米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.25]2021年12月6日配信
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***目次***
マーケット振り返り
今週のズバリ!
今週のピックアップ記事
投資のヒント
オンラインサロン:研究員報告から
活動情報
質問コーナー
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
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1.マーケット振り返り(11月19日~12月3日)
<主要指数>
・NYダウ -2.9%
・S&P500指数 -3.4%
・ナスダック総合指数 -6.1%
=駆け足バージョン=
感謝祭休日前は金利上昇が成長株の重しとなって高値圏でのもみあいとなりましたが、休日後は新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大懸念から急落し、金融引き締めに対する警戒感も加わって成長株を中心に推移しました。
=ちょっとだけ詳しく=
株式市場は、業績発表シーズンの終わりとともに上値が重くなりました。好調な経済指標の発表を受けた金利上昇を背景に成長株が売られたことなどが要因でしたが、景気敏感株が買われたため、高値圏でのもみあいとなりました。
しかし、感謝祭休日後に新型コロナウイルスのオミクロン株による感染再拡大が懸念されて世界的に株式市場が急落し、感染再拡大による経済への影響は不明だったものの、投資家のリスク回避姿勢が強まりました。
また、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録やパウエル議長の議会証言を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)が従来よりも金融引き締めに前向きだとの認識が広がったことも、成長株を中心に下落要因となりました。
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2.今週のズバリ!
これだけは知っておいてほしい情報をお届けするコーナーです。
二つの変化
この2週間の間に株式市場を取り巻く風景が大きく変わった。一つは新型コロナウイルスのオミクロン株の出現。もう一つはFRBの政策スタンス。オミクロン株については不透明な点がまだ多いものの、現時点での情報では、経済に与える影響はそれほど大きくなさそうだ。市場や社会が慣れるまでの時間は長くないと考えられる。
FRBの政策スタンス
より市場に影響しそうなのはFRBの政策スタンスだ。11月30日のパウエル議長の議会証言では、感謝祭休日前に公表された11月のFOMC議事録よりもタカ派的な姿勢が示された。議会証言がこれだけ市場に影響したのは久しぶりだったが、結論は「現時点で経済は非常に堅調でインフレ圧力が高いため、次回のFOMCでテーパリングの加速を協議する」だった。
新型コロナウイルスについても触れており、「労働市場やサプライチェーンなどの供給側に問題を発生させた」との立場を示して、「FRBは供給側に対処できないので、対処可能な需要側に引き締めで対応する」と述べていた。FRBに課せられた使命のうちの「インフレ抑制」を重視すると宣言したことになる。
目先の目処
それでは、今回の議会証言の影響はいつまで続くだろうか。大きな目処は12月14、15日に開かれるFOMCだろう。市場はここで示された政策スタンスを織り込むことになるが、ある程度の引き締めは既に織り込まれており、不透明感が解消されればプラス要因だ。それまでは、米国の債務上限問題(米国債発行枠の拡大をめぐる議会での攻防)やオミクロン株の報道などが、投資家のリスク回避姿勢を高めたままにしそうだ。今週末発表の消費者物価指数も注目される。なお、先物やオプションの清算日が重なる17日の「クアドルプルウィッチング」も一つの目処で、強気で対処するならば、この前に押し目買いも有効かもしれない。
11月末からの市場だけを見るとかなり悪い状況に思えるが、S&P500指数は史上最高値から3.6%下げただけの水準だ。9月に下落した局面では5%程度の下落率だったから、まだ大きなものではない。テスラなどに代表される成長株が大きく下げた印象や、小型株のラッセル2000指数が高値から10%超の下落になっているため悲観的になりがちだが、これらの銘柄限定の調整だと割り切ってもよいかもしれない。少し遠目で見れば、株価のリズムの一つに過ぎないはずだ。なぜなら「利上げできるほど経済が堅調」だからだ。
S&P500指数チャート過去1年間
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3.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 米株アクティブ運用の3年リターン テクノロジー関連上位 11/25
日経新聞木曜日夕刊にいつも投信番付という企画がある。11月25日は米国株式で運用するアクティブ投信の成績上位ランキングだ。
上位はテクノロジー関連企業のファンドが目立った。
1位は三井住友DSアセットマネジメントが運用する「USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド」で、3年リターンは165.6%。
