米国株式投資の真実を伝える [Vol.48]2022年5月23日配信
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
米国株式投資の真実を伝える
[Vol.48]2022年5月23日配信
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
***目次***
マーケット振り返り
今週のピックアップ記事
川田の気になる銘柄
投資のヒント
お散歩
超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
活動情報
休刊日:5月30日(来週休刊)
社会人になって40年以上読み続けている日経新聞の中から気になる記事をピックアップしコメントする企画だ。毎週土曜日午前9時〜9時45分にズームへの参加形式で実施している。
参加は無料なのでご興味あるかたはPeatixでお申込みください。
以下は先週土曜日にカバーした記事の表題をいくつか
皆様が資産形成で成功するために一緒に学び啓発し合うオンラインサロンです。大好評のメルマガ「メディアで鍛える米国株式講座」だけでは伝えきれない内容や、米国株式投資の魅力を体感できる会員向けのセミナーを提供します。
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
1.マーケット振り返り(5月16日~5月20日)
<主要指数>
・NYダウ -2.9%
・S&P500指数 -3.0%
・ナスダック総合指数 -3.8%
=駆け足バージョン=
小売企業が業績見通しを引き下げたことを受けて、企業業績に対する懸念が広がり、下落しました。景気減速懸念から長期金利は低下しましたが、株式市場の下支えにはならず、NYダウは約90年ぶりの8週連続安となりました。
=ちょっとだけ詳しく=
前週末の大幅反発の勢いは続かず、世界的な経済成長に対する懸念が続いて不安定な展開で始まりました。
上海での新型コロナウイルスの感染者数減少などが好感されて、一時的に反発する局面はありましたが、大手スーパーマーケットチェーンのウォルマートなどの小売企業が業績予想を引き下げたことを受けてインフレ率上昇による利益率の低下などが懸念され、投資家のリスクを回避姿勢が強まりました。
その後に発表された経済指標が低調だったことで長期金利は低下しましたが、景気減速懸念は根強く、底値を探る動きが週末まで続きました。
結局、NYダウが1932年以来の8週連続安となったほか、S&P500指数やナスダック総合指数も2001年以来の7週連続安となりました。
S&P500指数 5年間チャート
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 歴史的株安、新たな局面へ 5/21
ダウは週間で3%安、8週連続で下落。1896年以降、最長続落記録は8週連続で今回を含めて過去2回だけ。下落スピードも過去最速級。S&P500種株価指数は年初から96営業日目に当たる5月19日までに18%も下落。年初からの96営業日の下落率では1932年(33%)、1940年(20%)に次ぐ大きさ。
下落理由は2つ
1つ目は需給要因:マージンデット(証拠金債務)と呼ばれる信用取引の買い残高は4月末時点で7729億ドル(約98兆円)。3月末からの減少率は3%だ。4月のナスダック総合株価指数は月間で13%安だったのに比べると減り方は小さい。
個人動向:5月に入って売り急増。17日までの1週間、アップルは今年に入り23%安、エヌビディアは43%安と個人が信用買いを維持できなくなった。
2つ目は景気後退懸念:米長期金利が5月9日に3.20%と2018年11月以来の水準に上昇した後、19日に2.77%まで低下。4月末(2.93%)の水準を下回って5月を終えれば月間では6カ月ぶりの低下となる。長期金利の低下に対し「株売りは新たなフェーズ(局面)を迎えている」と指摘。これまでは金利上昇懸念が株安の主因だったが、今後は景気不安が取って代わるとの意味合いだ。
【川田コメント】
チャートはマージンデット(証拠金債務)とS&P500指数の比較だ。株価上昇に連れてマージンデットも増えている様子が見て取れる。株価下落に伴い辛抱しきれなくなった投げが出て、債務も減りつつある。ただしマージンデットと時価総額の間に明確な相関関係は認められない。
下記は過去の主な下落相場の下落率と継続期間だ。今回の下落相場は今年1月3日のS&P500指数の最高値から現在まで5カ月半で18.7%下落している。このチャートにはまだ記載されていないが、2020年や1987年に次ぐスピードだ。この程度で反転すれば、つまり20%以内の下落で収まれば、後々このチャートへの記載はない。
【2】ウオール・ストリート・ジャーナル 原油価格の急騰、70年代との共通点は 3/9
