米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.41]2022年4月4日配信
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米国株式投資の真実を伝える
[Vol.41]2022年4月4日配信
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川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
***目次***
マーケット振り返り
今週のピックアップ記事
川田の気になる銘柄
投資のヒント
お散歩
ちょっと教えて「失敗しない資産形成のヒント」
超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
活動情報
皆様が資産形成で成功するために一緒に学び啓発し合うオンラインサロンです。大好評のメルマガ「メディアで鍛える米国株式講座」だけでは伝えきれない内容や、米国株式投資の魅力を体感できる会員向けのセミナーを提供します。
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
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1.マーケット振り返り(3月28日~4月1日)
<主要指数>
・NYダウ -0.1%
・S&P500指数 +0.1%
・ナスダック総合指数 +0.7%
=駆け足バージョン=
停戦交渉の進展が期待されて底堅く推移した一方、インフレ懸念を受けた金利上昇や四半期末を控えた様子見姿勢が上値を抑えました。週末発表の雇用統計を受けて金利上昇は続きましたが、株式市場への影響は限定的でした。
=ちょっとだけ詳しく=
上海の都市封鎖や長期金利と短期金利の逆転(景気後退の前兆だとの見方があります)などの懸念材料はあったものの、ウクライナ紛争の停戦交渉が進展するとの期待感などが下支えとなり、週前半は底堅く推移しました。
その後は、四半期末や3月の雇用統計の発表を控えていることから様子見気分が強まり、停戦交渉に大きな進展が見られなかったことに加え、2月のコア個人消費支出の価格指数が前年同月比6.4%と1982年1月以来の上昇率となったことなどが嫌気されて下落しました。
雇用統計は雇用市場の回復や賃金の上昇を示す内容で、インフレ懸念から金利の上昇は見られましたが、市場予想を下回ったことから株式市場に大きな影響はありませんでした。
S&P500指数チャート1年間
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2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 低失業率、気をもむFRB 4/2
先週金曜の雇用統計で失業率が3.6%と前月から0.2ポイント低下し2020年2月に付けた約50年ぶりの低水準(3.5%)にほぼ並んだ。FRBの高官の多くは、低すぎる失業率がインフレ加速の要因と苦慮しているに違いない。
「米国の自然失業率がコロナ禍で上昇した」
自然失業率とは労働市場の需給が長期的に均衡する失業率。実際の失業率が自然失業率を下回ると労働需給が逼迫し、賃金が上がりやすくなり、インフレを招く。全米経済研究所は自然失業率がコロナ前の4.5%から昨年末に5.9%に上昇したと発表した。
人手不足は深刻化 株高や政府の補助金で十分な資産を持った個人は、好条件を求めて仕事をえり好み。企業は賃上げしないと従業員を確保できないため、失業率が高い状態でも賃金が上がりやすくなった。その結果、自然失業率が上がったわけだ。
長短金利の逆転:2年債利回りは前日比0.13%高い2.46%に上昇し、10年債(2.38%)を終値で上回った。終値での利回り逆転は19年8月以来だ。「逆イールド」と呼ばれ、景気後退の予兆とされる。
ただし株式市場には警戒感はさほどでもない。10年債と2年債の逆イールドは景気後退に2年程度先行するとされ、今から心配する必要はないということだろう。直近4回の10年債と2年債の逆イールドでは、最初に逆転が発生してからS&P500指数はピークまで平均29%上昇した。
【川田コメント】
FRBの想定する自然失業率は4%。失業率が4%台後半だった昨年秋でも「最大雇用には達していない」と主張するFRB高官が多かった。自然失業率が例えば6%だったなら金融緩和を続けすぎたことになる。
2年/10年の金利逆転(含む‟すれすれ”)とS&P500指数のパフォーマンス(1976年以降)
【2】Newsweek 日本「賃金停滞」の根深い原因をはっきり示す 4つのグラフ 3月29日号
日本の大卒初任給が20万円程度で伸び悩む一方、米国では50万円を超えることも珍しくない。ドイツでは最近まで最低賃金制度が存在しなかったが、賃金は日本より圧倒的に高く推移してきた。
