米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.9]2021年8月2日配信
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米国株式投資の真実を伝える
川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
[Vol.9]2021年8月2日配信
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***目次***
マーケット振り返り
今週のズバリ!
今週のピックアップ記事
投資のヒント
川田のお散歩
活動情報
質問コーナー
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
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1.マーケット振り返り(7月26日~7月30日)
<主要指数>
・NYダウ -0.4%
・S&P500指数 -0.4%
・ナスダック総合指数 -1.1%
=駆け足バージョン=
企業業績に対する期待から月曜日は史上最高値を更新したものの、成長株を中心に決算発表を機に売られる銘柄も多く、週間で下落。米連邦公開市場委員会(FOMC)や4-6月期のGDP成長率の発表は、市場に対する影響は限定的だった。
=ちょっとだけ詳しく=
主要企業の業績発表がピークを迎えることから企業業績に対する期待が先行して、月曜日に3指数とも史上最高値を更新した。その後は、新型コロナウイルスのデルタ変異株による経済への影響が懸念されたほか、規制に対する懸念から急落した中国市場などの海外市場の不透明感が上値を抑えた。主要ハイテク株の業績は好調だったものの市場予想との比較ではまちまちで、株価を押し上げることはなかった。FOMCでは資産買い入れ規模の縮小(テーパリング)に関する議論は進んだものの大きな政策変更はなく、GDP成長率とともに市場に対する影響は限定的だった。週末は慎重な見通しを発表したアマゾン・ドット・コムが急落したこともあり、成長株を中心に下落した。
S&P500指数過去1年間
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2.今週のズバリ!
これだけは知っておいてほしい情報をお届けするコーナーです。
7月が終わった。S&P500指数は終値ベースの史上最高値の更新が7営業日あり、6カ月連続の上昇となる2.3%高で引けた。一言でいえば、金利低下と好調な企業業績が要因だ。
さて8月だ。サマーラリーという言葉があるくらいだから悪い月ではなく、これまでの8月の上昇確率は55.9%だ。上昇した時の上昇率は3.91%で下落した時の下落率は3.95%で、平均すると0.70%のプラスだ。
しかし、8月に続く9月と10月のパフォーマンスが悪く、この3カ月間全体の過去の平均パフォーマンスは1928年まで遡るとマイナス0.03%で、3カ月間としては年間で唯一マイナスの期間となる。従って、過去の例から考えると夏は深追いしない方が良いことになる。
さて、現状を見ると、市場はスケジュールを淡々とこなしているように見える。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策変更はなく、今後の金融政策に関して新たなヒントとなるものはなかった。GDP成長率は市場予想を下回ったが、民間最終消費が予想以上に強く、景気回復に対する懸念は起きなかった。
決算発表がピークを迎えている。GAFAMに代表される主要ハイテク株の決算はほぼ終了した。GAFAMの決算は事前の予想が期待され過ぎていたため、やはりというか、「噂で買ってニュースで売る」という展開だった。特にアマゾン・ドット・コムは7-9月期以降も減速を示唆したため、金曜日に大きく売られた。例外はグーグルの親会社のアルファベットだけだろう。
