞く。米国でも学歴へのこだわりは強いが、大学の選別基準が日本とは少し違う。一番の違いは、米国の大学が社会のリーダーを要請する機関と明確に位置づけられていることだ。したがって大学の選別テストは将来のリーダーに必要な素養を確認することだ。
以下は米国の大学入試に必要な評価項目
①高校の成績(GPA、Grade Point Average、全科目の平均点)
②SAT、ACT、PSAT等、学外機関が実施する大学能力評価テスト
③学校外のスポーツ・芸術・社会活動等における実績
④推薦状
⑤エッセイ
学科の成績以外にリーダーとしての資質や人間力の可能性を証明することが求められる。それは、例えばスポーツや団体活動での成果であり、周りとのコミュニケーション能力、そして地域貢献なども重要な評価項目だそうだ。さらに大事なのが、知り合いの推薦状やエッセーだ。つまり選別基準はその人の全個人の能力や価値観のみならず育った環境や人間関係をも問うものになっている。
したがって、塾に通って学業やテストでいい成績をとるだけでは不十分だ。また普通の生活をしながら上記③や④で好条件を満たすことは難しい。多くの親は、子供のために上記の要件を用意周到に準備することになるようだ。これらの習得に必要な環境を用意し時間とお金をつぎ込むことになる。つまり長期的な計画と戦略が求められる。そうなると競争に参加できるグループが最初から自ずと絞られることになる。
どこの国の教育システムも国が望むような人材の育成を意図している。ただし、現実には不公平で過酷で残酷な場合も、当然ある。
それでも出自や宗教、人種で最初から競争が制限されているコミュニティーよりはずっとマシだ。
日本でも話題になったマイケル・サンデル教授の「実力も運のうち」にあるように、比較的自由でフェアな競争が保障されているはずの米国でも近年は教育格差の再生産がおおっぴらに行われ、それが近年ますます露骨になって社会的に大問題になっている。
それに比べれば日本はずっとフェアで機会平等ではないかとも思えるが、私の認識は違っているだろうか?
さて、これら教育システムに完全にフェアな仕組みなどあろうはずもない。要は個々人が自らの価値観を自分で確立し、それに向かって努力することで社会的な評価が得られ自分も納得する。そのような社会が現実にあるとは思えないが、その方向に向かって努力するということではないだろうか。
【2】日経新聞
「バロンズ・ダイジェスト」5月1日号 「大退職時代」の根本原因
最も大切なのは健康:パンデミックをきっかけに大量の労働者が職を離れた。労働市場への影響は計り知れないが、より長期に及ぶ重要な変化が今まさに起ころうとしている。
メンタルヘルス:労働者はかつてないほどのストレスを抱えている。労働者にインタビューを行ったところ、最も大切なのは健康で雇用の安定や給与ではないという回答を得た。
職場と就業時間の柔軟性:雇用の安定や給与がすべてという時代が終わり、職場には何よりも柔軟性が求められる時代となった。仕事は生活の一部であり、ひたすら上を目指す精神は見直されている。
リモートワーク:柔軟な就業時間を求める声に続いて28%の人が「好きな場所で働けるなら給料が下がっても構わない」と答えた。また約3分の2がフルタイムでの出勤を強要されれば転職を検討すると答えている。
仕事と生活の一体化:この2年間、世界中の労働者が仕事と家庭の垣根がなくなるのを体験した。もはや、仕事人・家庭人の区別はなく一人の人物であり、雇用主もそれを認め、受け入れることが求められる。調査結果からも、仕事中も生活とつながっていたいという欲求が見えてくる。柔軟性とは場所のことではない。もっと貴重な「時間」のことだ。
一家の稼ぎ頭が子どもを転校させ、家を売り、車に荷物を積み新しい街で新しい仕事をする時代は終わった。生活が第一であり、仕事は向こうからやってくる。
【川田コメント】
この記事は私が編集する「バロンズ・ダイジェスト」で見つけた。記事では雇用主と労働者、さらにはその労働者の就業意識や仕事に求める価値の変化を、アンケート調査を使って浮き彫りにしている。
日本でも米国と同様に、時間や場所にこだわらない多様な働き方を許容し奨励する働きかけが積極的に行われている。ただし男性の育休一つをとってもその取得は一筋縄ではいかないというのが、決まりきった落としどころだ。