2位の「netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」はテクノロジーの発展により恩恵を受ける企業の株式に投資。
5位から8位:成長株に投資するファンドでITやヘルスケア関連の組み入れ比率が高い。
【川田コメント】
記事では上位10ファンドが掲載されていたが、ここでは上位5本を一覧表にした。この一覧表のメッセージは単純明快だ。つまり成績トップのアクティブ投信と言えども、ナスダック100指数を上回るのは至難の業ということだ。もし成長株が今後もリードすると思うなら、これらの投信ではなくナスダック100の投信かETFを買うのがいい。またバリューとグロースのどちらにも賭けないのなら、全天候型のS&P500指数の投信かETFだ。
以下、アクティブ投信とナスダック100を比較検証する。
【パフォーマンス】
1位:三井住友DSアセットマネジメント運用「USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド」は非常に優れた成績だ。運用方法は「主として米国の情報技術の開発、進化、活用により高い成長が期待される企業に投資」する。実質的な運用は米国の大手運用会社のT.ロウ・プライス・アソシエイツ・インクだ。
また、下記の動画のスライドの脚注では、ファンドの相対比較にS&P500指数やMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI)を用いている。ただし、これらはベンチマークではないとのこと。銘柄を見る限り相当エッジが効いたハイテク銘柄の塊だが。
関連動画:USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド
パフォーマンス2位はゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの「netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」で、「テクノロジーの発展により恩恵を受ける企業の株式に投資」するファンドだ。後でコメントするが、構成銘柄がナスダック100指数と似ているためか、パフォーマンスはナスダック100とほぼ一緒で若干劣後している。
2位以下のファンドは、信託報酬分がなければナスダック100指数とほぼ同じだ。
【運用残高】
2位のGSのファンドの運用残高は8000億円超である一方、それ以外のファンドは1000億円以下で小ぶりだ。1位のファンドの662億円も小さいが、3~5位のファンドはさらに小さい。
これらのファンドでベンチマークを明記しているのは4位の「米国NASDAQオープンBコース」だけだ。しかし構成銘柄を見る限り、ナスダック総合指数かナスダック100指数を目標にした運用だろう。
1位のファンド以外は、全てパフォーマンスがナスダック100指数(円建て)と似ているが、どの期間でも劣後している。
1位の「USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド」の運用残高と規準価額
設定以来、パフォーマンスは概ね良好で純資産総額(=運用残高)も2018年頃には300億円超まで増えた。
株価下落で基準価額が停滞した2018年第4四半期からコロナ危機まではその残高は半減している。しかしコロナ危機後にDX(デジタルトランスフォーメーション)銘柄の急騰に伴って基準価額が急騰すると、残高も増えた。
今年に入ってパフォーマンスは良好だが、運用残高は少し減っている。短期売買の対象になっているのだろうか?いい投信だと思えば売却せずに保有すればいいと思うのだが、そうはならない。そのせいもあってか純資産総額は現時点では600億円台だ。運用者がいくら良い運用をしても、投資家がこの投信を育てる気持ちがないなら残高は増えない。
【信託報酬】
全てのファンドの信託報酬は2%前後だ。ナスダック100指数の円建てETFは東証では1545か2631だが、これらのETFは信託報酬が両方とも0.22%なので投信よりかなり低い。これらアクティブファンドにあえて高い信託報酬を払う必要もないと思う。
【構成銘柄】
この2つのパフォーマンス上位のファンドの構成銘柄とナスダック100指数の上位構成銘柄を比較してみた。
投資信託の運用において、アクティブ運用であることを謳い、インデックスファンドより高い信託報酬を徴収していても、実際にはベンチマークと同じような銘柄構成の投資信託もある。このような投資信託をクローゼット・インデックス・ファンド(注1)と呼ぶ。またアクティブ・シェアが低い(ベンチマークと銘柄構成が近い)ほど、インデックスと重複していないアクティブ銘柄に高パフォーマンスが求められるので、アクティブ運用のファンドがベンチマークを上回るのは困難になる。
この観点でみると1位の「USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド」はアクティブシェア比率は高そうだ。一方で2位の「netWIN GSテクノロジー株式ファンド」はナスダック100指数と組み入れ銘柄がけっこう似ている。ナスダック100指数をベンチマークにしたアクティブシェア比率はけっこう低いかもしれない。
(注1)Closet index fund(クローゼット・インデックスファンド)