今週も決算発表が続くが、市場に対する影響力という点ではピークは過ぎたと言える。つまり、また経済指標や金融政策に対する思惑で相場が動くようになる。その点からは今週末に発表される7月の雇用統計が目先の最大のイベントだろう。現在の市場では、非農業部門就業者数が90万人の増加と予想されている。
現在の株価バリュエーションでは急騰することはなく、逆に下落につながる要因は多く挙げられる。デルタ変異株による新型コロナウイルスの感染再拡大やインフレ懸念などによる金利上昇が一例だが、事前に想定されたこうした悪材料では大きな下げにはならないのも事実だ。
つまり、余裕(手元資金)を持って夏休みを楽しみ、押し目拾いに徹するのがよいだろう。もちろん、長期投資なら目先の調整は想定内だから、毎月の積立(手元資金の活用)を休止する理由はない。
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3.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 二重苦の国内運用会社 手数料減少・資金海外へ 7/28
(少し長いけど、お付き合いください)
■京都支店営業部第一課K次長
私が大手証券の京都支店で個人営業やっていたのは遥か昔のことだ。当時も京都支店は大規模店で、営業部には5課あった。私は最初が2課で次が5課だったかな?広い営業場の真ん中に陣取るのは1課で、そこのボスがK次長だった。ちなみに他の課のヘッドの肩書きは「課長」だが彼は出世が早いので一ランク上の「次長」だった。
その日も彼はいつものように、ドスの効いた関西弁で課員に檄を飛ばしていた。彼のだみ声には例えていうとイガイガの棘が混ざっている。それが喉の奥から唾と一緒に飛んできて(空也上人の写真参照)相手の耳や頭に刺さりその棘(とげ)は抜けない。それもあって彼と長時間向き合える人は少ない。
ところでご本人の風貌は例えるなら漫画「おそ松くん」(『おそ松くん』キャラ紹介)に出てくるチビ太 だ。チビ太が年を取ったと思えばドンピシャだ。大きな手数料を上げた後絞りだすような声で吼えたあとで、“にやーっ”と笑う。と、その時に前歯に被せた金歯がキラッと光る。「奇怪な笑顔」に「金歯」と「禿げちょびん」の3点セットが今も私の脳裏に強烈に焼き付いて離れない。
フロアーに仕切りはない。K次長は自分の役回りを心得ていて、営業フロアーを睥睨(へいげい)しながら1課のみならず営業部全員に聞こえるよう、辺りを見下ろすべく爪先立ちしながらゲキを飛ばす(実はずいぶん小柄な方でした)。もちろん、それは彼が営業部の頂点に君臨するキングとしての当然の所作でもある。他の課の課長は内心苦々しく思っていてもなんせ数字のデキが違うので苦虫をかみつぶしたような顔をして押し黙っていた。
■K次長のゲキに証券経営の本質を学んだ
通常はその日のメニューをまずゲキる。次に出来の悪い課員を重点的に指導する。なぜ出来ないか、どうすればいいのかを当人のプライベートにまで立ち入り、風紀委員よろしく分析し追い込むわけだ。それが我々他の課にまで筒抜けになるから当人はたまらない。そのときの形相は今になって思うに、チビ太から、「私は無罪だ!」と日本人に怒りをぶつけたときのカルロス・ゴーンとも重なる。それくらい鬼の形相になるときがある。
数々の名指導の中でいまでも頭にこびりついているのが投信編の‟説教”だ。「君らなぁー、投信だけは(割り当てノルマ)落とすなよ。なんでワシらがこうやって毎月給料もらえると思うんや?それはな、あの誰も買いたくない投信集めるからや。株の手数料だけでは経営が不安定なんや。これ落としたら証券経営が成り立たん、分っとるやろなッー!!」。
ちなみにK次長の営業成績は常時全国トップクラスだ。本人は自分が“実質”全国トップだと言い張っていた。というのも、本店や大阪には役員から降りてくる顧客がいるが京都にいる彼は顧客は全て自分で開拓した(ことになっている)からだ。実際に営業成績は店では突出していて、関西地区でもその名声が轟いていた。営業に対する執念と気迫は凄まじい。顧客と電話中のそのハゲ頭から本当に湯気がたっていた(ように見えた)。
■K次長の思いやりは下心の裏返しか?
