米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.33]2022年2月7日配信
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米国株式投資の真実を伝える
川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
[Vol.33]2022年2月7日配信
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***目次***
マーケット振り返り
今週のピックアップ記事
【米主導秩序 二度と戻らず テック巨人 民主主義の脅威】【FINANCIAL TIMES 日本は水際対策見直しを アジア・ビジネス・エディター レオ・ルイス】【高校生、投資を学ぶ プロが出張授業 金融教育、今春に必修化 まず教師に知識】【米株の信用取引、7月解禁 大型1300銘柄限定、顧客の基準も厳しく】
川田の気になる銘柄
投資のヒント
川田のお散歩
ちょっと教えて「失敗しない資産形成のヒント」
活動情報
質問コーナー
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
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1.マーケット振り返り(1月24日~2月4日)
<主要指数>
・NYダウ +2.4%
・S&P500指数 +2.3%
・ナスダック総合指数 +2.4%
=駆け足バージョン=
米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて3月の利上げがほぼ確実になりました。1月中は金融政策の不透明感を背景に不安定な値動きとなりましたが、金利が落ち着くと企業業績が注目され、好決算銘柄を中心に買われました。
=ちょっとだけ詳しく=
FOMC前は警戒感から不安定な値動きとなり、S&P500指数は取引時間中に直近の高値から10%超の下落となりました(終値では10%未満)。FOMCの発表を受けて3月の利上げがほぼ確実となりましたが、市場は織り込み済みで、長期金利は落ち着いた動きとなりました。
企業の業績発表がピークを迎え、約8割の企業は市場予想を上回りましたが、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)など、市場の予想を下回った一部の銘柄は急落しました。
2月4日に発表された1月の雇用統計では予想を上回る雇用者数の伸びが発表されたほか、11月や12月分も上方修正されたため、長期金利は再び上昇しましたが、株式市場では決算発表が注目されたため、影響は限定的でした。
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2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 米主導秩序 二度と戻らず テック巨人 民主主義の脅威
3年越しとなるウイルスとの戦い、強まる一方の巨大テック企業の影響力、米中超大国の激しいせめぎ合い……。世界の力学が想像を超えたスピードと広がりで変化する。2030年の世界は誰がどんな形で動かしているのか。国際情勢の将来に目を凝らす米ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長に「今後の10年」を読み解いてもらった。
イアン・ブレマー(Ian Bremmer)
スタンフォード大学で政治学博士号を取得、1998年に世界の政治リスク分析の草分けとなる米調査会社、ユーラシア・グループを設立し、社長に就任。日米欧をはじめ世界各国の政治リーダーや経済人と交流がある。52歳。
以下は日経 菅野幹雄コメンテータの質問
①米国と中国が台湾、米国とロシアがウクライナを巡り、それぞれ緊張を高めていますが?
②2030年、世界のルールを決めるのは誰か。米国主導は続きますか?
③世界に調和できないルールが乱立するおそれはありませんか?
→これからは、課題ごとに違ったタイプの参加者がルールを決める時代に入る。最も問題含みなのがテクノロジーの分野だ。ルールは企業が決めることになる。デジタルの参加者がバーチャルの世界で自治権を行使する一方、いかなる政府部門も何ら大きな影響力を及ぼせない。
もしこの傾向が2030年まで続くなら、世界各国の政府はほんの一握りの企業と権力を分け合う。企業はデータに関するあらゆる点で主権を真に握る。
④(これから我々は単一で一貫したグローバル秩序ができるのではなく、課題ごとに違ったタイプの参加者がルールを決める時代に入るのであれば)人類にとってそれは良いことですか?
⑤政治はそうしたテック企業への規制強化に躍起になっていますが……?
⑥普通の人々はどう思うでしょうか。巨大企業が専制国家のようになり、格差を拡大する存在になるとすれば……?
⑦世界の民主主義は脅威にさらされていると考えますか?
⑧2030年には米中の経済規模が並ぶと言われています。一方で米国も中国も成長の鈍化という試練に直面します。勝者はどちらに?
⑨エネルギーの未来をどう展望しますか。目下は化石燃料の争奪戦が起きています。世界は循環型社会に着実に歩を進めていくでしょうか?
⑩気候変動を否定するトランプ氏が2024年の選挙で再び米国の大統領に選ばれたとしても、そう言えますか?
⑪2030年の人工知能(AI)の役割は。兵器に搭載したり、人事の評価を決めたりする可能性もありますね?
【川田コメント】
今後の世界の課題に対し彼の考えを簡潔に答えている。マーケットに対峙するときに常に意識しておきたいポイントだ。
「米主導秩序二度と戻らず」
面白いのは表題の「米主導秩序二度と戻らず」だ。そしてそれをブレマーは「非常に強い確信をもってそう言える」と。なぜか?「米国自身の分断があまりに著しくそれを望むことすらできない」さらに「中国が全く(米国主導の秩序に)同調しないし、そもそも(中国の)存在が巨大になりすぎる」からだと。
世界の民主主義は脅威に晒されている?
