米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.13]2021年9月6日配信
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米国株式投資の真実を伝える
川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
[Vol.13]2021年9月6日配信
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***目次***
マーケット振り返り
今週のズバリ!秋相場の始まり:相場を動かすのは何?
今週のピックアップ記事【アフガン撤退】【株高新理論】【週刊誌米株大特集】【欧州オピニオンリーダー】【投資家パフォーマンス】
投資のヒント 金利上昇でも株価は上がるのか?
川田のお散歩 先週金曜日のライブセミナー
活動情報
質問コーナー 波乱の9月は過去はどうだった?
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
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1.マーケット振り返り(8月23日~9月3日)
<主要指数>
・NYダウ +0.7%
・S&P500指数 +2.1%
・ナスダック総合指数 +4.4%
=駆け足バージョン=
好業績を背景に堅調に推移しました。パウエル議長は講演で年内の債券買い入れ額の縮小(テーパリング)を示しましたが波乱はなく、予想を下回った8月の雇用統計発表後はテーパリング時期の後退観測が市場を支えました。
=ちょっとだけ詳しく=
株式市場は高値圏での推移が続きました。企業業績に対する期待感が下支えとなり、景気敏感株や主要ハイテク株に対する買いが強まりました。ジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演前に様子見姿勢が一時的に広がりましたが、講演後は金融政策に対する不透明感が和らぎ、長期金利が落ち着いたことから、主力ハイテク株を中心に買われました。景気敏感株は経済再開期待などから買われる場面もありましたが、8月の雇用統計などの経済指標に力強さが感じられず、S&P500指数とナスダック総合指数が何度も高値を更新する一方で、NYダウは出遅れる展開となりました。また、決算発表を受けて急落する銘柄も見受けられ、以前よりも選別色がやや強くなりました。
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2.今週のズバリ!
これだけは知っておいてほしい情報をお届けするコーナーです。
■過去2週間のおさらい
過去2週間の株式市場は堅調で、S&P500指数は5回、ナスダック総合指数は8回史上最高値を更新した。ジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演や8月の雇用統計の発表があったが、株式市場に与えた影響は限定的だった。好調な企業業績が背景にある。
先週終了した8月にS&P500指数は2.9%上昇し、月ベースでは7カ月の連騰となった。これは1950年以降でわずか15回目のことだ。また、今年は高値からの下落が5%を超えたことがなく、1980年以降では1995年と2017年の2回しかないらしい。
■秋相場の始まり:相場を動かすのは何?
さて、本日のレーバーデーの休日をもって夏休み期間が終わり、本格的な市場の動きが戻ってくる。各種メディアでも「秋は相場の変動に注意」とさかんに報じられており、これまでの上昇を考えると調整局面はあってもおかしくない。テロといった地政学的リスクなどを除いて米国内の経済的要因に絞って考える場合、株価の構成要素のEPSに影響する要因とPERに影響する要因に分けると分かりやすい。
EPSに与えるマイナス要因は景気鈍化だから、新型コロナウイルスの感染再拡大による再度のロックダウンや、消費・雇用の手控えなどが考えらえる。市場予想を下回った8月の雇用統計を受けて、GDP成長率の予想を下方修正するシンクタンクも見受けられる。しかし、あくまで高めの成長率の下方修正であり、景気後退につながるものではないため、この要因だけで調整しても5%程度ではないか。
PERに最も影響するのは金利動向だ。こちらは状況次第では10%程度の調整につながる可能性もある。また、長期金利が急上昇した場合の影響は成長株のほうが大きく、ナスダック総合指数の調整は相対的に深くなりそうだ。
