米国株式投資の真実を伝える [Vol.50]2022年6月13日配信
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米国株式投資の真実を伝える
[Vol.50]2022年6月13日配信
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川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
***目次***
マーケット振り返り
今週のピックアップ記事
川田の気になる銘柄
投資のヒント
お散歩
超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
活動情報
社会人になって40年以上読み続けている日経新聞の中から気になる記事をピックアップしコメントする企画だ。毎週土曜日午前9時〜9時45分にズームへの参加形式で実施している。
参加は無料なのでご興味あるかたはPeatixでお申込みください。
以下は先週土曜日にカバーした記事の表題をいくつか
皆様が資産形成で成功するために一緒に学び啓発し合うオンラインサロンです。大好評のメルマガ「メディアで鍛える米国株式講座」だけでは伝えきれない内容や、米国株式投資の魅力を体感できる会員向けのセミナーを提供します。
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1.マーケット振り返り(6月6日~6月10日)
<主要指数>
・NYダウ -4.6%
・S&P500指数 -5.1%
・ナスダック総合指数 -5.6%
=駆け足バージョン=
株式市場は長期金利の動きに反応する展開となりました。長期金利が3%を下回ると押し目買いが入ったものの、週末に発表された消費者物価指数が市場の予想を上回ると長期金利が急上昇し、成長株を中心に売り込まれました。
=ちょっとだけ詳しく=
先週の株式市場は前週末の下落後の買い戻しの動きで始まりましたが、消費者物価指数(CPI)の発表を週末に控えて上値の重い展開が続きました。
長期金利が心理的な節目の3%を下回ると買いが入ったものの、3年国債や10年国債の入札不調を受けて金利が上昇すると、すぐに売り込まれました。
木曜日に欧州中央銀行が7月に量的緩和策を停止すると同時に利上げに踏み切ると発表すると欧州の国債利回りが急上昇して、米国の金利も上昇しました。
金曜日に発表されたCPIは市場予想を上回って前年比は1981年12月以来の高い伸びとなりました。
金融引き締め策が一段と強まるとの観測から長期金利は5月9日以来の高水準となり、成長株を中心に大きく売られました。
S&P500指数過去5年チャート
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2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしてランキングし、極々私的な見解でコメントするコーナーです。先週から、お散歩コーナーで本を紹介している熊倉貫宜さんのピックアップ記事とコメントも掲載しています。
【1】ウォール・ストリート・ジャーナル 【オピニオン】キッシンジャー対ソロス、ロシアで異論 90代の大御所2人がダボスで示した世界秩序観の違い 5/26
筆者のウォルター・ラッセル・ミード氏は「グローバルビュー」欄担当のコラムニスト
ヘンリー・キッシンジャー氏
【ダボス(スイス)】ナチスの支配下を生き抜き、移民として米国に渡った2人が、共に90代で世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の討論の中心となった。
ヘンリー・キッシンジャー氏ロシアを打ち負かしたり排除したりせず、ウクライナは2014年の領土喪失を受け入れよ。
ジョージ・ソロス氏
プーチン氏のロシアとの戦争における勝利は「文明を救う」ために必要。西側諸国に対して、ウクライナが勝利するために必要なものは全て提供せよ。
両氏の処方箋は非常に異なるが、認識には多くの共通点がある。それは2人とも、米国の価値観と利益に基づき欧州の平和を守ることが米国の外交政策の主な目標だということだ。
結局のところロシアは米国の政策にとって二次的な問題であり、長期的には米中関係の重要性の方がはるかに大きいとの見方でも一致している。