なぜ米国で民主主義の劣化が起きているのか?3つの要素
①米国が強力な起業家精神と民間部門、個人主義に支えられている国だから。→働いても報われないと不公平が広がり人々は怒りを覚える。
②人種間の不公平に向き合っていない。2045年に白人の人口が少数派になると予想される。
③強力なメディア企業とソーシャルメディアを持ち、個人の影響力が最も強く作用する国だからだ。
米国=世界ではないにせよ、現状では米国の影響力が圧倒的に大きいことを前提にした考え方だ。ただし、我々日本人は彼のような米国人の発信する情報は英米のフィルターが掛かっていることを意識すべきだと思う。
米国株式が世界の株式市場に占める比率はざっくり6割だ。一方で米国が世界に占める人口、GDPそして軍事力は6割にとても及ばない。また定量化は出来ないとはいえ、米国のソフトパワーもいくらなんでも6割はないだろう。それでも世界の地政学に及ぼす米国の影響力は、日本のメディアが伝える以上だと思っておいたほうがいい。その意味でブレマー氏の指摘は今度の世界情勢を考える上で参考になる。
【2】日経新聞 FINANCIAL TIMES 日本は水際対策見直しを アジア・ビジネス・エディター レオ・ルイス 2/4
岸田文雄首相は1月17日の施政方針演説で「日本酒、焼酎、泡盛など文化資源のユネスコへの登録を目指すなど、日本の魅力を世界に発信していきます」と述べた。
この約束は、実現は難しいだろう。なぜなら日本の新型コロナウイルスと政治の状況を考えると、日本は今、すさまじいスピードでその魅力を失いつつあり、マイナスの領域へと突入しつつあるようにみえるからだ。
(再入国できない)外国人の多くが日本への入国を諦めてしまった可能性がある。しかも1年延期されて21年夏に開かれた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、何万人にも上る選手やチームのメンバー、大会関係者が周知の通り例外的に入国を許されたわけで、多くの人はこのことを不愉快に感じている。
【川田コメント】
現状で外国人の入国を厳しく制限しているが、これは「日本政府が、もし移民を受け入れなければどうなるかという実験をひそかに進めている」という説があるという。
そして「学者らは、海外研究者らの受け入れ拒否は研究に長期的にマイナスになるだけでなく、海外から優秀な人材を日本に惹きつけること自体が今後、不可能になると警告している。また、金融関係者も厳しい入国規制によって、以前なら無視できなかった日本市場への関心を失うことにつながると懸念している」。
ただしこの外国人受け入れ拒否の結果、「日本が悲惨な事態に陥ることなく何とかやり過ごすことができれば、日本はむしろガラパゴス的鎖国状態の方が活力にあふれ、順調に進化できるのではないかなどと深く信じている人たちを喜ばせることに」。
筆者は鎖国すれば日本のソフトパワーが損なわれると警告するが、そう思わない人も多いに違いない。
しかし、マイクロソフトやアップルを使わずに我々の普段の生活が成り立たないことを自覚するなら、物理的に外国人の入国を制限しても実はそれほど意味はないのではないかと思ってしまう。
我々の生活や思考パターン、そして実態経済を遂行する手段や機能は、既に多くは米国発のガジェットや仕組みに汚染されてしまっているからだ。
鎖国することでなにを守ろうとしているのか?外国人との交流を自ら避ければ、相互に誤解する可能性もまた高まる。今回のコロナ騒動を見ていると日本人の鎖国癖や外国人敬遠の本音が良く分かる。
本音は鎖国大歓迎by澁澤健さんのメール
ところで、先ほどあの澁澤健さん(渋沢栄一は祖父の祖父)からメルマガが届いた。以下、断片的に紹介する。
「現在、「純粋な気持ち」を日本で発揮したいと希望を持つ数多くの若者たちが、抜け出せる見通しが立たないトンネルの暗闇の中で悶々とした思いを抱いています。コロナ禍の水際対策で入国が阻止されている外国人研究者・留学生たちです。数多く寄せられているコメントにも衝撃を受けました。
・ちょっと変に聞こえるかもしれないけど、他の人も日本行きを諦めたのを見ると良い気分になる自分がいる。同じ判断を去年7月に下したけどその後は遥かにハッピーだよ。
・自分は1年以上、入国を待っている37万人の一人。あなたが言うように、我々は寄生虫ではない。達成したい目的があるから日本を選んだのだ。
・幸運を祈る。自分も2年間の悪夢を経て次の展開を望むよ。日本に悪い影響があることを願っているよ。人を入国貨物のように扱うなんて。
・助けて。2020年3月から待っている。自分の人生は台無しだよ。多大な債務を抱えている。学費や入学費を払うために借金している。どうすれば良いの。
どれほど信ぴょう性のある世論調査かわかりませんが、8割の日本人が留学生の入国規制(隔離期間やワクチン接種ではなく遮断)に賛同していると言われています。これが現在の日本社会の実態だとすれば、日本人は自分たちの目先のことしか考えない、鎖国化に陥っていると危惧します。」
外国人にとっては、今回のコロナ危機への対応で、日本人の外国人に対する意識が図らずも露わになったというのだ。「自分は別に外国人が嫌いと言うわけではない」といい張っても、そうは受け取られないのが異文化コミュニケーションの難しいところだ。
『東京国際金融センター』構想などありえない
ついでに言うと、記事中で「在日米国商工会議所の元会頭は先週、新規入国禁止措置の継続は企業活動の足かせとなり、世界的な金融センターを目指す東京の努力(『東京国際金融センター』構想)が水泡に帰すことになると発言した」というくだりがある。
私が所属する米国商工会議所の外国人メンバーの中には、この構想の実現にずいぶん期待していた人もいたようだが、そもそも無理があると思っている。
