米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.16]2021年9月27日配信
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米国株式投資の真実を伝える
川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
[Vol.16]2021年9月27日配信
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***目次***
マーケット振り返り
今週のズバリ!
今週のピックアップ記事 【終身雇用制度に思う事】
投資のヒント 【S&P500構成銘柄上位の時系列変遷】
川田のお散歩(書籍編)【日本は大国ではない】
◇◇最近観た映画◇◇ 【映画 沈黙のレジスタンス】今後の活動情報
質問コーナー 【個別銘柄運用についての実感】
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
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1.マーケット振り返り(9月20日~9月24日)
<主要指数>
・NYダウ +0.6%
・S&P500指数 +0.5%
・ナスダック総合指数 +0.0%
=駆け足バージョン=
週初は中国の不動産グループに対するデフォルト懸念から売られましたが、その後は反発しました。米連邦公開市場委員会(FOMC)は金融引き締めに一歩近づき、長期金利は上昇したものの、株式市場に対する影響は限定的でした。
=ちょっとだけ詳しく=
月曜日は、中国恒大集団の社債利払いを巡る懸念からリスク回避姿勢が強まって大幅に下落しました。しかし、利払いが行われるとの見通しなどから徐々に落ち着き、水曜日にFOMCが始まる頃には反発に向かいました。FOMCでは債券買い入れ枠の縮小に関する具体策は示されず、前回よりもややタカ派的なトーンとなりました。株式市場は落ち着いた値動きとなりましたが、債券市場では欧州の中央銀行の引き締め姿勢も影響して、長期金利は7月初旬以来の水準に上昇しました。景気の減速感が感じられる経済指標が多かったほか、ナイキやディズニーなどから第3四半期の業績に対する慎重な発言が出て株価は下落しましたが、市場全体に対する影響は限定的でした。
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2.今週のズバリ!
これだけは知っておいてほしい情報をお届けするコーナーです。
3週間ぶりの反発
先週は週初に市場が揺れ動いたが、米国市場は結局プラスで引けた。9月2日の史上最高値からの下落率は火曜日の終値でも約4%で、直近高値からの5%超の下落がない期間は224日となっており、過去7番目に長い記録だ。相場の足腰はまだ強い。
中国の問題は大きくならず
先週初めの下落原因が中国の不動産企業の債務問題だったため、リスクを誇張して伝えているように感じられる記事が日本のメディアで目立ったように感じた。実際、中国恒大集団(エバーグランデ)の債務問題の実態を正確に把握している市場関係者はどの程度いるのだろうか。おそらくほとんどいないだろう。
それがリスクたる所以で、まだ後を引く可能性はあるものの、2008年のような金融危機にはならない。欧米の金融機関が社債を大量に保有という記事もあったが、おそらく年金(ファンド)などの巨額の運用資産の一部であり、デフォルトになったとしても損失を吸収できるようにリスク管理されており、危機にはならない。中国恒大集団に関連したデリバティブ商品もないはずだ。とにかく、こうした記事に惑わされてろうばい売りをしないこと。
FOMCの結果を把握すること
それよりも先週の連邦公開市場委員会(FOMC)の結果の方が大切だ。要点をおさらいすると、
テーパリングの開始時期の決定は11月の見通し(市場は年内だとは織り込んでいた)
FOMC参加者の見通しに基づくゼロ金利解除時期が2022年へ前倒し(これまでは2023年)
2021年10~12月期のGDP成長率の予想を7%から5.9%に下方修正(感染拡大が理由)
2021年10~12月期のインフレ率を3.4%から4.2%に上方修正。