相違点:維持したいと考える秩序や文明の本質
ソロス氏は、バイデン政権と同様、世界における主な問題は民主主義と全体主義の闘争だとみている。民主国家の場合、国内では市民の権利を尊重することを法で義務づけられており、国外では国際法の制約下で行動しなければならない。全体主義国家の指導者らは国内外を問わず、そうした制約を拒否する。キッシンジャー氏の立場
世界には常にさまざまなタイプの政府が存在してきたし、これからもそうだというものだ。われわれにはロシアと中国を民主国家に転換させる任務はなく、ライバルである大国にも尊重されるべき権利と利益があることを認識しなければならない。歴史を振り返ると、確かなように思えることが一つある。1930年代にヒトラーをなだめようとした仏英の指導者は、ドイツの国益を尊重する必要性についてキッシンジャー氏のような主張をした。一方、イラク侵攻をジョージ・W・ブッシュ大統領に求めた新保守主義派(ネオコン)は、サダム・フセイン体制の全体主義的な性質に関して、ソロス氏のような主張を展開した。
キッシンジャー氏もソロス氏も賛同してくれるだろうが、歴史のいかなる理論も国際社会の混とんとした現実に機械的に当てはめるのはトラブルの元だ。
【川田コメント】
世界を代表する知性の持ち主がロシアとプーチン大統領には共通の認識を持ちながらも異なる見解を示している。
キッシンジャー博士は「ロシアを打ち負かしたり排除したりせず、ウクライナは2014年の領土喪失を受け入れよ」。一方でソロス氏は「プーチン氏のロシアとの戦争における勝利は「文明を救う」ために必要」だというのだ。
この画像はBS-TBSの「報道19:30」の写メだ。二人の知の巨人と同様にフランスのマクロン大統領とエストニアのカラス首相の2人の意見でも、ロシアへの対応は大きく分かれる。マクロン大統領は長期的にロシアと共生する道を探らなければならないと説き、カラス首相はプーチンに譲歩するほうがはるかに危険だと主張する。
皆さんならどちらの意見に納得するだろうか?私はキッシンジャー、マクロン陣営だ。我々は英米のフィルターのかかったメディア情報で判断をしがちだ。つまりその時点で英米のバイアスがかかっていると思ったほうがいい。そして人間のやることに絶対に正しい真理などない。正論をそのまま行動に移すことが意図した結果につながるとも限らない。
さてこの問題を考えているときに日経日曜版(6/12)で早世の哲学者、池田 晶子の「14歳からの哲学 考えるための教科書 単行本 – 2003/3/20」の広告を見つけた。彼女は2007年に死去したが当時はずいぶんと注目を集めた文筆家だった。
新聞広告の下記の抜き書きが私の思いを上手く体現しているので紹介する。
‟けれど、戦争している国のどっちが正しいかなんてことを判断することが、自分にとってどんな意味があるだろう。しょせん人間のすることだ。どちらにも言い分はあるというそれだけのことだ。もしも日本に戦争が起こったとしたら、君が知るべきことは、どちらが正しいか、ということではなく、その中で自分はいかに正しく生きるのかということではないだろうか。
つまり「正しい」とは、そもそもどういうことなのか。それ以外に人間が人生で知るべきことなどあるのだろか。
情報はしょせん情報だ。情報には本当もウソもある。事実か事実でないかということもある。本当のこと、事実というのは、外から与えられて知るものではなく、自ら考えて知るものだからだ。”『14歳からの哲学』第二十章より。
池田晶子
1960年(昭和35年)8月21日、東京生まれ。1983年(昭和58年)3月、慶應義塾大学文学部哲学科倫理学専攻を卒業。文筆家と自称する。池田某とも。「哲学エッセイ」を確立して、多くの読者を得る。2007年(平成19年)2月23日死去。
【2】日経新聞 再生エネの大型蓄電池網 NTT系・九電・三菱商事が連携 余剰分を充電、安定供給 6/10
NTTグループと九州電力、三菱商事は再生可能エネルギーで作った電気を無駄なく使う大型蓄電池網を整える。
NTTのエネルギー子会社NTTアノードエナジー(東京・千代田)、九電、三菱商事が蓄電池を使った太陽光発電の出力制御の低減事業で連携、23年2月にも送電線と直結して発電所のように使う系統用蓄電池を福岡県の遊休地に設置する。
充電できる電力量は4200キロワット時で、約350世帯分の1日の電力消費量に当たる。晴れた日に太陽光でつくった電気を充電する。
