米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.34]2022年2月14日配信
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米国株式投資の真実を伝える
川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
[Vol.34]2022年2月14日配信
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***目次***
マーケット振り返り
今週のピックアップ記事
【米政局とインフレの因縁 未知なる利上げ時代への覚悟】【水際措置を緩和し「鎖国」に終止符を(社説)】
川田の気になる銘柄
投資のヒント
超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
川田のお散歩
活動情報
質問コーナー
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
皆様が資産形成で成功するために一緒に学び啓発し合うオンラインサロンです。 大好評のメルマガ「メディアで鍛える米国株式講座」だけでは伝えきれない内容や、 米国株式投資の魅力を体感できる会員向けのセミナーを提供します。
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1.マーケット振り返り(2月7日~2月11日)
<主要指数>
・NYダウ -0.9%
・S&P500指数 -1.8%
・ナスダック総合指数 -2.2%
=駆け足バージョン=
週前半は金利上昇が落ち着いて買い戻しが先行しましたが、1月の消費者物価指数が約40年ぶりの高水準で長期金利が上昇したことから木曜日に急落し、金曜日はロシアによるウクライナ侵攻が懸念されて下落しました。
=ちょっとだけ詳しく=
週前半は主要経済指標の発表はなかったものの、10年国債の入札の好調などから金利上昇が落ち着いたため、買い戻しの動きを交えて堅調に推移しました。
しかし、木曜日に発表された1月の消費者物価(CPI)は前年比7.5%と1982年2月以来の高い上昇率となりました。CPIの発表や米連邦準備制度理事会(FRB)高官の発言を受けて金融引き締めが加速するとの観測が広がり、金利先物市場では3月の0.5%の利上げもほぼ織り込まれました。
長期金利が2019年8月以降で初めて2%を上回ったことも嫌気されて、株式市場は成長株を中心に急落しました。金曜日はロシアによるウクライナへの侵攻という地政学的な懸念が大きくなり、リスク回避姿勢から幅広く売られました。
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2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 米政局とインフレの因縁 未知なる利上げ時代への覚悟 2/11
物価をどう上げるかに長年苦闘してきた世界の中央銀行が、逆方向の試練に直面している。米国を40年ぶりの物価上昇が襲い、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は3月の政策金利引き上げを強く示唆。
■選挙前に利上げした94年と04年はどうなったか
90年代以降に米国の重要選挙前に近接してFRBの利上げがあったのは94年と04年の2回だけ。バイデン政権が繰り返したくないのは94年、同じ民主党のクリントン政権の前例。
グリーンスパン氏が率いるFRBは、94年2月から8月にかけてインフレ圧力の抑制へ利上げを続けた。11月、政権1期目で最初の中間選挙で、民主党は上下両院の過半数をともに共和党に明け渡した。
04年は違う展開。ブッシュ(43代)大統領の再選がかかる大統領選挙の年だったが、FRBは6月、8月、9月と連続利上げを実施した。それでもブッシュ氏は勝利を収めた。
94年、04年の利上げ局面とも、消費者物価の上昇率は2~3%台だった。いまバイデン大統領が直面する7%の物価上昇は格段に強いインフレ圧力だ。
■インフレという魔物、どう制御
バイデン政権にとってしつこいインフレは確かに重荷だ。中間選挙では物価圧力の封じ込めに伴う逆風を受ける展開が引き続き有力だろう。
【川田コメント】
中間選挙を11月に控え、バイデン政権は難局に立たされつつある。下記のテーブルは1990年以降の選挙と利上げの関係をピックアップしている。
1950年代以降のFFレート、レート上昇局面は赤で囲った
FFレート引き上げとその後の株価
FFレートを高めに誘導したあと、しばらくの間は株式市場にマイナスの影響がある。今回の利上げは3月が確実で、しかも従来予想されていた0.25%ではなく0.5%の確率が高まっている。1994年、2004年のケースも確認して欲しい。
金利上昇局面とS&P500指数の動き
【2】日経新聞 水際措置を緩和し「鎖国」に終止符を(社説)2/10
海外との人の往来の制約は、日本の魅力と国力を大きく毀損する。コロナ対策としても合理性に欠ける「鎖国政策」を見直すときだ。
【川田コメント】
日経新聞は主要紙の中では「鎖国政策」に批判的な記事を載せるようになっていた。先週のメルマガでは英国のFinancial Timesの翻訳記事を紹介したが、やっと「社説」で論調をはっきりさせた。
社説に載せるということは重い意味を持つ。つまり、日本の経済界は、さすがに現状はまずいと判断しているのではないだろうか。ただし、社会(世間)の反応は別かもしれない。皆さんの反応も半々かもしれないが、政治(と行政)がどのように対応していくか、注目すべき事柄だ。
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3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
今回は再び、米国の投資週刊誌であるバロンズが1月に特集した「ラウンドテーブル」の中から取り上げます。この「ラウンドテーブル」は、10人の金融市場のエキスパートが金融市場のみならず経済・社会情勢を検討した後に推奨銘柄を披露する、米国の投資家の注目が高い企画です。
今週の銘柄
アドビ <ティッカー:ADBE> Adobe Inc.