「景気は想定ほど良くない中でインフレ率が思ったほど低下しないから、引き締め姿勢を強める」と解釈できるような内容だったが、株式市場は落ち着いた動きで、週前半の売りの買い戻しもあってFOMC後に上昇した。うまく市場に織り込ませたパウエル議長の「技あり」だと思う。
欧米の金融政策に注目すべき
しかし、債券市場はFOMC直後では反応が薄かったものの、長期金利は徐々に上昇して7月中旬以来の1.4%台まで上昇した。今年は3月に1.7%台をつけているが、株価水準が高くなっているため、上昇が続くと少し厄介になりそうだ。
その観点からは、先週のノルウェーの利上げは気になる。市場は織り込んでいたようだが、イングランド銀行(英中央銀行)もインフレに対する警戒感を示した。欧州の利上げが米国市場に影響したこともあるため、中国の不動産企業よりも欧米の金融政策のほうに注意すべきだ。
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3.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 働きがいは何ですか(2)パナソニック、独立も支援 9/20
要約
長期にわたり業績不振に苦しむパナソニックの社内起業制度がテーマだ。
一方、日本では独立起業にたいする「社会的な評価低く」ということらしい。さらに企業内起業は「過剰な介入は創造性阻む」とも言われている。
日本で起業が少ない理由のひとつが、終身雇用などの雇用制度だ。定年まで安定しているため、退社して(まで?)起業する意識が芽生えにくい。
起業家の輩出で知られる企業といえばリクルートだ。そのリクルートでは起業を目指す社員の退職も多い。そんな彼らは「卒業」として応援されるようだ。
【川田のコメント】
突き放して言えば、グループ企業合わせれば何十万人も働いているパナソニックのごく一部のことを取り扱った記事。こうした制度はあってもよいが、根本的な解決にはならない。パナソニックの業績不振を解決するためにこの制度をまじめに考えているのであれば、それこそ大問題。もっと大所高所に立って不要事業の売却と成長分野への投資(買収)を考えることが経営陣の役割だろう。経営企画部門か人事部門のひとつのアイデアにすぎないことを願う。
【2】日経新聞 45歳定年制の「御利益」 9/23
最近、サントリー新浪剛史社長は「45歳定年制を敷き、個人は会社に頼らない仕組みが必要だ」と提言した。これは新浪発言を題材にした記事で、笑えるが真実を語っている。
ポイント
ホワイトカラーたるもの、45歳前後で「会社離れ」を目指すくらいがちょうどいい。
人生百年時代、1つの会社にずっと、は現実的ではない。半世紀後に今の会社が存続しているか正直わからぬ。
年をとるほど個人差は拡大。正しい処方箋は定年制の撤廃。
問題はオヤジ世代だ。彼らは会社という「楽園」を追放されたら行き場がない。
【川田のコメント】
ネットでは「45歳定年制」の「定年」が切り取られて、「45歳で会社を馘になったら生活していけない」「弱者切り捨てに使われる」「非正規雇用の次は首切りか」などといった即物的な反応が多かったばかりか、識者からも「人生100年時代に逆行した考え方」「企業は中高年の能力開発に努力するべき」「格差社会を助長するものだ」といった批判が相次いだという。
ところで私が大手証券を辞めて外資系証券に入社したのは41歳。この外資なんて独立・起業と同じくリスク満載で雇用保障はゼロ。ただしボーナスの半分までだっけ?それを退職金扱いにする大変な税制優遇があった。そこを辞めて本当に起業したのは44歳だ。
新浪社長の発言は全て正しい
私も大企業に長かったので終身雇用制度のメリット・デメリットは分かっているつもりだ。能力開発とスキル獲得、情報共有とネットワーク作りには優れた仕組みだと思う。それでも、日本企業が海外でこれだけ劣勢に立たされている現状を鑑みれば、多くの事業体でなにか工夫が必要なはずだ。
個人的な経験だと新浪さんの発言は全て正しい。一言でいうと「あんたら、どこまで組織に甘えたら気が済むのか?」だ。終身雇用は日本のある特定の時期と業種には良く機能してきた。それを今にいたるまで最高の仕組みと崇め奉るように維持していることが不自然だ。変えたくないのは「楽園」に留まりたいオヤジ世代だ。
以下、「終身雇用制度」私の残像
「真剣」勝負組は少数でいい