しかし、日本のサラリーマンが抱くこれらの悩みにあまりに同情する(寄り添う?)のもおかしい、と私はいつもそう思っている。どこまでいっても「雇われ人気質」が抜けないことが問題の根底にあると突き放したい、という思いが先に立つからだ。
自分が今いる組織のオーナーであり、経営者になったつもりで対処すれば多くが片付く問題だからだ。
92歳の現役仕事人に感動
さて、ゴールデンウイーク中に久々に帰省し、地元で事業を営むいとこを訪ねた。いとこは私と同世代だからサラリーマンなら定年だが、それとはもちろん無縁でもくもくと働いていた。
仕事柄、夜は6時半ごろには就寝し午前1時半には起床するとのことだ。私が「変則的な時間帯で大変では?」と上っ面の気遣いを投げかけてみたものの「そんなの慣れ」の一言だ。サラリーマンなら不満の一つも言いたくなる労働条件だがそんな愚痴は微塵も出ない。
そして驚いたことに、家の仕事場では90歳を超える父親(私の叔父)がハリのある声で冗談を飛ばしていた。さらには直近の円安問題で私に意見を求めてくる。
今回のいとこや叔父の働きっぷりに高齢化や都会のサラリーマンが抱える課題解決のヒントや答えがある。
*終身雇用制度はもはや存在しないと早く悟ること。
*自分や家族の健康は自分で守る。”会社言いなりの異動や転勤で健康やメンタルを害しました”はありえない。
*人事異動は自分で発令し定年は自分で決める。
*自分がオーナー・経営者になったつもりで起業すればもしくは起業したつもりで働けば、職住接近、育休取得、ワークライフバランス等の課題に自然と答えが見つかる(はず)。
ただし「言うは易し」だ。実際にやってみると予想だにしない難問が降りかかってくる。しかしその課題に取り組むことで知恵も出るし、工夫もする。そこに人間としての成長があると信じたい。
また私の拙い経験だが、自営と同じ緊張感と当事者意識をもって仕事に取り組み続ける人が、サラリーマンでも成功する。要はどんな仕事や環境でも、最後はその人、個人の問題に還元できる。私は自分にそう言い聞かせている。
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3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
今週の銘柄
マイクロン<ティッカー:MU> Micron Technology, Inc.
概要
半導体メーカーで、電源を切るとデータが消える揮発性メモリーのDRAMと、電源が切れてもデータが消えない不揮発性メモリーのNANDという、2種類のメモリー半導体を主に供給するほか、CMOSセンサーなども製造しています。
同社の魅力
競争環境の落ち着きと長期的な需要拡大
メモリー半導体は「汎用製品」のイメージが強く、特にハイテク銘柄の投資家にはあまり人気がありません。しかし、最先端技術の製品ではないかもしれませんが、「汎用品」=「安価な製品」=「多くの競合他社」=「低利益率」というイメージは、以前のものになっています。
一つの理由は競合他社の減少です。DRAMメモリーは、マイクロンを含む大手3社で市場の約95%を占めています。NANDはインテルが撤退したため、5社体制で、5社でほぼ全てを占めます。競争の減少は、価格競争や過度な設備投資競争の緩和につながり、収益体質が強化されています。
もう一つの理由は、長期的な需要の拡大です。景気動向に左右される部分は残っているものの、自動車における半導体使用金額の増大や、モバイル機器の高性能化などが背景で、メモリー需要は今後も拡大が見込まれます。また、半導体全体に占めるメモリー分野の売上高比率が堅調に上昇しています。
(図1:メモリー半導体の需要予測、4年間で1.5倍の拡大)
(図2:自動車での半導体使用箇所の例)
(図3:長期的に半導体全体に占めるメモリー市場の占める比率が増加)
財務の安定と配当開始
こうした業界の安定とマイクロンの幅広い製品群への安定が、収益力の増加、キャッシュフローの増加、債務の削減、および純資産価値の増大につながりました。