余談だが、私も若手では営業数字は出来た。数字で目立っていたときに声をかけていただいた。「川田君、君できるなあ。最近のXX(ある大口顧客)どうや、儲かってるか?あのな、ああやって会社の言うとおり顧客を転がす(=回転売買する)と、客はちょっとずつちょっとずつ縮んでいくんや」とニコニコしながら私にはチビ太顔で微笑んでくれた。
K次長に誉められたことを同僚に話すと「あれはな、お前をいずれ自分の課に引きずり込んで、そのうちお前が異動になったらその客を自分のモンにしようと画策しとんちゃうか」っと。入社2年目の私にはそこまで思いつかなかった。
■K次長は実はそれほど出世しなかった
ところでK次長は時々「西のK(本人)、東のXX」と自分の営業成績を誇示していた。東のXX氏は証券界でも有名なレジェンドだ。この方はどんどん出世して長く経営陣のトップとして要職を歴任した。一方でK次長は大規模支店の営業部長を1つぐらい務めたかもしれないが、あまり出世はしなかったと記憶している。多分部下の指導と営業スタイルが時代の逆風に晒されたのではないか。それに営業現場の数字と出世街道の相関関係が強くないことは私の同僚、同期で実証済みだ。ところで、私はどういうわけか彼に好かれて長く年賀状もいただいていたが、もう随分前に比較的若くして亡くなられた。
証券営業は寿命を縮めるというが、私は本当だと信じている。20代ならいざ知らず、40代になってもああやって心拍数や脈拍を上下させ、胃袋から胃液が出ない仕事ぶりはいかがなものか。夜は夜でやけ酒飲んで寝ていても顧客の損が気になる。日曜午後から胃がシュクシュクするというのが営業員に共通した症状だった。いまでもあんな営業だろうか?ちょっとだけノスタルジーを感じるね。
■K次長の遺訓
さて、前置きが長くなったが、今回のこの記事で運用会社の苦境が報じられている。私のなかではK次長の教えもあって国内投信会社の位置づけは今でも変わらない。グループ内の収益安定装置であり、社員の処遇組織としての役割が大きいはずだ。ただし、かつてのように日本株運用の投信を膨大に集めて無茶苦茶な回転商いで本社に手数料を落とすビジネスはとっくに死に絶えている。
時代は変わり昨今はアーク社に代表される海外の運用会社からアドバイスを受ける「サブアドビジネス*」が増えていてそれが収益性が圧迫しているようだ。
国内投信会社の苦境を伝えるこの記事を見ると、証券界を離れた今もK次長のチビ太顔と鬼の形相のゴーン顔のコントラストやイガイガの棘を含んだゲキを懐かしく思い出す。あなたが買おうとしている国内投信の手数料には、証券のグループ経営や雇用の安定の思いがぎっしり詰まっているのだ。
ちなみに米国の運用会社は大半が独立系だ。米国の大手証券も昔は系列投信会社を抱えていたが、収益性や利益相反の観点から分離、売却している。
■投信ビジネスの前提そのものを疑う契機に
断っておくが私は古巣の繁栄を願う気持ちは強い。ただしその前提として顧客には正直であってほしいと強く願っている。国内投信が苦境にあえぐこの記事をみて顧客にはもっと正直な商品提供があってしかるべきではないかと思っている。それはすなわち米国株式の主要指数、例えばS&P500、に連動するETFなり投信の普及だ。それではビジネスが成り立たないという声も聞こえる。だとすればビジネスの前提そのものを見直す必要があるのではないか?