日米独における付加価値の違い:米国は全ての部門において、ドイツもほぼ全ての部門において日本より付加価値が高い。日本企業が売り上げも価格も変えられないということは、企業競争力に問題がある。
日本は1980年代までは順調に世界シェアを拡大し、一時はドイツと拮抗していたが、1990年代以降、軒並みシェアを落とし、今では4%を割るまでになっている。
1995年以降、日本だけがIT投資を減らすという異常事態になった。賃金は企業の付加価値が源泉であり、企業の業績が拡大しないと賃金は上がらない。
米国では株主の意向が強く、利益を上げられない経営者は容赦なく追及される。ドイツの法律では債務超過を一定期間以上放置すると罰則が適用されるなど、経営者の甘えを許さない仕組みになっている。
日本では中小企業の多くが大企業の隷属的な下請になっており、慢性的な低収益に苦しんでいる。上場企業に対するガバナンスを諸外国並みに強化し、中小企業の自立を促す金融システム改革を進めれば、日本企業の収益は大きく改善するだろう。
米国では賃金の実質的な伸びが、労働市場のトップ1割に当たる高レベルの職業はハイテクの職種に集中している。従業員には生産性に見合う報酬を与えない一方、経営者は生産性を上回るレント(超過利潤)を享受している。
【川田コメント】
米国の労働市場では人材の流動化が進んでいるし、企業側も人件費は変動費と割り切っているようだ。さらにドイツの中堅・中小企業は大企業の下請けという意識は薄いらしい。記事では日本とドイツを比較して「日本の中小企業の多くは大企業の隷属的な下請け」という。
どの国もその国に即した制度が定着しているので米・独との単純な比較は誤解を招くだろう。日本の場合、雇用の維持そのものが優先事項なので労働分配率が低くても賃金が上がらなくても公平感さえ維持できれば労働者は「しかたない」を受け入れる。それが日本だと私は思っている。ただし、投資家の立場であれば別のはずだ。
【4】ロイタ― コラム:独り勝ち米経済と株高、日本株につれ高の余禄 QTが試練 | Reuters 3/25 By 田巻一彦
<0.5%利上げ観測と株高の構図>
FRB幹部からは、5月FOMCでの0.5%利上げの可能性が高いとの声が相次いだ。大幅な利上げ観測や長期金利上昇では売り方向に反応しやすい米株式市場が、どうして上昇基調を維持しているのか──。
<原油・穀物・防衛装備、利益は米国に>
1つ目:原油価格の上昇。日本のような原油輸入国にとっては重税と同じ効果をもたらすが、今や世界最大の原油産出国(2021年の1日当たり生産量は1647万バレル、BP調べ)である米国にとっては、富の流入をもたらす現象。
2つ目:小麦など農産物価格の上昇。ロシアとウクライナの輸出停止で小麦先物は一時、1ブッシェル12.7ドル台まで上昇。現在は10ドル台での推移だが、年初から4割超の値上がり。米国は中国、インド、ロシアに次ぐ世界4位の生産国であり、小麦価格上昇の恩恵を受ける立場だ。
3つ目:ロシアの侵攻による世界のパワーバランスの大きな変化と国防費の増大。欧州ではドイツが国防費の対国内総生産(GDP)比2%への引き上げを表明。その他の欧州各国でも軍備増強が具体的な計画として持ち上がっている。この需要の大きな受け皿になるのが、ロッキード・マーチンやレイセオン・テクノロジーズなどの米大手防衛企業だ。
<不利な欧州と日本>
欧州は、ロシアからの石油や天然ガスの輸入依存度が高く、エネルギー価格の上昇を伴ったコストアップの転嫁がままならず、最悪のケースではスタグフレーションに突入するリスクもある。日本も円安進行とエネルギー価格上昇のダブルパンチで、国富の流出が止まらない。
このように見てくると、ロシアのウクライナ侵攻後に世界で起きている経済変動の中で、米国にだけ「追い風」が吹き、経済的には「独り勝ち」の様相を示している。米株を業種別に見ても、原油上昇によるエネルギー関連株や利上げ観測を背景にした金融株の活況が目立ち、米株押し上げの厚みが増している。
【川田コメント】
この記事は直近の米国株式の反発をうまく捉えていると思った。著者は田巻一彦氏だ。見かけない名前なのでググると
「昭和57年慶應義塾大学卒業、同59年毎日新聞入社。経済部記者として日銀、通産省、NTTなどを担当。平成6年1月にロイター入社。日本語ニュース副編集長、コラムニスト、日本語ニュースエディターを経て令和2年10月から現職。」
平成6年(1994年)入社なので推測するに40代で伝統的な日系メディアから外資グローバルへ転職だ。日本の伝統メディアでは、いまも昔も「米国独り勝ち」なんて言いづらかったのかもしれない。
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3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
今週の銘柄
ドアダッシュ <ティッカー:DASH> DoorDash, Inc.