原油価格の急騰、70年代との共通点は
原油価格が1年で2倍かそれ以上になると、良くないことが起こりがち。1974年や1980年、または2001年のように、それは米国の景気後退時と重なる。
現在の状況と比較するのに最適なのは1974年や1979〜1981年だが、そこから導き出される今後の展開は全く別のものだ。
1973〜1974年:アラブ諸国がとった石油禁輸措置は、現在と共通点が多い。エジプトとシリアが率いる独裁者同盟が破壊的な領土争いを演じたことで、原油価格は急騰した。S&P500指数は12カ月間で43%下落し、1930年代の世界大恐慌以来の落ち込みを記録した。
現在は当時と比較すると好材料と悪材料がある。好材料は、米経済の石油ショックへの耐性が格段に強まっていることだ。シェールオイルによる米国の生産量拡大と経済のエネルギー効率の向上も挙げられる。
悪材料は、債券や住宅など多くの投資対象と同様、株価が当時よりもはるかに割高になっていることだ。
長期原油価格(対数チャート 1961年以降)
【川田コメント】
今回、株価は大幅に下落し、特に成長株の下落が大きい。これだけ下がったのは最近ではコロナ危機、金融危機とITバブル崩壊の時だが、それ以前に遡るとオイルショックだ。記事では今回の下落とオイルショック時を比較している。これに関連したデータを列挙する。
先週の金曜日時点でナスダック100指数は最高値から28.6%下落した。これでコロナ危機時の下落率(28.0%)を上回った。ちなみにS&P500指数はコロナ危機では33.9%、今回は金曜日までに18.7%の下落だ。
S&P500指数対数チャート
S&P500指数チャート(1959年~1979年)
1968年11月〜1970年6月の下落は、ベトナム戦争の影響により好景気(需要増)と財政悪化(国債発行増)が重なり、高インフレに見舞われた。長期金利が10%以上まで上昇し、株価は大きく下落した。
1972年12月〜1974年9月の下落は第1次オイルショックの影響でインフレ率が高まり、FRBが大幅な利上げを行ったことが要因だ。1972年12月の高値を次に回復したのは1980年7月であり、9年半を要した。
過去の消費者物価指数(CPI)の年率騰落率。1973年〜1974年の上昇率が大きい。
ナスダック総合指数の月間ベースの下落
1971年創設のナスダック総合指数は1973年に12カ月中10カ月で下落し、1974年も10カ月で下落している。この2年間は地獄の苦しみだっただろう。今年は年初から数えると、3月を除く3カ月間下落しており、5月も下落するなら4カ月間のマイナスとなり、投資家へのダメージは大きい。
さて、原油高とインフレの組み合わせは過去40年間の金利低下の期間では考えにくかった。今回はそれが現実に起きている。このインフレがいつまで、そしてどの程度の勢いで続くか分からないことがマーケットの最大の懸念だ。当時の経済構造とは異なるはずだが、原油、資源高、供給制約などの要因が人々のインフレマインドを刺激している。
【3】日経新聞 「中銀プット」なき米株相場 大恐慌以来8週連続下落 5/21
「シラーPER」:S&P500種株価指数で昨年末時点では38倍台と、2000年ごろのITバブル以来の高水準。
ITバブル後は2001年初めから利下げに転じ、2003年夏まで断続的に政策金利を引き下げた。2015〜2016年の「チャイナショック」では利上げペースを緩めた。米中対立に揺れた2018年後半には利上げを停止し、翌年には利下げに転じている。
故ポール・ボルカー:1979年に就任すると、景気減速もいとわない積極的な引き締めでインフレに立ち向かい、「インフレファイター」と呼ばれた。パウエル議長も5月の記者会見で「ボルカー氏を大変尊敬している。彼は正しいと思ったことを実行する勇気があった」
【川田コメント】
シラーPER:ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー教授が考案した指数で、CAPEレシオとも呼ばれる。株価の割高・割安を測る指標の一種で、過去10年間の1株あたり純利益の平均値をインフレ率で調整した実質純利益でPER(株価収益率)を計算する。
赤枠は利上げ期間
利上げ開始後に株価下落が顕著なのはオイルショックや高インフレの80年
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
今週の銘柄
ウエスタンデジタル<ティッカー:WDC> Western Digital Corporation
概要
ハードディスクドライブ(HDD)とフラッシュメモリー製品を製造するストレージ機器製造企業で、需要先ごとに、データセンター向けなどのクラウド事業、法人向け製品のクライアント事業、消費者向けのコンシューマー事業として展開。
