ブラックアウト・ルールからの解放 【中原駿の今日のひと言】7月18日更新
さすがに今回は0.75%で決着か
<1%の利上げ織り込みは急速に減少>
主要な各国中央銀行政策決定会合のメンバーは、マーケットを混乱させないことを目的にいわゆる「ブラックアウト期間」あるいは「ブラックアウト・ルール」を設けている。これは政策決定会合の前後の時期に金融政策またはその関連について発言することを禁じたルールで、通常金融政策決定会合開始の数営業日前から会合終了当日までの期間原則として金融政策及び金融経済情勢に関して発言をしないこととなっている。一番短いのは日銀の2日前から当日の総裁会見迄。一番長いのは米国で、FOMCが開催される前々週の土曜日からとなっている。もっともFOMC終了後直ちにブラックアウトから解放される。7月のFOMCのブラックアウトが始まるのは16日。15日にFOMCメンバーの発言が相次いだのは、こうした事情が大きい。
実際追いつくのが大変なほどFOMCメンバーの発言が相次いだ。注目を引いたのはすでに1%を見込んでいた市場に「それはやり過ぎだ」という趣旨の発言が相次いだことだ。セントルイス連銀のブラード総裁は今月のFOMCに言及するのを控えたものの、6月の消費者物価指数(CPI)が非常に高い数字となったものの依然75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げを支持するとした。アトランタ連銀のボスティック総裁もフロリダ州タンパでの講演で、「急激過ぎる行動は、他の事象の多くが順調に機能するのを妨げることになる」。「機能していない部分を修復しつつ、経済の他の部分に及びかねない副作用を最小限に抑えるよう努力することが、私の目指すところだ」。アトランタ連銀内の積極利上げ派とは見解を異にしているとも述べ、0.75%利上げ派とみるべきだろう。
また7月ミシガンセンチメント速報値で消費者のマインド指数が50から51.1に上昇し、長期インフレ期待が3.1%から2.8%へ予想以上に低下したことも好材料。ガソリンの値下がりが功を奏したものとみられる。金利先物市場が7月15日現在織り込んでいる7月1ポイントの利上げ確率は一時期75%もあったが、31%まで急速に減少。0.75ポイント以上の利上げは9割以上が見込んでいる。
もちろん、まだ旗幟を鮮明にしないFOMCメンバーもいる。ブラード総裁は、FOMCが年末までに政策金利を3.5%ではなく、3.75-4%のレンジに引き上げる必要があると発言したが、残りの会合で決める利上げ幅について「それは最善の戦略は何かを考えた上で判断していかなくてはならないことだ」とあいまいなまま。ウォラーFRB理事も0.75ポイントの利上げを支持しながらも、今後発表される経済指標で一段のインフレリスクが示された場合は、より積極的な行動も支持し得るという。前回も直前のCPIショックで0.75%利上げというリークが出た。本当にFOMCメンバーが1%に傾いたら、またしてもリークとなるのだろうが、18日以降物価関連の重要な指標は無く、0.75%は異例と言い切ったパウエル議長が率いる以上、今回は最大0.75%で決着することになるだろう。0.5%となれば、逆の意味でサプライズだが、月末までの市場動向次第では全くないわけでは無いことも念頭に置いておきたい。
Is it OK?