米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.11]2021年8月16日配信
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米国株式投資の真実を伝える
川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
[Vol.11]2021年8月16日配信
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***目次***
マーケット振り返り
今週のズバリ!
今週のピックアップ記事
投資のヒント
川田のお散歩
活動情報
質問コーナー
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
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1.マーケット振り返り(8月9日~8月13日)
<主要指数>
・NYダウ +0.9%
・S&P500指数 +0.7%
・ナスダック総合指数 -0.1%
=駆け足バージョン=
7月の消費者物価指数発表後にインフレ懸念が後退したことや個別企業の好業績の発表を受けて景気敏感株を中心にじり高。NYダウとS&P500指数は史上最高値で引けたが、ナスダック総合指数は半導体関連が売られて小幅安。
=ちょっとだけ詳しく=
金融政策に対する警戒感から長期金利が上昇した月曜日は反落したものの、インフラ法案が可決された火曜日には景気敏感株が反発。水曜日の7月の消費者物価指数や木曜日の生産者物価指数の発表を受けてもインフレ懸念が高まらず長期金利が低下したことや、新規失業保険申請件数の改善が注目されて景気敏感株を中心に上昇。金曜日発表の8月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値が7月から大幅に低下したものの上値を抑えた程度で、S&P500指数は4日連続で史上最高値を更新した。一方、ナスダック総合指数は、半導体のマイクロン・テクノロジーが決算発表でPC需要の弱さに言及したことを受けて半導体関連株が売られたことなどが影響して小幅安となった。
S&P500指数過去1年チャート
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2.今週のズバリ!
これだけは知っておいてほしい情報をお届けするコーナーです。
新型コロナウイルスのデルタ変異株による再度の蔓延、前月からの低下が過去50年で3番目となったミシガン大学消費者信頼感指数などの懸念材料をもろともせず、先週の市場はじり高となった。「閑散に売り無し」と言うが、今週のバロンズによるとNYダウとS&P500指数が史上最高値を更新した金曜日は、年初来で最も出来高が少なかったらしい。
ハイテク株は売られたが景気敏感株が買われ、相場のローテーションがうまく行っている感じだ。予想以上に好調だった企業業績が背景にある。ただし、先週小幅安だったナスダック総合指数の背後には半導体株の売りがある。きっかけはメモリ半導体のマイクロン・テクノロジーがPC需要の弱さを説明会で挙げたことだ。半導体不足と言われるが、こうした供給不足の裏側には「二重発注」という落とし穴がある場合がある。供給が回復すれば当然キャンセルされる仮需がどの程度あるかは不明だし、マイクロン独自のことかもしれない。ただし、他の企業や他の半導体の種類から同様の報告があった場合はバリュエーションが高いセクターだけに要注意だ。
■今週の動き
今週は火曜日に小売売上高、水曜日に7月のFOMCの議事録、木曜日に景気先行指数が発表される。株式市場に直接というよりも長期金利経由で影響があるかもしれないが、いずれにせよ高値圏でのもみ合いだろう。20日の金曜日に先物とオプションの決済日があり、夏休み期間が終わりに近づく。早めの夏休みを終えた関係者は、翌週のジャクソンホールでの経済シンポジウム(26日~28日)に向けて備え始めるだろう。
先週、バロンズの記事から長期的な予想としてS&P500指数が6000に達する計算を紹介したが、今週のバロンズのインタビュー記事では2022年末に5000という記事が載っていた。
■ヤルデニ社長の強気の背景
インタビュー相手はヤルデニ・リサーチのエドワード・ヤルデニ社長。同氏は以前CJローレンスとかEFハットンなどの買収された証券会社やドイツ銀行などにも勤めていて、その頃東京にも来ていた。私も何回か講演会に出た記憶がある。強気で知られる同氏はS&P500指数の2023年の利益を230ドル、現在の22倍のPERが続くと予想し、230の22倍なら5000と考えている。
ここで知ってもらいたいのは、同氏がこれだけ強気になる背景だ。それはずばり生産性の向上で、生産性が向上してそれが労働者の賃上げの根拠になれば、消費も伸びて全てがハッピーというストーリーだ。生産性を向上させるのはハイテク技術の応用で、それは「オールドテクノロジー」と言われた業界にまで波及するので、それらを使いこなせる企業の株価に妙味があるという。
また、中小企業の大切さを訴えていたのにも注目した。米国人の起業家精神が米国経済の全ての背後にあるので、起業家精神を萎えさせるような政策には反対だ。
生産性の向上と起業家精神は日本(市場)に足りないものであり、米国株式市場の長期上昇の原動力だ。
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3.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】文藝春秋2021年9月号/「伊藤忠はこうして財閥に勝った」
■岡藤会長CEOの怪気炎
1974年に入社して以来長い間「万年4位」。2021年3月期に純利益、時価総額、株価の3つで「三冠」を達成したことは感慨深い。
5大商社の中で、社員数が最も少ない(単体で4,125人vs.三菱商事5,725人)=社員1人ひとりの価値が大きい。
■仕事は朝にするもの
2010年に社長に就任してからの11年間、「いかに生産性を上げるか」の1点に絞る。1番効果が大きかったのはフレックスタイム制を廃止。
2012年に史上最高益に報いる特別ボーナスとフレックスの廃止。2013年から「朝型勤務」制度を導入。午後8時以降の勤務を原則禁止する代わりに、午前5~9時に仕事をすれば、通常の1.5倍払う。
フレックス制度の廃止と朝型勤務の導入は効果てきめん。会議と書類の多い会社はあかん。上の人間は暇になると、不安になって会議をする。
「生産性をあげる」ということは、いかに社員にとって働きやすくするかということだ。だから、僕は「社員にとって1番の会社になる」という、商社3冠より高い目標を掲げている。
■川田コメント
→仕事は朝にするもの、というのは大いに納得、そして実感です。私も日経を読み始めるのは3時台です。
→「上の人間は暇になると、不安になって会議をする」。ここも本当にそう。会議は知恵を出し合うときに価値があるけどね。
→「2倍は働いて待遇は1.5倍。これだと時給は下がるんですか?」と考えてはいけない。働く時間を2倍にするのは現実的ではないので生産性を2倍にすると理解すべきですね。そうすれば時給は1.5倍になる勘定です。
■高額報酬のなにが悪い?