欧州やオーストラリア、米国の一部では、電力系統に蓄電池を組み込み再生エネの電気を有効活用している。
蓄電池の課題はコスト。エネルギー基本計画によると産業用蓄電池の発電コストは19年度時点で1キロワット時当たり約24万円、政府が掲げる30年度時点で同6万円程度という目標には遠い。
【熊倉コメント】
電力の出力が人為的にコントロール出来ない太陽光・風力・潮力・地熱による自然エネルギー電源の安定供給には、大型蓄電池や発電量の調整などの技術が必要です。
NTTアノードエナジー社のHPによると、同社の事業として「蓄電所事業」を以下のように定義しています。
NTTグループでは、日本全国に通信インフラの維持に使用する通信ビルを有しており、停電時の通信確保などのために蓄電池を保有しています。NTTアノードエナジーでは、これらの通信ビルを「蓄電所」として活用することで、地産地消に資する再エネ発電所の普及・拡大に貢献し、社会的なコスト削減(送電ロスの削減等)を図ります。
あくまで従来の発送電事業の補完という印象ですが、狭い地域での実証を積み上げて将来の、より大きな地域で産業用電源も含めた事業に結びつけることが目標だと思われます。
一方で、大型蓄電池生産の現状について私は正確な知見はないのですが、この分野での競争が自然エネルギー利用競争の一大要因でありそうです。
日本企業は電気自動車:EVの発展を予想し、比較的早い段階から、車両搭載用の蓄電池の開発・生産に従事してきました。
しかしながら、現在この分野での最大手は中国企業で、韓国企業も猛烈に追い上げている状況です。
寧徳時代新能源科技Contemporary Amperex Technology Co., Limited(CATL)
中国CATL、揺らぐ「車載電池1強」韓国勢など競合攻勢(日経4/22)
自動車用蓄電池と自然エネルギー利用サイクルに使用する大型蓄電池とは異なるかもしれませんが、技術開発の延長線上にあるならば、この分野での覇権のゆくえが気にかかるところです。
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3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
今週の銘柄
スノーフレイク<ティッカー:SNOW> Snowflake Inc.
概要
アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)やマイクロソフトのアジュール(Azure)などのパブリッククラウド上に企業が保存した膨大なデータを処理するソフトウエアを提供し、そのデータの管理と分析を容易に行えるように支援する企業です。
同社の魅力
拡大するデータクラウド市場
(図1:スノーフレイクのプラットフォーム)
現在、企業は大量のデータを保管していますが、メンテナンス費用などを考慮して、保管場所は各企業独自のサーバーなどから、AWSなどのパブリッククラウドに移行しています。
保管されるデータの出所には、人事や給与計算などの企業業務処理ソフトウエア、第三者のデータベース、モノのインターネット(IoT)からのデータなど、数多くのものがあります。一方、データの使い方としては、データそのものの販売、経営のための業務分析、業務遂行上のリアルタイム分析などが挙げられます。
スノーフレイクのサービスは、複数のパブリッククラウドに保管されている様々なデータを、その出所や保管先を意識することなく使えるようにします。例えば、別々のクラウドに保管されている天候のデータと来客数のデータを組み合わせて、来客状況に対する天候の影響を分析できるようになります。しかも、同じデータを同時に複数で使えるほか、データのインプットも同時に実行できます。
データクラウド市場は、保管されているデータの種類が多くなるほど分析ニーズが強まります。デジタルトランスフォーメーション(DX)が世界の主流になる中で、スノーフレイクのサービスはますます必要になると予想されます。
高い成長率でシェアトップ
スノーフレイクの顧客企業数は2022年4月末時点で6322社、100万ドル以上の収入があった企業数は206社となっています。
(図2:スノーフレイクの顧客ベースの拡大)
また、DatanyzeというWEBサイトによると、スノーフレイクはデータ・ウェアハウジングの分野(スノーフレイクによると、データクラウドの一部を形成する概念)で、シェアが20%強で、トップになっています。