こういう背景もあって、私は国内投信会社の商品とは距離をおきたがる性癖が染みついている。皆さんが投信を買う時にはよくよく注意したほうがいい。それが今の私の若い資産形成層への“ゲキ”でありK次長から学んだ
“遺訓”だ。
(*)サブアドバイザリー契約(サブアド契約)
外資系運用会社は自社ブランドの投信を設定・運用すると同時に、国内系大手アセットマネジメント会社(資産運用会社)に対してサブアド契約として海外での運用力を提供し、日系の運用会社が自社のブランドとして投信を設定しています。
【2】日経新聞 中国株、マネー流出加速 指数急落、高値の半分に ITや教育産業へ当局が統制強化 7/27
中国株から海外マネーが急速に流出しているという。中国当局の規制がIT(情報技術)プラットフォーム企業から教育産業にまで広がっているためだ。中国企業の米国預託証券(ADR)の値動きを示す米ナスダックのゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数は26日に前週末比7.0%の急落となった。これで、2月中旬に付けた高値から半値近くまで下げたことになる。
2022年に中国共産党は党大会を控えており、権力基盤を固めたい習指導部は以下の統制を強めている。
①巨大ITプラットフォーム企業の統制。一方、中小零細企業は保護する方針を鮮明化。
②教育費の高騰が少子化対策の妨げになるとの理由で教育産業を規制。
③住宅費の高騰も国民の大きな不満の要因であるとして、不動産開発会社に対する規制も強化。
以前から中国株の投資は難しいと訴えて来たが、今回はその難しさが露呈した恰好だ。株式は基本的に絶対的な所有を前提にしている。しかし米国以外の株式はその所有権のレベルが低い。中国株はその典型で株主のものであるように見えてそうではない側面もある。そうした側面のひとつとして、中国では国家の裁量で私有企業に介入してくるわけだ。
ただし、現在の中国の繁栄は企業の自由な競争に負っているわけだから、息の根を止めることはないと思う。ある意味では、投資のチャンスかもしれない。ただし、個別の巨大IT企業ではなくETF(上場投資信託)でしょう。手数料が安いですから。指数ではなく個別企業ということであれば、経費率は高いものの、当局が重視する中小型銘柄(大部分は中国国内で上場)に投資する手もある。ちなみに、今週の「バロンズ・ダイジェスト」の9番の記事では、個別ファンドを紹介している。
香港ハンセン株価指数
インベスコ・ゴールデン・ドラゴン・チャイナETF(PGJ)
インベスコ・ゴールデン・ドラゴン・チャイナETF(PGJ)NASDAQ Golden Dragon China Indexに連動。本社所在地、法人登録地または主要事業拠点が中国にある米国上場企業から、異なる時価総額の株式を保有。
【3】日経新聞 ファンドラップ、費用に注意 運用成績の比較難しく 7/24
記事では、「証券会社や銀行が顧客に代わって運用するファンドラップの残高が増えている。主要顧客は60~80代で退職金や老後資金の運用について対面で相談でき、運用をプロに任せられることに魅力を感じる人が多いようだ」と紹介している。
この商品は資金の使途や投資経験、年齢などに基づくリスク許容度から運用方針を決め、投資信託を使い、株式や債券、不動産投資信託(REIT)などで運用する。
記事では手数料が高く、事業者(証券会社・銀行)ごとの運用成績の比較が難しいことに注意したい、とある。ファンドラップの多くは運用成績を公表していない。個別契約なので運用成績を明らかにしにくい点は確かにあるが、契約者には運用の結果が知らされるものの、他社との比較はできないため、他社に乗り換えるなどの選択がしにくいとの指摘もある。
さて、このファンドラップに私は常々懐疑的だ。記事でも再三指摘しているが、手数料が高すぎる。私と同じ問題意識が底流にあると思う。記事にあるこの商品の平均的なパフォーマンスはプラス3.8%~マイナス1.9%だ。これでは資産形成にはスピードが遅すぎるし資産の保全にもならない場合もある。これはこのメルマガのトップに「2000万円達成ペースメーカー」で確認頂きたい。
この商品の本質は上記【1】でも述べた証券のグループ経営の安定と顧客対応の効率化だ。記事にあるように、2021年6月末時点の業界全体の残高が8兆円を超えたというから、年間の手数料率を1%(安いほう)としても、800億円の収入をもたらしていることになる。1.5%なら1000億円を超えるから、投信に変わるビジネスの柱にしようとするわけだ。
しかし、保有資産の少ない若い世代にはそもそも必要ない商品だし、シニア層で保守的な運用が必要ならリスク許容範囲でS&P500指数の買い持ちがベストだ。それが嫌なら米国国債を買ってほっとくのが賢明だと思う。この商品がこれだけ売れるのは何故なのだろうか?まことに本当のコトは伝わりにくいものだと思う。
【4】日経新聞 英金融当局「女性取締役4割に」 上場企業に要求へ 7/30
英国の金融当局である金融行為監督機構(FCA)は上場企業の経営にさらなる多様性確保を促す新たな指針案を公表した。以下は新指針案だ。
①メンバーの最低40%を女性(自認する人も含む)。
②会長、最高経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)、上級独立取締役のうち少なくとも1人は女性。
③取締役のうち1人以上は「非白人のエスニックマイノリティー(人種的少数派)」。
■恐れおののくオヤジ連中
この記事を読んだ後に怯え慄いている日本のオヤジ管理職が多いのではないかと思った。欧米で流行している企業行動は形を変えて、そしてその本質が骨抜きになっても日本企業で採用されるのが常だ。となると、日本でも4割は無理でも取締役の2割か3割が女性?そして日本語に少し訛りがある外人も?となる。
■このオレがなぜこの会社で生き延びているのか?