概要
画像編集用ソフトウエア企業の大手です。「PDF」や閲覧用の「Acrobat Reader」は同社の製品で、印刷物のデザインや映像の編集/制作などを支援する「Photoshop」や「Illustrator」などの数多くのソフトウエアやクラウド環境も提供しています。
同社の魅力
同社は、世界で最も優れたデジタルメディアのソフトウエア資産を保有しており、業務のカテゴリーを「Creative Cloud」、「Document Cloud」、「Experience Cloud」の3つに分け、それぞれ、創造性の解放、書類の生産性向上、デジタル業務の加速を目標にしています。
アドビの業務カテゴリー
同社の魅力を簡単にまとめると、アドビにとっての市場が急速に拡大していることです。社会のクラウド化やデジタル化が進んだ結果、デジタルメディアやデジタル文書作成は単なる一時的流行ではなくなっており、多くの企業にとって、マーケティングやテクノロジーに費やす費用の中で、必要不可欠で代替不能になっているからです。
同社はその中で、多くのデジタルメディア制作分野で独占的なシェアを保っています。その結果が、ソフトウエアライセンスにおける売上高(特にサブスクリプション形式の売上高)の増加(図1)、利益率の上昇(図2)、キャッシュフローの増加(図3)につながっています。そして、その利益を、自社株買いを通じて株主に還元しています(図4)。
そして、この地位を守るために積極的に研究開発を行うほか、有力な技術を持つ企業の買収も行っています。
(図1、売上高の増加=サブスクリプション(青色部分)は年率24%で増加)
(図2、売上高の増加に伴って利益率が上昇)
(図3、営業キャッシュフローは年率22%で増加)
(図4、自社株買いの金額拡大とともに株式数は減少)
リスク
新興のソフトウエア会社による新たなソフトウエアの発売で、シェアが一時的に低下する可能性はあります。また、買収費用やマーケティング費用が一時的にかさむことも考えられます。この点に投資家の注目が集まった場合、バリュエーション面で割高なことから、一時的に売られるリスクは考えられます。それでも、市場全体の拡大が速く、圧倒的なシェアを持つ製品が多いため、売上高や利益の長期的な成長性に問題はないと思われます。
ADBEの基本データ(出所:会社データ、Yahoo! Finance)
(2月11日現在)
株価 473.97ドル
時価総額 2333億ドル
総収入 157.9億ドル
予想PER 35.59倍
実績利回り -----
本社:カリフォルニア州サンノゼ
上場:1986年8月
株価チャート 5年
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
ダウ工業株30種平均とS&P500指数の相対パフォーマンス
米国を代表する株価指数として一番最初に思い浮かぶのは、ダウ工業株30種平均(NYダウ)でしょう。ただし、私は投資対象として、コア・サテライトのコア部分にはNYダウよりS&P500指数を推奨しています。
今回、私が編集する「バロンズ・ダイジェスト」の2月6日号に、NYダウとS&P500指数のパフォーマンス比較と直近の構成銘柄に関する記事がありました。
記事の主旨は
NYダウのパフォーマンスはここ数年はS&P500指数に出遅れている。それには前回2020年8月の入れ替え銘柄が影響しているかもしれない。
また直近のアルファベット<GOOGL>の株式分割発表(1株を20株に分割)は次回の構成銘柄入れ替えを睨んだ動きとの観測がある。
他の新規加入の候補銘柄は?(「バロンズ・ダイジェスト Weekly 今週の予定 Why Alphabet, Nvidia, and Others Belong in the Dow Jones Industrials. 2/6号」)
ダウ工業株30種平均は優良大型株指数
S&P500指数がここ数年優位を保っているのは、プラットフォーマーに代表される少数の超大型ハイテク株がパフォーマンスを牽引していることも大きな理由でしょう。