(図3:データ・ウェアハウジングのシェア)
これらを反映して、2022年度(2022年1月末決算)の総収入は前年度比106%、2023年第1四半期(4月末決算)は前年同期比85%の伸びとなりました。
(図4:スノーフレイクの総収入(年間ベースと四半期ベース))
また、2022年度第3四半期以降にフリーキャッシュフローは黒字転換しています(非GAAPベース)。
(図5:フリーキャッシュフローの推移(非GAAPベース))
また、5月25日の決算説明会では、製品売上高が今後年率30%のペースで成長し、2029年度に100億ドルに達するとの長期見通しが正式に発表されました。
他の指標についても長期見通しを引き上げ、2029年度までの製品粗利益率を78%(従来の目標は75%)、営業利益率を20%(同10%)、調整後フリーキャッシュフロー利益率を25%(同15%)としました。
(図6:2023年度と長期の見通し)
リスク
株価は上場時の公募価格付近まで落ち着いていますが、典型的な成長株であるため、金利上昇は同社株にとって逆風となります。
また、業界でシェアを奪っているものの、景気動向によっては企業の利用が減って全体のパイが縮小することも考えられます。
投資家の一時的な熱狂が冷めてバリュエーションは落ち着きつつあるものの、高い成長率が期待されている銘柄であるため、実績や見通しが期待を下回ると短期的に売り込まれる可能性があります。
(出所:図1、2、4、5、6は会社資料、図3は下記URLのDatanazeより) https://www.datanyze.com/market-share/data-warehousing--240
SNOWの基本データ(出所:会社データ、Yahoo! Finance)
(6月10日現在)
株価 122.42ドル
時価総額 389億ドル
総収入 14.1億ドル
予想PER N/A
予想利回り N/A
本社:モンタナ州 ボーズマン
上場:2020年9月
株価チャートは上場以来
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
今回は、弊社のYouTubeチャンネルの「アメリカ株式40年投資」シリーズでおなじみの大倉真さんの寄稿です。
大統領選挙サイクルと株価リターン
【Sell in May and go away.】
私も含め、長らくアメリカ株に投資している人の多くは、株式相場の「アノマリー」について多少なりとも意識していると思います。アノマリーとは、明確な理論や根拠はないが、当たっているかもしれないとされるマーケットの経験則や規則性のことです。代表的なものの一つは「Sell in May and go away.」という投資格言で知られる株式相場の季節性です。
以前このメルマガでも取り上げたように、この投資格言には続きがあり、「Sell in May and go away, and don’t come back until St Leger day.」といいます。St Leger dayとは英国競馬の大レースが開催される日で、これは9月第2土曜日に当たります。よって、株式相場の動きとして解釈するなら「市場は年初から4月にかけて強く、5月から9月にかけて勢いを失い、その後は新年に向けて再び勢いを取り戻す傾向がある」となるでしょう。
図表1は、1971年から2020年にかけてのS&P500指数の各月平均リターンと、それに基づく同指数の1年通しての推移(累積リターン)です。各月の平均リターンを見ると、1月から4月にかけて平均的に大きく、5月から9月にかけては低く、特に9月は平均するとマイナスのリターンになります。そして、その後10月から12月にかけて再び大きくなることが分かります。
図表1 S&P500指数の1年を通しての平均的な動き
しかし、この50年間については、基本的には月率0.7%で上昇しているので、季節性は分かり難いかもしれません。そこで各月リターンから月率0.7%の上昇トレンドを除去してみましょう。それを表したのが図表2になります。このようにして見ると、一年を通しての市場の勢いの変化がより分かりやすくなるのではないでしょうか。
図表2 トレンド除去後のS&P500指数の1年を通しての平均的な動き
必ずしも毎年このパターンになるわけではありませんが、株式市場は特に秋口に押しがち(下げることが多い)であることを知っておいて損はないでしょう。