通常、オヤジ管理職は飲み会や週末ゴルフを通じて上司・部下の個人データを収集し、暗黙知の共有度合を高める。さらに、その暗黙知の相互交流(=“魂”の触れ合い)を通して自らが自社の企業文化に敬意を表し、経営陣と“価値観のすり合わせ”をする。そんな真剣勝負の場に“女性とマイノリティー?オレの社内遊泳術の秘儀がネタバレになるかもしれん”と、オヤジは疑心暗鬼で頭が一杯になる。
■そのうち嵐は過ぎ去るの?
こういう妄想がオヤジ管理職の脳裏をぐるぐる回りだすのではないか?しかし、残念ながら女性やマイノリティー活躍社会はそう簡単に日本に到来しないと思う。制度上はそうなっても、その本質が変わるまでは時間がかかるし、そのうち嵐は過ぎ去る。そして結局なにも変わらないのが今の日本だ。
どうしてそうなのか上手くいえないけど、日本人を長くやっていると感覚的にそれが理解できる。とにかく日本人は内輪同志で極限まで高めた暗黙知を使ってコミュニケーションを取りたがるものだ。その“内輪”のコミュニティーに女性やマイノリティーが入り込むのは容易ではない。
今回の英国の指針が日本でそのまま導入されるなんて期待しないほうがいい。我々ニッポンのオヤジの岩盤価値観はそう簡単には崩れない。もし貴方が意欲ある女性、マイノリティーなら、新しい価値観で事業を展開する企業に活路を見出すほうがいいのではないか。
それにつけても、日本の有名、有力企業はいつまでたっても年功序列で男子大卒一括採用の呪縛から逸脱できない。このジレンマの中で戦わないとダメなのが、日本の女性やマイノリティーだ。そんなあなたを私は応援しますよ!
【5】日経新聞 私の履歴書(7月)サハ・グループ会長 ブンヤシット・チョクワタナー氏
日経新聞の最終面に掲載されている「私の履歴書」には、明言されていないものの、「経営者」「政治家」「芸能・芸術」「学者」に加えて「外国人」というカテゴリーがあると思っている。概して「芸能・芸術」の人物や一匹狼的な創業者の「経営者」の履歴書は面白く、サラリーマン「経営者」の場合、特に後半部分が会社の宣伝のようになると読まなくなってしまう。
さて、7月の履歴書は面白かった。上記の枠では「外国人」に相当するが、数少ない東南アジアの経営者の視点で、タイでのビジネスや日本との関係(昭和30年頃から)が描かれていた。当時の日本は東南アジアからはこう見えたいたのかという点だけでも面白かった。
さて、日本企業との合弁が多いサハ・グループのブンヤシット・チョクワタナー会長だから、基本的には親日的な論調だったが、その中でも「チクリ」と感じるものが行間から垣間見られた。
20日付では「総じていえば、日本から合弁会社へ送り込まれてくる人に「創業精神」があれば、成功の確率は高まるように思う」、25日付では「(合弁のコンビニ事業である)ローソン108は東京の判断待ちが多く、もどかしく思うことがある」とある。よほど我慢できない(あるいはチャンスを逃した?)出来事があったのだろう。
29日付の中韓企業との比較の回では「いまの日本は「守り」に入っている印象が強いが、中韓は「攻め」の姿勢が鮮明だ。日本企業とは引き続き密接な関係を続けていくが、今後は中韓企業をパートナーに選ぶ場面が増えてくるかもしれない」とまで言っている。
耳の痛い話だが、正鵠を得ている。日本の会社が内輪だけで固まり、評価が社内で形成されるだけなら、どうしてもこうなるだろう。
企業がグローバルに伸びるには、本社の顔だけをうかがわず、リスクを取ってもビジネスを成功させる俊敏さが必要だ。そのためにはリスク管理と成功に対する相応の報酬という、二つの枠組みを設定する必要があるが、社内力学だけで出世した経営者には難しそうだ。
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
米国株式投資に必要なメディア情報
■朝会の舞台裏
皆さんは資産形成に必要な投資情報をどこからどうやって入手しているのだろうか。私は毎朝の「朝会」動画のために情報を探して吟味、咀嚼してからお伝えしている。これを毎日ほぼ決まった情報源から同じ手順で料理している。私の動画やPPTを利用するときの参考になるかもしれないので以下に概略を紹介する。