同社の魅力
業界再編の完了と市場の拡大
HDDメーカーはパソコン向けを中心に1990年には40社以上ありましたが、パソコンの進化や景気変動の波を経る中で再編が繰り返され、2012年には3社に集約されました。2020年のHDDの世界出荷台数シェアは、シーゲイト・テクノロジー(42.7%)、ウエスタンデジタル(37%)、東芝(20.3%)でした(テクノ・リサーチ・システム調べ)。
この結果、「多くのプレーヤーが存在して価格競争を繰り広げ、利益率が低く財務体質がぜい弱な業界」というイメージは過去のものとなっています。
また、「HDDはパソコンに使用するもので、SSDにシェアを奪われている過去の機器」という概念も現状を正しく認識していません。それは、クラウド事業を手掛けるデータセンターなどからの需要が飛躍的に拡大しているからです。
別の角度から見ると、常にインターネットにつながっているオンラインストレージや、インターネットとは切り離されたオフラインストレージ(USBメモリなど)とは別に、必要な場合にインターネットと接続するような「ニアラインストレージ」に分類されるデータ保管の需要が伸びていることも挙げられます。
(図1:クラウド事業がHDDの市場を劇的に変える)
これらを背景にウエスタンデジタルのHDD事業の売上高は、利益率が低く変動の大きな消費者向けおよび法人向け事業から、クラウド事業が中心となっており、その傾向は続くと思われます。
(図2:需要先の変化)
利益率の拡大と財務体質の改善
こうしたファンダメンタルズ面の変化を受けてWDCの利益率は拡大しています。本業の利益率を見る指標の一つである、利払い・税引き前の利益(EBIT)で見た投下資本利益率(ROCE)は、5年前から約4%ポイント上昇しています。
(図3:利益率体質の改善)
利益体質の強化を受けて財務体質も好転しており、長期負債の減少とレバレッジの低下につながっています。既にレバレッジ比率は投資適格水準まで低下しています。
(図4:財務体質の強化 負債の削減(左)とレバレッジの低下(右))
割安感と株主還元期待
こうした業界とWDC自体の変革を株式市場はあまり織り込んでいない可能性があります。株価は5年前よりも低く、株価収益率は現在6倍台で市場平均を大きく下回ります。
こうした割安な状態に着目して、アクティビスト(物言う)投資家であるエリオット・マネジメントが、最近WDCの6%の株式を保有し、同社に対してHDD事業とNAND事業の分離を求めました。NAND事業は、WDCが2016年に買収したサンディスク社を中心とするもので、当時の買収総額が160億ドルだったのに対して、現在のWDCの時価総額は180億ドルです。
エリオットはNAND事業の価値を170億~200億ドルと見積もっており、それが正しければ、NAND事業が分割されて株主に配分された場合、株主はHDD事業を無料で手に入れられる計算になります。
また、2020年2月を最後に現在無配状態ですが、収益力の強化にともなって復配が発表されれば、株価上昇要因になると思われます。
リスク
業界環境は以前から変化したものの、同業他社とのシェア争いは継続しています。また、景気全般の影響を受けるため、米国経済や世界経済のリセッション入りが懸念される場合は、軟調な場面が考えられます。
また、「ハイテク株」全体が売られる流れで弱含む可能性もあります。
(図1、2、4は会社資料より、図3は決算資料よりエグゼトラスト作成)
WDCの基本データ(出所:会社データ、Yahoo! Finance)
(5月20日現在)
株価 56.81ドル
時価総額 178億ドル
総収入 192億ドル
予想PER 6.19倍
予想利回り N/A
本社:カリフォルニア州 サンノゼ
上場:1991年1月
株価チャートは5年
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
今回は、弊社のYouTubeチャンネルの「アメリカ株式40年投資」シリーズでおなじみの大倉真さんの寄稿です。
アメリカ株長期積立投資応援団
【積立投資のおさらい】
「せっかく積立投資を始めたのに、アメリカ株はどんどん下がっている」、「逆イールドは景気後退(不況)のシグナルらしい」、「いろんな人が慎重に投資しろと言っている」、「せっかくの評価益が減ってきた」、「最初聞いていたほど利益が伸びない」などなど。せっかくアメリカ株に積立投資を始めたのに、本当にこのまま積立を継続してよいのか不安に思い始めている投資初心者の方も多いのではないでしょうか。
ここで積立投資について、もう一度振り返ってみましょう。資産形成のための積立投資は、言うまでもなく「長期的に行うドルコスト平均法」です。ドルコスト平均法とは、「定期的に決まった金額を何かに投資していく方法」です。投資対象の価格が上昇している時は、買付単価は上昇し、逆に買付数量は減少します。一方、価格が下落している時は買付単価が下落するのに対し、買付数量は増加します。