【大統領選挙サイクル】
ここまで見てきたのは、1年間における相場のリズムのようなものですが、次に取り上げるのは、4年毎に行われるアメリカ大統領選挙のサイクルに関するものです。この4年から成るサイクルを①大統領選挙年、②大統領選挙翌年、③中間選挙年、そして④大統領選挙前年として、それぞれの平均リターンを計算すると図表3のようになります。
図表3 大統領選挙サイクルで見たS&P500の平均リターン
1971年から2020年までの50年間において、年率リターンは平均で8.8%です。そして選挙年と選挙翌年の平均リターンは各々7.2%と9.0%なので、この2年については50年間通しての平均リターンに比較的近いと言えるでしょう。それに対し、中間選挙年は2.3%となっており他の年と比較して大きく劣後しています。逆に選挙前年は16.8%なので、他の年を大きく上回っています。
なぜこのような動きになるのでしょう。選挙前年にアメリカ株が高いリターンを上げる傾向があるのは、「現職⼤統領が再選を意識して景気刺激策を打ち出すから」と言えば、「なるほど、そうだ」とある程度納得できるような気がします。しかし、中間選挙年のリターンが他の年と比べてなぜ劣後するのか、正直言ってよくわかりません。(だから「アノマリー」なのかもしれません。)
【中間選挙年の9月に株を買う】
では次に大統領選挙サイクルを構成する4つ年の各々について、図表4で1年を通しての平均的な動きを見てみましょう。選挙年と選挙翌年は概ね似たような動きであり、また50年間の平均的な動きに沿ったものとなっています。それに対して中間選挙年は、4月あたりまでは選挙年や選挙翌年と似たような動きになっていますが、その後、秋口にかけて低調な展開となり、特に9月の下げが大きくなるようです。そして、10月以降年末にかけて切り返す動きとなります。選挙前年は年初から6月くらいまで好調な展開が続きます。その後11月までほぼ横ばいとなり、年末12月に再び勢いを取り戻す形となります。
これらをまとめると、「(平均的には)中間選挙年の9月に買えば、その後翌年にかけての大きなラリーをエンジョイできる」ということになります。
図表4 大統領選挙サイクル各年のS&P500指数の平均的な動き
【今後の展開と心構え】
FRBの金融政策スタンスの転換、サプライチェーンの目詰まり、ロシアのウクライナ侵攻などを背景に、アメリカ株式市場は年初から軟調な展開が続いています。偶然と言えばそれまでですが、今年は中間選挙の年に当たり、この中間選挙年5月までのパフォーマンスは今回も冴えないという結果になっています。
特に5月20日にはザラ場で高値から20%を上回る下落となり、遂に「弱気相場(ベア・マーケット)入り」と言われました。では、株式市場は今後どのような展開になるでしょうか。5月の大底で悪材料をほとんど織り込み、ここから反発に向かうのでしょうか。それとも反発はやはり一時的なもの(ベア・マーケット・ラリー)にすぎず、良くてもせいぜいサマーラリー程度にとどまり、秋口に再び大きな下落に見舞われるのでしょうか。
年前半に既に大きく下げているので、ここからさらに大きく下げるかどうか、正直言って、私には分かりません。しかし、もし9月あたりに大きな下げがあるとすれば、それは来年のラリーに向けてよい買い場になるように思います。また、下げるか下げないか分からないにせよ、少なくとも「下げても驚かないような心構え」は必要ではないでしょうか。
【大倉真】
愛媛県出身。1984年大阪大学経済学部卒業。2005年 埼玉大学大学院経済科学研究科より博士(経済学)。シティバンク、エヌ・エイ、シティトラスト信託銀行、ソシエテジェネラル信託銀行(現SMBC信託銀行)に勤務。年金・公的資金など機関投資家に加え、プライベートバンクで富裕層向けの資産運用にも従事。2017年、京都・東山で投資会社EagleCapital株式会社を設立。CFA協会認定証券アナリスト。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
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5.お散歩コーナー
◇◇最近行ったお店、映画、美術館、書籍編◇◇
~熊倉 貫宜の巻~
元証券マンで読書家である熊倉貫宜さんの寄稿です。
