米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.6]2021年7月12日配信
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米国株式投資の真実を伝える
川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
[Vol.6]2021年7月12日配信
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***目次***
マーケット振り返り
今週のズバリ!
今週のピックアップ記事
投資のヒント
川田のお散歩
活動情報
質問コーナー
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1.マーケット振り返り(7月5日~7月9日)
<主要指数>
・NYダウ +0.2%
・S&P500指数 +0.4%
・ナスダック総合指数 +0.4%
=駆け足バージョン=
新型コロナウイルス再拡大と経済成長の鈍化が懸念されたが、リスク回避姿勢による長期金利の低下を好感し、成長株を中心に買われた。木曜日に一時大きく売られたもののすぐに反発し、主要3指数は過去最高値で引けた。
=ちょっとだけ詳しく=
世界的に新型コロナウイルスの再拡大が懸念されたほか、6月のISM非製造業景況感指数などの経済指標が市場の予想を下回り、経済成長がピークを打ったとの見方が広がった。これを受けて長期金利は木曜日まで8営業日連続で低下して2月中旬の水準となった。株式市場では金融や資本財などの景気敏感株が売られた一方、長期金利の低下が好感されて成長株が買われた。6月のFOMC議事録からは政策変更の可能性が低いことが示唆され、金利低下に拍車をかけた。中国当局のハイテク株に対する規制強化の姿勢から中国株が大きく売られたこともリスク回避姿勢につながったが、週末には景気敏感株中心に買い直され、主要3指数は過去最高値を更新して引けた。
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2.今週のズバリ!
これだけは知っておいてほしい情報をお届けするコーナーです。
米国株式市場の絶好調が続いている。先週は独立記念日の3連休後で決算発表が本格化する前でやや軟調かと思っていたが、懸念材料を簡単にやり過ごして主要3指数は過去最高値を更新して引けた。ただし出来高が少なく、盛り上がりに欠けた点は気になる。
先週、調整のきっかけとして(1)長期金利の上昇、(2)企業業績におけるサプライズ不足、(3)新型コロナウイルスの再拡大を挙げた。
(3)は欧州の一部や韓国などで現実となったが、現時点での影響は限定的だった。何よりも足元の米国で再拡大がほとんどみられていないことが大きい。(1)は全く逆の現象となった。6月の中旬まで盛り上がったインフレ率上昇→長期金利上昇に賭けたポジションの整理(長期債の買い直し)や海外投資家の買いなどの需給関係による説明や、年後半の景気減速を見越した動きというファンダメンタルズ見通しによる説明などがあった。いずれにせよ、2月の水準まで低下して成長株が買われるきっかけとなった。
(2)は今週から本格化する。業種として先行するのは金融で、火曜日にJPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスが取引開始前に発表する。水曜日はバンク・オブ・アメリカとシティグループ、ウェルズ・ファーゴなど、木曜日はバンク・オブ・ニューヨーク・メロンなど、金曜日はステート・ストリートや証券大手のチャールズ・シュワブなどだ。金融株は金利低下が嫌気されていたが、増配などの株主還元が下支えとなっていた。その他では木曜日の台湾積体電路製造(TSMC)も注目。
決算発表を受けて上昇する可能性もあるが、夏休み前の最後の上昇だろう。今週は長期債の入札があり、長期金利の低下が一服する可能性が高い。
そうした中で、もう一度ポートフォリオを点検して、買われ過ぎと思われる銘柄や(気持ちの上で)損切りできる水準まで回復した銘柄を一度売却してみるのはいかがだろうか。先週も書いたが、ゆったりと「休むも相場」を実践して次に備えるのも大切だ。心の余裕があると、「注目銘柄リスト」を作成して次の買いポイントを考えることもできる。
主要指数株価テーブル
S&P500指数 過去1年間