今では役員も社員も報酬はトップクラス。
役員は32人中19人が年収1億円超で、取締役は全員が1億円プレーヤー。その分人数は、僕が役員になった時には46人いたのを32人に減らした。財閥系はまだ50人近い。
→役員の数を絞っているのもいいですね。役員がいたずらに多いと意思決定の場ではなく論功行賞の披露宴と化すかもしれませんから。
いくら有能でも、時のトップと相性が悪く出世の目がないなら別の組織で力を発揮できるかも。その意味では人材の流動性は大切だ。私は日本の企業社会の最大の“遺物”は大企業の“終身雇用”だと思っている。
■「リスペクト」に量ってあるのか?
ところで報酬は欧米の会社と比べてまだまだ低い。しかし日本はお金を持っていても尊敬されないと感じるように社会が仕組まれている。多くの日本人の価値観で大事なのはお金の多寡ではなく「リスペクト(尊敬?というよりはやりリスペクトかな)」の量ではないですか?(ところで「リスペクト」は測れるの?)
仮に「世の中リスペクト」指数(これも川田式だ)なるものがあってそれの構成項目は例えば「社会的貢献」、「納税額」、「雇用者数」、「お金」(=資産)、「善行」等だとすれば米国では「お金」の寄与度が大きいと感じる。一方、日本ではその「お金」は出どころにもよるが、リスペクト指数を上げるにはかえってマイナスに作用しないか?
日本のリスペクトはやはり叙勲制度だと思う。そして大きな勲章を貰う人に「俺様、大富豪」って少ないよね?日本の大企業の経営者では大富豪にはなれないから、思いっきりデカい勲章がターゲットになる(どうも話が脱線するな)。
■企業イメ―ジの重要性
社員が誇りを持つためには、企業イメージも重要だ。企業広告に載せているのが、2014年に策定した「ひとりの商人、無数の使命」というコーポレートメッセージだ。「ひとりの商人、無数の使命」という一言だけで、社外の方々にも伊藤忠らしさを感じてもらえた。
→あの全面広告はインパクトありました。第66回 日経広告賞一覧(日本経済新聞)
■国と組んでビジネス?思考停止になるぞ
4年前、ある雑誌の「幸せな会社ランキング」で2位に選ばれた。国と組んで大きなビジネスばかりをやっていると、自分たちで新しいビジネスを作っていく意欲を失う。資源ビジネスがその典型だ。
→三井物産、三菱商事はある意味で国策会社だ。だから民間では取り切れないスケールの大きな案件も国のリスクでビジネスにできる。しかし国の後ろ盾を頼りに仕事をしているといつの間にか自ら切り開く意欲を失う、いちいちごもっともだ。
ところで就活候補に伊藤忠商事?もう遅いかも、次の伊藤忠を探すか、それより自分で起業するのが伊藤忠を超える選択肢のはずだ。
■伊藤忠(8001)の株価はS&P500と比べても凄い上がり方だ。
約20年の株価 伊藤忠>三菱商事>S&P500>TOPIX
【2】日経新聞 米の白人人口、昨年初の減少 人種多様化で分断加速も 8/14
米国の人種構成の多様化が一段と進んでいる。2020年の国勢調査結果によると、白人の人口が10年前に比べて2.6%減り、史上初めて減少。全人口に占める比率は58%と6割を切った。存在感が高まるヒスパニックは全人口の19%を占めた。全人口の増加分は51%がヒスパニックによるものだ。
米国勢調査局は2017年に、白人が2040年代半ばに少数派になると予測した。人種の多様化に対し民主党支持者では肯定派が否定派を上回るが、共和党支持者は否定派が多い。少数派に転落しつつある白人の焦りが、移民排斥を唱えるトランプ前大統領を誕生させたとの指摘もある。米国社会の分断が解消に向かう兆しは乏しい。
■川田コメント
この問題は米国の経済、引いては株式市場には極めて重要な問題だ。ということは日本人の資産形成にも多大な影響を与える。
東西冷戦終了後の30年ほどでグローバル化が飛躍的に進展した。その過程で相対的に競争力の劣る米国や先進国の中間層の所得が伸び悩んだ。米国ではその中間層の椅子取りゲームでも若くて教育熱心で意欲のある有色人種の人々が頑張って白人の指定席を少しずつ取り崩していった。職を失いプライドを傷つけられた白人の不満や恐怖心が希代の怪物トランプ大統領を生み出した。
しかし人口構成がこのままの方向で進展するとどうなるのか?白人の中には今の米国の地位と権力は我々白人がいてこそ、と信じて疑わない人が多いはずだ。米国で暮らしてみればすぐに分るが、米国は建国から今に至るまで白人の優位を固定する「社会のしくみ固定装置」がいたる所に張り巡らされている。