私の朝は早い、その代わり夜もやたら早い。とにかく午後9時前には寝床で本を読み始め、9時半には消灯するように心がけている。朝は午前2時の日経朝刊の更新前に覚醒する時もあるが、そのまま寝ずに仕事をすると昼間のパフォーマンスがガタ落ちだ。理想的には4時までぐっすり寝てそれからあとはエンジン全開と行きたいがそうはならない。
■夜明け前
いつもは3時半ごろにベッド上、仰臥でiPadMiniと格闘する。日経朝刊は1時間以上かけてじっくり読む、CNBC(英語)で個別銘柄やイベントや要人発言をチェック。その間にフィナンシャル・タイムズ(英語)にアクセスして気になるトピックを探す。
その後、気力が続けば5時半まで情報収集するが、そうでなければ目をつぶってじっとしている。5時半前には起床し、朝食を取りながら現地のCNBCテレビ、そしてTV東京の「モーグサテライト」を同時に視聴している。番組で興味深いスライドがあれば画面を写メしたりする。
■午前6時
午前6時にはPCに向かっている。そしてここから2時間は一日でもっとも集中している。お店で言えば開店前の仕込みと下準備、そして陳列の時間だ。自分のための勉強時間でもある。
最近の私の動画は2部制でメディア編も収録している。採用記事の出所は日経新聞が多い。記事は手元で扱い易いように整理しておかないと収録では使えない。そうなると、扱う記事は1本ずつ印刷しておく必要があるのだ。これが結構な手間で時間と印刷機のトナー代が嵩むようになった。
■午前7時台
6時半ごろだとまだまだ余裕ぶっこいてるが、7時過ぎからだんだん焦りだす。そして7時半になると「まだなんも出来取らんじゃない」と不安が募る。
■午前8時台
8時にはズームを立ち上げて予行演習を始めないと後が詰まって間に合わない。ここまで来ると、どれを無視、手抜き、そして諦めるかの選択だ。いくら遅くても8時過ぎには予行演習開始で、15分には本番スタートせねば。
■収録本番
本番前に録画状態チェック。収録したつもりが音が入ってなかった、画像が乱れている、気が付いたらTシャツのままだったと、失敗は数々ある。最初の数秒でトチッたのならやり直すがそれ以降はよほどのことがない限りはそのままだ。少々不適切な箇所があってもそのまま突っ走る。しかも毎日のことで時間もタイトなので編集の時間と手間はかけられない。
本番スタートがざっくり8時15分。収録終了は8時45分がメド。で9時ごろには担当の黒住君に渡す。午前3時半から6時間経過している。この時点で一日は半分以上終わった気になるなあ。
ということで以下が私の情報源です。
*日経 午前2時に朝刊が更新(有料、楽天証券なら読めるらしい) 朝刊・夕刊 楽天証券を使って、日経新聞を無料で読む裏ワザ
*CNBC 米国でも一番ポピュラーなサイトでしょう
Markets: Indexes, Bonds, Forex, Key Commodities, ETFs
*株価や指標を自分のノートに記帳するとき 世界の株価
*大和証券ウォール街速報 30年以上前に私が作成 ウォール街速報
*ロイタ―・ブルームバーグ
*WSJ (ウォール・ストリート・ジャーナル 英語版・日本語版)
朝会が終わってからチェックすることが多い
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 -ニュース-ビジネス-海外-経済-金融 - WSJ日本版-jp.wsj.com - Wsj.com
*フィナンシャルタイムズ(英語版 有料) https://www.ft.com/
*マーケット・ウォッチ・ドット・コム(英語のみ) 有料記事への誘導が増えたので最近はアクセス少ない US Markets
*アドバイザー・パースペクティブ(英語のみ) 機関投資家向けだが有益なチャート、図表が満載 Advisor Perspectives
*モトリーフール(日本語版)個別銘柄の情報満載 The Motley Fool Japan | モトリーフール・ジャパン