『国際金融都市東京』が仮に香港、シンガポールなみの柔軟性を備えた金融都市を意味するなら、コロナ危機があろうがなかろうが、その可能性はありえないと思う。
国際金融都市になるには英語での法律、英語での制度のインフラが不可欠だし、そこで働くひとのインセンティブを充足するような税制や社会インフラが不可欠だ。
外国人や限られた日本人だけが香港やシンガポールのような‟おいしい”ルールの特典を享受するなんて、今の日本に受け入れる素地はない。
機運が高まる日本の国際金融センター構想SOMPO 未来研トピックス 2021 Vol.3
【3】日経新聞 高校生、投資を学ぶ プロが出張授業 金融教育、今春に必修化 まず教師に知識 2/5
「米国のウォルト・ディズニーの株をおよそ30年前に買っていたら、今は何倍になっているでしょう。(1)2倍、(2)21倍、(3)119倍」――。21年12月、吉祥女子中学・高等学校(東京都武蔵野市)の教室で、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の社員が生徒たちに問いかけた。
資産形成に軸足:4月から高校の教科書に盛り込まれる金融教育。新しい学習指導要領では生涯の収支計画を考えるため、資産形成の視点から株式や債券、投資信託など金融商品の特徴にも触れる。
都内のある家庭科教員は「少額投資非課税制度(NISA)すら自分で使った経験はなく、正直なところ教えづらい」と漏らす。
【川田コメント】
教える側の教員もNISAを使ったことがない。これでは資産形成の必要性は生徒にどれだけ伝わるのか?でもこれが実態だ。教員が私のサロンに入ってくれれば、それを生徒にも伝えたがるかもしれない。
ところでディズニーは過去30年なら119倍かもしれないが、1957年の公開以降ならもっともっと増えている。ただしこの30年のパフォーマンスはS&P500指数とそれほど変わらない。そのことは授業でカバーできないだろうから以下はご参考だ。
ディズニー(DIS)長期 対数
ディズニー(DIS) DIS/SPY ディズニーとS&P500の相対株価
この10年間に限ればS&P500のパフォーマンスがディズニーより良好だ。
【4】日経新聞 米株の信用取引、7月解禁 大型1300銘柄限定、顧客の基準も厳しく 2/6
米国株式の信用取引が7月から解禁される。日本証券業協会が解禁に向けて検討を重ね、このほど取引に必要なルールを整備した。信用取引が可能な米国株は約1300の大型銘柄とする。
若年層を中心に米国株への投資意欲が高まっており、信用取引を解禁することにした。SBI証券と楽天証券、マネックス証券は7月からサービスを提供する。auカブコム証券は2022年冬に開始予定だ。大手証券からは「慎重に検討したい」との声が聞かれる。
【川田コメント】
私が大手証券で外国株式の担当だった時からの課題だ。あれから30年が経った。対面証券は「慎重に検討したい」なので今回の措置はネット証券が主体になって制度の改正に至ったのだろうか?
手数料、銘柄のカバレッジ、そして今回のルールの改正等、私が対面証券にいた時のフラストレーションを解消しているのはネット証券だ。
米国株式には値幅制限がないので信用取引の仕組みは運用が難しいだろう。実際、先週はメタ・プラットフォームズ(FB)が1日で26%も下落した。M&Aも多いから株価が1日で2倍になることもある。そういう時の空売り側にはどう対処するのか?
ただし、この信用取引制度の導入で日本人の米国株式投資のボリュームはここからさらに増えることだろう。
ちなみにこのニュースは先月にすでに流れてますね。知らないのは私だけでした?失礼。
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3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
今週は一つの銘柄ではなく、大手ハイテク株の決算のまとめとコメントです。具体的にはアップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム(アマゾン)、メタ・プラットフォームズ(メタ、=旧フェイスブック)を取り上げます。
まず、簡単にこれらの銘柄の売上高と業績です。
メタの一人負け
この表からも分かる通り、メタの一人負けです。広告収入の不振から10四半期ぶりの減益になるとともに、今年の1-3月期の売上高の見通しも市場予想を下回りました。他の銘柄は市場予想を上回り、株価もポジティブに反応しました。
上記の決算内容から浮かび上がる結論は、「プラットフォーマーとしての真の実力があるかどうか」になります。
アップルとマイクロソフト
個別に見ると、アップルはiPhone(アイフォーン)の販売が伸びたほか、音楽やゲーム配信などの有料サービスの契約数を伸ばしたことが力強い業績につながりました。契約数の伸びは、アップルの有料サービスが生活のプラットフォームとして利用されていることを物語っています。
マイクロソフトで注目すべき点はクラウドサービスのアジュール事業です。同事業の10~12月期の増収率は46%で、他の事業も含めてクラウドサービスは同社の売り上げの主力となっており、今後もさらに加速が予想されます。
アルファベットとアマゾン
アルファベットは主力の検索事業におけるネット広告が好調だった(この点もメタと異なる)ほか、もう一つの主力事業として注力しているクラウドサービスも順調に伸びています。M&Aを進めていることもあり、クラウドサービス事業の売上高の伸び率はマイクロソフトを上回りました。