金利上昇で問題となるのは、インフレを市場が懸念するようになった時だ。現時点ではインフレは一時的だとの見方が支配的で、パウエル議長もそのスタンスでジャクソンホールでの講演を行った。インフレが一時的だとパウエル議長が考える理由は以下の5点であり、これが揺らぐようだと、市場が織り込んでいる金融引き締め時期が前倒しとなる可能性が高まりかねない。それらは、(1)価格が上昇している分野が広範囲ではない、(2)最近大きく上昇した分野(中古車など)の価格が抑えられ始めている、(3)賃金からの脅威が小さい、(4)インフレ期待が落ち着いている、(5)インフレ圧力の世界的な低下だ。
8月の雇用統計では(3)に黄色信号が灯ったが、まだ全体に影響はしていない。今後の経済指標の発表では上記に注意を払いながら、秋相場を見ていきたい。
S&P500指数 過去1年
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3.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【アフガン撤退】【米大統領】
【1】日経新聞 バイデン氏演説要旨 「永遠の戦争」長引かせず/撤収決定に責任を負う 9/1
今回のバイデン大統領の演説要旨で気になった箇所
はっきりさせておきたいのは、(トランプ)前大統領は、私が就任してからわずか数カ月後の5月1日までに米軍を撤収させることでタリバンと合意していた。
そのため、我々に残された道は、撤収するか、エスカレートさせるかの選択だった。
我々はアフガニスタンや他国での対テロ戦を継続する。そのために地上戦は必要ない。
世界は変化している。中国と真剣な競争をしている。中国やロシアが望むのは米国がこれからさらに10年のアフガニスタンの泥沼にはまり込むことだ。
従軍のため何年も家族と会うことができず、誕生日、記念日を祝うこともない。祝日にもプレゼントはなく、家計的に苦労し、離婚に追い込まれ、手足を失い、脳を挫傷し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいる。悲惨でショッキングな統計がある。18人の退役軍人が、毎日自殺している。リスクが低い戦争も、コストのかからない戦争もないのだ。
(18 veterans, on average, who die by suicide every single day in America — not in a far-off place, but right here in America. )
神のご加護を。ありがとう。
(Thank you. Thank you. And may God bless you all. And may God protect our troops.)
川田コメント
■米国はいつも戦争状態
トランプ大統領がすでに撤収を決定していたし、バイデン政権に選択の余地は無かった。この撤収作戦の最中に起こったISISのテロで13人の犠牲を出した。これに対してFOXニュースが連日のようにバイデン辞任を報じているが、なにか違和感がある。状況判断にミスがあったかどうかは知らないが政治の優先課題は“辞任要求”ではないのではないか?
Retired military leaders demand mass resignation of Biden team: Milley, Austin, Blinken, Sullivan
またアフガニスタンに関与し続けることは結果的に中国とロシアを利することになる。このことも重要なポイントだと思う。
さて、私は1991年の湾岸戦争を米国勤務中に経験した。住まいのあったニュージャージー州であった戦死した帰還兵の式典を記憶している。1989年の東西冷戦終了で米国が勝利してから間もない時期だ。米国はいつも戦争をしている国だと実感した。
■日本人の大多数は戦争未経験
日本人には1945年以降は戦争の当事者感覚がない。領土や資源、宗教、そして統治方法を巡って国家間に争いごとは絶えない。これらの争い事の根源には個々人、地域、民族そして国家レベルの認知、対等願望がある。そして互いの闘争本能がぶつかり、多大な犠牲を戦いの当事者にもたらす。これを単に“愚か”と嘆き、当事者の不明を詰(なじ)るのは安易な思考停止に思える。