(図4:長期的な利益率の拡大=売上高に対するEBITDAの比率(4年移動平均)=)
(図5:営業キャッシュフローの推移、4年移動平均)
(図6:キャッシュポジションと負債の削減=ネットキャッシュがプラス転換し、負債比率が低下)
(図7:純資産の増大)
これらを背景に自社株買いを継続しているほか、2021年10月に配当の支払いを約25年ぶりに再開しました。
割安感
こうした業績の安定化にもかかわらず、マイクロンに対して投資家が抱くイメージが従来のまま(低収益体質、景気循環の影響が大きい、財務的に不安定)であることから、割安な状態が続いています。主な半導体メーカーと比較しても、割安感が際立っています。半導体銘柄ということで売り込まれていますが、PERが市場平均(約18倍)になるだけでも株価が3倍になる計算です。金利上昇のマクロ環境下で投資家の見直し買いが入る可能性が期待されます。
(表1:半導体銘柄の比較)
リスク
長期的な需要拡大は見込まれるものの、短期的な景気循環の影響はあります。最近の株価下落にはそうした要素もあると思われます。また、予想外の買収や半導体銘柄全般に対する投資家心理の悪化はリスク要因と考えられます。
(図1~7は会社資料、表1はYahoo! Financeデータより)
MUの基本データ(出所:会社データ、Yahoo! Finance)
(5月6日現在)
株価 70.35ドル
時価総額 785.6億ドル
総収入 312億ドル
予想PER 6.0倍
予想利回り 0.6%
本社:アイダホ州 ボイシー
上場:1984年5月
株価チャートは5年
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
その1「直近の相場概観」
株式市場は年初来、乱高下しながら下落が止まらない。理由は言うまでもなくインフレ圧力の高まりで金融引き締めを余儀なくされ、株式市場がそれを織り込んでいることだ。それと同時に懸念されていたロシアのウクライナ侵攻が2月24日を境に現実のものとなり、地政学的なリスクが一気に顕在化したことも挙げられる。
直近では連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが2回実施された。5月3〜4日の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%ポイントの利上げを決定。パウエル議長は否定しているが、市場ではFRBは6月のFOMCで0.75%ポイントの利上げを決定するとの見方も出ている。
この環境下で投資家は大きく弱気に傾いている。ハイテク銘柄が多いナスダック総合は2020年以来の安値を更新。週間ベースでは5週連続と2012年第4四半期以降で最長だ。S&P500指数も5週続落。2011年第2四半期以降で最長となった。
以下、直近の相場のチェックポイントを確認しておきたい。
S&P500指数過去5年間チャート
先週金曜時点で今年1月3日の史上最高値からマイナス14.0%。
ナスダック100 過去5年間チャート
昨年11月19日の史上最高値からマイナス23.4%でいわゆる弱気相場入りしている。
今年3月23日以降の主要指数の騰落率
橙(緑)色が濃くなるほど下落(上昇)率が大きい。直近はナスダック指数の乱高下が激しくなっている。
ナスダック100:過去の大幅下落局面
今回の下落率(23.4%)は2018年秋から年末の下落率22.9%を超えた。
ナスダック総合指数(約3500銘柄で構成)のうち半数の銘柄は半値以下に下落している。
米個人投資家協会(AAII)の週間調査
個人投資家へのアンケート調査では、今後6カ月の相場に対する「強気」と「弱気」の割合をみると、極端な弱気に傾いている。ただし直近5月4日時点の調査では、4月27日に比べて強気が少し増え、弱気も減少した。
これらの投資センチメントは、相場の大底で弱気が最大化するのが経験則だ。先週の弱気の減少を受け、次回(5/11)の調査結果はどうだろうか?
バリエーション(PER)はかなり下がってきた。
PER(株価収益率)の高低はあくまで金利との見合いだが、直近の株価下落で相対的に割安感が高まっている。
バブル銘柄はすでに弾けているのかも?