日本の大企業は社員が一定以上の年数を重ねると彼らの多くには「真剣」勝負を求めない。会社側がその人の持っている能力や意欲などを全て開発し終わっているし、それを完全に掌握し尽くしているからだ。だから大多数は会社に新たな付加価値をもたらすことなく時間の過ぎるのを待つ。ところで、ここでの「真剣」勝負とは部門や会社の意思決定、経営方針に意味がある関わり方をすることだ。
若い時分は社内で元気に議論を吹っ掛けまわしていた有望株も、成長して経営陣との距離が縮まると自分の立ち位置が自然に分かる。そうなると上には「竹刀」で稽古を挑み、下には「木刀」を振りかざす、そして目をつぶりながら全力疾走で社内の出世階段を突っ走る。これができるサラリーマンはごく少数で幸せものだ。
多くは自分で「判断」したり「意思決定」する権利はとっくに剥奪され、従順な社内与党として余生を過ごす。上がりに近くなるとみんなすっかり脂が抜けきった顔になり、目を細めながら自分へのご褒美と言わんばかりに定刻きっかりに帰宅してスポーツジム通いしてたかな。これが終身雇用制度の私の「残像」だ。
サラリーマンよもっとリスクをとろう
エリートサラリーマンがもっともっとリスクをとって社内外で暴れ回る日が来ないかな。そうすれば日本経済の活力が高まるのに。それには入社時からいずれ大組織を「卒業」する意識で仕事をしないと上手く行かない。しかし、一端飛び出れば吹っ切れて踏ん張れる。そして出来ない言い訳をしなくなるのがデカい。
ただし、日本のエリートサラリーマンは転職リスクが大きい。外資もベンチャーもそして起業も平均すればリスク・リターンでは割りが悪い。有能な人の転職を促すには、税制や社会的な認知、つまりは世間の見る目も変わらないと上手くいかない。私の場合、米国株式に救われたと思う。いずれにしても新浪さんに全面的に賛成!
【3】日経新聞 みずほ銀、金融庁がシステム管理 9/22
みずほフィナンシャルグループの不祥事醜いね
みずほの不祥事、醜いね。統合以降ずっとごたごたが続いているイメージが焼き付いている。あれもやはり一種の終身雇用の弊害ではなかろうか?
仮に転職が当たり前で、行内の出世階段以外の自己実現方法があればしがみつかなくて良かったのに。小さい時から「正解は1つ」と教えられ、だんだん狭くなる門を必至で潜り抜けてきた人達だから、今さら後戻りができないのだろう。
それよりこの期に及んでなぜ若手社員が社内革命のために蜂起、あるいは集団脱走しないのか?少しはそんな動きはあるかもしれないけど、もっと大規模に、燎原の火が広がるように、それでもって同行の業務が遂行できなくなるぐらいに社員が会社に異議申し立ての意思表示がなぜないのか?ちなみに私は意気地なしなので「脱走>革命」だろう。
日本の大企業は、そんな“反乱分子”や“逃亡癖”には厳罰を与える。しかし、この尋常ならざる不祥事に正義感とか義憤に駆られるということもないのだろうか?それとも、やはりこのときの行動履歴が30年後も“会社の通信簿”に記録されるからだろうか?日本の終身雇用制度はなかなか奥が深い。
【4】日経新聞 米民主党、格差対策のうそ 9/24
要点
民主党は米国の格差問題に正面から取り組むかにみえた時もあった。だが、それはもう過去のことで超富裕層はもう数年は安穏としていられそう。
ウェストバージニア州選出の穏健派、民主党上院議員のマンチン氏が法案成立のカギを握っている。彼はバイデン氏の看板政策、子育てや教育支援、気候変動対策などに10年で3.5兆ドル(約385兆円)の財政資金を投じる成長投資法案の支出規模の縮小を要求。
連邦法人税率を現在の21%から28%への上げ幅を縮小。
キャピタルゲイン(株式などの譲渡益)税率を最高39.6%にほぼ倍増させるというバイデン氏の計画は実現しない。
民主党の格差問題への取り組み姿勢を後退させたのはニューヨーク州やカリフォルニア州など、民主党の強力な地盤から選出された主流のリベラル派だ。
州税と地方税(SALT)の控除を年1万ドルまでとする現在の上限撤廃を目論んでいる。上限撤廃で、税率の高い州の住民は、州や地方に支払う税額を連邦所得税からまるまる控除できるようになる。
【川田コメント】
民主党も一枚岩ではなく、そのもろさが露呈している。上院は民主党議員が100議席中50議席だから、ある議案に全員賛成して、賛否同数になり、その後に議長(=副大統領)が投票して初めて可決となる。こうした政治基盤のもろさと党内の不協和音が実態経済に影響を及ぼすはずだが、株価はまだそれを気にした様子はない。