アマゾンの純利益は他社に比べて大幅な伸びを示していますが、これは出資していた電気自動車のベンチャー企業であるリビアンが上場して、純利益に大きく貢献したからです。これを差し引くと減益だったとみられますが、プライム会員の会費値上げなども発表しており、本業に対する自信がうかがえます。また、クラウドサービスのアマゾン・ウエブ・サービス(AWS)も好調で、こちらは市場予想を上回る売り上げを計上しました。
クラウドビジネスが鍵
このようにアップルを除く上記3社はクラウドビジネスが育っていることが分かります。このビジネスは典型的なプラットフォーム事業ですから、プラットフォーマーとして投資家から高い評価が得られます。
メタはプラットフォームと考えられていたSNS事業に陰りが見えています。これは、アルファベット(グーグル)や、ピンタレストなどのフェイスブックよりも小型企業の広告事業が好調だったことからも分かります。また、ティックトックとの競合も厳しさを増しています。
投資戦略
上記を踏まえた投資戦略ですが、不安定な相場環境であっても、アップル、マイクロソフト、アルファベットは安心できる「押し目買い候補」でしょう。これら3社のプラットフォーマーとしての地位に当面揺らぎはないと考えるからです。
アマゾンは少し微妙だと思われます。AWSの伸びは今後も期待されるものの、本業のネット販売の利益率に疑問符が付くからです。上述したように、リビアンの売却益を除くと実質減益であるため、同社の今後の対応に加え、本業が苦戦した場合の投資家の反応が懸念されます。下値に対する許容度が大きい、もしくはAWSだけでも現在の株価の価値があると考える投資家であれば、上記3社と同じ戦略となりますが、もう少し様子を見てもよいかもしれません。
メタはより長期的なスタンスが必要です。フェイスブックがプラットフォーマーとしてどこまで有効なのか、上記のように疑問符が付いているからです。若い世代を中心にフェイスブック離れが進んでいるとも言われており、広告に関する個人情報保護の問題だけではないからです。同社自体も問題は認識していると思いますが、新たな開拓分野として投資を進めているメタバースは、市場の大きさや競合他社の状況も分かりません。メタバース分野の成長性に賭けるのであれば、限定的な投資にとどめる銘柄のように思われます。
株価チャート 5年
アップル
マイクロソフト
アルファベット
アマゾン
メタ
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
(今週はお休み)
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5.川田のお散歩
◇◇最近行ったお店、映画、美術館、書籍編◇◇
直近の読了、読みかけ、読む予定の本(1/17)
通貨烈烈(朝日文庫) 文庫 – 1992/12/1 船橋 洋一(著)
すさまじい円高・ドル安をまねく国際通貨政治の仕組みとはいかなるものか・・・世界を駆け巡る朝日新聞の第一線記者がG5・G7など、国際会議の緻密な取材と通貨外交に携わる首脳たちの肉声を通して、その解明に挑む。吉野作造賞を受賞した日・米・欧同時出版の国際的ノンフィクション。
出版社内容情報
目次
第1章 プラザ
第2章 ロンドン
第3章 一国主義の終焉・アメリカ
第4章 円の政治経済学・日本
第5章 ブンデスバンク本位制・西ドイツ
第6章 トーキョー
第7章 サンフランシスコ
第8章 ルーブル
第9章 教訓
エピローグ
船橋洋一(フナバシヨウイチ)
1944年北京生まれ。元朝日新聞社主筆。同北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長などを歴任。この間の報道、執筆で、ボーン・上田賞、石橋湛山賞、日本記者クラブ賞などを受賞。独立系シンクタンク、アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。著書に、『内部―ある中国報告』(サントリー学芸賞)、『通貨烈烈』(吉野作造賞)、『同盟漂流』(新潮学芸賞)、『カウントダウン・メルトダウン』(大宅壮一ノンフィクション賞)など
勃発!通貨戦争 :「プラザ合意」に学べるか “ドル安協調”なくば世界経済は縮小へ=重見吉徳 | 週刊エコノミスト Online
【川田コメント】
この本については、このメルマガの1月10日号で今度読む予定の本として紹介しました。その後、通勤電車の中で少しずつページをめくっていました。
金融業界に携わる人全てが一度は読むべき本でしょう。そして1980年代後半の日本経済を同時代で体験した人なら尚更です。青天井で高騰する地価と株価に煽られて、何かに憑かれたように消費に励み、金銭欲を満たすことが生きている証しとでも言いたげな当時の記憶が鮮明に蘇るはずです。円高と低金利で日本中をバブル経済に駆り立てた仕掛けが、プラザ合意です。この交渉に携わるエリートの2年間半を活写したドキュメンタリーです。
とにかく船橋さんの筆致が凄い。主要国の政治家、官僚そして中央銀行の首脳の言動や心の内を船橋さんが縦横無尽に書き連ねている。登場人物は船橋さんの創った台本の筋書に沿って与えられた役回りを演じているようにも読めてしまう。船橋さんの筆力のなせる業でしょう。
1989年にバブルが弾け、あれからわずか30数年で国際経済、そして金融における日本の存在感がこうも霞んでみえることに、改めて愕然とする人がいるかもしれません。そして私もそう感じる一人です。
以下、【プラザ合意とは】簡単にわかりやすく解説!!背景や目的・内容・日本への影響など | 日本史事典.com を参考にしながらまとめました。
プラザ合意とは?