今回のハイフライング銘柄を象徴する上場投資信託(ETF)はアーク・イノベーションETF(ARKK)だろう。このETFは破壊的イノベーション関連のゲノム革命、ウェブx0等の銘柄に投資する。これらの銘柄は昨年2月ごろまでは極めて割高に見境なく買い上げられ、その後は半端なく売られている。
ここで思い出すのが2000年当時のナスダック総合指数やその構成銘柄だ。1995年から本格化したIT相場は止まるところを知らぬ上昇を続けたが、2000年3月をピークに急落し、それが2002年夏頃まで続いた。
さてそのARKKのチャートはITバブル期のナスダック総合のチャートと似ている。両者を比較するとARKKの値幅調整は大方終わったように見えるが?
まとめ
S&P500指数は2018年に年間で下落(マイナス6.4%)を経験している。その後2020年2月~3月にコロナ危機で急落(マイナス34%)したが、金融緩和とDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進力に反転し、とりわけハイテク銘柄は空前の上昇を演じた。
ハイフライング銘柄は昨年2月がピークで、S&P500指数も今年年初に史上最高値を記録したあと下げが止まらない。
米国株式は4、5年に一度は年間ベースで下落してきたし、中間選挙のある年は軟調な株価が多いと記憶されている。
しかし、この間の下落でPER(株価収益率)も低下しつつある。現状は金利と企業業績を勘案した上で株価の居所を探っている途中だ。
ただし、現状はインフレ高進のピークとなる手がかりを探っている状況だが、ヒントらしいヒントがまだ見当たらない。 また、インフレ高進に先手を打てなかったFBRへの信任が揺らいでおり、これらが投資家心理を冷やしている。
現状の不透明感を勘案すれば、ここはポジションを落として安心したい投資家がいるかもしれない。しかし、この程度の乱高下は株式投資には付きものと割り切ることも、長期投資には必要な心構えだ。
長期的には米国株式投資は素晴らしいリターンを投資家に提供してきたし、今後もそれは変わらない。私はそう考えてじっくり構えている。投資姿勢はいままでとなんら変わらない。
その2「手元にある20万ドル。これをS&P500指数に、一気買い?それとも時間分散?」
質問
いまMRFにある約20万ドル(2500万円相当)は今後S&P500のインデックスに投資する予定。どういうタイミングで投資すべきか?つまりいま全てを一気に投資するのか?それともある程度時間をかけるのか?その場合にはどれくらいの期間をかけて投入するのがいいのか?
背景
*67歳、男性、元会社員だが今は無職。
*対面型証券と約10年付き合っているが、言われるまま毎月分配金型の投資信託ばかり購入。現在もアライアンスバーンスタインCコース(毎月分配型)を約2200万円(2017年12月〜)保有。この投信では、先月までに普通分配で累計で約1100万円受け取った。
*川田さんの動画を拝聴し、やっと今月からネット証券にてS&P500指数連動のインデックスファンドの積立(13万円/月)を始めた。
【保有資産】
➀マネー・リザーブ・ファンド(MRF):20万㌦(2500万円)
➁投信:アライアンスバーンスタイン:2200万円(毎月分配型)
③投信:その他アクティブファンド8本:2300万円(全てアメリカ株)
④個別銘柄:無し
今後の方針
➀MRFを使用し、S&P500指数に投資する。
➁アライアンスバーンスタインも1〜2年かけて売却(現在、基準価格がマイナス)し、eMAXISあるいは高配当株に投資する。
③その他アクティブファンドもインデックス投信に乗り換える予定。
このMRF20万ドルS&P500指数の投信かETFを積み立てようと思っている。その際に以下の投資本を読んだ。
全面改訂 第3版 ほったらかし投資術 山崎元 水瀬ケンイチ 共著
2022年3月30日発行
Q
“投資できるまとまったお金を持っている投資家は、一度に投資することが合理的。資金を分割して投資すると、十分な投資ができていない期間が生じて、意思決定の問題としては「機会損失」が発生する” と書かれています。