Closet Index Fund(クローゼット・インデックスファンド)とは、アクティブ運用ファンドでありながら、ファンドの中身がベンチマークに酷似していて、運用成績もほとんどベンチマークに連動している疑似インデックスファンドと言えるような投資信託のこと。
(注2)アクティブ・シェア
アクティブ・シェア(active share)は、投資信託の中身が、その投資信託がベンチマークとしている指数の中身とどの程度違うかを示す数値の一つ。アクティブ・シェア比率は0%から100%の間の数字で示される。ベンチマークと全く同じであれば0%、ベンチマークとすべて異なるのであれば100%となる。数値が高いほど、独自の運用を行なっていることになる。
1位「USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド」の特徴的な銘柄
アトラシアン(TEAM)のチャート(5年)
ロブロックス(RBLX)のチャート(2021年3月~)
ハブスポット(HUBS)のチャート
1位「USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド」上位銘柄の概要と組み入れ比率
【川田コメント】
資産形成でアクティブ運用の投資信託を買う理由はあまり見当たらない。証券会社やメディアの雑音に惑わされずに、S&P500指数とナスダック100指数の投信やETFを買えば資産形成に必要なエクイティポジションは完了している。くどいけど、これは言い続けなければならないメッセージだと思っている。
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
オンラインサロン:研究員報告から
私が主催しているオンラインサロン「夢がかなう資産形成塾」では、随時会員が自主的に資産形成に関する知見を披露してくれる。
Nさんはあらかん(還暦)で大手企業退職間近のエンジニアだ。職歴を拝見すると、研究所や製造現場、そして海外とのビジネスが多かった。つまり、日本経済の興隆期や日本のプレゼンスの低下、そして取り残される日本を生身で体験してきた方だ。
彼は家族を養い、そして退職後の備えのために、若い頃から投資と資産形成の研究と実践を怠らなかった。
今回はNさんが2週にわたり、過去30年にわたる実践録を惜しげもなく披露してくれた。以下、プレゼンテーションのエッセンスをご紹介する。
「金融商品の活用事例 ~人生の棚卸~」
【川田コメント】
エンジニアらしい論理思考と精緻なパワーポイント資料で視聴者を唸らせました。ネットに開放されているポートフォリオ分析ソフトを自由自在に使いこなし、ご自身の運用戦略に合致した投資対象や銘柄を選択しておられます。
私もネット上の分析ツールの存在は知っています。しかし銘柄スクリーニング機能や候補銘柄間のパフォーマンス分析までは手が回りません。
論理的な考え方、堅実な資産形成への姿勢、そしてそれらを具体的な投資対象にまで落とし込むスキルや実行力には参加者全員感心しました。
さらに研究の結果、ポートフォリオの運用管理につぎ込むエネルギーや手間を考えると「QQQを買えということか!」のご託宣!これには参加者全員がいたく感動して救われた気分になりました。
私もサロンを主催して、サロン本来の価値を皆さんに提供できたのではないかと安堵してその日を終えました。
Nさんには時々サロンでご自身の運用プロセスや投資成果を開陳いただき、みんなで一緒に学びたいです。
Nさんどうもありがとうございました。
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新連載「これでばっちり!米国株式を使った資産形成術のすべて」
はじめに
今回、資産形成に必要な基本的な内容を網羅した連載シリーズを始めます。全体の構成は以下のように考えています。
我々はどのような時代に生きているのか?全二回
自立した日本人と自立に欠かせない資産形成 全三回
株式市場は米国にしかないの?全四回
日米株式文化の違い
知っておくべき米国市場の特徴
S&P500とは
なぜ米国は強いのか
おすすめの投資戦略~コア・サテライト投資~
コア部分の投資戦略
サテライト部分の投資戦略
何を買ったら良いのか
情報源と投資
第3話 株式市場は米国にしかないの?第四回
■米国株式の長期上昇を確信させる書物
前回に続いて、私が米国株に対する現在の考えに至ったきっかけになった書物についてです。
共通しているのは「米国の歴史や文化は、その他のどの国や地域とも異なっている」です。西洋人にとっては「新世界」であり、プロテスタントによる人工国家。こういう条件が揃うことで、初めて完成度の高い株式市場が誕生し進化したのではないか、いやそうに違いないと私は思っています。
著者は、英米の教育を受けた英米人か、日本人でもキリスト教や西洋文明、そして世界の宗教に精通した社会学者です。
前回紹介したのは以下の3冊です。
①歴史の終わり フランシス・フクヤマ 著:渡部昇一 訳、三笠書房
②小室直樹 日本人のための憲法原論
③スマート・パワー ―21世紀を支配する新しい力―2011/7/21ジョセフ・S・ナイ(著)、山岡 洋一(翻訳)、藤島 京子(翻訳)
今回分は以下の3冊です
➃文明の衝突(日本語)単行本 ―1998/6/26 サミュエル・ハンチントン(著)、 鈴木 主税(翻訳)
◆内容紹介◆
西欧への挑戦を続ける「儒教―イスラム・コネクション」は核拡散の深刻な危機を招くのか?どちら側にも入れない日本は…。世界的な国際政治・戦略学者の著者が21世紀の国際情勢を鋭く予見!