この「しくみ固定装置」も時代の変化に伴い、次の既得権益者の別の「しくみ固定装置」に置き換えられていくのか?この文脈で思い出したのが先日私のセミナーでも題材にしたマイケル・サンデル教授の「実力も運のうち 能力主義は正義か?」だ。
「実力も運のうち 能力主義は正義か?」
ハーバード大学の学生の三分の二は、所得規模で上位五分の一にあたる家庭の出身だ。にもかかわらず、彼らは判で押したように、自分が入学できたのは努力と勤勉のおかげだと言う――人種や性別、出自によらず能力の高い者が成功を手にできる「平等」な世界を、私たちは理想としてきた。しかしいま、こうした「能力主義(メリトクラシー)」がエリートを傲慢にし、「敗者」との間に未曾有の分断をもたらしている。この新たな階級社会を、真に正義にかなう共同体へと変えることはできるのか。
■私の勝手な「夢想」
さてここからは私の勝手な夢想。米国は「新世界」と言われるように、欧州のプロテスタント(もちろん白人)が既得権やしがらみから脱出し新たな希望を持って新天地に辿り着いた。彼らが英国と戦って独立を勝ち取った。
ところで、もし米国が宗教や人種のくびきを解き放って、米国の富や権力を平和で自由な競争の下で争うとしたら、50年、100年後にはどのグループが米国のパワーを握っているだろう?
■来世紀に米国を統治するのは中国人?
上述のように2020年の調査で白人は米国の58%を占める。その白人が過半を割るのは2040年代半ばと予想されている。その次のグループのヒスパニック系は現在19%で人口増への寄与度も高い。
将来の米国を統治できるだけの権力を持ちうるのは、現在の欧州出身の白人の他にはどのグループだろうか?教育熱心、勤勉、独創性と権力志向等を鑑みれば、中国人とインド人にその可能性があるかもしれない。
ただし、人口の母集団だと現状ではまだまだマイナーな集団なので現実的なハードルは高そうだ。そうは言っても底知れぬエネルギーで世界史を動かしてきたのが中国人だ。また米国のIT企業のトップや政治家を思い浮かべれば、インド人の傑出した能力の一端が伺える。ただし、そうなる前に白人はアジア人の勢力伸長を防ぐ手立てに躍起になるだろう(参照黄禍論)。
こんなことを考え始めると収拾がつかない。しかし少なくとも日本人ではないことは確かだ。この議論も今後に持ち越し。ところでこれに関連するのが今週のメルマガの「8番寄り道:「米国株式上昇の宿命」の源流を探して文明: 西洋が覇権をとれた6つの真因 単行本 – 2012/7/6ニーアル・ファーガソン (著)、仙名紀(翻訳)」だ。参考にしてほしい。
【3】日経新聞 コメ先物、展望なき終幕 価格決定、JAは主導権譲らず 8/11 [社説]農政の混迷映すコメ先物廃止 8/9
■コメ先物取引終了
大阪堂島商品取引所でのコメ先物取引が終わることになった。ニュースそのものは8月第1週に流れたが、先週もそれに対する解説記事が多かった。コメ先物の上場の是非については論じないが、やはり現在の日本では無理だったようだ。
一般的に商品先物の参加者は、最終的な買い手(消費者)と最終的な売り手(生産者)、そして現物の受け渡しにはかかわらず、反対売買で決済を行う仮需を提供する「投機家」に分類される。しかし、コメ先物の場合、買い手側は飲食業者などの企業からの参加はあったものの、売り手側からの参加がほとんどない状況だったので頓挫した。
■世界最初を掲げる市場に欠けていたもの
「堂島」には世界最初の先物市場という形容詞が付くことがあるが、当初できた江戸時代には買い手側と売り手側がきちんといたのだろう。正確な資料を読んだわけではないので想像だが、ざっくり言って、買い手側は最終的な需要家を代表した米問屋(米屋の元締め)、売り手側は農民ではなく、幕府や藩(年貢米を現金化する必要がある)に出入りする商人。それ以外に一攫千金を狙った「相場師(投機家)」もいたはずだ。
経済的な側面から見れば、需給関係で価格が決まるという、極めて教科書的な普通の状況だったはずだ。だが、米価が上昇して「米騒動」や「打ち壊し」が起きたとか、先物投機に失敗して一家離散、などの社会的な側面が取り上げられがちで、日本国内でのイメージは良くない(株価指数の先物にも波及していると思う)。それが「投機家に大切なコメの価格を決められては困る」の論拠にもなったと思われる。これに政治的な思惑が加わって米価を高値維持する仕組みを農水省自体が作っていたのでは、市場が振興するわけがない。