対面証券のMRFに20万ドル程ありますので、積立額を月額8,000ドル(約100万円)とか25,000ドル(約300万円)にすることも物理的にはできますが、月額1500ドル(約20万円)では「機会損失」でしょうか? もちろん長期投資のスタンスです。
川田のアドバイス
山崎さんのいう通り、相場が右肩上がりだとするなら迷わず一気に買うのが後々のパフォーマンスは大きいです。
ただし、2000年、2009年のような大暴落に直面してもいいから長期間マーケットに居続けることで投資資産を大きく増やしたいのなら、時間分散してメンタル上の健全性を保つのが有効だと思います。
また時間分散に要する時間ですが、現在の保有資産が上記①〜③の約7000万円だけなら、この2500万円は少し慎重にリスクをとったほうがいいと思います。
米国株式の長期投資は相場を読まないことが大事という人もいます。
ただし現在の米国株式の投資環境は
①今年はS&P500指数が年初来で13.5%程度下落している。この指数が年間で下落するのは4、5年に1度だが、今年は珍しく大きく下落している。
②大統領任期の2年目や中間選挙の年は相場が軟調なことが多い。
③ロシアのウクライナ侵攻が相場下落のきっかけになったが、過去の地政学リスクが株価パフォーマンスに長期にネガティブな影響を与えることは少ない。
以上を勘案すれば2500万円の資金投入に3年ほどかけるのはどうでしょう。①今年は軟調な年と予想して、今年年末までに2500万円の半分程度の1000〜1250万円ぐらい。そして②来年(2023年)は残りの3分の2ぐらいで、③2024年中にその残り全てを投資し終えるのはどうでしょう。
ご参考
この話題に関連して以下のサイトを見つけました。
一括投資は本当に危険?ドルコスト平均法の呪いとは│商社のゲーム
よく知られている様に、投資タイミングとしては大きく2つの手法があります。
一括投資:資金をある一時点で一気に投下。
ドルコスト平均法:資金を分散して徐々に投下する。一定の価格で機械的に買い付けることで、安値の時は購入量を増やす。高値の時は購入量を減らす。
これにより、一時的な値動きに左右されることなく、購入額を平準化できる。
一括投資は、直後に暴落が来た場合にリスクが大きい。ドルコスト平均法は値下がりしても取得原価を押し下げるため、リスクが低い。
リスク資産と無リスク資産の保有割合を一定に保つ
投資をする際に一番最初にしなければならないことは何でしょうか。それは、①自分のリスク許容度を把握し、②アセットアロケーションを決めることです。アセットアロケーションとはつまり、リスク資産と無リスク資産の保有割合のことです。
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5.お散歩コーナー
◇◇最近行ったお店、映画、美術館、書籍編◇◇
~熊倉 貫宜の巻~
元証券マンで読書家である熊倉貫宜さんの寄稿です。
神田鶴八鮨ばなし / 師岡幸夫
『目一代、耳二代、舌三代』という先人のお知恵を拝借するならば、なにやら昨今の美食家と称する皆様なんぞ、単なる半可通の訳知り顔としか思えなくなります。
ましてやテレビや出版の世界で、中途半端な知識と、自らの余り宜しくない出自を披露し、小銭を稼ぐ輩には同情を禁じ得ません。
また、外国のタイヤ屋さんが発行する赤本を片手に、どれだけ掲載された店を回ったかを競うに至っては、赤本つながりで毛沢東語録を握りしめた紅衛兵にも見えてしまいます。
さて、西洋ではキリスト教が、1995年あのブラッド・ピットが主演した米国映画「セブン」でも有名になった七つの大罪の一つ「暴食」を諌めております。
東洋では仏法が食物への欲は、飢えと渇きに苦しむ亡者の世界、餓鬼道へ落ちるものとして諌めております。
イスラム圏でも、ご承知の様に断食や禁酒と云う戒律を課すことにより、厳しい現世での生活を律しようとしております。
このように、「あれが旨い、これが美味い!」などと云う言説は、本来は人の道に外れる恥ずべき行為なのでしょうか?