概要
米国の料理宅配業界で後発ながら、現在はシェアが約50%のトップ企業です。日本のソフトバンクもファンド経由で出資しており、カナダ、オーストラリアなどでも事業を展開しています。料理以外の日用品の宅配も手掛けています。
同社の魅力
好決算
2021年10~12月期の売上高と2022年1~3月期の売上高ガイダンスは、市場の予想を上回る好決算でした。月間平均利用者数は前年同期比22%増の2500万人、総注文数は35%増の3億6900万件、総注文額は36%増の112億ドルと、いずれも四半期として過去最高でした。
(図1:ドアダッシュの注文の推移)
好調の要因の一つは「リピート回数の多さ」です。過去5年に新規に利用した顧客が、翌年以降に平均で何回利用したか調べると、年を経るごとに増えています。たとえば図2では、2016年に初めて利用した人は、6年後の2021年に全体の平均で見ると、3.7倍利用していることになります。利用しなくなった顧客を勘案すると、ヘビーユーザーが毎年増えていることになります。
(図2:ドアダッシュ新規利用者全体のリピート回数)
料理宅配以外の可能性
ドアダッシュは料理宅配以外にも日用品の宅配を行っています。この場合は各地にある配送センターから注文主に届けるもので、通販で買ったものが料理と同様にすぐに届くというイメージです。認知度とサービス地域の拡大により、料理以外でドアダッシュを利用するユーザーが増えています。図3では、料理宅配以外の利用が20%を超える地域が100を超えるようになったことが示されています(一番右側の棒グラフ)。
(図3:料理宅配以外の利用率の増加)
料理以外の宅配事業では、大手のスーパーマーケットチェーンとも提携して、生鮮品の宅配も手掛けています。また、レストラン向けのITサービスを展開するベンチャー企業を最近買収し、消費者だけではなく、レストランのほうからもドアダッシュが利用される環境作りを行っています。
ウォルト(Wolt)の買収
2021年11月に同業でフィンランドのウォルトの買収を発表しました。買収金額は約70億ユーロで、2022年前半の完了を予定しています。
ウォルトは欧州や日本を中心に事業展開をしており、ドアダッシュとの地理的にはかなり良好な補完関係にあります。ウォルトは人件費の高い北欧で成功したビジネスモデルを持っており、ドアダッシュの国際展開を担うと期待されます。
(図4:ドアダッシュとウォルトの事業地域)
(図1は会社データを基に当社作成、図2~4は会社資料より)
リスク
2021年10-12月期の決算発表があった2月以降の安値から50%程度上昇しているため、短期的には利益確定の動きが見られる可能性があります。また、宅配業界の競争が厳しいため、シェアの低下や市場が予想する売上高の未達が株価に大きく影響するリスクもあります。
DASHの基本データ(出所:会社データ、Yahoo! Finance)
(4月1日現在)
株価 120.90ドル
時価総額 421.2億ドル
総収入 49億ドル
予想PER N/A
実績利回り N/A
本社:カリフォルニア州 サンフランシスコ
上場:2020年12月
株価チャート 2021年3月22日からの日足
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
①S&P500指数四半期パフォーマンス
S&P500指数は四半期ベースでは5%近く下げて、2020年1-3月(第1四半期)以来の大幅安。