このようにドルコスト平均法は逆張り的なアプローチです。これを都合よく解釈するのであれば、価格が上がっている時には評価益が増える、逆に価格が下がっている時にはより安く(そしてより多くの数量を)買える、そういう投資方法なのです。
【まだ始まったばかり】
投資期間について、私は川田さんのYouTubeチャンネル「ありがとうアメリカ株式」で「40年投資」を提唱していますが、みなさんもできれば20年以上(少なくとも10年以上)かけて行うものだと考えるとよいでしょう。
仮に20年計画で毎月1万円のドルコスト平均法を2021年1月に始めたとしましょう。20年間の予定積立総額は
1万円×12ケ月×20年=240万円
になります。現時点(2022年5月)では17回積み立てているので、これまでの積立額は
1万円×17カ月=17万円
です。予定総額に対しては
17万円÷240万円=0.0708…
なので、まだ約7.1%しか資金投下していないことになります。もし30年計画であれば
17万円÷(1万円×12ケ月×30年)=17万円÷360万円=0.0472…
なので、ポートフォリオは高々5%弱しか出来上がっていないのです。
【暴落しても大丈夫なのか】
ひょっとしたら株式市場の下落はまだ序の口で、ここからは為替レートが円高になるかもしれません。そうだとしたら、みなさんはどうしますか。せっかく17万円も積み立てたのに、ここから大きな損失を被るかもしれません。大事なお金が少しでも減るのは決してうれしくないことです。
そこで、100年一度の危機と言われたリーマンショックを挟んで、次のようなシミュレーションを考えてみましょう。Aさんはリーマンショック直前のピーク(2007年10月末)から、そしてBさんはリーマンショックの大底(2009年2月末)から積立投資を始めます(図表1参照)。そして、2017年10月時点でのAさんとBさんの損益を比較するものとします。(ここでは為替レートの影響は考慮しません。投資期間が同じではありませんが、敢えてそのようなシミュレーションにしています。)
図表1 リーマンショックを挟んでのS&P500の推移
Aさんは株価が大底をつけるまで非常につらい思いをしたはずです。きっと何度も「積立投資なんか始めなければよかった」と思ったに違いありません。それに対し、Bさんはかなり楽な気分で運用できたに違いありません。
では二人の損益はどうなったでしょうか。普通に考えれば、リーマンショックの大暴落を受けて大きな損失を被ったAさんよりも、リーマンショックの被害を全く受けなかったBさんの方が大きい利益を得ることができるような気がします。
しかし、図表2に示すように、Bさんが積立を開始した時点(リーマンショックの大底)でAさんは大きい評価損を抱えているのですが、最終的にはAさんの評価益の方が大きいという結果になりました。
図表2 タイミングの違いによる積立投資の収益差
BさんがAさんの損益を上回るためには、大底まで温存していた資金をAさんよりも低い平均買付コストで投資するしかありません。しかし、将来の株価が分からない中で、そんな曲芸みたいなことなどできるわけはありません。特に、市場が大底近辺にある時は価格変動率が非常に高まるため、プロでも新規あるいは追加投資に腰が引けるというものです。
よって、上手くタイミングなど取ろうとせずに、なるだけ早く積立を始め、いったん始めたら、余計なことを考えずに粛々と積立を継続するのが正解なのではないでしょうか。
【さいごに】
投資の神様とあがめられるウォーレン・バフェットは、2016年に市場が大きく変動していた時期にCNBCのインタビューで以下のように言っています。
“I would tell [investors], don’t watch the market closely,” …
つまり、「あまり市場を見過ぎないようにして下さい(著者意訳)」ということです。投資系のブログやYouTubeでは日々市場の解説をしてくれています。彼らが提供してくれる情報はトレーディングのためには有用かもしれません。しかし、みなさんの投資の目的が「将来のための資産形成」なのだとしたら、積立投資を継続することこそが大切であるということを忘れてはいけません。
【大倉真】
愛媛県出身。1984年大阪大学経済学部卒業。2005年 埼玉大学大学院経済科学研究科より博士(経済学)。シティバンク、エヌ・エイ、シティトラスト信託銀行、ソシエテジェネラル信託銀行(現SMBC信託銀行)に勤務。年金・公的資金など機関投資家に加え、プライベートバンクで富裕層向けの資産運用にも従事。2017年、京都・東山で投資会社EagleCapital株式会社を設立。CFA協会認定証券アナリスト。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