今後も生命を賭した争いごとが未来永劫無いと思っている日本人が多いのではないか?私は違うと思う。戦後の復興もその後の高度経済成長も、すべて国際的な枠組みの中で米国の庇護の下で起りえた。自らの血を流さずこれだけの繁栄を成し遂げ維持しているのは歴史の時間軸では極短期間であり、これは奇跡にも近い僥倖だと捉えるのが正常な感覚ではないか。
今後、中国の台頭や中東情勢の変化を踏まえ、米国のグローバル戦略で日本の位置づけが変わるなら、我々の安全保障に対する“お気楽路線”に大きな修正を余儀なくされる。その日が明日とは言わないが思いもよらない遠い将来でもないはずだ。
■情報収集
今後起こりうる世界の潮流を見誤ってはいけない。若者はこれまで以上に世界の歴史、宗教、地政学を意識すべきだと思う。国の内外を問わずメディアには必ず発信者側の“意図”が込められている。したがって情報を自ら吟味する力を養う努力が今までに重要になる。今回のバイデン大統領の演説要旨を読んでそう思った。
◇以下原文の原稿
Remarks by President Biden on the End of the War in Afghanistan
【株高新理論】【株式需給】
【2】日経新聞 米株高の理由に新理論 9/2
市場では、ある理論への注目が高まっている。それは需給だ。8月に英誌エコノミストが取り上げたことで広く読まれている。かいつまんで言えば、株式市場にお金が流入すれば株価は上がるという内容だ。今の株高は需給主導だとみる市場参加者の感覚にフィットしている。
資産配分を決めているファンドなどへの新規マネー流入を「フロー」と定義。こうしたファンドは株価にかかわらず株式を買わざるを得ない。影響は持続し、1ドル分のフローで全体の価値は3~8ドル相当上がるという。
企業の自社株買いも同様だ。ガベェ氏(写真)らは「配当の代わりに同額の自社株買いをすれば、1ドル当たり2ドル価値を押し上げる」と推計する。仮説が正しければ、巨額の自社株買いをするアップルなどの巨大ハイテク株が相場をけん引するのは偶然ではなくなる。
川田コメント
企業の実力が完全に株価に織り込まれているとしたら、株価に「割高」も「割安」もない。だから人より大儲けできる投資家はいないことになる。これが「効率的市場仮説|証券用語解説集|野村證券」の意味するところだ。
ところが現実はいつも必ず“結果的に(=後で検証すれば)”割高割安のどちらかの状態にある。この記事はいまの株価は相当に割高だが、このマネーの「フロー」が株価を押し上げている。そしてこのフローの潤沢さが株価の正当化に使われるならその考えは危ない、と結ぶ。
英語の「エコノミスト」(*)は読んでないが、要は1ドル投入すれば市場の時価総額合計がその何倍も増加する。だから、株価を上昇させたければ、そして自社株買いなどで株価を上昇させれば、株主は投入額以上の恩恵を受けるというものだ。
これ自体なにも目新しいことはなく、日ごろ実感していることだ。学者にしてみればそれをキチンと説明できたことが業績なのだろうか?目新しいことはなにもないと判断している。こっちの仕事はその「フロー」の向きと量と株価への弾性値(反応の度合)を探ることだ。
(*)エコノミスト
A new theory suggests that day-to-day trading has lasting effects on stockmarkets
【週刊誌米株大特集】
【3】週間 東洋経済 9月11日号 【特集】まだ間に合う 米国株超入門
今日(9/6)発売の9月11日号の東洋経済の特集は「まだ間に合う米国株 超入門」。全部で44ページにわたる特集で、最初に漫画があり、その後、「米国株の魅力を知る」、「投信・ETFから始める」、「お宝銘柄を発掘する」の3パート構成だ。
ネット証券での買い方や投資家の体験談、具体的な銘柄紹介やランキング、専門家のコメントなどが満載だ。米国株の強気派と慎重派のコメントが紹介されており、強気派では武者リサーチの武者陵司氏が登場している。ちなみに川田は大和時代に武者氏の知己を得ており、今もアドバイスをいただいている。
■武者は10万ドル、バフェットは100万ドル ー「日暮れて途遠し」
以前からの主張を変えずに今回も武者さんはNYダウは10万ドルの大台も、と言っている(2030年頃だが)。武者さんが講演会でこのダウ10万ドル説をぶつと、会場からクスクス笑いがもれる。私はいつもここに日本人の株式投資に対する無知、無理解を発見し嘆きにも似た焦燥感に苛まれ「日暮れて途遠し」となる。とにかく分かっちゃいない。株式の本質が“オーナーシップ=所有”であること、投資を“複利”で考えること、そして“創造的破壊”が社会を進化させること等々だ。ここで教訓「千里の道も一歩から」。