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3.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 7/5 境界なき金融(上)決済・融資、非金融が担う
小売りなどの非金融事業者が自らのサービスに金融機能を盛り込む「組み込み型金融(エンベデッドファイナンス)」が世界で広がり始めた。
このエンベデッドファイナンスは覚えにくいが大事な言葉になると思う。ただし、日本では組み込み型金融で定着するのだろう。
この組み込み型金融には①利用者にサービスを提供する事業会社、②事業会社と金融機関の間に立ってシステムをつなぐ「イネーブラー」と呼ばれるフィンテック企業、③金融ライセンスを持つ金融機関の3者が登場する。
金融はどこの国でも国策産業なので規制が厳しく、ライセンス取得のハードルが高い。そこで既存の金融機関のライセンスとテクノロジーを上手に組み合わせることで新たなサービスを創出している。これは「事業者が時間と費用をかけて金融に参入する『垂直型』からAPI技術やフィンテックの発展で事業者と金融機関がシステムでつながる『水平型』」への変革だ。記事では投資対象の銘柄もいくつか紹介しているので参考にしてほしい。
【2】日経新聞 7/5 驚異と脅威の27年 アマゾン・ベゾスCEO退任
米アマゾン・ドット・コムは1994年に創業しナスダック上場は1997年5月15日だ。上場以来時価総額は3800倍になった。創業者のジェフ・ベゾス氏は7月5日で最高経営責任者(CEO)を退く。記事はこの27年間の軌跡を10の数字でまとめている。このカリスマ経営者の後を継ぐのは誰にとっても簡単ではない。株価はそれを暗示しているのか昨年秋以来他のプラットフォーマーに比べ株価の伸びは鈍い。
【3】日経新聞 7/8 株式市場もお上頼み脱せよ
日経6月29日に掲載された梶原誠氏「お上頼みより企業立国」では、「東芝やみずほ等に代表される多くの名門企業は規制をつかさどる官僚に頼り、経営してきたのだが、そこからの脱却が必要」との主張だった。
7月8日の記事では、これと同じことが証券市場についても言えると以下の3点を指摘している。
第1に「日本国に対する自信過剰。公的年金が資産全体に占める日本株と外国株の割合を各々25%としている。日本への投資比率は、先進国の国内総生産に占める日本の割合である10%程度で十分だろう」。
資産配分比率10%にさえ疑問を感じる。日本株の時価総額が世界の株式市場に占める比率は9%程度だ。標準的な資産配分比率では株式部分は全資産の50%程度なので、日本株の比率9%は全資産の4~5%が適正ということになる。10%でもかなり多いと思う。
第2に株式市場の構造改革。日本を代表するプライム市場に、流通株式時価総額100億円というグローバルな基準からすれば「豆企業」でさえ入ってしまう。
ここは大切な指摘だ。S&P500指数に採用される企業の時価総額は9000億円程度が下限だ。世界の機関投資家は流通株式時価総額100億円程度の企業をまともな投資対象と見なさないと思う。世界の投資家の資金を呼び込める、時価総額数千億の企業の数を多くしてほしい。
第3に日本銀行による上場投資信託(ETF)購入。これこそ日本市場の質の悪さの象徴。
ここに日本の株式市場の位置づけが端的に表れている。マーケットに直接資金投入して株価形成を歪める功罪は、1990年代の「PKO」以降、すでに議論が尽くされている。それでも買わざるを得ないところに日本経済の問題の根深さがあると思う。
【4】日経新聞 7/10 東証プライム 664社未達 企業に通知、1部上場の3割
東京証券取引所は2022年4月に市場再編を予定しており、上場企業の多くが「プライム」、「スタンダード」、「グロース」のどの市場に入るかを気にしている。
6月末の株価などを基準にして、東証は7月9日に各社に新しい市場区分のどこに該当するかを通知したと報道されており、現在の東証1部に上場する2191社のうち、約3割の664社が「プライム」に入らないという。
日経新聞を始め、経済雑誌でもこの話題が取り上げられているが、違和感が否めない。「プライム」入りそのものが目的になっているように思えるからだ。そもそも東証の目的は企業に成長を促して海外からマネーを呼び込むことであり、各市場の役割を明確にし、「プライム」は上場基準を厳しくして市場の看板とすることだった。しかし、プライム入りのために形式的に社外取締役を増やしたり、大株主に売却してもらったりと、一部の動きかもしれないが、何とか面子を保とうとしているだけに映る。