同一四半期内で大幅な下落と上昇
S&P500指数が前四半期の終値から10%以上下落した後に10%以上上昇したことは、戦後11回ある。今年の第1四半期はそれが起きた。この11四半期のうち、S&P500指数が前四半期末から上昇して引けたのは3回だけだ。
その1四半期後、つまり翌四半期のS&P500指数のパフォーマンスの中央値は14.9%の上昇で、1回(2008年第4四半期)を除いてすべてプラス。さらに1年後のS&P500指数は中央値で26.7%の上昇。
季節的にもS&P500指数は上がりやすい時期に差し掛かる
ロシアのウクライナ侵攻が地政学リスクを高め、新たな世界の枠組みが形作られようとしている。それでも、私は米国株式の魅力は衰えないと思っている。
下記にあるとおり、過去20年のS&P500指数は、この時期に好パフォーマンスを記録している。NISAの積み立てや追加投資はこの時期が有力候補ではないか。
S&P500、過去20年の平均リターン
②思い切った利上げでインフレ抑制と経済成長の維持を
3月22日にセントルイス地区連銀のブラード総裁は「インフレ抑制に向け積極的に行動する必要がある」と述べ、政策金利を今年3%に引き上げるべきだという考えを強調した。これは1994年の積極的な利上げがその後の長期の経済成長に繋がった事例の再現を念頭においた発言とされている。
ソフトランディング可能?
FRBは、予想外だった1994年2月の25ベーシスポイント(bp)のフェデラルファンド(FF)金利の引き上げを皮切りに、断固として金融政策の引き締めに転じた。その後、予想を上回る50bpの急激な利上げを繰り返し、最後に75bpの利上げを行い、1年余りでFF金利は3%から6%へと2倍になった。これにより、FRBはリセッションを伴わずにインフレ率を3%未満に抑え、世紀末のドットコムブームによる好景気の舞台を整えた。
副作用もあった
一方で住宅ローン担保証券(MBS)市場の混乱、カリフォルニア州オレンジ郡の金利デリバティブ取引の失敗による破綻、メキシコのペソ危機(米国が救済)などの副作用も起きた。
米国における1994年の利上げ局面と株価 FF金利、インフレ率
グリーンスパン FRB議長(当時)は、市場との対話を重視した最初の議長でもあり、FOMC(米連邦公開市場委員会)終了後の声明文発表が定着したのもこの時期だ。その後、インフレ率は安定し、利上げによる景気低迷にもならず、利上げ開始で一旦下落した株式市場は、2 度目の利上げをした後に底打ちした。株価上昇は上図の範囲にとどまらず、その後も上昇トレンドは崩れず、2000 年 1 月まで長期上昇トレンドを描くことになる。
94年の利上げは中間選挙前の利上げ
90年代以降に米国の重要選挙前に近接してFRBの利上げがあったのは94年と04年の2回だけ。バイデン政権が繰り返したくないのは94年、同じ民主党のクリントン政権の前例。
グリーンスパン議長率いるFRBは、94年2月から8月にかけてインフレ圧力の抑制へ利上げを続けた。11月、政権1期目で最初の中間選挙で民主党は上下両院の過半数をともに共和党に明け渡した。
94年の消費者物価の上昇率は2〜3%台だった。いまバイデン大統領が直面する7%の物価上昇は格段に強いインフレ圧力だ。
S&P500指数のパフォーマンス(1970-2021)