ちなみ2017年にバフェット氏「ダウ平均は100年後に100万ドル超え」 とぶちあげた。といっても年率3.9%で上昇すれば到達する水準だ。当時ウォール街はバフェットに対して「そんなに弱気なの?」の反応で応えた。
そして本号の最後の記事の結論は、今後も米国株の黄金時代は続くとなっている。いずれにせよ、皆様に読んでいただきたい内容で、質問があれば、どんどんこちらにお寄せ頂きたい。
■ダウ工業株30種平均 過去100年チャート
目盛りは対数、1万の10倍は10万、そのまた10倍が100万ドル。ダウ工業株30種平均は1000ドルも1万ドルも時間をかければ到達してきたのが米国株式、ならば10万も100万も可能ではないか
【欧州オピニオンリーダー】
【4】 日経新聞 加速する歴史の歩みに備えを ジャック・アタリ氏
元欧州復興開発銀行総裁 9/2
■心配事は予想より早く起る
この寄稿では8月の米国のアフガニスタンからの撤退から、「実現の可能性が非常に高いと考えられることは、一般的な予想よりもずっと早くに起こる」という法則について述べている。
今回は、米国撤退後にタリバンがアフガニスタンを制圧するのは1年以上かかるとの見方が一般的だったが、完全撤退を待たずに政権が崩壊した。また、東欧の民主化とドイツの再統一を、同氏の実体験をもとに例示している。
今後加速が予想される事態も例示している。気候変動の影響は2050年と思われたものが2025年にも起こり得そうな勢いだし、新型コロナウイルスの感染拡大も想定以上で、ワクチン接種が将来義務付けられるかもしれないと指摘している。また、中国共産党による台湾への軍事的な賭けの可能性も懸念している。
この寄稿の主旨は、「身の回りで心配するような出来事はすぐには起こらないだろうし、まったく起こらないことも考えられる。従って心配しなくてもよい」という考えはやめようというものだ。人生で直視したくないような悲惨なことは往々にして予想より早く起き、それに備えておらずに準備不足で苦しむ人たちが多いと指摘する。
■不測の事態に備えたシミュレーションが大事
そのため、自分にとって望ましい出来事なら到来を早める行動をとるべきで、恐れている出来事ならそれを避けるために、あるいは備えるため、何ができるかを考えるべきだという。いずれにせよ先手を打つことだと結んでいる。
これは投資の心構えにも通じると思う。ポジションを持つと、下がるシナリオは考えづらくなる。どうしても上がるシナリオしか考えたくなくなる。下方シナリオを考えるのはつらく、その逆は楽しいからだ。
しかし同氏が書いているように「多くの場面でサバイバルの鍵となるのは先手を打つことだ」。9月や10月は株式市場が荒れることが多いだけに、多くのシナリオを想定しておき、少なくとも「動揺して底値で売る」ことだけは避けたい。
【投資家パフォーマンス】
【5】日経ヴェリタス
個別株投資、捨てたもんじゃない 大槻奈那 マネックス証券チーフ・ストラテジスト 大槻 奈那 9/5
■投資パフォーマンスの計測
大槻さんがマネックス証券の分析ツールであるMONEX 投資力診断 | アプリ・ツールを使い、同社顧客の投資パフォーマンスを計量分析している。
手法は年初から8月25日までの約9カ月間で個々の投資家の投資パフォーマンスとベンチマークを比べている。
ただし、このパフォーマンスは計測期間の投資リターンとそれを得るためにどれほどのリスクを取ったかで評価している。つまり、リターンとリスクの両方で投資パフォーマンスを評価するわけだ。そうなると、仮にS&P500指数を上回るリターンを上げても、過剰なリスクを冒してのリターンなら単純にS&P500指数を買い持ちしていたほうが優れたリターンという場合もある。
■資産形成にはつまらない投資手法で
そしてその結果はどうか?詳しくは日経ヴェリタスの図表で確認頂きたいが、投資家の多くはS&P500指数に劣るパフォーマンスなのだ。
単純にS&P500指数のパフォーマンス(この期間だと年初来約20%)を上回る成績を上げている投資家は少なからずいる。しかし彼らは大変大きなリスクを取った上での戦績だ。
一方で多くの投資家は過剰なリスクを取った上で、なおかつS&P500指数のリターンを上回っていない。つまり同期間に資産が20%(ドル建て)増えていないのだ。
改めて資産形成のための投資と、エンターテインメントや興奮を味わうための投資との差を確認した。
資産形成には「つまらない」手法が合っている、実感!