しかしながら、禁忌は快楽へのジャンピング・ボード、「うまいもの」を求める欲望は業のように人々を捕えます。
あるいは、ロシアのウクライナ侵攻を見るにつけ、つくづく外食とは平和の象徴なりとも思えます。
かの池波正太郎先生も「戦後数年は、弁当無しでは外で過ごせなかった」と、敗戦後の荒れ野原の東京で外食する店が皆無であったことを述懐されており、外食は戦後の平和と復興のシンボルでもありました。
飽食の現代には思いもよらないことですが、投資の世界でも外食産業はポートフォリオ構成には欠かせない銘柄ではないでしょうか。
大衆的な回転すし店を運営する上場企業だけでも、即座に数社挙げることが可能です。
さて、今回取り上げた本書ですが、初版が草思社から発刊されたのが同社のHPによりますと昭和61年(1986年)2月、バブル経済により多くのものが破壊される前夜、おそらく著者の語りを編集者が丁寧に文章に落とし込んでいったものと思われます。
著者は戦後復興の中で、東京有数の花街であった柳橋の寿司店で修業し、その後独立、神田神保町に長くご自身のお店を経営しておられました。
第一部はご自身が修行された鮨の仕事の細目、特に江戸前鮨の仕事が記録され、鮨屋の裏側でこれだけの仕事が為されている事実に驚きます。
第二部は修行時代の回顧録(この部分はNHKのドラマ「イキのいい奴」の原作となりました)、一人前の職人を産む徒弟制度の無理難題が、現在の眼から見るといささか過剰ですが、詰め込まれております。
第三部は寿司にまつわるよもやま話、仕事や世相を反映した昭和の職人の内容の濃い覚書となっております。
私は本書を長年愛読しております。
それは、私が証券の世界に飛び込んだ頃の営業現場での上下関係を思い出させてくれることと、非常に個人的な事柄ですが、著者の語り口が文字を超えて聞こえてくるからです。
先に私は本書を「著者の語りを編集者が丁寧に文章に落とし込んでいったもの」とさせて頂きましたが、何故そのように判断するのでしょうか?
その理由は本書を読むにつれ、著者の言葉が音として再生されるからで、東京の下町で使われていた土地の訛りが文章から甦って来るからです。
例えば「芸者衆」、「若い衆」と盛んに出てまいりますが、字面は「げいしゃしゅう」、「わかいしゅう」ですが、これは土地では「げいしゃし」「わかいし」と発音されます。
逆に本来なら「歩いていた」という意味の訛りを「歩いてった」と上手に文章に落としている部分もあります。
著者と同様に下町原人であった私の父の話を、私自身が時折理解できないことがあったことを思うと、編集者の苦労が想像できます。
昔の東京の下町、町場の市民の話が読んで/聴ける稀有な書でもあります。
【熊倉 貫宜】
1980年大和証券入社。企業派遣留学としてシカゴ大学経営大学院にてMBA取得。シンガポール、香港駐在を通じてアジア・ビジネスに関わる。
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6. 超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
IFAに特化した営業支援を行っている市川宏さんが、超富裕層が活用している投資戦略を、皆様に簡単にお伝えするコーナーです。
インデックスに勝ち続けるアクティブファンドの選び方4つ
今回は、ファンド(投資信託)の銘柄を選ぶ上でのヒントをお伝えします。投資初心者の方やファンド選びに迷いたくない、という方は基本的にインデックスファンドを購入しておくのが無難でしょう。
とはいえ、インデックスに勝ち続けるアクティブファンドを探したい、という相談が多いのも事実です。そういった方に、アクティブファンドを探す上での簡単なヒントをお伝えします。
1. 最低3年程度のパフォーマンス
皆さんはファンドのパフォーマンスを見るとき、どのような数字を見るでしょうか。おそらくほとんどの方が「どのくらい上がったか」という数字だけを見ていると思います。しかし、ここに大きな落とし穴があります。
証券会社やファンド運用会社のウェブサイトでファンドのリターンランキングを見ると、直近6か月や1年の間におけるランキングが表示されており、直近1か月を表示している会社さえあります。
ファンドの良し悪しは1か月や1年そこらで判断することはできません。プロ野球でいえばたった数試合で成績を評価するようなものです。イチローでも打てない期間はあったし、実力のない選手でも数試合だけ大活躍する場合もあります。
ファンドのパフォーマンスを見るときは、最低3年以上を見て判断しましょう。