地球外生命-アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来 / 小林 憲正 (著)
外国人とパーティで出会う折、話の切っ掛けに私が使う小話があります。
「アメリカ人は世界で最も未確認飛行物体:UFOを目撃する国民らしい。
それは此の広い宇宙に知的生命体が人類しかいない、という恐ろしい現実に彼らは耐えられないからUFOのような幻影を観てしまうのだ。」
じゃあ日本人はどうなんだ?と聞かれた場合には、日本では八百万の神、森羅万象が人間を守っているのだと説明しておりました。
単なる与太話の類ですが、そもそも私は地球以外に知的生命体が存在するという考え方には、いささか疑問を持っておりました。
何億年もの時の流れの中で、奇跡的な確率に導かれて進化を遂げてきたのが人類であり、同じ様な道筋が何処か別の場所で進行しているとは、とても信じられない推論でした。
しかしながら、近年の研究では生命の誕生の端緒が宇宙で生成された有機物ではないかという見方が有力視されており、さまざまな事実の積み上げから宇宙生命学(アストロ・バイオロジー)という学問領域も固まりつつあるようです。
おりしも、その証左となるような発見の一つが、2022年6月7日付、日本経済新聞の朝刊一面で報道されています。
はやぶさ2、砂に「生命の源」アミノ酸 小惑星から初の検出
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」から地球に持ち帰った砂から、生命の源となるたんぱく質の材料の20種類以上のアミノ酸が発見された。
「はやぶさ2」は2014年に打ち上げられ、19年「りゅうぐう」に2回着地しサンプルを採取、20年12月に地球に帰還。
アミノ酸は水とともに生命に不可欠な材料、その起源については、地球でつくられたとする仮説と、宇宙でつくられて隕石などによって地球へ飛来してきたという仮説がある。
こんな情報を得て本書を紐解くと、大いに知的好奇心が高まります。
本書は、化学者として生命はどう生まれたか、地球外に生命が存在する可能性を研究する著者が、ハリウッド映画やSF小説を引用しながら、地球外知性体:ETI(Extraterrestrial Intelligence)や比較惑星学という学問的領域を踏まえて、宇宙生命学(アストロ・バイオロジー)の過去・現在・未来を概観する、入門書といえるでしょう。
また、著者はETIとの遭遇(まさしく‟未知との遭遇”です。)について、なかなか想定できないものの、『私たちにできることは、未来に彼らと遭遇できることを祈りつつ、その時まで自分たちの文明を滅ぼさないように努力することです。』と結論付けております。
そのためには、宇宙生命学が持続可能な開発目標:SDGsへ貢献し、自己中心的な分断された世界への警告となることを掲げておられます。
900円+税の新書ながら、重厚な内容に圧倒されました。
【熊倉 貫宜】
1980年大和証券入社。企業派遣留学としてシカゴ大学経営大学院にてMBA取得。シンガポール、香港駐在を通じてアジア・ビジネスに関わる。
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6. 超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
IFAに特化した営業支援を行っている市川宏さんが、超富裕層が活用している投資戦略を、皆様に簡単にお伝えするコーナーです。
今回は、プライベート投資戦略にも共通する、投資を行う上で絶対にしてはいけない失敗例をお伝えします。
これらは、特に市場が大きく動いている時、下落しているときはやってしまいがちです。投資は常に冷静に行う必要がありますが、この2点は、してしまわないように心得ておきましょう。
冷静に投資するために投資の心理サイクルを理解する
金融市場は投資家の心理面に非常に大きく左右されます。特に、個人投資家のメンタルは同じ方向に動きやすいため、注意が必要です。
この投資の心理サイクルを理解しておくと、常に冷静に投資をすることができます。超富裕層の個人投資家は私が見ている限り、これらの心理サイクルには影響されません。むしろこの心理をうまく利用し、投資に成功しています。
米国の個人投資家数はこの10年で急激に増えています。2010年、米国株の売買数量における、個人投資家の比率はわずか10%に過ぎませんでした。しかし、その比率は2020年には20%近くを占めるようになりました。