【アマゾンの書評】
第一部 さまざまな文明からなる世界
拒否主義
日本は1542年に初めて西欧と接触して以来、十九世紀半ばまで、実質的に拒否の態度を取り続けた。火器の獲得などかぎられた近代化は許されたが、西欧文化の摂取はいちじるしく制限され、とりわけキリスト教については厳しかった。17世紀半ばには西欧人はことごとく追放された。
こうした拒否的な態度を終わらせたのは、1854年にペリー提督に強制的に開国を迫られた結果だった。中国も数世紀にわたって根本的な近代化あるいは西欧化をいっさい阻止しようとつとめた。1601年にキリスト教の使節が入国を認められたが、やがて1722年になると彼らは事実上締めだされた。日本と異なり、中国の拒否政策が基盤としているのは、主に中華帝国という自国のイメージと、周囲の諸民族よりも文化的にすぐれているという強固な信念だった。
中国の鎖国は日本の鎖国と同じように、西欧の軍事力—1839年から42年にかけてのアヘン戦争でイギリス軍が行使した-によって終止符が打たれた。このような例が示しているように、19世紀のあいだに西欧の大国を前にして、非西欧社会は純粋な排外戦略を取り続けることがますます難しくなり、最終的にはそれが不可能になった。(P102)
【川田コメント】
原著の出版が1996年だからもう25年も前。冷戦終結期にフランシス・フクヤマが「歴史の終わり」でイデオロギー闘争の終結を訴えた。その後で今度はハンチントンが「文明の対立が新たに始まる」としてこの書を世に問うた。
彼は文明を、西欧、ラテンアメリカ、イスラム、中国、ヒンドゥー、ギリシャ・ロシア正教、日本、(アフリカ)の7(8)つに分類している。日本が独立した1つの文明に分類されているので、そのユニークさが分かる。
さて、日本に限らず世界中が西欧との接触拒否を試みたが、それを完全に拒否し続けることはできない。多くの国や地域は西欧の植民地になり、独立を果たしたのが概ねこの100年のこと。
そして時代は変わった。冷戦終結後に起きたインターネット革命ではグローバル化が飛躍的に進展し、世界中の経済資源が地球規模で有機的に結びつくようになった。その結果として生じた経済格差や文化的価値の相違が、新たな対立の原因になっている。
■米国株式投資が出来ない世の中なんて考えられない
ところで、このグローバル化の動きに逆らうことなどできるのだろうか?世界の枠組みから障壁を取り払うことによって受ける恩恵をそんなに簡単に手放すことなどできるものだろうか?
例えば何らかの理由で米国株式投資に制限がかかったり禁止になったりしたら?日本にある投資対象だけで資産形成しなければならなくなったら?私、そんな能力ない!議論が変な方向に進んで申し訳ない。
しかし、日本に居ながら世界最高の投資機会を万人に等しく開放している米国の株式(=所有権)を保有できなくなるなど、ありえないことと信じたい。もちろんそれは杞憂だと信じているが。
⑤文明: 西洋が覇権をとれた6つの真因 単行本 – 2012/7/6
ニーアル・ファーガソン(著)、仙名紀(翻訳)
【アマゾンの紹介文】
競争・科学・所有権・医学・消費・労働、この6つが西洋の強さの秘密。
近現代史の壮大な謎をスリリングに読み解き、中国台頭と西洋没落の行方を占う気鋭の歴史学者による文明論の決定版!
新たな世紀、西洋諸国は没落に向かっているように見える。しかし、将来を見通すためには、そもそもなぜ西洋が近代を席巻できたのかを明らかにしなければならない。
なぜヨーロッパでは競争が発展し、中国は停滞していたのか?なぜキリスト教世界では科学革命が起き、イスラム世界では起きなかったのか?