さて、両指数とも大型株で構成されています。NYダウは超有名な米国企業30社で構成され、時価総額は最小のトラベラーズでも4兆円ほどあります。30社の時価総額の合計は1200兆円ほどですから、全米の株式時価総額約4500兆円の約4分の1を30社で占有します。
ダウ工業株30種平均 時価総額2021年12月時点
「NYダウ(ダウ平均)」ダウ工業株30種を解説 日本株への影響は?構成銘柄や時系列チャートも紹介 - 経済・ビジネス|QUICK Money
S&P500指数も大型銘柄で構成され、各銘柄の時価総額は最低でも1兆円ほどはあります。構成銘柄は500銘柄で、その時価総額の合計は米国株式市場全体の8割近くを占めます。
NYダウの構成銘柄の変更
NYダウの構成銘柄は、米国の主力産業の変化に合わせて、数年に一度見直し・入れ替えが行われています。具体的な数値による採用条件はありませんが、次のような観点から判断されています。
NYダウ 銘柄採用の観点
・「企業としての名声」
・「持続的な成⻑実績」
・「投資家の関⼼度合い」
・「セクターを代表する企業であること」
・「米国で設立され、米国に本社を置いていること」
ところで同指数は各銘柄の株価を平均(株価加重)したもので、30の構成銘柄の株価変動が反映されます。これは時価総額で加重平均するS&P500指数などとは異なります。
高株価の銘柄ほど指数への寄与度が大きくなりますので医療保険会社ユナイテッドヘルス・グループ<UNH>、ホームセンターチェーン大手のホーム・デポ<HD>、マイクロソフト<MSFT>、マクドナルド<MCD>などで同指数のウエートの3分の1を占めています。
ダウ工業株30種平均構成銘柄の指数採用日
NYダウとS&P500指数の相対パフォーマンス
以下、S&P500指数をダウ工業株30種平均で割って相対パフォーマンスをチャート化しました。ずいぶんと長い期間のチャートが取れました。
大まかに言って、戦後から70年代のインフレ期が終了する80年代初頭まではS&P500指数が優位で、インフレ終息後の81年ごろから金融危機まではNYダウが優位です。ただしITバブルが燃え盛った90年代後半はS&P500指数が勝っています。そして金融危機以降は概ねS&P500指数が再度優位です。
さて、直近でNYダウの銘柄が入れ替えられたのは2020年8月です。以下のテーブルにある3銘柄が入れ替えられました。
2020年8月に3銘柄入れ替え
前回の入れ替え以降では、除外された銘柄の株価パフォーマンスが良好で新規加入の銘柄が指数の足を引っ張ったのです。
エクソンモービル:株価は2倍
セールスフォース:株価は15%下落
ファイザー:新型コロナワクチンの承認直前に除外されたが株価は40%上昇。
入替銘柄の2020年8月以降の株価パフォーマンス
除外銘柄のパフォーマンスが良好で新規加入は冴えない。
2020年8月入れ替え銘柄の株価チャート5年間
セールスフォース以外のパフォーマンスはそれほどでもない。
市場で噂されているアルファベット以外のNYダウ採用候補
市場ではアルファベット以外の入れ替え候補銘柄は
画像処理半導体(GPU)大手エヌビディア<NVDA>
メタ(旧フェイスブック)<FB>
投資会社バークシャー・ハサウェイ<BRKA><BRKB>
再生可能エネルギー大手のネクステラ・エナジー<NEE>
等。
除外候補
またこれに伴い除外候補となっているのが
損害保険持ち株会社トラベラーズ<TRV>
化学品大手のダウ<DOW>
あたり。
NYダウ採用と除外の候補銘柄 チャート過去1年間
NYダウ採用と除外の候補銘柄 チャート過去5年間
【まとめ】
ダウ工業株30種平均とS&P500指数の相対パフォーマンスは超長期ではずいぶん拮抗しています。ただし、両者は10年単位ならそれなりに乖離幅があります。
それでも、30銘柄のNYダウとS&P500指数がこれだけ長期間でもパフォーマンスにそれほど乖離が見られない事には、何か不思議な感じがします。
皆さんの疑問は
①NYダウに採用されそうな候補銘柄を事前に仕込めば儲かるのか?