その理由の一つとして、新型コロナウイルスの流行が考えられます。人々は自粛生活を強いられた結果、家にいる時間が増えました。その結果、投資をする人が増えています。
この動きはアメリカだけでなく日本でも同様です。インフルエンサーなどの影響もあり、投資初心者が一気に増えました。これは私たち金融業界の人間にとっては非常に嬉しい動きですが、ほとんどの方が典型的な投資の心理サイクル通りなのがとても残念です。
ここ数年は株式市場が右肩上がりだったため、投資を始めてすぐに利益が上がり続ける状況が続き、投資家心理としては図とほぼ同じように感じていた方も多いのではないでしょうか。
2022年に入り市場が下落をすると、プラスの感情の後に不安やパニックなどのマイナスな感情に襲われているようです。
投資の間違い① 高く買って安く売る
さて、富裕層は絶対に犯さない投資の失敗の1つ目です。それは「高く買って安く売ってしまう」ことです。
例えば、ある企業が他の企業と連携する、新製品を発売するといったようなニュースが流れてきたとします。それをインフルエンサーが紹介して投資を推奨しています。
そのような時、個人投資家はつられて投資をしてしまうのです。つまり、「楽観」や「興奮」といった感情に流されてしまうということです。
その後株価が下落をし含み損になると、「不安」や「パニック」に陥り損切してしまいます。
結果、高く買って安く売ってしまい、その投資は失敗してしまうのです。
大事なことは、「他の投資家も投資をしている」からといって周りに流されずに、自分で、もしくは信頼できるアドバイザーに相談して、本当に投資をするべきなのかしっかり考える必要があります。
そして、もしその企業に投資をすると決めたら、取るべき行動は次のいずれかです。
・利益が出たら短期的に利益を得る。
・含み損に動じずに持ち続ける。
この場合、しっかりと事前に考えていれば、含み損が出たとしても動じないメンタルを持つことができます。投資は長期で考えるべきものです。
投資の間違い② 1つの投資先に偏ってしまう
投資家がしがちな2つめの間違いは、1つの企業や1つのセクターに偏って投資をしてしまうことです。
投資にはリスクがあります。リスクは投資手法によって「軽減」させることができます。しかし、偏った投資をしてしまうと、リスクを軽減どころか「増大」させてしまいます。
例えば、ITセクターのとある株価が伸びているからといって他の類似の銘柄まで全てが今後長期的に伸び続けることはありません。手を出す必要のないものにまで投資をすれば、不要なリスクを背負うことになってしまうのです。
この失敗は、自分に合った投資戦略を理解できていないということでもあるので、回避する方法は自分だけで考えないことです。
必ずおとずれる「不安」
投資家の心理サイクルでおとずれる「不安」。これは投資をしていると避けられないものです。不安な気持ちに陥り、しばらくあらゆる悲観的な感情に苦しめられることがあると思います。
しかしそれは同時に、その後おとずれる「希望」が約束されているとも言えるでしょう。それが市場というものです。
落ち着いて取るべき選択肢を見極めていきましょう。投資家の心理サイクルを理解することが重要です。その上で、信頼できるアドバイザーを見つけましょう。そうすれば、先ほどの2つの間違いを犯すこともなく、落ち着いて対処することができます。
【市川宏】
株式会社Winviser代表取締役。SMBC日興証券にて茨城、福岡、東京の各支店にて資産運用コンサルティングに従事した後、超富裕層向け金融商品のマーケティングを行う。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)業者に転籍し、超富裕層の資産運用のアドバイスを行った後、日本の金融業界の発展のためIFAに特化した支援会社を設立。現在は、IFAを支援する傍ら、自身の経験を元に個人投資家に資産運用のサードオピニオンを行っている。
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7. 今後の活動情報
◇ストックボイス:6月15日(水)11:00
◇日経CNBC:6月29日(水)電話インタビュー(改野さん)
6月30日(木)大倉さん電話インタビュー(改野さん)
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