なぜ北米アメリカは最大の先進国になり、南米は途上国の地位にとどまったのか?そして21世紀にはたして西洋文明は衰亡し、中国文明が覇権を握るのか。
以下、注目する章の要約とコメント
第6章 労働
なぜ西洋がその他の地域を支配し、その逆は起こらなかったのか。
①競争 ヨーロッパ全土が、政治的に細分化され、国家形態が王政であっても共和制であっても、競争に熱心な企業がひしめいていた。
②科学革命 17世紀の西ヨーロッパでは、数学・天文学・物理学・生物学などの分野で画期的な進展が見られた。
③法の支配と代議制 まず英語圏で、社会的・政治的秩序の最善と思われるシステムが確立された。その根底には私有所有権という概念があり、資産所有者が政治的代表に選出されるようになった。
④現代医学 医療の面で19世紀、20世紀に目覚ましい進展が見られ、西ヨーロッパや北米の人びとによって多くの熱帯病などが制圧された。
⑤消費社会 産業革命の結果、大量生産をうながす技術が開発され、需要が喚起された。綿製品をはじめとして、安くていい商品が供給可能になった。
⑥労働倫理 西洋では大量の労働力が集約的に合理化され、貯蓄が増え、資本蓄積が継続的に進められるようになった。
西洋が大きくのし上がってきたカギは、これら6つのキラーアプリケーション(あるプラットフォームを普及させる程の魅力を持ったアプリケーションソフト)だ。
現代の幕開けは、日本では明治時代(1868~1912)で、このころ「その他の地域」でもこの6つのアプリケーションをダウンロードし始めた。だが、ことがスムーズに運んだわけではない。
日本では西洋の文化や制度のうちどれが最も大切か判断できなかったため、ひたすらすべて真似た。洋服やヘアスタイルも模倣し、外国を植民地化する面でも追従した。だが不運なことに、帝国建設のコストがかさんで利益が上がらなくなってきた時期に重なっていた。(p485)
【川田コメント】
原題は「CIVILIZATION The West and the Rest」で直訳なら「文明:西洋対その他」。しかし実際は「英米対その他」で、我田引水、自画自賛とも思える議論の進め方だ。これが英米を跨いで活躍する歴史学者の見立てだ。
この章での他の引用でも、『大国の興亡』のポール・ケネディや『歴史の終わり』のフランシス・フクヤマら英米の学者が多い。となると当然その見方にも一定の共通項があるはずだ。こういう歴史的文明論では必ずといっていいほど宗教の役割が論ぜられる。つまりはキリスト教でとりわけプロテスタントへの言及になる。
さて、日本を念頭に上記の6項目を比較すると、①では「和を以て貴しとなす」だろう。③は、日本はそもそも契約概念が希薄だとよく言われる。「阿吽の呼吸」とか「本音と建前」もいいと思うが。⑤は日本では「清貧」が潔い。⑥は日本にもプロテスタントにも負けない労働規範があるだろうが、金儲けのための労働は是としない。そこがプロテスタントとは違うと思った。
⑥橋爪大三郎 世界は宗教で動いている
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◎宗教がわかれば世界がわかる! ビジネスパーソンの基礎教養
◎世界の人びとの発想や行動様式は、宗教に支配されている
◎ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、儒教、仏教は何が同じで何が違うのか?世界の主要な文明ごとに、社会と宗教の深いつながりを分かりやすく解説!
【内容紹介】
世界を読み解くには、宗教が最大の補助線になります。ヨーロッパ人もインド人も中国人も、当人たちは意識していなくても、長い歴史をへたキリスト教、ヒンドゥー教、儒教の発想や行動様式に支配されています。宗教を理解すれば、グローバル世界を読み解く最大の鍵が手に入るのです。
世界の宗教について比較研究を行ってきた著者が、主要な文明ごとに、社会と宗教の深いつながりをわかりやすく解説!