②コア・サテライトのコアはNYダウでもいいのか?
①は「バロンズ・ダイジェスト」などで時々解説されますが、銘柄に組み入れるまでにある程度は人気を集めますが、それが株価にダイレクトに反応するとは言い切れません。
②なぜ30銘柄でS&P500指数とそれほどパフォーマンスがズレないのか不思議ですが、それは結果論でしょう。私はS&P500指数を選択すべきだと思います。
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5. 超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
IFAに特化した営業支援を行っている市川宏さんが、超富裕層が活用している投資戦略を、皆様に簡単にお伝えするコーナーです。
第一回の今回は、超富裕層が活用している「プライベート投資戦略」の概要、メリット・デメリットをお伝えします。
「プライベート投資戦略」とは
下記の4つの投資商品を活用した資産運用のことです。プライベート型商品とは、富裕層やプロの投資家向けに作られている商品です。つまり、プライベート=一般的にあまり公開されていない金融商品のことです。
プライベート・エクイティとは、未公開株式のことで、広義には株式の未公開会社(または事業)に関する投資すべてを含む概念のことをいいます。
ストラクチャード・ボンドとは、オーダーメイドで組成する債券のことで、フルオーダーの仕組債や特定の事業や指標に連動する債券のことです。
プライベート・ファンドとは、私募ファンドのことで、投資家から資金を募って運用する事業のなかで、資金を募る対象者が狭く限定されているものをいいます。
プライベート・リートとは、私募リートのことで、投信法に基づく、非上場の不動産投資信託(REIT)がそれにあたります。
超富裕層は、これらの金融商品を上手に組み合わせて資産運用しています。
4つの柱
プライベート投資戦略のメリット
1. 利回りが高い
プライベート投資商品は、一般には公開されていない私募商品です。一般的に公開していないということは広告やチラシ、ポスターなどの販促も行っていません。そのため、無駄なコストを省けるので比較的目標利回りが高く設定されています。S&P500指数の長期のリターンは年7%程度が実績ですが、プライベート投資では年率10〜20%程度を目標とする商品が多く存在します。
2. 相関性が低い
株式相場や為替相場など、金融商品は金融市場の影響を受けます。プライベート投資も金融市場の影響は受けますが、株式市場との相関性は低くなっています。例えば、株式を組み込んだ公募投資信託は、分散投資をしているためリスクが低いとよく喧伝されていますが、株式相場全体が下がった時はやはり下がります。プライベート投資は、富裕層や年金などの機関投資家が長期的に資産を守れるよう、相場全体の動きに左右されづらい商品設計になっています。
3. 希少性がある
こちらは後述するデメリットでも共通ですが、一般に公開されていない商品ということは誰でも買えるわけではありません。かなり枠に限りがあります。例えば、プライベート・エクイティの買える枠があったとしても、上場前の株は数も少なく、開放される枠は多くても数億円程度が普通です。基本的に早い者勝ちであり、販売業者との関係が重要になるので、何人かが先に応募すればその募集は終了することになります。つまり希少性があることで、その分有利な運用が期待できます。
プライベート投資戦略のデメリット
1. いつでも買えるわけではない
希少性があるというメリットを言い換えれば、買いたい時に買えないというデメリットにもなります。特に金額の小さなプライベート・エクイティは、募集が始まればすぐに埋まることが多いし、出てくるタイミングもわかりません。ある時急に出てきて即日完売ということもよくあります。それだけこういった商品を待ち構えてる投資家も多いということです。
2. 流動性が低い
上場株や公募投資信託などは、市場が開いていればいつでも売却し、換金することができますが、プライベート型商品はそうではありません。ストラクチャード・ボンドは基本的に設定された満期が来るまでは売れませんし、プライベート・エクイティはその株が上場するかバイアウトされるまで、長い場合は数年間換金できないということもあります。すぐに使う可能性のある資金で投資するのは控えましょう。
3. ハイリスク型商品もある