プラザ合意とは、ドル高を調整するために1985年(昭和60年)に米国が日本を含む先進国5カ国に為替市場に介入することについて会談した出来事です。この合意によって日本は結果的にバブル時代へと向かっていくことになります。
ちなみに私がNYに赴任したのは1986年夏で帰国が1991年夏です。日本株の狂乱相場とバブル経済で自分が直接泡まみれになることはありませんでした。それでも出張で帰国するとみんながハイになっていて、接待のあとのタクシーがつかまり難かったのは覚えています。
プラザ合意の背景と目的
①ベトナム戦争の爪痕 米国の財政赤字
1981年に米国でロナルド・レーガン大統領が誕生しました。この頃の米国はベトナム戦争の煽りもあって財政赤字とインフレに悩まされていました。インフレを封じ込めるために20%にもなる高金利と厳しい金融引き締め、いわゆるレーガノミックスでなんとかインフレから脱出することに成功しました。しかし、高金利がもたらすドル高と貿易と財政の赤字で『双子の赤字』にあえいでいました。
アメリカの対日貿易
当時の日本は、円安の勢いもあってか日本の製品を米国に大量に輸出していました。代表的な例が自動車です。この難局打開には対日貿易赤字の縮小が一番効果的でした。そのため、米国は特に日本との貿易関係を是正するためにドル安・円高を目指そうとしていたのです。
①金融政策面
当時のボルカーFRB議長が深刻な高インフレ傾向を是正するために金融政策目標を金利からマネー供給量に切り替え、その伸び率を厳しく管理する金融引き締め策を実施しました。
その結果、ドル金利は長期・短期とも10%を超えるまで跳ね上がり、他の主要通貨との金利差が拡大しました。この金利差の拡大が海外から米国への債券投資(ドル買い)を急増させました。
②財政政策
「小さな政府」を標榜(ひょうぼう)する保守派のレーガン米大統領は大減税を実施する一方、旧ソ連を圧倒するような軍事力の確保を目標に軍事支出を拡大しました。その結果、財政赤字が急増し、ドル金利の上昇に拍車をかけました。
当時の状況を体験し状況を十分に把握している人はこの本の「第九章 教訓」だけを読んでも得るものは多いはずです。
当時の状況を本書の「文庫本あとがき」(p493)から抜きだせば「各国の財政、金融、為替政策が渾然一体となり、経済政策協調という名の凄まじい国際通貨政治を形作った」。そして「その背後には、85年春、純債務国に転落した米国の重苦しい現実と、脳出血のような米国の財政赤字の止血のための国際的な応急措置という政治的要請があった」(p495)ということです。
そしてその第九章には総括として さまざまなプラザ戦略批判(p424)があります。それらは以下のようなものです。
①「いわゆる政策協調とやらは、所詮PRに過ぎない」
②プラザ戦略の目的は「時間稼ぎ」
③アメリカ政府が「レーガンの軌跡」の失敗を覆い隠そうとする‟隠ぺい作戦”
④「地獄への道は善意によって舗装されている」
⑤プラザ会議は要するに「関係のない、無意味な出来事だった」
そして上記の批判に対する反批判もあります。詳しくは本書を読んでみてください。
『通貨烈烈』と私のNY駐在
国際化する日系マネーの取り込みが証券会社の経営課題
プラザ合意の前後に始まる円高誘導とその後のバブル景気は戦後の高度成長期の仕上げを象徴する出来事と言えるのではないでしょうか?
私が証券会社に入社する時には海外勤務など考えもしませんでした。ところが支店営業と本部勤務の後に2年間の留学が実現しました。私の会社ではその頃から1年に10人以上が海外留学生に選抜されました。銀行や商社よりかなり多い人数です。それだけ証券会社が儲かっていて人材に投資が出来たということでしょう。
私が留学を終えたのは1985年5月でプラザ合意は9月です。その数年前から日系証券にとっては日系マネーの海外誘導が重要な経営課題でした。日系マネーは最初にウォール街に向かい、その存在感を世界に知らしめました。私が米国株式営業の責任者としてNYに赴任したのはまさにそういう時期でした。
それまでは日本株の取次業務が中心で、営業の主役はほとんどが日本株担当の駐在員でした。赴任した時のアメリカ大和は総勢150人もいませんでしたが、それを300人を大幅に超える規模への拡充計画がすでに策定されていました。
日本マネーの大口の受け皿は債券部門です。当時の債券部門では1986年12月に債券プライマリーディーラーの資格取得を予定しており、多くのローカルスタッフを採用中でした。私の担当する米国株式部門でも米国の機関投資家からも受注できる体制を準備中でした。
赴任中の5年間で1987年10月のブラックマンデー、1989年12月の東西冷戦終了、そして1990年8月のイラクのクウェート侵攻と翌年1月の湾岸戦争など、歴史的な出来事がいくつもありました。
この駐在が私のビジネスキャリアの核になったことは事実です。プラザ合意が無ければ私のNY赴任も無かったかもしれない。そうであれば、これほど長く米国株式と付き合うことなど無かったでしょう。
当時の私は、日米そして西ドイツの為替と金融政策の複雑な関係を、船橋さんのレベルで理解していたわけではありません。本書を読んで自分の経験、勉強そして洞察力の全てがいかに未熟で稚拙かを改めて自覚しました。それでもグローバルなマネーの激流の中で株式投資を通じて歴史の一コマに携わったことを懐かしく思い出させる本でした。
余談
①NHK総合テレビのNY市況の実況にレギュラー出演
ところで、このころから、日系4大証券(野村・大和・日興・山一)の米国株式の責任者がNHK総合テレビでNY証券取引所(NYSE)から実況でマーケット情報を伝え始めました。