1994年2月〜1995年2月の利上げのあと、株式市場は未曽有の高パフォーマンスを記録する。
ナスダック100指数のパフォーマンス
(1986-2021)配当含まず
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5.お散歩コーナー
◇◇最近行ったお店、映画、美術館、書籍編◇◇
~熊倉 貫宜の巻~
元証券マンで読書家である熊倉貫宜さんの寄稿です。
米国株 長き宴の終わり/若林 栄四
私が証券業者としてよちよち歩きを始めた頃、罫線分析を得意とする先輩証券マンは数多くいらっしゃいました。
その中にはチャーチストとかテクニシャンと呼ばれ、罫線分析を専門としながら法人営業の最先端に関わる花形社員もおりました。
そんなスター・チャーチストとも呼べる方が、大手証券を中心に各社にいらっしゃった時代でした。
現代では、当たるも八卦・当たらぬも八卦と、罫線分析は業界の“古制”程度にしかみなされず、株価予想には企業分析を中心としたファンダメンタル分析に主力が置かれております。
そんな罫線分析不毛の時代に大いに気を吐くのが本書の著者、若林栄四氏で、本書でもお得意の黄金分割による罫線分析を武器として、大胆な予想を展開されております。
私は企業分析を王道とする現代の証券分析に利ありとするもので、若林氏のような罫線分析に信頼を置くわけではありませんが、それでも若林氏の新著が発表されるたびに入手したいという誘惑には抗えません。
そこには確固たる世界観が完結しており、『「いついくらになるか」まで予測しなければ相場は勝てない』とまで言い切る若林氏の禁欲的で厳格な姿勢に感嘆するからです。
相場予想のアタリ・ハズレなど問題ではないのです。
また、拠点をニューヨークに置く若林氏によるアメリカ政治や中国動向に関する私見にも興味を覚えるからです。
決して個人の資産運用の参考になる書ではありませんし、一種の珍書・奇書(失礼)のようなものですが、時事折々に届けられる若林の新著には、業界の大先輩の気概のようなものが満ちており、いつも頭が下がる思いで一杯です。
もののあはれ (ケン・リュウ短篇傑作集2) /ケン・リュウ
私が高校生の頃、1970年代には、サイエンス・フィクション、いわゆるSFは大変に人気のある分野で、多くの高校でSF研究会が組織され、横の連絡も盛んでありました。
その活動の中で盛んに議論されたのは、宇宙旅行や異星人といった従来のテーマから大きく離れた“ニューウェイブ”と呼ばれる精神世界を探求する作品群でした。
1980年代以降も、加速度的に発展するコンピュータ技術を背景とする電脳空間を舞台にした“サイバー・パンク”を筆頭に、SFは様々な派生分野を生みながら現代において一つの文化的地位を築き上げております。
この分野における近年の大きな話題は中国系の書き手の台頭でしょう。
大作「三体」が大きな話題となった劉 慈欣、「あなたの人生の物語」や「息吹」と云った短編集が評判のテッド・チャン、そして本短編集の書き手であるケン・リュウ(劉宇昆)といった名前が挙げられます。
私は本書収録の「円弧(アーク)」と云う短編に強く惹きつけられました。この作品は「不老不死」をテーマにしており、その点でも中華・アジア圏の文化を感じさせます。
遺伝子工学の技術革新により永遠の生命を得た主人公と、その技術の開発者でありながら遺伝子異常から不老不死の人生を取り逃がしてしまう彼女の夫、そして生き残った主人公の選択とは?