プロ投資家の中にはかなりリスクを取って投資をする人がいます。その場合、ポートフォリオの大半は安定したものに投資をして、残り数%で利回り享受のためにハイリスク投資をするというケースですが、一部のプライベート商品にはそういった運用向けの高リスク型商品も存在します。大きく儲かることもあれば大きく損することもあります。
次回以降は、戦略の元になっている「エンダウメント運用」や、それぞれの投資商品について詳しく紹介していこうと思います。
プライベート投資戦略のメリット・デメリット
【市川宏】
株式会社Winviser代表取締役。SMBC日興証券にて茨城、福岡、東京の各支店にて資産運用コンサルティングに従事した後、超富裕層向け金融商品のマーケティングを行う。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)業者に転籍し、超富裕層の資産運用のアドバイスを行った後、日本の金融業界の発展のためIFAに特化した支援会社を設立。
現在は、IFAを支援する傍ら、自身の経験を元に個人投資家に資産運用のサードオピニオンを行っている。
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6.川田のお散歩
◇◇最近行ったお店、映画、美術館、書籍編◇◇
(お休み)
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新連載「これでばっちり!米国株式を使った資産形成術のすべて」
はじめに
資産形成に必要な基本的な内容を網羅したシリーズを連載しています。全体の構成は以下のように考えています。
我々はどのような時代に生きているのか?全2回
自立した日本人と自立に欠かせない資産形成 全3回
株式市場は米国にしかないの? 全4回
日米株式文化の違い
知っておくべき米国市場の特徴
おすすめの投資戦略~コア・サテライト投資~
コア部分の投資戦略
サテライト部分の投資戦略
何を買ったら良いのか
情報源と投資
5.知っておくべき米国市場の特徴
S&P500指数の長期的な巡航速度と今後の中期的見通し
前回に引き続き、弊社のウェブサイトの「アメリカ株式40年投資」シリーズでおなじみの大倉真さんの寄稿を基に、米国株の長期的な巡航速度と中期見通しを考察します。
①S&P500指数の長期的な巡航速度
図表1は、1970年12月から2021年12月までのS&P500指数の51年間の推移です(縦軸は対数表示、データは配当を含まない価格指数の月末値)。
この期間S&P500指数は年率8%程度のペースで上昇していることが分かります。ここに配当を含めれば8%にさらに2%程度を上乗せして考えればよいでしょう。
また、S&P500指数は8%のトレンド線を中心として概ね上下30%のレンジ(チャンネル)の内側で推移してきたことが分かります。このレンジから大きく外れたのは1990年代後半のドットコムバブルの期間くらいです。
51年間のデータを対数グラフで見ているので、なだらかな上昇トレンドのように見えるかもしれませんが、1970年代のオイルショックや、2000年からのドットコムバブルの崩壊、さらには2008年のリーマンショックなどは、直前のピークから40%以上も下落(ドローダウン)していることを忘れてはいけません。
図表1 S&P500指数の過去51年間のトレンド
②リーマンショック以降に焦点を当てると…
次に図表2でリーマンショックの大底(月末ベースでは2009年2月)から2021年12月末までの約13年間について見てみましょう。過去51年間の上昇ペースが年率約8%(左図)であったのに対し、直近約13年間の上昇率は年率約12%(右図)とかなり速くなっていることが分かります。その結果、S&P500指数は2021年12月時点で、長期的なチャンネルのほぼ上限に達しています。
背景には、S&P500指数採用企業のEPS(1株当たり純利益)の成長に加え、バリュエーション(株価収益率=PER)が大きく切り上がっている(2009年2月に10倍台まで下落していたPERが、2021年12月は約21倍まで上昇)ことがあると思います。株価はPERとEPSの掛け算で求められますが、同期間においてはこれら2つの要素が同時に株価にプラスに働いてきたのです。
図表2 S&P500指数の過去13年間のトレンド
③過度な期待はできないが悲観的になる必要はない