■付録:日本株は勝ちやすい
ちなみに日本株の投資家はもう少し成績が良いようだ。つまりリスク・リターンの見合いでTOPIXより良好な投資成果の投資家が、米国株式の場合より多い。投資家の熟練度や日本株市場の効率性が米国株式より劣っているためかもしれないと分析している。
私から言えることは、記事中のグラフをみれば分るが、TOPIXのリターンは10%以下(7%ぐらい?)なのでハードルが低い。それに、確かに日本株市場の効率性は米国株市場より低いだろうから、個別銘柄で勝つチャンスは元々大きい。したがって腕に覚えがある人は日本株のほうが良好なパフォーマンスを上げやすいのだろう。私は勝てないからやらんけどね。
おまけのおまけ
■資産形成の授業が「家庭科」の怪
ところでこの大槻さんの記事の最後に小さな囲みがある。来年度から高校で資産形成の授業が義務化されるというのだ。ただし科目は「家庭科」だ。大槻さんは家庭科の先生が超保守的な資産防衛要素の強い授業を若い人に刷り込むのではと危惧している。そうなると一層個別株離れが進むというのだ。もっともな視点だが実際は投資信託などの紹介になるようだ。
日本株の短期売買だけで個人の資産は増えない。若い人に日本株ではなくS&P500指数を使った資産形成を刷り込んで欲しい。十代から米国株式の積み立てを始めれば、日本の資産形成問題は雲散霧消だ。
2022年から高校で「投資教育」がスタートするって本当?(ファイナンシャルフィールド) - Yahoo!ニュース
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
金利上昇でも株価は上がるのか?
長期金利は過去40年の超長期低下傾向にある(あった?)。米国10年国債の金利は昨年夏の約0.5%を底に上昇に転じた。大方の見方ではこれが長期低下の反転の始まりだ。
最近のマーケットの関心事は今後テーパリング(FRBによる債券購入額の縮小)が始まり、その先で短期金利が上昇するならば、長期金利も上昇傾向に転じよう。それが株価にマイナスなのか、それともプラスに作用するのか?