2.手数料よりもネットリターン
昨今、「手数料が安いファンド=良いファンド」という考え方が広まってきています。もちろん、企業努力として手数料を安くし、顧客利益を最大化することは良いことです。
しかし、「手数料が安いファンド=良いファンド」という判断基準は短絡的で危険です。そもそも、投資家がファンドに最も期待する価値、まず最優先されるべきものは「資産を増やすこと」。これに尽きるはずです。
ファンドとして一番大切なのは、手数料水準ではなく手数料を引いた後のネットリターンです。投資家にとって最終的に手元に残る、実質の利益です。
正直、日本の資産運用業界は収益性の高いビジネスではありません。このまま手数料競争が続けば、資産運用会社の収益が悪化し、優秀な社員に高い給料を払えず、給与水準の高い外資系への流出が起きます。それは運用サービスの質の低下を招きます。
3.シャープレシオ
プロの投資家はリターンよりもシャープレシオを重視しています。金融庁が毎年公表している「資産運用高度化プログレスレポート」でも、シャープレシオを基準にファンドの良し悪しを検証しています。
それではシャープレシオとは、いったいどのような指標なのでしょうか。簡単に言うと「どれだけ安定したリターンを出したか」を示す指標です。
上記の数式を非常にざっくりと言うと、「リターン÷リスク」です。つまり、リターンに対してリスクが大きいとシャープレシオは小さくなり、その逆だと大きくなります。
使い方としては、比較するファンドがそれぞれ同じリターンだとしても、 シャープレシオが大きい数字の方が効率の良い運用ができてる良いファンドということになります。
具体例を見てみましょう。
次の2つのファンドがあった場合、Bファンドの方が優れているということになります。
Aファンド:年率リターン +10%、シャープレシオ 0.5
Bファンド:年率リターン +10%、シャープレシオ 1.5
実際に両ファンドのパフォーマンスを図示します。
1年後の結果は同じでも、途中経過がだいぶ違います。最終的なリターンは一緒でも、Bファンドと比較してAファンドは値動きが激しく、リスクが大きいです。
では、シャープレシオはどの程度なら良いと言えるのでしょうか。
一般的に、シャープレシオ1.0以上は一流ファンドと言われています。なお、市場平均であるTOPIXやS&P500指数のシャープレシオは0.2~0.4くらいです(計測期間にもよります)。
4.リターンとシャープレシオのバランスを見る
シャープレシオが高いファンドでも、リターンが低いものは多くあります。たとえば先進国の国債は、値動きも静かで、シャープレシオは株式よりも高くなりがちです。
しかし、どれだけ安定性のある良いファンドでも、リターンが年率1~2%くらいでは個人の資産運用としては物足りなく感じてしまいます。
Aファンド:年率リターン +1%、シャープレシオ 2.0
Bファンド:年率リターン +15%、シャープレシオ 1.0
シャープレシオはAファンドの方が圧倒的に良いものの、 個人の資産運用としてはBファンドの方が適切です。
年率リターンがプラス15%、シャープレシオが1.0。これくらいあれば、個人の資産運用として何も文句はないパフォーマンスだと思います。
ちなみに、インデックスの平均リターンがどれくらいかというと、日本株(TOPIX)が年率3~5%程度、米国株(S&P500指数)が年率5~7%程度と考えておくと良いでしょう。
【市川宏】
株式会社Winviser代表取締役。SMBC日興証券にて茨城、福岡、東京の各支店にて資産運用コンサルティングに従事した後、超富裕層向け金融商品のマーケティングを行う。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)業者に転籍し、超富裕層の資産運用のアドバイスを行った後、日本の金融業界の発展のためIFAに特化した支援会社を設立。現在は、IFAを支援する傍ら、自身の経験を元に個人投資家に資産運用のサードオピニオンを行っている。
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7. 今後の活動情報
◇ストックボイス:5月11日、5月18日(水)11:00
◇日経CNBC:5月19日(木)電話インタビュー(改野さん)
5月24日(火)スタジオ出演(露口さん)
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