では、今後はどのように考えればよいでしょうか。アメリカ経済の成長が続く限り、EPSの長期的な上昇は続くと考えてよいでしょう。ちなみに今年のS&P500指数のEPS成長率は9%程度と予想されています。コロナ禍の収束に伴い、サプライチェーンが修復され、また蓄積されたペントアップディマンド(繰越需要)が発現すれば、当面持続的な利益成長が期待できるのではないでしょうか。
一方、PERについては、アメリカの中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の正常化を進める過程においては、これ以上のPERの拡大は期待できないと考えるのが自然でしょう。むしろ、金融政策の正常化に伴い長期金利が上昇すると考えるのであれば、PERは今後徐々に縮小過程をたどってもおかしくありません。
リーマンショック以降、特に最近の数年について言うと、アメリカ株式市場は非常に好調に推移してきました。しかし、年率12%のリターンと言うのは本当に出来過ぎであり、おそらく、これからは中期的に8%程度の巡航速度でも上出来なのかもしれません。
企業収益の成長が続く限り、アメリカ株に対して悲観的になる必要はないと思います。むしろ楽観的でないとアメリカ株式市場にとどまることは難しいかもしれません。しかし、バリュエーションの修正を考えると、リターンに関しては過度な期待はせず、保守的な姿勢で臨むのがよいように思います。
要は、アメリカ株式市場の上昇は続くが、上昇スピードは減速するということです。最終的にどうなるかは神のみぞ知る所ですが、市場には保守的姿勢で臨み、「もし市場が上振れすればラッキー」くらいに考えるのがちょうどよいのではないでしょうか。
【大倉真】
愛媛県出身。1984年大阪大学経済学部卒業。2005年埼玉大学大学院経済科学研究科より博士(経済学)。シティバンク、エヌ・エイ、シティトラスト信託銀行、 ソシエテジェネラル信託銀行(現SMBC信託銀行)を経て2017年、京都・東山で投資会社EagleCapital株式会社を設立。年金・公的資金など機関投資家に加え、プライベートバンクで富裕層向けの資産運用にも従事。CFA協会認定証券アナリスト。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
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7.今後の活動情報
◇2月15日(火)20時~マネックス証券主催 S&P500の魅力を解説!米国経済を味方につける資産形成術2022
◇2月22日(火)8時15分前後(電話インタビュー)日経CNBC
◇3月2日(水)11時~ストックボイス
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8.質問コーナー
(お休み)
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★ご質問は、以下の【質問ルール】をご一読後、
info@kawata-magazine.comまでお願いします。
【 質問ルール 】
◆全ての質問への回答はいたしかねます。あらかじめご了承ください。
◆いただいた質問は、当社サイト、YouTube動画等のSNS・書籍等に、個人を特定できない形で掲載する可能性があります。
◆ご購読が確認できない方の質問には回答いたしません。
◆明らかな広告・宣伝とみなされる部分は割愛する対象となります。
◆未購読にもかかわらず悪質な質問を投稿された方には、然るべき措置をとらせていただきます。
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◆当社は、本メールマガジンにて提供する情報にて、株式、債券、ファンド、ETF等の有価証券、およびセクター等に関する売買等の推奨はしておりません。また、投資判断はメールマガジン購読者(以下、会員)の責任にて行うものであり、当社は一切の保障責任を負わないものとします。
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■ 発行元:株式会社日比谷テクノロジー・ファイナンス
■ 川田重信のありがとうアメリカ株式
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