*スポーツサイト 仕事の合間にもチェックして気分を和らげます
Official Los Angeles Angels Website
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5.川田のお散歩
◇◇最近行ったお気に入りのお店◇◇
テレビ番組出演遍歴
今週水曜日はストックボイス「東京マーケットワイド」ゲストコーナーに出演する。相方は大和証券時代からの知り合いの鈴木一之さんだろう。ところで、この番組に呼んで貰ってもう何年になるだろう。
最初は“WORLD MARKETS”と題した夜10時の番組に、週に一度出演していた。2014年の秋ごろからの番組原稿が手元にあるので、その頃からだろう。
これは朝型の私には時間的に結構きつい。それで2018年頃に今の昼の番組に変えてもらった。
それと日経CNBCも最初は夜の番組だった。NY時代から知り合いの守田さんに誘ってもらった。でも、これもきつくて一時中断し、昼の番組に変えてもらったのが2018年頃からだ。直居さんにはそれ以来お世話になっているが、次回8月10日(火)は露口アンカーらしい。この人とは初めてご一緒する。日経CNBC出演者一覧
ところで、私が最初に大手メディアに登場したのは1980年代のNY駐在時代だ。最初はラジオの電話インタビュー番組だった。そのうちに日本でもNYマーケットへの関心が高まりNHKの6時台の朝のニュース番組に中継で登場した。今で言えば東京12チャンネルの朝の経済番組「モーニングサテライト」の現地中継のようなスタイルだ。当時の四大証券の米国株式担当が週間単位で輪番で担当した。なんせNHKなので、全国で3000万人が視聴すると聞いたことがある。そのためかどうか分からないが、東京出張の際に全然見知らぬ人から親しげに声をかけられたこともある。
準備も大変で日中から準備して午後4時に取引が終わると原稿片手にNYSE(NY証券取引所)に駆けつける。厳格な警備はあったが、それでもフロアー内に入れた。今となってはいい思い出だ。
香港駐在でも現地のテレビ経済番組に出演したことがある。トピックはてっきりアジア株式かと思いきや、ディレクターは日本株式の話題だと思っていたみたい。番組中、やり取りがなんかチグハグだったけどもう後の祭りだ。
その後長らくメディアとの付き合いは途絶えていたが、前述のように復活したのは2014年ごろだ。そこから今に至る、だ。人前で話すのは誰しも緊張すると思うが、その緊張感を楽しみたいと思っている。ただし、そのためには入念な準備が必要だ。ボキャブラリーの選び方も難しいね。
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6.今後の活動情報
◇8月4日(水)午前11時 ストックボイス
◇8月10日(火)午前10時15分 日経CNBC
◇8月18日(水)午前11時 ストックボイス
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7.質問コーナー
質問(要約)
現在、以下の様なポートフォリオになっています。
1. コア部分:全体の70% 内訳は①VTI:70%、②QQQ:30%
2. サテライト部分:全体の30% 個別株でAAPL、CRWD、OKTA、Z、U
個人的には以下のような戦略を考えていますが、今後予想されている金利上昇時にとるべきコアとサテライトの具体的な対応方法をご教示ください。
1. コア:基本的にはどのような状況になってもホールドする。資金に余裕があれば安値のところで買い増しをする。
2. サテライト:以下の4銘柄(CRWD、OKTA、ZM、U)は上場してから一度も決算をミスしていません(=EPS、売り上げ、ガイダンスがすべてコンセンサス予想を上回る)。
これらの4銘柄は金利動向にかかわらず決算をミスした場合はすべて売却し、金利上昇時には4銘柄とも75%売却。
AAPLは1回の決算ミスならホールド、2回連続であれば売却、金利上昇時には50%売却する。
*アップル(AAPL):これは皆さんご存知ですよね?