米国の経済システムでは格差が生じるのは必然だ。トランプ政権での金持ち優遇策で株価は上昇、新型コロナウイルスが招いたパンデミックでも株価は急騰した。背景には金融緩和がもたらす流動性を推進力にDX(デジタルトランスフォーメーション)がもたらす産業構造の変革を投資資金が先取りしたためだ。
このままだと、中間層がやせ細って正常な民主主義が維持できなくなる。その臨界点はいつどのような形で顕在化するのだろう。もう顕在化しているのだろうか?なぜ投資家はこの現状を無視できるのだろうか?この視点からも毎日のメディアをチェックをしている。
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
過去20年のS&P500指数 時価総額上位25銘柄の変遷
このメルマガ9月13日号の「投資のヒント」で「ストラテジストは過去3、4年の相場を保守的に見すぎている。とくに大手ハイテク銘柄の突出した上昇とそれに伴う時価総額の増加が指数に与える影響を過小評価している」という、われわれの見方をお伝えした。
そこで今回はS&P500指数の時価総額上位銘柄をおさらいする。そして、ストラテジスト連中がどこをどう読み違えているのかを見てみよう。
以下、米国同時多発テロ発生の①2001年9月、そこから10年後の②2011年9月、そして直近③2021年9月、のS&P500指数時価総額上位25銘柄をリストアップしてみた。
主要25銘柄の現在と10年前(2011年9月)のセクター別
セクター表に示されているように、2011年当時、エネルギー株はS&P500の上位25銘柄の16%を占めていた。現在ではその上位25銘柄にエネルギーも資本財セクターも入っていない。
2011年9月にトップ25に入っていた銘柄のうち、直近もそこに留まっているのは10銘柄だけだ。10年後のリストも大きく変わっていることだろう。
20年前の2001年9月までさかのぼると
当時トップ25に入っていた企業のうち、現在も残っているのはマイクロソフト(MSFT)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、ウォルマート(WMT)、そしてファイザー(PFE)だ。フェイスブック(FB)やテスラ(TSLA)は20年前には存在しなかった。アルファベット(GOOGL)やネットフリックス(NFLX)は、まだ上場していなかった。
【川田コメント】
ストラテジストの誤算はハイテクのプラットフォーマーがここまで大きくなることを想定出来なかったことだろう。
GAFAMのうち5番目のフェイスブックでも時価総額は1兆ドル(110兆円)もある。トップのアップルは300兆円にも届こうかという勢いだ。この超巨大企業にこれ以上の成長があるのか?ウォール街の正統派ストラテジストはこう思ったに違いない。
しかし、GAFAMがさらに巨大化することは、中国相手にグローバル覇権を争い、その戦いが宇宙にまで及ぶ今の米国にとっては、まさに国益だ。為政者も一般国民の怨嗟の声を意識しながらも、規制や法律で「角を矯めて牛を殺す」ことはやらないだろう。
米国株式の掟
ただし、これら超巨大企業の今後に決定的な影響を与えるのは米国の場合やはり株主だろう。この巨体で株主の要求するリターンが叩き出せなくなったなら、株主は自然に部門売却や分割等でリターンを高める方策を要求してくる。それが米国株式の掟だ。
仮に何年か後にGAFAMが抜本的なコーポレート・アクションを実施する場合の時価総額は、単体でいた時よりも増加している可能性が高い。この「資本の論理」はウォール街のストラテジストといえども軽視している可能性がある。
さらに、これらGAFAMに追いつけ追い越せの1兆ドル予備軍は何社もある。それが、テスラ(TSLA)、エヌビディア(NVDA)、セールスフォース・ドットコム(CRM)、さらにはペイパル(PYPL)あたりと言われている。
これらの企業は産業の変革を先取りして実績を積み上げていて、その分バリュエーションも割高だ。激しい競争を通じて勝者が生まれ、その勝者にも「安泰」はない。優等生的な分析が求められる正統派ストラテジストは、この適者生存の激しい競争の現実を彼らの株価予測モデルでは過小評価しがちなのだと思う。