そもそも、企業に成長力があれば資金は自然に集まるものだ。形式だけ整えても、海外投資家の眼は厳しく、「プライム」だから資金が集まるという単純なものではない。あと、時価総額が100億円でも「プライム」というのは、小さすぎないか。1億ドルの時価総額というと、米国では中型株以下の扱いだ。ちなみに米国では1兆ドルの時価総額企業が5銘柄になったと話題になっているから、1万分の1のスケールということになる。
一方、「お上」からの声掛けがなければ何も進まないのも日本の現実だから、ガバナンスを始めとする企業改革の入り口として考えれば、これでも一歩前進なのかもしれない。また、上場基準を満たさなくなった場合の「退場」を、猶予期間を設けずに厳格に実行することは大切だと考える。
【5】日経新聞 7/10 「中国のAIに危機感 元グーグルCEO、エリック・シュミット氏に聞く
この記事の指摘は、今後の我々の社会生活、そして株式投資においても極めて重要な示唆がある。
①米に肉薄「想定より早く」
一部のAI技術や量子コンピューター技術で、中国の技術力が報告書に盛り込んだ想定よりも「早く米国に追いついてきている。これは重大事だ」。
②最先端半導体、韓国に期待
「米国が巨費を費やしてもすぐに台湾のようにはなれない」。その一方で、米国は「中国に対して(半導体製造技術で)2世代分のリードを保たなければならない」。そして半導体製造技術では「韓国サムスン電子が過小評価されている」。
③これからの米中関係
「中国を敵と見なし、貿易などすべての関係を断つべきだとの意見は間違っている」。ヘルスケアや気候変動を例に挙げ、「戦略的に重要ではない領域では協力関係を築ける」。こうした関係を「競争的パートナーシップ」と表現し、「中国と協力できる領域は多くある」。
④GAFA分割には反対
「GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)」に代表される米巨大テクノロジー企業に対する規制案が世界に広がっていることに対しては、「中国に対する競争力の低下につながるため、企業分割などの大それた案は、何の役にも立たない」と明確に反対。
これらの重要な示唆を踏まえれば、米国のプラットフォーマーを皆さんのポートフォリオから手放してはいけない。そして、ナスダック100の構成銘柄にはこれらの重要銘柄がそれなりのウエートで含まれている。
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
資産形成の王道の体得には時間と経験が必要だ
先日来ご紹介しているように、米国人の資産形成において株式と投信は決定的な役割を果たす。その場合の投資対象は、S&P500指数に代表される株価指数に連動する、パッシブ型の投信やETFが上位を独占している。
一方、若い世代や初心者が熱中するのが個別銘柄やオプション、そして暗号資産の短期取引だ。証券取引アプリのロビンフッド・マーケッツ(HOOD)が7月1日に上場申請したが、同社は手数料無料化の先駆者として若者世代の圧倒的な支持を集めている。
以下、これらの若者や初心者のマーケットへの参入と、資産形成の王道であるパッシブ投資の関係について思うところを綴ってみる。
■米国のネット証券口座
新興のロビンフッドの口座数は1800万件だ。業界首位のチャールズ・シュワブ(SCHW)は3210万件(5月時点)でフィデリティ・インベストメンツは2900万件(第1四半期末時点)なので大変な勢いで伸びている。
ただし、ロビンフッドの口座残高の中央値は240ドル(!)で、平均でも5000ドルとかなり少額だ。一方でシュワブの世帯平均の投資額は昨年時点で約32万ドル、フィデリティもロビンフッドよりは圧倒的に多い。
■日本のネット証券の口座開設数
日本のネット証券はどうか?SBI証券が600万口座を達成したのが今年3月で、楽天証券も600万口座に到達したことを5月に発表した。楽天は昨年12月に約9カ月で100万口座増となる500万口座に到達したが、その後の約5カ月でさらに100万口座増となった。
一方で対面大手の口座数は減少傾向だ。顧客の年齢層が高く、口座を閉鎖する人が多いのだろう。野村証券が533万口座で大和証券は303万口座だ。日米の人口比もあるが、チャールズ・シュワブの3210万件と比べ随分少ない。ただし証券投資自体の社会的位置づけが違うので仕方ない面はある。
■資産形成をするために必要な条件
さて、企業としてのロビンフッドの収益の約半分はオプション取引に依存している。一人一人の取引金額は少額だが、若い時から証券投資に親しみ、小さな失敗や成功を積み重ねている若者や初心者が多い。この経験を通して資産形成に必要な知識や、そして一番大事な投資の心構えを学んで行くはずだ。