*クラウドストライク・ホールディングス(CRWD):サイバーセキュリティテクノロジー。SaaSサブスクリプションベースでサービスを提供。
*オクタ(OKTA):クラウド管理サービス企業。企業向けにID管理システムを提供し、様々な企業を統合化アプリに接続する。
*ジロー(Z):不動産情報サイトZillow.comの運営会社。ウェブサイトやモバイルアプリZillowを通して、サイト・アプリ利用者に不動産価格をはじめ、地元の不動産業者、賃貸情報等の不動産関連の役立つ情報を提供し、両者を繋ぐ場を提供。
ユニティー(U):双方向のリアルタイム3Dコンテンツの制作・運用のためのプラットフォームを開発するソフトウエア企業。
回答
我々は個別銘柄の売買についてアドバイスはしません。また金利が上昇するかどうかも定かではありません。それをご了解の上で我々コンサルタント3名のご意見をご紹介させていただきます。
コンサルタントA
<コア>⇒景気悪化、株価下落などどのような状況でも、何れ回復を信じ切れるのであれば、ホールドでいいと思います。下落は買い増しのチャンスだとも思います。
<サテライト>⇒株価は常に先を見て現在の価格が形成されていると感じるので、先のガイダンスをショートしてきたり、赤字銘柄は今後の金利水準を見ながら、売るかホールドかをご判断するのはいかがでしょうか?
コンサルタントB
金利上昇と言っても、相場がどの局面にいるのかを把握することが大切です。業績相場への移行期は株価はブレると思いますが、業績相場に移行してしまえば、金利が上昇しながら株式市場も上がることになるでしょう。
<コア>⇒仰る方針で良いと思います。
<サテライト>⇒個々の個別銘柄について、どのような目的・理由で投資しているのでしょうか?もし長期保有に足る銘柄だと考えているのであれば、決算がコンセンサスを下回り株価が下落した場合、それは絶好の買い場になると思います。一方で、売買目的(トレーディング)で保有されているのであれば、予め決めている売り方針に従えばよいと思います。
川田
①金利と株価
金利が上がれば株価は下がる?これはケースバイケースです。
歴史的には金利上昇=景気良好=企業業績好調→株価上昇が多いです。
②「決算をミスする」
どこかの YouTuber が言っていそうなアドバイスです。決算をミスしようがしまいが、その他の要因でも下がる時は下がります。
特にお手持ちの銘柄が異常に割高な銘柄です。それを了解したうえでの購入決定された銘柄のはずです。
「決算をミスする」を絶対の条件としないほうがいいと思います。
③ネットやメディアの評論家、You tuber(私を含めて) のアドバイス、格言に絶対の真理はありません。
ナスダック100対AAPL、CRWD、OKTA、Z、U 相対チャート過去1年
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