■米国の商品取引
米国の場合、シカゴなどで商品取引が盛んにおこなわれている。原油、小麦、大豆、家畜、木材などの多様な商品が売買されているが、これだけ盛んなのは、需要側と供給側が先物市場の役割をしっかり認識しているからだ。需要側は仕入れた原材料(商品)の価格が分かるので生産・販売計画を立てやすくなり、供給側は作った後の価格下落を気にせずに済む(特に農産物の場合)。
農産物の場合、日本と違って農家が大規模で会社経営のようになっている場合が多いから、経済的に先物を利用するメリットが得られやすい。また、価格の透明性や決済の確実性などに取引所も努力しているから、投機家も安心して参加できる。
いつも米国株式市場の優位性について書いているが、商品先物になると、米国と日本の違いは比較にならないほどだ。先物市場ではなく現物市場を作るという議論もあるようだが、米価を支配したいという気持ちが残り、需要側と供給側のどちらかでも主要参加者が欠ける市場に将来はない。
ビジネス・ブレークスルー大学学長、大前研一の日本のカラクリ
「奴隷的な技能実習制度は改め、ドイツを手本に移民を受け入れよ」
■日本の技能実習生は問題なの?
アメリカの国務省が、日本の外国人技能実習制度を問題視しているとニュースになった。アジア各国からの技能実習生は、最長5年の在留資格で約41万人が働いている。低賃金、残業代未払い、長時間労働、労災隠しなどから、国内でも「人権上の問題あり」との指摘がある。これから人口減少と労働力不足の問題がさらに深刻化する日本において、移民の受け入れを本格的に議論すべき時期を迎えている。
■移民のことならドイツを参考に
参考にすべきはドイツだ。トルコ系が最も多く、人口約8300万人のうち300万人ほどで、およそ半分がドイツ国籍を持つ。1950年代の高度経済成長期に移民を受け入れ始め、第1世代は偏見や差別から辛酸をなめた、だが、30年ほど経つとドイツで生まれ育ち大学を卒業した第2、第3世代が社会で活躍しはじめた。両国の強固な関係が生んだ最近の大きな成果は、新型コロナワクチンだ。
昨年11月、世界に先駆けて治験での有効性を発表したコロナワクチンを、ファイザーと共同開発したビオンテックは、ドイツのバイオベンチャーで設立は2008年。CEOのウグル・サヒン氏はトルコ系移民で、妻で医療開発責任者のオズレム・トゥレシ氏は2世だ。免疫学が専門の2人は大学時代に知り合い、がんワクチンの開発を進めてきた。2013年にハンガリー人の生化学者リコー・カタラン博士を上級副社長に迎えた。彼女は、今回のワクチン開発により、ノーベル賞候補の1人だ。
■川田コメント「大前研一」の名前も覚えておこう!
先週、このメルマガで話題にした堺屋太一を知らない若者が多いことが判明した。では今回の大前研一さんはどうだろう?この人の発想はアメリカンで論理的で合理的だ。この人も日本の実業界と言論界では外せない人の1人だ。
大前 研一(おおまえ けんいち1943年2月21日)
日本の経営コンサルタント、起業家。
私の世代だと知っていないとおかしい人だ。経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー代表でその著書やメディア活動で脚光を浴びた。1995年には都知事選挙にも立候補した。しかしその主義・主張は「遅れた日本人に私が道しるべを示す」的で、上から目線の物言いが鼻についたと感じた人も多かったと思う。選挙結果は散々だった。
■移民政策を行うべき
大前さんの主張の1つがこれ。「グリーンカード制(永住権)」導入を提案。母国の学校を優秀な成績で卒業した人や、きちんとした資格を持つ人を積極的に受け入れ、日本語、日本の社会習慣、法律を教育し、成績優秀者には永住と勤労を保証する」。
→こういう仕組みがないと日本は立ち行かないと分かっていても政治で阻まれる。一体他にどんなやり方があるのか?と憤慨するなかれ。
日本人はそれでいいと思っている人がマジョリティーだと私は思う。つまり「日本はゆっくり堕ちていく」のはそれでいいと。そのうち敵(外国)は日本に飽きてちょっかいかけてこなくなるだろう。この発想が底流にある。とにかく今の日本人の頭の中には‟高度成長期に米国の背中が見えるほど頑張ったけど結局何も良い事がなかった。いまはもう頑張りたくない。”だから‟何をするのも億劫”なのではないか?