資産形成の成功への道筋は、各人各様でいろいろあっていい。しかし、持論だが、株式投資を使った資産形成の王道は少額資産の回転売買ではなく、その人にとって許容可能な最大限度額をじっくりとマーケットのリスクに晒すことだ。その場合、やはり米国株式の株価指数投信の積立や長期保有が一番成功確率が高いと思っている。
■資産形成の正攻法を自覚するまでには時間と経験が必要
何事も経験しなければ身につかないのは、資産形成も同じだ。投機的な短期売買は多くの人にとって生産性に乏しく成功確率も高くない。それでも熱中する人が多いのは、投機が持つ“怪しい魅力”に抗えないからだろう。
そうなると、私の“正論”である長期の積立や買い持ちばかりを叫んでも、当事者たる若者や初心者には響かないのかもしれない。
それでも、投機と資産形成は違うと繰り返したい。もし株式取引の目的が資産形成なら投機用の資産とは区別、分別すべきだ。ただし、この区分けするだけの“規律”を体得するのが難しい。大概の人はここに至るまでに多額の“授業料”を払う。そして、この授業料を払わないと多くの人は身につかないのが現実だ。
若者よ、初心者よ、資産形成で成功したいなら長期でパッシブ運用を継続できる”規律”を早く体得しよう。そのためには、逆説的だが、短期で投機的な取引は早い時期から数多く実践したほうがいい。その小さな失敗と成功の積み重ねが資産形成の王道に至る近道とも思えるこの頃だ。
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5.川田のお散歩
◇◇月曜日朝の日比谷公園◇◇
私の平日の朝は早くて忙しい。朝会動画の収録や定例会議が終わるのが午前10時頃なので会社到着は10時半過ぎ。ただし、月曜日だけは朝7時ごろには会社に着ける。ハマっているのが早朝の日比谷公園での散歩とストレッチ。先週の月曜日は小雨で煙っていたが、木々の下なら雨もそれほど気にならない。園内を歩きながら雨に濡れて緑の光沢眩しい木々の中でスクワットと腕立て伏せを繰り返す。素晴らしい!の一言だ。
さて、この公園通いだが、コロナ禍前は月曜朝は近くのジムに通っていた。その後ジムは休業になってすでに再開しているのだろうが、ジムには戻っていない。公園でのストレッチがあまりに心地よいのだ。そのうち猛暑で行きたくなくなるだろうが、それまでは公園通いだな。
◇◇最近ハマっていること◇◇
MLBの大谷翔平選手は凄いね。私がMLBに興味を持ったのは1995年に野茂投手がドジャースでデビューした時あたりだ。当時は香港に駐在していてインターネットが普及し始めた頃だ。土曜日に、自宅で新たに購入したPCで野茂投手の試合経過をリアルタイムで知る事ができるので、大いに感動したものだ。
その後MLBで多くの日本人選手が活躍したけど、本当に日米のファンを痺れさせたのは何といってもイチロー選手だろう。大男の中であの小柄で痩身のイチローが全米を興奮の渦に巻き込んだのは痛快だった。いつだったか、夏休みは家族でシアトルまで観戦ツアーに出かけた。そういえば当日はボストンレッドソックスは松坂大輔が投手だった。
直近では、なんといってもこの27歳の二刀流だろう。2018年のデビューした年は納得の活躍だっただろうが、その後は故障続きだった。「世界一の選手」になると言って日本を離れたそうだが、怪我の様子が伝えられるたびに、MLBで通用するパワーは日本人には無理があるのかと周囲をヤキモキさせた。しかし4年目にしてやっと体が大リーグ仕様になったのだろうか、今のところは怪我もなく大ブレイクしている。
戦いの場を海外に求める日本人を応援するのは面白い。それがスポーツであれ、学問であれ、そしてビジネスや投資でも変わらない。そして、米国株式なら世界中の投資家が競う米国市場で覇を競うチャンスが我々にもある。日本にいながら知恵をふり絞って戦っている投資家の皆さんは称賛に値する。もっと胸を張って米国株式の投資魅力をアピールしても良いと思う。おっとこれは我田引水かな。
話はそれたが大谷翔平選手は世界一の野球選手を目指して奮闘している。その彼の追っかけサイトは、私の場合は日刊スポーツとMLBエンジェルスの公式ウエブサイトだ。
Official Los Angeles Angels Website
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6.今後の活動情報
◇7月13日(火)午後8時 マネックス証券主催オンラインセミナー 老後資金もFIREも!米国市場で「お金」を作る資産運用とは?