今日の議論をする場合、以下の基本をおさらいしておきたい。
■金利と債券の関係
ここは大事なので覚えて置いてほしい。
■金利と株価
そして長期金利と株価の関係はいつも一定では無い、これも大事。
順相関:債券の価格が下がると株価も下がる。そして利回りが下がる(=債券価格が上がる)と株価も上がる
逆相関:上記の逆
■長期では緩やかな逆相関
長い期間をとると債券価格と株価は緩やかな逆相関だ。つまり金利が上がる(=債券価格が下がる)ときには株価が買われることが多い。
■金利と株価の関係
教科書的に言えば、株価は金利と業績で決まる。一般的に企業業績が良ければ株価には押し上げ要因だし、金利が上がればPER(株価収益率)の収縮を通じて株価には押し下げ要因だ。
しかし株価がその理屈通りに動く時もあればこの関係が通用しない時もある。
ここでは長年付き合いのある武者リサーチ代表の武者さんのリサーチ・レポートからヒントを頂き議論する。
武者さんは過去40年の「金利と益回りの相関」に注目している。そしてその相関を明らかにすることで今後の金利と株価の関係を占う手がかりを探っている。
■金利と益回り
アプローチは「金利と株価」ではなく「金利と益回り」だ。金利と益回りの比較では、金利が下がれば通常は益回りも下がる。これは金利が下がれば株式投資が相対的に魅力的になるので高く買いあがってもいい、その場合益回りは下がる。ただしその時々の経済状況でこの関係も一定ではない。
■株価と益回りの関係
益回り:因みに益回りはPERの逆数で「株式益回り(%)=1株当たり利益/株価X100」だ。企業利益は一度に株主に還元(支払われる)わけではないが、株主からみればその利益はすべて株主のものだ。
企業の儲けが多くなれば、益回りは上がるし、企業利益が同じで株価が上がれば益回りは下がる。つまりこの益回りは企業利益と株価の2つの要素の組み合わせで決まる。
一方で金利が下がって(=債券価格上昇)も益回りは下がらずに上がる場合もある。これは経済環境が不透明で金利低下の環境ながら、投資家は将来不安で株価に悲観的で株価は下落、一方で企業利益はそれほど悪化していない。こういう場合には金利低下でも益回りは上がるかもしれない。
さらに金利低下の要因が、景気に悲観的でなくても、海外からの資金流入で米国の金利が押し下げられるかもしれない。その場合、仮に株価の上昇以上に企業業績が改善すれば益回りは上昇することもある。
つまり現実のマーケットでは企業業績、金利、それに投資家の株式への投資意欲が複雑に絡み合って株価が決まる。
■武者さんは過去40年の金利と益回りの関係を調べた
1980年~1999年
S&P500指数の益回りは10年国債の利回りとほぼ同様に推移。つまり金利低下は益回り低下(=PERを押し上げ)で株高要因。金利が上昇する時にはPERを押し下げ株安にというほぼ完ぺきな相関が続いていた。
2000年~2012年ごろまで
金利低下にもかかわらず益回り上昇(PER低下)が同時進行したので金利低下は明確な株安要因と言えた。
2012年~2018年
10年国債利回りはほぼ横ばいなのに益回りが低下(=PER上昇)しており、株価は金利とは無関係に上昇した。
2019年以降
金利低下と益回り低下(=PER上昇)が進行しているように見える。再び1999年以前のように益回りと長期金利がパラレルに動く時代に入っている可能性は、十分に考えられる。とすれば、今後予想される金利上昇は、益回りを押し下げ、株安要因になる。
■武者さんの問題提起
今後が
①1980年~2000年ごろまのように金利と益回りはが同じ方向に動くなら、そして
②金利が上昇するなら、
大方が懸念するように益回りにも上昇圧力がかかる。その場合、企業業績の向上がなければ株価には下落圧力がかかることになる。
そして今回はどのような展開になるのか?というものだ。
メディア報道をみると、今後金利上昇の流れが定着するから株価のPERは収縮(益回りは上昇)する、つまり株価には逆風だというコメントが多い。上記で武者さんも指摘しているように、金利上昇(=債券価格低下)は株価下落を招くと単純に結論づけるのは正しくない。そして最初に述べたように歴史的には金利と株価は緩い逆相関(金利上昇時=債券価格下落時には株価は上昇)だ。
■カギはインフレの有無
では、金利上昇期に株価はどのように反応してきたのか?そのヒントをくれるのが下記のテーブルだ。
Weekly Market Commentary 030821
■インフレによる違い
金利上昇局面での株価パフォーマンスは、経済の動向に大きく左右されるが、その中でもインフレは最も重要視すべきものだ。インフレ率が高い時期の金利上昇は、一般的に株式リターンの低下をもたらすが、インフレが株価の逆風になるインフレの水準は、インフレタカ派の多くが現在予想している水準をはるかに超えている。