■思い出したのが「佐伯啓思」
この気だるい後ろ向きの発想で思い出すのが佐伯啓思。この人を知っている人は「朝日新聞」を読んでいるひとだろうか?「ビジネスは結局は金儲けの罪悪行為でアメリカなんぞにかぶれるやつは国賊だぁ」と言ってたかどうか覚えてないけど、要はそんなことだ。こういう人の主張は会社で疲れ果てたときには気慰みになるけど、現実に戻るとなんの役にもたたんです、私には。
■大前さんの「低欲望社会」これは面白いね
これも大前さんだが「日本経済の根本的な問題は「低欲望社会」にあり、個人が1600兆円の金融資産、企業が320兆円の内部留保を持っているのに、それを全く使おうとせず、貸出金利が1%を下回っても借りる人がおらず、史上最低の1.56%の35年固定金利でも住宅ローンを申請する人が増えていないことが解決すべき問題。」
→ここ面白い。ということは、そもそも資産を増やしたくないので、私が「米国株式で資産形成」と唱えても意味ないってこと?これ以上豊かになりたいと思う人がいないということか?
そういえば先日知り合ったシニアのおばちゃんは「わたしゃ、もう75歳なの。そんなに儲けても何も欲しくないし、したくない。それに、もうどこへも行きたくない」。こういうシニア層が堆積しているので資産を増やす動機がないということか?
■日本人には日本流の資産循環
こういうシニア層、富裕層は若者や意欲のある人に出会ってもなにも感じないということか?いくら物欲、金銭欲が萎えているからといって殖やせる資産を殖やさないのは人の道に悖(もと)るのではないか?つまり、いま資産をたんまり持ってる富裕層は、それをもっと増やして次世代に継承し、意欲ある人にチャンスを与える義務があると思うのだが。
ただし、日本は相続税が半端ないので合法的に相続手続きすると、築いた資産の多くはいずれ国家に返還される。それが国家主導で他人や次世代に還元される。つまり、その国の歴史ややり方があるわけだ。大前先生は「日本は世界で“最も社会主義化した資本主義国”」だとおっしゃっている。日本には日本の流儀がある、他国の価値観で日本を判断してほしくない、というところだろう。
今回はここまで、にしといたろ。
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
「私はやっぱり日本の投信を買わない!」アップデート版
以下は2019年12月に発表したコラム「良薬は口に苦し!それでも私は日本の投信を買わない」を下敷きに直近の状況を踏まえアップデートした。私の基本的な認識は変わっていないし、日本人の資産形成に対する考えの正当性は「自信から確信」(*)にとっくに“昇格”している。
(*)先日引退した松坂投手の名言知ってる?
松坂の自信が確信に変わった日/1999・5・16 - プロ野球
前回のコラムでは以下の質問への答えの形式で進めた。
「日本には人気の投信が多くあり、特にいわゆる「独立系投信」はパフォーマンスも良好です。わざわざS&P500指数などの米国株インデックスに投資しなくても、日本の投信で十分ではないでしょうか?」
2年ほど前までは私の講演会でもこのような質問を投げかける投資家が多数いた。その都度、日本株で運用する投信の難点を指摘し、米国株式のパッシブ運用のメリットを説いてきた。その結果、多くの方に米国株式を使った正しい資産形成を実践していただけるようになったと自負している。
しかし今回、それでもなお上記の質問を頂いたので、再度独立系投信のパフォーマンスをS&P500やナスダック100と比較し、思うところをお伝えしたい。
■独立系投信の「理念に共感!」したんでしょ?
くどいけど、独立系投信は、特定の金融機関とのしがらみがないので、真に投資家のための運用に専念できることをその強みとして謳っている。独立系の代表格はさわかみ投信、ひふみ投信のレオス・キャピタルワークス、コモンズ投信、鎌倉投信などだろう。
投資家の中にはこれら投信の「理念に共感」して購入に至った人が多い。つまり投資の運用理念に賛同、感動、感銘し購入しているので、運用成績は二の次、と自分に言い聞かせている人達だ。
■「理念に共感」で資産形成できるの?