ところで、この短編は昨年「Arc アーク」という日本映画に結実いたしました。
こちらも若い役者さんたちが難しいテーマを精一杯演じていて、なかなか好感の持てる佳作に仕上がりました。
機会がございましたら是非、ご鑑賞ください。
【熊倉 貫宜】
1980年大和証券入社。企業派遣留学としてシカゴ大学経営大学院にてMBA取得。シンガポール、香港駐在を通しアジアビジネスに関わる。
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6. ちょっと教えて「失敗しない資産形成のヒント」
ファイナンシャルアドバイザーの本橋竜一さんが、中長期にわたる着実な資産形成のために大切なヒントをお伝えします。
これまでは、「趣味としての投資」と「仕事としての運用」という2つの異なる投資スタイルをご紹介し、それぞれのスタイルに取り組む上での大切な心がまえ『相場感(勘?)と投資観』とポイント『長期・分散・積立(分割買付)投資』について考えてみました。
多くの投資や資産運用の教科書、多くのFPさんや私のようなIFAと呼ばれる資産運用アドバイザーも、長期・分散・積立投資の重要性を釈迦に説法の如く連呼します。正直、もう「耳タコ」です。
投資家の皆さまは「そんな事は解ってるよ。どの本にも書いてあるし、有名なFPやFAもそう言っているから、もういいよ」という感じだと思うんです。
では「72の法則で複利は知ってますか?」と、これも「今の定期預金の0.零零零零1の金利で何百年で元本が倍になります」って、もはや常識とも言うべき事を、未だに先生顔で教えようとするFP・FAもいたりします。
しかし、かのアインシュタインが世紀の大発明と呼んだこの「複利効果」こそ、このメルマガでご縁があった皆さまには正確に理解・イメージして頂きたいと思いますので、敢えてご紹介します。
■よく目にする複利の効果のイメージ…
個人投資家はプロと違って、時間(投資期間)の裁量も大きく、これを武器にじっくり資産の成長を待つことが出来ます。この時間を味方に…というところが「資産運用の王道」と言われる所以です。
ここでの時間(投資期間)で威力を発揮してくれるのが、「複利効果」なのです。
この複利効果、短期での売買では意味はありませんが、長期投資になると複利運用では資産が二次曲線的に増えていきます。
【よく目にする複利運用のイメージ】
しかし、この複利は必ずしも「良い雪だるま」になる訳ではなく、とても気まぐれなのです。
私も、時々お客さまから「投信の分配金を受け取らず、再投資すれば良いですよね」とのご質問を受けますが、それだけでは不十分なんです。
■大切なのは「殖やす」よりも「大きく●●しない」こと!
複利効果を味方にする上での最大のポイントは、
「ブレを小さくする=大きく●●しない」ことなのです。 ※●●の答え…後述
ここで簡単な例を見て下さい。
今、Aさん、Bさんの二人が1,000万円を元手に運用を始めるとします。
上段をAさん、下段をBさんとします。
【クイズ:殖やすよりも◯◯さない】 出所:筆者セミナー資料より
Aさんは時流を捉え、今年はこのテーマで行こうと、儲かるモノを当てにいく「趣味の投資」が大好きなタイプです。
1年目は、為替が円安に行きそうだと海外リートで10%ほど儲かった。2年目はもっと円安になって更に20%儲かった。3年目、これからはやはり海外の成長企業の株式だと思い切りシフトすると海外株式の下落と円高で20%やられてしまいます。そこで少し反省したAさんは、気持ちを入れ替えもう一度海外リートに乗り換えて4年目は10%プラスでした。
儲かりそうなモノに集中投資して得た結果です。
Aさんは始めは+10%であったものの、年間騰落率2年目、3年目がプラスマイナス20%で行って来い、4年間で+20%、4で割ると年平均5%という結果になりました。※(10+20-20+10)÷4=5%ですね。
一方下段のBさんは、こちらは「私は経済の先見性など全くなく、何が儲かるかなんて当てられる訳がない。ましてや証券会社の営業パーソンのセールストークは怪しくて眉唾ものだ。であるならば、仕事としての運用を長く続けて行ければそれで御の字」という堅実な投資家です。
Bさんは得意の分散投資をルーレットに例えています。
赤が出そうだから赤に8枚張るけど同時に黒に2枚張るというスタイルです。思い通り赤が出れば1年目+6(%)です。2年目、自信があれば赤9枚-黒1枚で+8(%)、3年目、自信がないので赤6枚-黒4枚で-2(%)と…常に両掛けしていきます。こうして一度に大きく負けることはない状況を作り出したのが、下段のBさんです。ルーレットの両掛けの要領で分散投資を駆使し「仕事としての運用」を継続していきます。
■年平均リターンでは負けていても資産が殖えている?