責任者だった私も、マーケット終了間際にNYSEに駆け込み、取引所のフロアーから実況しました。一時帰国すると、いつまでたっても富山の訛りが抜けないと周りに笑われたものです。
②TVドラマ『ニューヨーク恋物語』
もう一つ、当時のバブった状況を思い出させるのが1988年放送のTVドラマ『ニューヨーク恋物語』です。「暮れなずむ摩天楼、行き交うイエローキャブ。大都会を舞台にどこか乾いた大人の恋愛を描いたドラマだ。日本から来た明子(岸本加世子)は、いとこの里美(桜田淳子)が住むブルックリンのアパートに転がり込む。物価も比較的安く、アメリカンドリームを夢見る若者らが住む場所だ。
イーストリバーの向こうにはマンハッタンの高層ビル群。ブルックリン橋を渡って行けばウォール街だ。ドラマでも、証券会社で働く里美がアシスタントからはい上がり、敏腕トレーダーとして市内中心部の高級アパートに移る様が描かれる。」
ドラマの一部は大和証券NYでも撮影されました。日本人ビジネスマンの往来も急増しました。このドラマは、NYやウォール街にバブル期の日本人が抱く憧れを上手く捉えた番組だったのでしょう。
③金融機関のNY駐在は出世する
NY時代に顧客である日系機関投資家や事業会社、さらには米国人とも多くの接点がありました。日本中でおカネが余っていたのでしょう。出張や研修の名目で日本から社内外を問わず多くの来客がありました。その都度アテンドやら接待やらで忙しくしていました。
NYで将来の経営幹部にあらかた会っていた
あとで分かるのですが、日本からの来客と現地で会う時の距離感は、日本で会うよりぐっと近いです。こちらが来客の出張目的に合わせ丁寧に応対すれば我々のような若造にでも丁重に接してくれます。多くの重要人物と会う機会に恵まれました。
それから20年ほどして、私の名刺箱をひっくり返した知り合いが「川田さんは、いま日本の機関投資家の中枢にいる多くの人とNY時代にすでに会っている」というのです。海外駐在、とくにNYやロンドンのような金融センターには国際部門の将来有望な人材を送り込んでくるからなのでしょう。返す返すもNY駐在は私のキャリアの核になっていることを改めて実感しました。
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新連載「これでばっちり!米国株式を使った資産形成術のすべて」
はじめに
今回、資産形成に必要な基本的な内容を網羅した連載シリーズを始めます。全体の構成は以下のように考えています。
我々はどのような時代に生きているのか?全二回
自立した日本人と自立に欠かせない資産形成 全三回
株式市場は米国にしかないの? 全4回
日米株式文化の違い
知っておくべき米国市場の特徴
S&P500とは
なぜ米国は強いのか
おすすめの投資戦略~コア・サテライト投資~
コア部分の投資戦略
サテライト部分の投資戦略
何を買ったら良いのか
情報源と投資
第5話 知っておくべき米国市場の特徴 六回目
このシリーズでは、これまで株式相場に影響を与える金利やインフレ率などについて解説してきた。今回は米国の景気サイクルと株価の関係を解説する。寄稿してくれたのは弊社のウェブサイトの「アメリカ株式40年投資」シリーズでおなじみの大倉真さんだ。
景気循環と株価の関係
2. 株式市場のロードマップを再確認
①株式市場のロードマップの考え方
前回は経済が既に新しい中期循環(10年サイクル)に移行していることについて述べました。次にそれを踏まえて、現在、株式市場が相場のどの位置にいるのか考えてみたいと思います。株式市場の大きなサイクルは景気の中期循環に概ね対応します。つまり、株式の一相場は大体10年続くことになります。
図表1は株式市場の一相場(10年サイクル)を4つの局面に分けて考えたものです。株式投資家が投資の長旅を歩くためのロードマップのようなものだと思っていただければよいでしょう。
まず「流動性相場」は市場の大底からの回復局面に当たります。そして「調整相場(移行期)」を挟んで「業績相場」に移り、大天井をつけに行きます。その後、「弱気相場」を迎え、最終的に大底へと落ちてゆくというものです。業績相場が息の長いものになる場合、途中で「中間反落」があり、弱気相場も同様に「中間反騰」が見られる場合があります。
それぞれの相場局面の期間や変化率は特に決まっているわけではありません。また、実際の相場はこの図が示すようなきれいなパターンになるわけでもありません。ここで示すロードマップはあくまで相場展開のイメージとして考える必要があります。
図表1 株式市場のロードマップ
②各相場局面の特徴
各相場局面の特徴について簡単にまとめたものが図表2になります。大雑把に言うと、株価はバリュエーションと企業収益の掛け算で決まります。
「流動性相場」では金融緩和によって金利が低下し、市場に大量の資金が流れ込むことで、バリュエーション(PERなど)が切り上がることで株式市場は大幅高となります。この期間の企業収益は底打ちから回復過程にあると言えるでしょう。
「調整相場」は流動性相場と業績相場の間に挟まれた期間です。景気刺激策により企業収益は回復局面に向かっているものの、中央銀行が金融政策を緩和スタンスから中立に戻そうとするため、バリュエーションが切り下がることにより生じると考えられます。
「業績相場」では景気拡大に支えられた企業収益の成長が株式市場を支えます。この局面での株価リターンは利益成長に沿った緩やかなものにとどまると言われます。金融政策は景気動向により中立から引き締めに向かっています。
最後の「弱気相場」は、金融引き締めを背景に、市場が景気や企業収益の後退を織り込むことで起こると言われます。上昇相場の途中で起こる調整相場とは違い、株式市場は厳しい下落となります。
図表2 株式相場の4局面の特徴
③今、ロードマップ上のどこにいるのか?