聞きたくないかもしれないし不都合な真実かもしれないが現実を直視してほしい。独立系投信の「志」成績表は下記のテーブルが示す通りだ。ウチの佐々木研究員が丁寧に数字を拾ってくれた。改めて日本の独立系投信の設立の趣旨や運用方針を見直すと“高邁な思想”と“志”が前面に出ていて、日本と日本企業への愛情があふれ出ている。
それはそれで貴いことだと思うが、この成績ではあなたの資産は増えない。資産が増えなければ豊かさが実感できなず、消費が進まない。つまりは日本企業の売り上げも振るわない。企業業績が振るわなければグローバルで競争する体力もつかない。
■「米国株式で稼いでその果実は日本に還元」の‟川田モデル”
ではどうすればいいのか?そのお金を米国株式で増やして日本社会に還元すればいいのだ。それにはS&P500指数とナスダック100指数のETFか投信が出発点だ。ついでにいうと、これでもう資産形成の正当な手順は終わっている。これほど簡単なことに「志」や「理念に共感」なんていらない。本当に金融リテラシーが進めばこれら独立系投信での資産形成が如何に非効率か理解できる。
「米国株式で稼いだおカネを日本で惜しみなく(無駄使いに非ず)消費し投資する。また、米国株式投資で築いた資産を次世代に継承していく」。これは30数年も前に大手証券の外国株式ヘッドを務めていた時からの私の持論で、一部の人はこれを「川田モデル」とも「川田式」とも呼んでいるそうだ(ほんまかいな?)。この「川田モデル」を実行することが日本再生には重要で、実践は我々の責務だと自覚しよう。川田式に照らせば日本株投信はいくら理念に共感したところで非効率で無駄が多すぎるのだ。
■なぜ日本企業ではダメか?は別の機会に
では、なぜなぜ投資対象が日本企業ではダメで米国株式なのか?日本企業が特定分野で世界一の競争力を謳歌したのは、1980年代までだろう。勿論、日本人が努力したから日本企業はグローバルで戦えたわけだが、それだけではない。地政学的な条件がそれを可能にしていた。それが1989年の東西冷戦終了を機会として、一気に潮目が変わった。日本株がピークを付けたのと冷静終了は無関係ではない。この時を境に、日本企業の優位性は一気に消し飛んだ。この「日本企業の履いていたゲタ」の歯が欠けた件については別の機会に譲る。
■テーブルの見方
■パフォーマンス、さわかみ投信を例にとれば
例えばさわかみ投信のさわかみファンドだ。この投信の設定は1999年8月だ。20年以上の運用実績があるのはこのファンドだけだ。これ以外の投信もテーブルの下段の「設定日」を見ればその運用年数が分かる。
さわかみ投信の20年間の年率複利利回りは約5.7%(弊社で推計)だ。この間に金融危機を経験している。また日本株が本格的に上昇し始めたのは2012年のアベノミクス以降だ。一方、S&P500指数とナスダック100指数の20年年率複利の数字をご覧いただきたい。S&P500指数は2007年秋から2009年3月まで最大57%下落したが、その後の上昇は皆さんご経験の通りだ。
では過去20年間の、さわかみ投信の年率5.7%とS&P500指数の7.9%の差は、どれほどの差に拡大するのか?これを簡便に理解頂くにはこのメルマガトップの「2000万円達成ペースメーカー」テーブルをご参照いただきたい。さわかみを毎月3万円積み立てれば2000万円に到達するには27年かかるがS&P500なら22年ぐらいだろうか?この5年間の差は大きい。
■パフォーマンス:3年5年10年
この期間の運用成績の差は歴然としている。とにかく短期でも中期でも、そして10年以上の長期でもS&P500指数やナスダック100指数のパフォーマンスは、コンスタントに、かつぶっちぎりで独立系投信を上回っている。また最後のテーブルでも示したが、これは100万円の投信が年率上昇スピードと経過年数で投資成果にどれくらい違いがあるかを別の方法で計測したものだ。
この要領で他の独立系投信とわれらがS&P500指数のスピードの違いを確認してほしい。「理念よりも果実」、つまり「花より団子」とはこのことだ。皆さんは「運用理念に共感」して投信を購入しているかもしれない。しかし、その得も言われぬ満足感は、あたかも催眠術による「陶酔状態」ではないか?
一方で、私はなぜこうもS&P500指数がコンスタントに上昇を続けられるのかを、覚醒状態で常時「分析」しながら「感動」している。この厳然たる事実は誰かが言わなければならない、だからあえて問題提起している。
ところでひふみ投信のパフォーマンスは比較的良好だ。藤野さんの魂がファンドに乗り移っているのだろうか。
■シャープレシオ
下記の説明では分かりにくい。運用効率を測る尺度でこの数字が高いほど運用の質が優れている、ぐらいで良いだろう。ここでは10年間のシャープレシオが記載されているが、S&P500指数とナスダック100指数が共に1.1で他は1.0以下だ。運用者不在のこれらの指数のほうが、アクティブファンドに対して絶対パフォーマンスでもシャープレシオでも優れている。この厳然たる事実に投資家はもっと目を向けるべきだ。
本来なら、こういうアクティブファンドは競争に晒されて淘汰されるのではないか思うが実際はそうではない。運用会社のマーケティングなのか運用理念に共感してパフォーマンス度外視の信奉者の存在なのかは、私は分からない。
シャープレシオ
リスク(標準偏差)1単位当たりの超過リターン(リスクゼロでも得られるリターンを上回った超過収益)を測るもので、この数値が高いほどリスクを取ったことによって得られた超過リターンが高いこと(効率よく収益が得られたこと)を意味します。異なる投資対象を比較する際に、同じリスクならどちらのリターンが高いかを考えるときに役立ちます。
このシャープ・レシオは、リスク調整後のリターンを測るものとして、投資信託の運用実績の評価などにも利用されます。
■今回の“ぼやき”はここまで
今回、「川田式」で真っ当、そしてあるべき資産形成を語るために独立系投信に登場してもらった。時として理念や思い入れ(というより、思い込み)はあなたの資産形成の邪魔にしかならない、と言いたかったからだ。
投資は応援でも共感でもなく、冷徹に、そして合理的に判断すべきだと思う。いま我々が生きている時代を冷静にそして客観的に見れば、どこに強い企業がいて、株主にいかにフェアに還元してくれるのかを考えれば自ずから答えは決まっている。
はっきり言おう。(おぉッ、また川田社長が吼えた!)日本株投信の中途半端なリターンで自己満足に陥るより、米国株式で大きく資産形成して、その果実を日本の将来のために使った方が日本社会のためだ。そう、情緒的にならずにムードに支配されずに広い視野でそして客観的に事実を数字で比較することが大事なのだ(おっと、また力みすぎた)。
■これも面白い。ここでもひふみが健闘しているね。
このテーブルの見方わかる?いまの100万円が年率X%で運用したらY年後にいくらになっているか?の「たられば計算表」だ。そして先のテーブルの独立系投信の運用成績のざっくり上昇率をあてはめてみると、資産の増加具合がイメージできるという優れモノだ。これも弊社の佐々木研究員の地道な研究成果だ。
■自分で直接増やして直接社会に還元しよう
特に、S&P500指数とナスダック100指数の長期の運用成績で、その増え方をイメージしてほしい。独立系投信の「理念に共感」したり「感動」の運用説明会に出席している暇があったら、米国株式で築いた資産の一部を、あなたが直接次世代に還元するほうがあなたの満足度は高いし、世の中のためになるのではないかと常々思っている。
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5.川田のお散歩
◇◇最近行ったお気に入りのお店◇◇
38年間通っている歯医者 医療法人社団アゼリア会 東京日本橋歯科
■同じ歯医者に38年間
私はいわゆるおばーちゃん子で、当時よくあるように子供のころは虫歯でボロボロだった。それでも社会人になるまでは、痛くなければ歯医者なんぞにはいかなかった。若い人はそうではないですか?