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5.川田のお散歩(書籍編)
◇◇柳澤協二 亡国の集団的自衛権 (集英社新書)
先週、寺島実郎さんのテレビ番組寺島実郎の世界を知る力|バラエティ|TOKYO MXを見ていた時に彼と柳澤氏の共著が紹介された。「柳澤さんwho ?」と買い求めたのがこの本。まだ全部読んでないけど後半に私の思いにしっくりくるところがあったので以下に紹介。
第6章 世界の中でどう生きるか-今日の「護憲」の意味-(P149)
1日本とはどういう国か
日本という国のアイデンティティが問われている
大国としての条件を持たない-国土の狭隘・自給能力・国民性
(以下省略)
面白い箇所を抜き書き、要約
「アメリカのアイデンティティは自由と民主主義という価値観を世界に広めること。その実現のために、自由と民主主義とは全く正反対の戦争という手段を取る」(P150)
「日本はどういう国であり、またどういう国でありたい?戦後の日本は①「戦争をしない国」で②働けば働くほど生活はよくなる、がアイデンティティ。現在、そのふたつともが崩れつつある」(P151)
「大国であるための必須条件とは①国土、②自給能力、③自ら秩序を生み出し、それを広めていこうとする使命感。その意味ではアメリカも、かつてのソ連も、また今の中国も大国だ。」(P152)
「島国で国土が狭く、資源に乏しい日本は、はじめのふたつは定義に当てはまらない。また、自ら国際秩序を作るということにも高い意欲はないので「日本は大国ではない」」(P153)
「日本のアイデンティティは何か?戦後長らく「平和国家日本」と答えればすむ。今は「アメリカの同盟国日本」という自己規定はあるものの「だから何?」(P166)
「そもそも、日本とアメリカが自由と民主主義を共有していると言っても、それは冷戦時代、社会主義陣営と対峙している時代だからこその分水嶺だった」(P166)
【川田コメント】
柳澤さんの定義だと、今、世界の大国は米国と中国だけだ。かつてのソ連は大国といえたかもしれない。一方でフランスは、文化では世界一の大国と自分では思っているそうだが、実際はそうでもない。
「日本は大国でもなんでもない」と言い切っているのが気に入っている。「③自ら秩序を生み出し、それを広めていこうとする使命感」。日本人に自分の価値観を押し売りする意識は強くない。
私は常々米国株式投資を通じた資産形成の有利さを訴えている。柳澤さんの認識するいまの「日本」にはまったく共感だ。つまり日本の防衛も経済も自国では如何ともしがたいことが多い。
その意味で、資産形成のための株式投資に日本株を選ぶなんてリスクが大きすぎる。では、日本にいる我々日本人も危ないのか?それはそうだが、それを言い出したらこの日本に居れないことになる。普通の日本人にそれほどの理由と根性はない。日本に居ながらそのド根性で頑張れば何とかなるんじゃないだろうか。
しかし米国に投資した資金が返ってこない可能性?その時はその時だ。そういう事態が起きないように「大国の民」ならぬ日本人は米国、中国そして世界の動きに目配せが必要だ。そのためにも海外に投資して情報アンテナを張り巡らす必要があろう。(ここでもまた米株投資に戻ってきた。)
ところでこの本の本題である集団的自衛権の行使については、専門家に見える景色を我々一般の国民に理解させるときのギャップの大きさが分る。この本を読みながら自分で考えることが大事なんだろう。
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5.川田のお散歩
◇◇最近観た映画◇◇
『沈黙のレジスタンス ~ユダヤ孤児を救った芸術家~』公式サイト
あらすじ
1938 年フランス。アーティストとして生きることを夢見るマルセルは、昼間は精肉店で働き、夜はキャバレーでパントマイムを披露していた。第二次世界大戦が激化するなか、彼は兄のアランと従兄弟のジョルジュ、想いを寄せるエマと共に、ナチに親を殺されたユダヤ人の子供たち 123 人の世話をする。
悲しみと緊張に包まれた子供たちにパントマイムで笑顔を取り戻し、彼らと固い絆を結ぶマルセル。だが、ナチの勢力は日に日に増大し、1942 年、遂にドイツ軍がフランス全土を占領する。マルセルは、険しく危険なアルプスの山を越えて、子供たちを安全なスイスへと逃がそうと決意するのだが──。