1968年から1990年までの消費者物価指数(CPI)の上昇率は年平均6.2%で、3年を除いて毎年3.5%を超えていた。テーブル1の上昇率期間のうち5回は、少なくとも部分的にはこれらのインフレの年に行われた。これらの金利上昇期の平均年間リターンは-0.4%だった。
それ以外の金利上昇期の平均年間収益率は13.0%で、1962年以降の全収益率の平均を大きく上回っている。現在、インフレ期待は高まっているが、ブルームバーグが調査したエコノミストの予想の中央値によれば、年末のCPI上昇率が2.5%でもアップサイドサプライズとなる。インフレに対する懸念があるとはいえ、70年代や80年代からはずいぶん離れている。
■イールドカーブのスティープ化(長短金利の傾斜)は株価にプラス
イールドカーブとは、長期金利と短期金利の差のことである。イールドカーブのスティープ化は経済成長への期待が高まり、長期金利が上昇していること。
米連邦準備制度理事会(FRB)がまだブレーキをかけていないため、短期金利が比較的低く保たれており、通常、インフレが抑制されていることを意味している。
イールドカーブのスティープ化(10年債と3カ月債の差)が最も小さかった4つの金利上昇局面では、10年債と3カ月債の価格差が大きくなっている。
S&P500指数のリターンは、10年債利回りと3カ月債利回りの差で測定されるイールドカーブのスティープ化が最も小さかった4つの金利上昇期において、通常の期間よりも弱くなり、年率換算で3.5%となった。
イールドカーブが最も急峻になった4つの期間では、S&P500指数のリターンは年率14.5%となった。
歴史的に見ても、現在はすでにかなりのスティープ化が見られる。FRBがイールドカーブの短期部分を固定していることから、もし中・長期の金利が上昇し続ければ、さらなるスティープ化が起こると予想される。
インフレ期待の高まりによるものもあるだろうが、主な要因は成長見通しの改善だろう。
■長期金利上昇のスタート地点の重要性
長期金利は昨年夏からは上昇しているが、それでも2月末の10年債利回りである1.77%が1962年からの歴史の中で下位2%の値であるなど、歴史的な低水準にある。
企業、消費者、政府にとって金利が上昇するほど負担が大きくなるのは事実だが、現在のような水準では借り手にとっては魅力的であり、今後も堅調な景気を支えることができる。
金利上昇のスタート地点の10年債利回りが最も高かった4つの期間のS&P500指数の年率平均リターンが2.5%であったのに対し、出発地点の金利が最も低かった4つの期間の年率平均リターンは15.4%だった。
つまり初期の金利が低いということは、インフレが抑制されていることやFRBが引き締めを行っていないことを反映していると考えられ、その後に金利が上昇しても、借り入れコストが相対的に低いという経済的な裏付けもある。
■今後の株価は心配するに及ばず
上記を総合すれば、今回、
①仮にもう金利上昇が始まっている
②金利と益回りは純相関の局面に入った
③インフレが引き続き抑制されている
④金利上昇のスタート地点の金利水準が歴史的にみて相当に低い水準だ
というこれらの条件が整っていると想定するなら、金利と株価は逆相関になるだろうから金利上昇(=債券価格下落)は株価にはプラスに働くと考えて良いと思う。
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5.川田のお散歩
◇◇先週金曜日のライブセミナー◇◇
9月3日(金)|S&P500で資産形成するには ゲスト:株式会社マップフィナンシャル 茂木禄人氏 阿部峻也氏
視聴者からの反応で面白いものをいくつか:
川田社長、、今日は酔ってるなw(笑)
西洋はagriculture 日本はgardening。gardeningでは金持ちになれないですか・・・?
→いや日本は盆栽型です。小さく伸びた枝葉をチョキチョキ切って(=利確して)納税。巨木は育てない。
→盆栽、めっちゃわかります。
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6.今後の活動情報
◇9月7日(火)午前8時15分 日経CNBC
◇9月15日(水)午前11時 ストックボイス
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7.質問コーナー
9月になりました。相場が波乱の時期に突入すると聞いています。実際に過去はどうだったのですか?もう少し詳しく教えてください。また、どうして秋は相場が荒れやすいのですか?