5.お散歩コーナー
◇◇最近行ったお店、映画、美術館、書籍編◇◇
~熊倉 貫宜の巻~
元証券マンで読書家である熊倉貫宜さんの寄稿です。
大人の本棚 素白先生の散歩 / 岩本 素白
東海道品川宿―岩本素白随筆集 / 岩本 素白
素白随筆集―山居俗情・素白集 / 岩本 素白
激情に駆られ出奔したり、深い絶望から漂泊の中に身を置いたり、革命に自己を捧げたりする物語もありますが、市井の民として日々の生活に喜びを見出す、そんな姿勢の物語も多数ございます。
例えば日記文学や紀行文学、また近年大流行の感がある街歩き文学(?)と、それぞれ多くの読者を集めており、その人気も、混迷する現代では真っ当な市民感覚の結実と考えれば喜ばしいことでしょう。
現代日本の作家に限れば、日記文学には永井荷風の「断腸亭日常」という大きな山があり、紀行文学には金子光春の「マレー蘭印紀行」、小田実の「なんでもみてやろう」、北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」、沢木耕太郎の「深夜特急」、街歩き文学には池波正太郎の「散歩のとき何か食べたくなって」、川本三郎の「ちょっとそこまで」、西村賢太の「東京者がたり」、大流行の「孤独のグルメ」もここに置いて宜しいでしょうか?
今回ご紹介する岩本素白、私自身その高名を耳にしていたものの、実際にその著作に触れましたのは、没後40年を迎えた2001年に、みすず書房から刊行された‟大人の本棚シリーズ”の一巻として「素白先生の散歩」を入手してからです。
素白先生、その名を検索してみますとこんな風に紹介されております。
岩本 素白(いわもと そはく)
明治16年(1883年)8月17日生 - 昭和36年(1961年)10月2日没
国文学者、随筆家。本名は堅一(けんいち)
東京府麻布に生まれ、東京専門学校、現早稲田大学文学部国文科卒
母校の麻布中学教諭から昭和7年(1932年)より早稲田大学文学部国文科講師(のち教授)で随筆文学講座を担当。
戦災で自宅蔵書を失い、信州に疎開。昭和29年(1954年)に定年退職後は麻布高校、跡見学園短期大学でも教えた。
Wikipediaより抜粋
一読、私は素白先生の、争いごと無く上品で繊細な随筆群にすっかり魅了されてしまいました。
旅の空の下に流れる静かな時間、古き良き東京の街角、旧友の動向、町場で出会う無名の人々、いずれも素白先生の筆により生き生きと甦ります。
その作品は「地味ながら静謐なその作品は、具眼の士にしずかに読みつがれてきたのだった。」(鶴ケ谷真一「素白随筆集」解説より)の評に相応しいものです。
その名声に比して入手困難であった著作が、ぽつぽつと刊行され、現在では表題の三冊が書店で容易に見つけることが出来る状況は我が国出版文化の成熟であり、真の文化遺産と言えましょう。
【熊倉 貫宜】
1980年大和証券入社。企業派遣留学としてシカゴ大学経営大学院にてMBA取得。シンガポール、香港駐在を通じてアジア・ビジネスに関わる。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
6. 超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
IFAに特化した営業支援を行っている市川宏さんが、超富裕層が活用している投資戦略を、皆様に簡単にお伝えするコーナーです。
プライベートエクイティ投資をするにあたっては、直にその企業に出資をするシード・アーリーの段階と、PEファンドを通じて投資することの多いミドル・レイト段階があります。
「プライベートエクイティ」や「PEファンド」などといった投資自体あまりご存じの方は多くないのですが、さらに知られていない事実として挙げられるのは、PEファンド(投資家の資金を集めてファンドが間接的に投資する)の投資手法は「ブラインド・プール型」が主流という事実です。
投資先が決まっていない「ブラインド・プール型」
名前の通りブラインドプール型は、投資家がファンドに出資をする時点では投資先の企業がわからず、未定ということになります。株式投資などをされている方は投資先を選別して投資することが当たり前なので、「あり得ない」と思われるかもしれません。
しかし、日本におけるプライベートエクイティファンドは、先に投資家から資金を集め、その資金を徐々に銘柄に組み込んでいく形式が主流です。年金や金融機関向けのファンドや、個人富裕層向けの最低投資金額1億円といったファンドがこの手法をとっています。
この手法を取るのは、プライベートエクイティの他に、私募REITやインフラファンドなどに多いです。
投資家の意思統一が必要ないため、機動的な運用をすることができる点、また、多くの投資家から巨額の資金を集めて投資することも可能になる点がメリットです。