【川田コメント】
橋爪大三郎は小室直樹の一番弟子というぐらいの位置づけでしょうか?宗教の観点から世界を分析するのがこの人の特徴です。特にキリスト教に造詣が深く、米国株式市場と付き合う時には非常に参考になります。以下、皆さんにも役立つと思うパラグラフをご紹介します。
第二講義 宗教改革とアメリカの行動原理ウォール街の“強欲"をどう考えるのか
p120
アメリカでは、誰かがたくさん儲け、ほかのひとがあまり儲からなくても、神の意思だから甘受しなければならない、と考えます。市場には運、不運があるし、いろいろな事情や偶然で儲かる場合も、儲からない場合もある。
それを含めて、市場は公正だとする信頼がある。大儲けしたひとは、市場と神によって祝福されたのであって、努力したかどうかとは関係ないと考えるのです。つまり、不労所得で潤っても、市場のルールに従っているかぎり、何の問題もない。
p108
アメリカでよく耳にするのは、スピリチュアル(精神)という言葉。物質とスピリチュアルの関係に、アメリカの強さの秘密がある。物質的、即物的で地上のことしか考えていないように見えても、別の角度からみると、地上のことには無関心で、目に見えない価値(正義、真実、民主主義の理想)を死に物狂いで追及しているようにも見える。一見分裂しているようですが、それは見方の問題です。物質/精神という、二項対立的な発想にこだわるので、アメリカを理解できないのかもしれない。
【著者紹介】
橋爪大三郎(はしづめだいさぶろう)
1948年神奈川県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。1995~2013年、東京工業大学教授。『言語ゲームと社会理論』『仏教の言説戦略』(以上、勁草書房)、『はじめての構造主義』『はじめての言語ゲーム』『ふしぎなキリスト教』(共著)『おどろきの中国』(共著)(以上、講談社現代新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)、『橋爪大三郎の社会学講義』(ちくま学芸文庫)、『なぜ戒名を自分でつけてもいいのか』(サンガ新書)、『橋爪大三郎といっしょに考える宗教の本』(監修、ナツメ社)など著書多数。
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5.今後の活動情報
◇12月15日(水)午前11時 ストックボイス
◇12月16日(木)午前8時15分 日経CNBC(電話インタビュー)
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6.質問コーナー
先週金曜日午後8時から2名の女性FPをお招きし、ファンドマネージャー大倉真さんと川田でライブセミナーを開催した。
安倍さん、河合さんは昨年京都で「LMS京都」というサロンを立ち上げた。お二人は子育て中のママさんやビジネスマンに対し「ライフプランについて、働きたいママ向けの税金の話、親子向け金銭教育セミナー、ふるさと納税」をテーマに定期的に勉強会を主催している。
今回の企画は弊社のウエブサイトで「米国株式40年投資」をシリーズで展開している大倉真さんのご縁だ。大倉さんとご両名は、勉強会を通じて知り合った。
そこで彼女らのお客さんに米国株式投資を使った資産形成の基礎を易しくお伝えするライブを企画した。
この動画ではお二人が大倉さんと私に投資の基礎を質問する形式で進めている。以下は彼女らがお客さんからよく受ける質問だ。
上記の質問の答えは以下の動画でお伝えしているので参考にされたい。
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★ご質問は、以下の【質問ルール】をご一読後、
info@kawata-magazine.comまでお願いします。
【 質問ルール 】
◆全ての質問への回答はいたしかねます。あらかじめご了承ください。
◆いただいた質問は、当社サイト、YouTube動画等のSNS・書籍等に、個人を特定できない形で掲載する可能性があります。
◆ご購読が確認できない方の質問には回答いたしません。
◆明らかな広告・宣伝とみなされる部分は割愛する対象となります。
◆未購読にもかかわらず悪質な質問を投稿された方には、然るべき措置をとらせていただきます。
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★免責事項
◆当社は、本メールマガジンにて提供する情報にて、株式、債券、ファンド、ETF等の有価証券、およびセクター等に関する売買等の推奨はしておりません。また、投資判断はメールマガジン購読者(以下、会員)の責任にて行うものであり、当社は一切の保障責任を負わないものとします。
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◆当社は、本サービスの情報の内容が会員若しくは第三者の権利を侵害し、又は権利の侵害に起因して紛争が生じた場合、その侵害及び紛争に対して何らの責任も負わないものとします。
◆当社は、本サービスの停止又は中止、本サービス内容の変更によって受ける損害について、賠償する義務を一切負わないものとします。
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■ 発行元:株式会社日比谷テクノロジー・ファイナンス
■ 川田重信のありがとうアメリカ株式
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■ Twitter:https://twitter.com/ShigenobuKawata
■内容に関するご意見・ご要望、購読解除はこちらから
【メール】info@kawata-magazine.com
■メールが届かない場合などは迷惑メール等に分類されている場合もありますので予めお確かめください。
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