社会人になってからは半年に一度歯の定期健診を受けている。先日もその定期健診が終わったところだ。通い始めたのは1983年だ。留学前に歯も治そうと、先輩に紹介された歯医者に仲間と行った。その後、海外勤務があっても帰国する度に定期健診を受けていた。あれから38年経って、その医院も世代が代わり、今の院長先生に診てもらっている。
■先代の大先生は諭すように言った
①歯の病気で恐ろしいのは虫歯ではなく歯槽膿漏、それを防ぐには歯茎を1日17分間(だっけな)マッサージせよ!
②甘いものは厳禁、特に缶コーヒーやジュースの砂糖が歯を傷める。
③他の歯医者は私のように良心的な治療はしない!私の言うことを訊け!
大先生に言われて真面目に歯磨きと歯間ブラシを続けている。そのおかげもあって、私の歯は結構残っている。インプラントは3本打った。しかし私ほど歯の弱い者がとりあえず歯では困っていない。
プロスペック 歯間ブラシ2 スペアーブラシ のみ 6本入 M レッド
さて、38年もその歯医者に通ったのは、やはり大先生のお人柄かもしれない。大昔は、先制がいい加減な対応だと思ったら、ところかまわず従業員(歯科助手・歯科衛生士)にカミナリを落としていた。それを見ているこっちも、歯のマッサージは怠っちゃいけないと身が引き締まる。つまり正しい治療を受けたければ、先生との信頼関係が大事だと自覚していたからだろう。いまでは大先生に大いに感謝している。
■38年前にS&P500指数を買っていたら
ところで、もし治療を受けた1983年5月にS&P500指数の投信を買って38年間ほっておいたらどうなっていたか?ちなみに当時のドル円為替は約235円/ドルだから、この間に円は2.15倍ぐらいになった計算だ。
①配当を受け取ってその配当を再投資しなければ年率8.9%で増えて投資元本は26倍だ。当時100万円分のS&P500を買っていれば2600万円÷2.15=1200万円程度だから、12倍。
②配当再投資なら年率11.5%で増えてその元本は64倍ぐらいになっていたはず。100万円は6400万円÷2.15=3000万円程度だから30倍だ。
その場で配当を受け取るとなにか得をした気になるが、配当再投資の効果は絶大だ、これを自覚しよう。それと同様に株式を売買すると、その売却益には個人なら20%課税される。これは配当を貰うのと同じで複利効果が損なわれるので、ここも要注意だ。
ちなみに1983年5月末の日経平均は8617円で、直近は27820円なので3.2倍だ。
S&P 500 Return Calculator, with Dividend Reinvestment
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6.今後の活動情報
◇8月18日(水)午前11時 ストックボイス
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7.質問コーナー
質問(要約)
70代の主婦でネットが使えないので、大手証券で対面取引をしている。正直、私は相当な富裕層に属すると思っている。自宅は多分2億円は下らないし、家財として居間には数々の美術品が転がっている。さらに元々持っていた土地を最近売却し、まとまった資金が入ったので、それも株取引に回している。
いまの投資金額は1億円ほどで過去に3000万円ほど儲けたが、今は2000万円ほど含み損を抱えたまま。担当の営業員はいい人だが、彼の言う事は聞かず自分で投資判断している。同居する40代の息子は1年ほど前からネット証券で米国株投資を始めたが、直近では同様に2000万円ほど損をしているようだ。息子ともども何とか損を取り返したい。
回答
■やっていることは投資でも資産形成でもない
お話を聞いている限り、投資の目的はお二人とも資産形成ではなく“ファン”つまり“刺激”を求める娯楽に近いと感じました。
証券マンは職業柄、顧客のタイプを瞬時に見抜き、自分にとっての手数料極大化を本能的に察知します。例えば“この客は言わなくても勝手に売買して手数料を落としてくれる”とか、“背中を押してほしいので自分に同意を求めるタイプだ”とかです。
あなたは、この良好な投資環境でも大損していますが、それでもその証券マンを信頼しています。証券マンにとってはありがたいお客さんです。
また、息子さんは銘柄を1つしか持っていないとのこと。これもやはり額(ひたい)に汗して稼いだお金でやることではありません。ギャンブル的な手法です。