*拷問、殺人が出てくる映画はとにかく苦手。でも史実に基づいた映画なら自分のためになると思い映画館に足を運んだ。
ユダヤ人とフランス人の視点でナチスの残虐非道ぶりを余すところなく描写している。
これほどの悲劇が80年ほど前に世界規模で繰り広げられていた。そして日本はイタリアと共にドイツの同盟国で、連合国を敵に回して戦った。どうしてそういう発想と決断に至ったのか?今思っても当時の日本人の意思決定は不可解。
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6.今後の活動情報
◇10月6日(水)午前11時 ストックボイス
◇10月20日(水)午前11時 ストックボイス
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7.質問コーナー
以下、運用手法について視聴者Hさんから質問を頂いた。
(川田)長期でS&P500指数のパフォーマンスを凌駕するにはいろいろな要素が必要だ。もし次の10年(5年でもいい)でS&P500指数に毎年じゃなくても通算で勝ったら凄いことだ。皆さん是非チャレンジしてみてほしい。ただし、多くの人はパフォーマンスを正確に記録していない。そうなると“勝ったときのことしか記憶にない”だろう。実はこういう人が多いが私は毎日エクセルで記録している。
このコメントに対しHさんから
H:長期で複利で指数をアウトパフォームしたかが重要というお話、とても重要だと思いました。わたしはそこまでマメに記録はしないですが、自分のポートフォリオの中のVTI(*)、QQQ(ナスダック100のETF)と個別のパフォーマンスは見比べてます。現在、キャッシュが25%ぐらいあるので、年末にかけて指数比率を大きくあげて、だんだん、指数に負けないポートフォリオに改造していこうと思います。
(*)VTI:バンガード・トータル・ストック・マーケットETF。あらゆる時価総額規模の米国株式を保有。米国株式市場全体を投資対象とする。3500以上の銘柄を保有し、時価総額ベースでウエートを算定。
質問
川田さんは個別株の詳細な分析もないのに、なぜ全体の10%を30銘柄といった大量の銘柄を保有されているのでしょうか。全体のパフォーマンスの90%はQQQできまるのなら、残りの10%もTQQQにするなどで良いのかな、などと思ったものです。そこはずっと疑問です。
川田:個別銘柄を追いかけないと朝会のネタがなくなるからです。
というより、私の場合当初は個別銘柄だけで運用していました。しかし長年にわたって運用成績を計測して、個別銘柄で主要ベンチマークに打ち勝つ難しさを痛感しています。それでも個別銘柄に投資するのは、個別銘柄を追いかけないとマーケットから興味が離れてしまうのもありますし、ベンチマークに勝ちたいという欲の成せる業でもあります。この記事の最後に私の直近のポートフォリオを掲載しておきます。
Hさんは本業が忙しいのなら、投資成果だけが目的なら、個別ゼロでもOKではないかと思います。
私は、そうはいっても元々個別は最大10銘柄ぐらい。でも今はウエートは低いです。パフォーマンスは悪くないです。予備軍はほんのちょっと買っているだけ。
H:ご返信ありがとうございます。
川田様のおかげで、昨年母と姉の運用資産をS&P500指数とナスダック100連動に半分ずつ振り分けましたが、まずまず資産を増やすことができました。自分も2、3年かけてそういうポートフォリオに近づけていこうと思います。
追加コメント:「個別銘柄に詳細な分析もなく投資」について
この方は私の投資手法をよくご存じだ。特に私が個別銘柄について詳細な分析などしていないことをもお見通しだ。もっとも、私の朝会動画をご覧いただければ私の個別銘柄選定プロセスも想像がつく。
私も個別銘柄だけで運用していた時期がある。そこで学んだのは個別銘柄選択は私には極めて難易度が高く、効率の悪い(=手間がかかる)投資手法ということだ。
【川田コメント】
年率10%がベンチマーク
私の場合ベンチマークがS&P500指数やナスダック100なので、単に値上がりするだけでは資産運用の役目を果たさない。S&P500指数の長期実績である年率10%の上昇が前提だ。このハードルは極めて高いが、そのことを自覚している人は本当に少ない。以下、私の投資経験で学んだことを列挙する。
教科書的な投資指標ではベンチマークに勝てない?