実は、Bさんの年平均騰落率は4.5%です。※(6+8-2+6)÷4=4.5%
よって、年平均騰落率ではAさん:5.0% > Bさん:4.5%とAさんに軍配。
下の図を見て頂くと、上段のAさんの方が年平均騰落率は高いです。
1年毎の勝ち負けを見ると・・・
1年目Aさんの勝ち
2年目Aさんの勝ち
3年目はBさんが勝ちだけど、、、
4年目Aさんの勝ち‥‥という事で、Aさんの3勝1敗です。
こうしてみるとAさんの方が何となく上手く相場を乗り切り、資産運用での勝者のようです。趣味の投資として投資を行う方は「Aさんはなかなか投資が上手いなぁ」と思うかもしれません。
しかし、複利運用で考えると変な事になっています。
なんと、年平均リターンが低いBさんの方が資産が殖えているのです!
下の図で4年後の元利合計は、Aさん1,161.6万円、Bさん1,189.2万円。
これは計算間違いではありません!
何が起こっているのでしょうか?これこそ複利運用の「効果」でもあり、「諸刃の剣」でもあるのです。
複利運用は、プラスの時にはより儲けを殖やしてくれますが、マイナスになるとマイナスも殖やしてしまうという特徴があります。
【答え:殖やすよりも減らさない=大きく負けない!】 出所:筆者セミナー資料より
Aさんの場合、3年目の-20%、ここがマイナスの複利効果(諸刃の剣)で、儲かった後に大きく凹んでしまいますと、大きく資産が減ってしまい、結果的に資産が増えない状況になってしまうのです。
これがBさんのような仕事としての運用では、大きく減らさない「分散投資」を行う最大の理由と言えます。
投資家の方々には、何度聞いても「リスクは損失」と思っている方もいるようです。
これを機に正確にリスク=ブレ幅、分散投資でリスクを抑える=大きく負けない(減らさない)手法を、ご自身で腹落ちするレベルまでマスター出来れば、多少のマーケットの変動でもドキドキせず、じっくり着実な資産形成に取り組めるはずです。
【イメージ:殖やすよりも減らさない=大きく負けない!】 出所:筆者セミナー資料より
FP・FAと言われる方々の中には、バラ色の「雪だるまの複利効果」だけをお客さまに提示し、資産が加速度的に殖えるような誤解を与えたり、「分散投資をするとリスクが減ります」という説明が行われています。
複利は気まぐれで、時には「雪だるま」にもなり、時には「諸刃の剣」にもなる。リスクは損失ではなく、資産の「ブレ幅」のことを表すという点を確り理解しておくことは大切です。
実は、よく理解していない「なんちゃってアドバイザー(FP・FA)」も多いのでご注意を!