さて、私のミッションは資産形成のお手伝いですが、もし本当に資産を殖やしたいならコア・サテライト方式に速やかに移行することをお勧めします。
■大きく儲けて社会に還元してほしい
私としては、あなたのような資産家には着実に資産を殖やして社会に還元してほしいと思っています。先日お話しした際に「私あと何年生きるの?資産形成?そんなことしてもつまんない」とおっしゃっいました。日本のプチ資産家にありがちな姿勢ですね。
この考えをちょっとだけ変えて、今の資産を大きく増やして社会に還元していって欲しいですが、そうも行かないですね。ご質問の「親子ともども損を取り返したい」については「コアサテライト」に移行してサテライト銘柄で“遊ぶ!”。このマインドに移行できるかどうかだと思います。お役に立てなさそうですね。すみません。
コメント
日本のプチ富裕層は寄付とか社会還元という発想に乏しい。税制をみてもわかるが、世の中的には(これ日本語?)個人がお金で好き勝手に動かしているという風潮が広まるのを避けているのでしょう。しかし、自己の努力の果実を、次世代やチャンスが必要な人に上手く活用してほしいと思うのは人間の自然な気持ちだと思うが、皆さんいかがですか?
8番寄り道:「米国株式上昇の宿命」の源流を探して
文明: 西洋が覇権をとれた6つの真因 単行本 – 2012/7/6
ニーアル・ファーガソン(著)、 仙名紀 (翻訳)
第6章 労働
なぜ西洋がその他の地域を支配し、その逆は起こらなかったか。私が立証してきたことを、おさらいしてみよう。(中略)
① 競争 ヨーロッパ全土が、政治的に細分化され、国家形態が王政であっても共和制であっても、競争に熱心な企業がひしめいていた。
② 科学革命 17世紀の西ヨーロッパでは、数学・天文学・物理学・生物学なとの分野で画期的な進展が見られた。
③ 法の支配と代議制 まず英語圏で、社会的・政治的秩序の最善と思われるシステムが確立された。その根底には私有所有権という概念があり、資産所有者が政治的代表に選出されるようになった。
④ 現代医学 医療の面で19世紀、20世紀に目覚ましい進展が見られ、西ヨーロッパや北米の人びとによって多くの熱帯病などが制圧された。
⑤ 消費社会 産業革命の結果、大量生産をうながす技術が開発され、需要が喚起された。綿製品をはじめとして、安くていい商品が供給可能になった。
⑥ 労働倫理 西洋では大量の労働力が集約的に合理化され、貯蓄が増え、資本蓄積が継続的に進められるようになった。
西洋が大きくのし上がってきたカギは、これら6つのキラーアプリケーションだ。現代の幕開けは、日本では明治天皇の時代(1868~1912)で、このころ「その他の地域」でも、この6つのアプリケーションをダウンロードし始めた。だが、ことがスムーズに運んだわけではない。日本では西洋の文化や制度のうちどれが最も大切か判断できなかったため、ひたすらすべて真似た。洋服やヘアスタイルも模倣し、外国を植民地化する面でも追従した。だが不運なことに、帝国建設のコストがかさんで利益が上がらなくなってきた時期に重なっていた(p485)。
→英国人の著者は現在ハーバード大学の歴史学教授。英語原版は金融危機のほどなく後に執筆されているようだ。直近マックス・ウェーバーを追いかけているさなかに自宅に眠っていたこの本をめくりなおした。
原題は「CIVILIZATION The West and the Rest」で直訳なら「文明:西洋対その他」。しかし実際は「英米対その他」で我田引水、自画自賛とも思える議論の進め方だ。これが英米を跨いで活躍する歴史学者の見立てだ。この章での他の引用も『大国の興亡』のポール・ケネディや『歴史の終わり』のフランシス・フクヤマら英米の学者が多い。となると当然その見方にも一定の共通項があるはずだ。こういう歴史的文明論では必ずといっていいほど宗教の役割が論ぜられる。つまりはキリスト教でとりわけプロテスタントへの言及になる。
さて、日本を念頭に上記の6項目を比較すると、①では「和を以て貴しとなす」だろう。③は、日本はそもそも契約概念が希薄だとよく言われる。「阿吽の呼吸」とか「本音と建前」もいいと思うが。⑤は日本では「清貧」が潔い。⑥は日本にもプロテスタントにも負けない労働規範があるだろうが、金儲けのための労働は是としない?
結局は、この人のメッセージは‟覇者の雄叫び”で、その‟脂っこい”議論の進め方に胃もたれが起きそう。
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