では、現在われわれは相場のどこに位置しているのでしょうか。アメリカの中央銀行であるFRBがテーパリング(資産購入額の削減)を決定し、金融政策の中立化に向けて舵を切り始めたことを考えると、おそらく流動性相場の最終局面を経て、業績相場への移行期である調整相場の入り口辺りにいるのではないでしょうか。
FRBはおそらく年内に4回程度(開始は3月)利上げを実施し、また、どこかのタイミングで資産売却を開始するでしょう。したがって今年のアメリカ株式市場は、利上げのペース、さらに資産売却の見通しなどがある程度織り込まれるまで、ボラティリティー(変動性)の高い状況が続くのではないでしょうか。
しかし、これはあくまで調整相場、つまり業績相場への移行期であり、弱気相場の入り口ではないと思います。株式市場のバリュエーションは、2021年12月時点のS&P500指数の予想PERで見ると約21倍(歴史的には割高)でしたが、この調整相場を通して、これからある程度こなれたものになってくるでしょう。そういう意味では、今年はこれまでのような高いリターンは期待できないかもしれません。一年を通して若干プラスになれば御の字ではないでしょうか。株式投資家にとっては必ずしも面白い局面ではありませんが、これはある意味「健全な調整(healthy correction)」なのです。
調整相場を経て、株式市場はいずれ業績相場に移行するでしょう。そうなれば、投資家は利益成長に見合ったリターン(ドル建で年率8%程度)を比較的長期にわたって享受できるのではないでしょうか。
【大倉真氏】
愛媛県出身。1984年大阪大学経済学部卒業。2005年 埼玉大学大学院経済科学研究科より博士(経済学)。その後、シティバンク、エヌ・エイ、シティトラスト信託銀行、 ソシエテジェネラル信託銀行(現SMBC信託銀行)を経て2017年、京都・東山で投資会社EagleCapital株式会社を設立。年金・公的資金など機関投資家に加え、プライベートバンクで富裕層向けの資産運用にも従事。CFA協会認定証券アナリスト。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
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6.ちょっと教えて「失敗しない資産形成のヒント」
ファイナンシャルアドバイザーの本橋竜一氏が、中長期にわたる着実な資産形成のために大切なヒントをお伝えします。
Financial Advisorをやっていますと、「資産運用におけるコアとサテライトはどのくらいの比率が良いのですか?」という質問を多く受けます。
結論から言いますと、この質問に正解はありません。
■コアとサテライトって言うけれど…
コア部分を運用の中心として分散を効かせて安定的なリターンを狙う中核資産、サテライト部分を積極的に高いリターンを狙うお楽しみ資産と定義するなら、その目安としてコア:サテライトは70:30や80:20というのが模範解答なのかもしれません。しかし、これも投資家それぞれ十人十色です。
【一般的なコア・サテライト戦略のイメージ】
出所:野村ETF NEXT FUND https://nextfunds.jp/semi/article34.htmlより
そこで今回は、運用「資産額」ではなく、日頃FAとしてお客さまにお伝えしている運用「スタイル」の観点から考えてみたいと思います。
■資産運用に大切な2種類の投資スタイル
このメルマガをご購読の皆さまは、デイトレーダーのような短期売買を行う投機派ではなく、中長期視点での資産形成を行う投資派かと思います。しかしながら、投資に取り組む中で、ハラハラ・ドキドキするギャンブルのような思いをするシーンがあるでしょう。これは投資という行動が、ある程度のリスクを取るのだから、その見返りにある程度のリターンは欲しいと思う行為だからに他なりません。
そこで、投資には2種類のスタイルがあるとします。
趣味としての投資と仕事としての運用です。この何れかによって、全く異なる行動が必要となってくるのです。
■趣味としての投資
まずは、「趣味としての投資」です。様々なメディアや金融機関の営業パーソンからの情報、またはご自身の相場感を頼りに、株価(値段)やトレンドを見ながら興味のある個別銘柄・テーマ型投信に対して、中期または長期のスタンスで投資を行い、値上がりを楽しみに待つ投資スタイルです。
趣味とは元来楽しむものです。それを面白い・ワクワクすると感じ、自らのお金と時間を使ってまでも、楽しむために積極的に取り組みます。ワクワクして上手くいけば、大きな満足感(リターン)を得られるという反面、仮に上手くいかなくても、趣味だから仕方ない…また次回頑張ろう!と思ったりします。
※因みに、私はゴルフが趣味ですが、最新のギアを揃えたり数多くのレッスンに通う等たくさんの時間とお金の投資をしても、いつもスコア3桁のエンジョイゴルフです。それでも懲りず、フカフカな緑の芝の上で身体を動かすと、気分がスッキリするから、また行こうと毎回思います。
皆さまにとっても「趣味」とは、ゴルフや釣りまたは旅行にしても、積極的にお金を払って楽しむのが一般的ではないでしょうか?