※●●の答え…「減らさない」
【本橋竜一】
1998年に大学を卒業後、横浜銀行にて金融業界でのキャリアをスタート。その後、外資系金融機関のプライベートバンカーへ転身。間もなく世界を震撼させるリーマンショックが勃発し、第一線のセールスとして成功を諦め、正統派な資産運用を伝えるファイナンシャルアドバイザーを目指そうと決意。数名の顧客を頼りに約20年の金融機関勤務から独立。信用・人脈ゼロながら、海外のPB・FAビジネスモデルを徹底研究、顧客体験の向上に資する創意工夫を重ねる日々。
現在は、特定の金融機関に属さず、真にお客様の価値観を大切にした資産運用・形成サポートを専業とする、独立系ファイナンシャルアドバイザーとして、お客様へのプライベート金融コンサルティングに従事している。
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7. 超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
IFAに特化した営業支援を行っている市川宏さんが、超富裕層が活用している投資戦略を、皆様に簡単にお伝えするコーナーです。
「ストラクチャード・ボンド投資」
前回に引き続き、プライベート投資戦略のうちの一つの商品、「ストラクチャード・ボンド投資」についてお伝えします。
今回ご紹介するのは債券の一種ですが、いわゆる「仕組債」ではありません。通常の社債・国債よりも利回りが高い「CoCo債(Contingent Convertible Bonds、偶発転換社債)」といわれる商品です。欧州の金融機関が主に発行している比較的新しいタイプである「CoCo債」について、その投資と留意すべきポイントについてまとめました。
CoCo債とは
CoCo債とは、発行体である金融機関の自己資本比率があらかじめ定められた水準を下回った場合などにおいて、元本の一部または全部が削減される、または、強制的に株式に転換されるなどの仕組み(トリガー条項と呼びます)を有する証券です。簡単に言うと、元本割れのリスクが高い債券です。
このような特性から、CoCo債は、同一発行体の普通社債と比べて利回り水準が高い傾向にあります。また、CoCo債は比較的新しい資産であり、社債などと比べて市場での認知が進んでいないとみられ、CoCo債の利回り水準は同格付の社債に比べ高くなる傾向にあります。
CoCo債は購入単位が1,000万円などに設定されているため、一般的に投資案件は公開されていません。債券の中でも魅力的な商品ですが、個人投資家がそのような債券を購入するためには、証券会社やIFA経由でディーラーから仕入れてもらうしかありません。
CoCo債はなぜ高利回りか
CoCo債は主に大手金融機関が発行します。一般企業と異なり、金融機関は実質的に規制当局の判断により破たんが決まります。その基準となるのが金融機関の自己資本規制であり、金融機関は自身の自己資本比率を、求められる一定の基準以上に維持する必要があります。
自己資本比率を引き上げるために発行されるのが、このような証券です。中でも、CoCo債は、発行する側が「安定した発行を続けたいという意思」が強く、資本として認められるための条件は付与されていますが、高いクーポンを享受できる可能性が高い資産と言えます。
投資におけるポイント
投資家にとってCoCo債特有のリスクは、3つあります。
①実質的な元本割れ?
発行体の自己資本比率がトリガーに抵触すると、元本の一部または全部の削減、または強制的な普通株式への転換が発生します。ただ、このトリガー水準は、特に大手銀行にとっては、すでに破たんに近い水準と言ってよいものなので、規制当局との連携の下、増資による資本増強が実行される可能性が高いと言えます。
②クーポンの支払いが行われない可能性
CoCo債の最大のリスクはクーポンスキップです。仮に増資に成功して自己資本比率が改善しても、巨額の赤字を計上して普通株式の配当を取りやめるような場合、発行体の判断で、クーポンの支払いをスキップする可能性があります。
③償還時期が変わる
CoCo債や劣後債の場合、満期日より前に早期償還日というものが設定されています。これは、ファーストコールと呼ばれ、この日に早期償還されることが多く、満期まで保有するのではなく、投資家はファーストコールでのコール(償還)を前提とした投資を行っています。
このように、通常の社債と違い、利回りが高く、リスクもあるCoCo債ですが、ポートフォリオの一部として保有するという選択肢も良いことです。年金基金などの機関投資家はこのタイプの債券へ投資していることが多いです。許容できるリスクと向き合いながら投資を決定しましょう。
【市川宏】
株式会社Winviser代表取締役。SMBC日興証券にて茨城、福岡、東京の各支店にて資産運用コンサルティングに従事した後、超富裕層向け金融商品のマーケティングを行う。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)業者に転籍し、超富裕層の資産運用のアドバイスを行った後、日本の金融業界の発展のためIFAに特化した支援会社を設立。現在は、IFAを支援する傍ら、自身の経験を元に個人投資家に資産運用のサードオピニオンを行っている。
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8. 今後の活動情報
◇ストックボイス:4月6日、20日(水)11:00~
◇日経CNBC:4月20日(水)電話インタビュー
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