一方で、個別の投資先について投資家が取得可否の判断を差し狭むことができないというデメリットがあります。
「ターゲット型」
一方で、ターゲット型ファンドの場合は、そのファンドが投資する企業が明確になっているものを指します。例えば、「未上場企業A社に投資をするファンド」といったように、投資する企業がはっきりしています。
特定の一社のみに全額投資をする場合は、投資家にとって直接その企業に投資をするのと同じような投資効果があります。「わかりやすい」「投資判断がしやすい」といったメリットがあるため、基本的にターゲット型ファンドの良質な案件が出たら即完売というケースが多いです。
また、一社だけでなく複数社に投資をすることが決まっているターゲットファンドもあります。その場合、投資のリターンやリスクは分散されますが、特定のテーマに絞った投資をすることができます。
ブラインドよりターゲットで
プライベートエクイティファンドに投資する際などは、中身の見えないブラインド型よりも投資先がはっきりしているターゲット型の方をお勧めします。
私のもとにもいろいろな投資案件が来ますが、中身の見えない、よくわからない投資はするべきではないと思います。ただ、「〇〇銀行が出資しているから投資先が決まってなくても同じ運用をしたい!」という方には良いのかもしれません。
【市川宏】
株式会社Winviser代表取締役。SMBC日興証券にて茨城、福岡、東京の各支店にて資産運用コンサルティングに従事した後、超富裕層向け金融商品のマーケティングを行う。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)業者に転籍し、超富裕層の資産運用のアドバイスを行った後、日本の金融業界の発展のためIFAに特化した支援会社を設立。現在は、IFAを支援する傍ら、自身の経験を元に個人投資家に資産運用のサードオピニオンを行っている。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
7. 今後の活動情報
◇日経CNBC:5月24日(火)スタジオ出演(聞き手/露口さん)
───────────────────────────
★ご質問は、以下の【質問ルール】をご一読後、
info@kawata-magazine.comまでお願いします。
【 質問ルール 】
◆全ての質問への回答はいたしかねます。あらかじめご了承ください。
◆いただいた質問は、当社サイト、YouTube動画等のSNS・書籍等に、個人を特定できない形で掲載する可能性があります。
◆ご購読が確認できない方の質問には回答いたしません。
◆明らかな広告・宣伝とみなされる部分は割愛する対象となります。
◆未購読にもかかわらず悪質な質問を投稿された方には、然るべき措置をとらせていただきます。
───────────────────────────────────
★免責事項
◆当社は、本メールマガジンにて提供する情報にて、株式、債券、ファンド、ETF等の有価証券、およびセクター等に関する売買等の推奨はしておりません。また、投資判断はメールマガジン購読者(以下、会員)の責任にて行うものであり、当社は一切の保障責任を負わないものとします。
◆当社は、会員が当社の提供するメールマガジンを利用して被った損害について、一切の保障責任を負わないものとします。
◆当社は、当社が提供する本サービスにおいて、会員間で生じたトラブル(違法又は公序良俗に反する行為の提案、名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害、脅迫、誹謗中傷、いやがらせ等)に関して、一切の責任を負わないものとします。
◆当社は、本サービスの情報の内容が会員若しくは第三者の権利を侵害し、又は権利の侵害に起因して紛争が生じた場合、その侵害及び紛争に対して何らの責任も負わないものとします。
◆当社は、本サービスの停止又は中止、本サービス内容の変更によって受ける損害について、賠償する義務を一切負わないものとします。
───────────────────────────────────
■ 発行元:株式会社日比谷テクノロジー・ファイナンス
■ 川田重信のありがとうアメリカ株式
https://www.kawataamekabu.com/
■ Twitter:https://twitter.com/ShigenobuKawata
■内容に関するご意見・ご要望、購読解除はこちらから
【メール】info@kawata-magazine.com
■メールが届かない場合などは迷惑メール等に分類されている場合もありますので予めお確かめください。
───────────────────────────────────
よろしいですか?