■仕事としての運用
もう一つは「仕事としての運用」です。これはお金に地道にコツコツ働いてもらう投資スタイルです。文字通り「仕事」です。
こちらは仕事なんて面白くないと感じる人でも、将来のゆとりある人生設計や少しでもQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させる為に、実は多くの方々が知っておくべきやり方でもあります。実はこの退屈でツマラナイけれども大切なコンセプトを知らずに、資産運用と言えば、趣味の投資を連想する方々がほとんどではないかと思います。では、仕事としての運用とは具体的にはどのような事なのでしょうか?
将来的に成長が期待できそうな投資対象(資産クラス)に分散して長期投資を行うことにより、途中で大きなマイナスを被らないようリスクをコントロールしながら、資産形成を目指すのです。すぐに「2倍になって欲しいなぁ」と儲かる資産に賭けることではありません。
こちらは趣味ではなく仕事ですので、将来のライフプランや人生のゴールを基に、投資すべき資産クラスや具体的な投資商品の組み合わせを考え、一旦スタートしてしまえば、その後はあまりワクワクするような事はなく、むしろ退屈でツマラナイ運用とも言えます。
■着実な資産形成には、ツマラナイ「仕事としての運用」こそ大事
しかしツマラナイとは言え、人生において多くの時間を占める仕事がとても大切な事であるように、お金・資産運用の世界でも「仕事としての運用」は、自らの生活水準や資産価値を守り、より豊かな暮らしをしたいと願う多くの人にとって大切なことなのです。
仕事は「自分が働いてお金を稼ぐ」わけですが、仕事としての運用では「働きの悪いお金にもしっかり働いてもらう」ことが大切です。
大概、働きの悪いお金は銀行にじっとしています。そのお金にきちんと仕事をしてもらうためには、自分でお金に指示をしなければなりません。
例えば、「君は多少リスクをとっても良いから米国株へ、あなたにはゆっくり着実に利息を稼いで欲しいから債券へ…」といった具合に、適性や方針に基づく的確な指示が必要です。
※昭和の時代感からすると、会社の営業マンに「いつまでも会社にいて椅子を暖めていないで、外回りに行ってこい!」という事になるかもしれませんが、仕事としての運用には感情不要、あくまでも合理的に・・・です。
仕事としての運用を行う人にとって大切なのは、相場観やタイミングといった「勘」と「度胸」ではなく、お金の経営者としての投資方針、言い換えると「投資観」ではないかと思うのです。
次回は、「趣味としての投資」と「仕事としての運用」において、それぞれ必要な観点やポイント等についてお伝えしていきます。
「趣味としての投資」と「仕事としての運用」の違い
出所:FPアソシエイツグループ資料より筆者作成
1998年に大学を卒業後、横浜銀行にて金融業界でのキャリアをスタート。その後、外資系金融機関のプライベートバンカーへ転身。間もなく世界を震撼させるリーマンショックが勃発し、第一線のセールスとして成功を諦め、正統派な資産運用を伝えるファイナンシャルアドバイザーを目指そうと決意。数名の顧客を頼りに約20年の金融機関勤務から独立。信用・人脈ゼロながら、海外のPB・FAビジネスモデルを徹底研究、顧客体験の向上に資する創意工夫を重ねる日々。
現在は、特定の金融機関に属さず、真にお客様の価値観を大切にした資産運用・形成サポートを専業とする、独立系ファイナンシャルアドバイザーとして、お客様へのプライベート金融コンサルティングに従事している。
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7.今後の活動情報
◇ 2月9日(水)11時~ストックボイス
◇2月15日(火)20時~マネックス証券主催 S&P500の魅力を解説!米国経済を味方につける資産形成術
◇2月22日(火)8時15分前後(電話インタビュー)日経CNBC
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8.質問コーナー
東証2631の購入理由について
質問
2月3日の動画で、川田さんはNISA120万円枠のうち40万円分使ったよーと、おっしゃっていました。銘柄は東証2631と。。。
QQQがコア銘柄と言われていたので、NISAでもQQQを購入されているものと、勝手に想像していました。
小生もQQQをコア銘柄にしているのですが、NISAでQQQを買っています。理由は金銭的に年間多額に購入できないので、まずNISA分から消化するという感じです。
QQQを買わず、東証2631を購入する理由は、どんなメリットがあるのでしょうか。NISAで外国株を購入するのはなにかリスクがあるとお考えなのでしょうか。
答え
両者はほぼ一緒の値動きをしますし、経済価値は同じです。QQQは外国株で2631は日本株ですが、経済価値は基本的に両者同じです。2631を使っているのは平日昼間に東証で買付けできるので、手間がかからないからです。両者のリスクにも変わりはないと言い切れます。全体の保有ではQQQが多いです。
QQQ(青)と2631(橙)の比較
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