回答(要約)
今週もこの秋相場について多くのご質問を頂いた。そこで先週に続きこのテーマにお答えしたい。
■秋の相場は材料が満載
8月中は夏休み期間中で商いが少なく、政治の動きも緩慢で売り買いの材料に乏しい。一方で9月に入ると議会が始まる。今回で言えばバイデン政権の目玉のインフラ法案について激しいやり取りが予想される。それに関連して米国の債務上限問題も俎上に登ろう。さらにコロナ危機の再燃で経済正常化がどの程度遅れるのか?その一方でFRBが一時的と見なしてきたインフレ圧力の持続性にも注視すべきだろう。
■S&P500指数、月間では7か月連続で上昇
さてS&P500指数は今年の1月はマイナスだったがそれ以降7か月連続で上昇している。そして年初来の上昇率は20.4%で相当に高パフォーマンスだ。ちなみに昨年は+16.3%だが、3月23日の底値から指数は2倍以上上がっている。
①S&P500種が7カ月もしくはそれ以上の連続高となったのは、この60年間で14回
以下の3つのパターン
①14回のうち5回は翌月に下落。
②別の4回は連騰が途切れるまでに3.2%未満の上昇
③残り5回は下落に転じるまでに9.7%以上の上昇、中には2018年1月までの10カ月連続高も含まれる。
②過去20年のS&P500の日足を合成した平均チャート。9月は前半に上昇するが下旬から10月上旬まで急落することが多いようだ。
③S&P500指数の9月月中はどうだろう?
1983年からの38年間の平均は下のグラフの青い線だ。そして緑は過去10年間だ。どちらも方向性は似ているが緑の方が上下の振幅が大きい。過去10年間では2015年や2018年に、9月から下落した。一方で2017年のように上昇を続けた年もあった。さて今年はどうだろう?
ウォール街のストラテジストはどう見ているの?(下の表)
「TARGET」:(S&P500指数の)1年後の目標値
「TR PROJ GAIN」:1年後の目標値までの上昇余地
「TP CHG」:目標値の平均が前月からどれくらい変わったか
「S&P CHG」:S&P500指数の前月末との比較
これで言えることは、昨年9月、10月はストラテジストは実際のS&P500指数より相当に強気になった。それが年末にかけて株価が上昇したので、ストラテジストの目標値と実際の値の乖離が縮んだ。
今年2月からはS&P500指数が継続的に上昇したので目標値との乖離が再度縮まっている。
それでもストラテジストは1年後にはここから10%の上昇余地を見ている。これはかなり強気に傾いていると思う。
■年の前半に上がると9月は下がりにくい
さらに以下のような調査結果もある。
1928年以降、S&P500指数の9月の月間リターンは、平均マイナス0.99%でこれは、2番目に低調な月である5月の平均マイナス0.11%よりもはるかに低い。
ただし年初来で好調だった年には、9月にプラスのリターンも?1928年以降、S&P500指数が上半期に13%以上上昇した年の9月のリターンの中央値はプラス1.4%。
1928年以降93年間、9月にS&P500指数が下落した割合は54%。一方で上半期にS&P500指数が上昇している場合、9月に上昇する割合は63%。ちなみに今年上半期、S&P500指数は+14%。
1990年以降のデータを分析したところ、1月から8月までの上昇率が2桁の場合、年末までにさらに8%上昇。
9月は下がる下がると言われていても、結果は言われるほど下げが多いわけではない。下のグラフは1928年~2021年7月までの月次別騰落回数。たとえば過去92回の9月で上昇は42回あり、下落は50回だ。
資料はヤルデニ・リサーチ 他
Stock Market Indicators: Historical Monthly & Annual Returns
■まとめ
まわりを見渡せば不安材料が満載だ。それでも株価は強い、そしてそれがなぜかを特定するのは全て終わってからの後付けだ。長期投資家なら、あるかないか分からない秋口の波乱を気にする必要はない。
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