◇7月21日(水)午前11時 ストックボイス
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7.質問コーナー
質問(要約)
先週、米国でIPOしたばかりの、中国の配車アプリ大手ディディ(滴滴出行)が急落しました。米国上場の中国株は軒並み安となっていますが、買い場でしょうか。
お答え
IPOしたばかりのディディを狙い撃ちするかのように中国当局が規制を強化したことは、44億ドルもの大量の資金調達をしたあとだけに驚きでした。IPO価格14ドルのディディ株は上場直後に18.01ドルの高値を付けた後、木曜日の安値である11.00ドルまで急落し、金曜日に12.03ドルで引けました。
米国投資家の中国株に対する関心は日本よりも高いようです。中国株に限らず、米国市場に上場している銘柄に対しては、国内株と同じ感覚で投資する姿勢があるからです。日本では日本株とは切り離された「外国部」として扱われていましたが、現在ほぼ消滅状態です。
話がそれましたが、中国株の急落は市場でのリスク選好度合いにも影響するほどで、投資家の関心は高いです。今週のバロンズ誌でもディディの急落と中国株への影響が取り上げられていました。
金曜日の反発には、値ごろ感と8日からの指数(FTSEラッセルの世界株指数)組み入れが影響しているとも考えられ、底を打ったかどうかはまだ分かりません。急落のきっかけとなった中国当局による規制強化の目処が付いていない状況では、リバウンド狙いと割り切る以外は、避けた方がよいでしょう。
長期的に中国経済は世界の成長エンジンで、中国株に上昇余地がある点はまちがいないでしょう。特にハイテク関連企業の成長は米国の予想を上回るほどです。それでも、規制が強化される方向であるため、個別銘柄のリスクを想定することはかなり難しい状況です。
もう一つ気になる点は、米国上場の中国株のほとんどが「変動持ち分事業体(VIE)」という形態になっている点です。簡単に言うと、ケイマン籍のペーパーカンパニーが米国に上場しており、そのペーパーカンパニーは中国国内で実際の事業を行っている会社の親会社ではなく、契約などによって利益を得られる仕組みにしているというものです(詳しくはhttp://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2016/2016aut14.pdfなどを参照してください)。
これによって中国当局による外資規制(海外投資家による国内企業への投資比率)はクリアできている形ですが、実際はグレーゾーンで、ディディを始めとする中国株の目論見書には、中国の規制当局の動向によっては株主の権利などにリスクが生じると明記されています。
実際に米国上場株の株主の権利が大きく制限される可能性は低いと思いますが、中国当局の動きには予想がつかない部分も多くあります。リスクの一つとして、特に個別銘柄に投資する場合は念頭に置く必要があると考えています。
日ごろからお伝えしているように、中国株を含めて米国株以外にあえて投資する必要はないと考えていますが、相対的に安全な中国株投資であれば、コストの低い中国株のETFだと思います。
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