つまり業績が伸びているから、割安だから、キャッシュフローが潤沢だからといった、専門家が得意げに披露する投資指標を乱用するだけではベンチマークに勝てない。それは、この間に相場を牽引したGAFAMが伝統的な投資指標では万年割高だったことや、昨年1年で株価が7~8倍になったテスラがどんな投資指標でも正当化できなかったことを思い浮かべればいい。一方で割安とされるセクターや銘柄は何年たっても見直されず、その間に逃した利益機会はどうやっても取り戻せないくらいだ。
個別銘柄の短期売買は大儲けできない
この手法(個別銘柄での運用)では、投資資金をマーケットに晒す時間とウエートがベンチマークに比べ少ない。これはリスクを抑えた運用と同義だ。また回転売買では売買に伴うコストが高いので不利だ。一方でベンチマーク運用では投資資金の100%を1秒たりともマーケットから離脱させずに働かせている。米国株式のように長期で右肩上がりのマーケットでは、個別銘柄投資はベンチマークに対しそもそも不利な条件で競争している。
銘柄選定の難しさ
単に感性にまかせたりメディアの触れ込み、他人からのふれこみ銘柄だと、必ずと言っていいほど人気銘柄に収斂する。その結果、気が付くと自分が好きな割高銘柄のコレクションになりがちで概ね値動きが荒い。そのうちにマーケットが大幅下落に見舞われる。その結果、多くの銘柄はベンチマーク以上に急落し、元に戻らない銘柄の山積みだ。結局、ベンチマークに勝った銘柄の儲けと、損切りの銘柄、含み損銘柄の損を足し合わせるとベンチマークには及ばない事が多い。
パフォーマンスの正確な測定
個別銘柄で儲けた、儲けたとパフォーマンス自慢する人は、ベンチマークとの正確な比較をしていない場合が多い。年初の当初資金が年末にいくらになったのかを未実現損益も含め計算する必要があるが、それをきっちり管理している人は少ない。これを正確に計算すればベンチマークに劣っている人が多いのではないか?これは先日来ご紹介しているマネックス証券の調査でもはっきりしている。
参考:私の直近の個別銘柄ポートフォリオ
これは朝会でも紹介している。本格ポートフォリオは長期保有が前提です。よほどのことがないと売却しない。一方で予備軍は自分の興味の赴くままに暗号資産とマリファナ銘柄が中心だ。これはほんの少額なので上下にいくらぶれてもポートフォリオ本体のパフォーマンスへの影響は軽微だ。
個別銘柄のメインポートフォリオ
年初来の変化率をご覧いただければ分かるが、パフォーマンスは悪くない。というよりダメ銘柄は損切りしているので勝ち組が残る。9番のQQQはナスダック100のETFのことで、これが私のベンチマーク。他にレバレッジETFもあるが、これらはベンチマークと同方向に動くものの、その騰落率は大きいので万人向けではない。
他の銘柄はグロース銘柄が多い。投資指標はかなり割高だが、成長期待がそのバリュエーションを支えていると考えている。
最近の購入は
2番のアテア・ファーマシューティカルズ<AVIR>は今後数カ月で新型コロナ用の経口抗ウイルス薬の後期臨床試験データを取得する予定だ。「バロンズ・ダイジェスト」の直近号(9/19)で紹介されていた銘柄だ。私が買ったのは急騰後の金曜だ。時価総額は3000億円ぐらいで、普通は小さすぎて買わない。
5番のクレーンシェアーズ・グローバル・カーボンETF(KRBN)は排出権の先物で運用するETFで気候変動対策で恩恵を受ける。これもこの1カ月以内に買った。
本格採用前のポートフォリオ
暗号資産と大麻銘柄をほんの少しずつ買っているが個別ポートフォリオの核になることはない。暗号資産と大麻は日本では胡散臭いと思われている。かつてのキワモノも、いつの日かメインストリームになるかもしれない。時代の変化を見落とさぬようにとの自戒の意味もある。
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