市場参加者の減少と米金融政策を考慮したトレード戦略【12月13日~12月17日】
先週の為替相場レンジ(変動範囲)
| 始値 | 安値 | 高値 | 終値 | 変化率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 112.78 | 112.77 | 113.96 | 113.38 | +0.53% |
| EUR/USD | 1.1321 | 1.1228 | 1.1356 | 1.1311 | ▲0.09% |
| EUR/JPY | 127.61 | 127.50 | 129.19 | 128.24 | +0.49% |
| USD/CNH | 6.3700 | 6.3291 | 6.3893 | 6.3750 | +0.08% |
| CNH/JPY | 17.7005 | 17.6973 | 17.9840 | 17.7767 | +0.43% |
先週の為替相場サマリー
USD/JPY
- 先週のドル円相場は、1ドル=112.78円からスタート。先週末の流れを引き継ぎドル買戻し優勢で始まると、アジア時間に113円を、NY時間には意識された113.30円を突破。その後もオミクロン株への不安が和らぎ米株が買い戻される中でドル円の上昇基調は続き、8日(水曜日)のNY時間には113.96円まで上昇した。9日、10日は米株に調整が入る中で、クロス円は売られ、ドル円も利食い優勢。一時113.22円まで下落した後、わずかに買い戻され113.38円でクローズ。
EUR/USD
- ユーロ相場は、1ユーロ=1.1321ドルからスタート。週初はユーロ売りドル買いが優勢で7日(火曜日)のNY時間に掛けて、一時1.1228まで下落。しかし、その後は特段の材料がない中で8日(水曜日)のNY時間に一時1.1356まで買い戻されるなど荒い値動きになった。週末に掛けてはじり安で、結局は週初とあまり変らない1.1312でクローズ。典型的な方向感のない年末相場となった。
USD/CNH
- 人民元相場は、1ドル=6.3700元からスタート。7日(火曜日)からじりじりと人民元買いが強まると、意識されていた6.3500を下抜けてドル安、人民元高が加速、一時6.3291まで下落した。ただしその後は中国恒大集団のデフォルトや、人民銀行による外貨の預金準備金率引き上げを受けて反発。6.3893まで買い戻されたあと、6.3769でクローズと方向感のない相場展開となった。
先週のできごと
※物価指数とマネー統計は前年同月比、GDPは前期比、特段の記載がない経済指標は前月比または当月の数値6日
- ドイツ10月製造業新規受注 ▲6.9%
- 米エネルギー省のターク副長官はヒューストンで開催された世界石油会議で、「石油・ガスの国内企業のリーダーシップが必要とされている。国内総生産(GDP)は成長し、石油・ガス業界の利益水準は回復しているのに、生産が回復していない」などと述べ、石油会社に生産量を増やすように促した。「バイデン政権は増産の邪魔をしていない」とも言及した。
7日
- 中国11月貿易収支 +717.2億ドル(輸出入ともに金額多く、好調)
- オーストラリア7-9月期四半期住宅価格指数 +5.0%(前期比)
- 豪準備銀行(中央銀行)は金融政策を据え置き
- ドイツ10月鉱工業生産 +2.8%
- ドイツ12月ZEW景況感調査 29.9
- 米国10月貿易収支 ▲671億ドル
8日
- ポーランド中銀は政策金利を0.5%引き上げ、1.75%に設定
- インド中銀は政策金利を4.0%に据え置き
- 日本10月国際収支 +1.18兆円
- 米国10月JOLT求職 11.0M(引き続き高水準の求職数)
- ロシア11月消費者物価指数 +8.4%
- ブラジル中央銀行は政策金利を1.50%引き上げ9.25%に設定
9日
- 日本10-12月期四半期法人企業景気予測調査 9.6
- 中国11月消費者物価指数 +2.3%
- 中国11月生産者物価指数 +12.9%(高いインフレ圧力)
- 前週分新規失業保険申請件数 184K(パンデミック前の水準をさらに下回る好結果)
- メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)が発表した2021年11月の消費者物価指数は、前年同月比7.37%上昇した。01年1月以来、約21年ぶりの高水準だった。
- 南米ペルーの中央銀行は9日開いた金融政策決定会合で、政策金利を0.5%引き上げて2.5%にすると発表した。5会合連続となる。
- 中国人民銀行(中央銀行)は、市中銀行から強制的に預かる外貨の預金準備率を引き上げると発表した。これまで7%だった比率を15日から9%に高める。外貨の流動性を下げて、金融機関に手持ちの人民元を外貨に両替するよう促す。元高圧力を緩める狙いだ。
10日
- 日本11月国内企業物価指数 +9.0%(法人物価は高い)
- ノルウェー11月消費者物価指数 +5.1%
- ドイツ11月消費者物価指数 +5.2%(高いインフレ圧力)
- 米国11月消費者物価指数 +6.8%(高いインフレ圧力)
- 12月ミシガン大学消費者態度指数 70.4
- 米国主催の民主主義サミットは2日目の討議を終えて閉幕した。バイデン大統領は締めくくりの演説で「民主主義の価値観は国際システムの中心にあると確信している」と強調し、民主主義陣営の結束を重ねて呼びかけた。
- マネーが再びリスク資産に向かい始めた。米株式相場が新型コロナウイルスのオミクロン型が広がる前の水準に回復した。
- バイデン米大統領は、ロシアがウクライナに侵攻すれば米国と北大西洋条約機構(NATO)が中東欧などに軍を増派すると警告した。
経済用語解説
- GDP=Gross Domestic Product(国内総生産):高成長が良い
- CPI=Consumer Price Index(消費者物価指数):2%目標を掲げる先進国が多い
- PCE=Personal Consumption Expenditures:個人消費支出、消費者物価と相関が高い
- PPI=Producer Price Indes(生産者物価指数):CPIに影響を与える
- PMI=Purchasing Manager Index(購買担当者景気指数):50が基準
- ZEW=Leibniz Centre for European Economic Research(欧州経済研究センター):0が基準
- NAHB=National Association of Home Builder:50が基準
- ニューヨーク連銀製造業景気指数:0が基準
- フィラデルフィア連銀製造業景気指数:0が基準
- リッチモンド連銀製造業指数:0が基準
- シカゴ購買部協会景気指数:50が基準
- ミシガン大学消費者態度指数:1966年を100として指数化
- S&P/ ケース・シラー住宅価格指数は、「20大都市圏住宅価格指数」がよく利用されている。景気に大きな影響がある住宅市場の動向を確認する上で重要な指標。
- 住宅販売保留指数:売買契約は終わっているが、引渡しが済んでいない物件数を指数化
- 欧州消費者信頼感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(速報の発表は前月比で報告される)
- 欧州景況感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(発表は実数で報告される)
- 消費者信頼感指数:1985年を100として指数化したもの
- 日本景気動向指数:2015年を100として指数化したもの
- 日本景気ウォッチャー調査:50が基準
- 日本法人企業景気予測調査:0が基準
注目の経済指標と政治イベント
13日
- 08:50 日本10-12月期日銀短観・四半期大企業業況判断
- 08:50 日本10月機械受注
- 21:00 インド11月消費者物価指数
- 21:00 OPEC月次報告
14日
- 13:30 日本10月設備稼働率
- 16:00 英国11月失業率
- 17:30 スウェーデン11月消費者物価指数
- 19:00 ユーロ圏10月鉱工業生産
- 22:30 米11月卸売物価指数
15日
- 11:00 中国11月小売売上高
- 11:00 中国11月鉱工業生産
- 16:00 英国11月消費者物価指数
- 16:45 フランス11月消費者物価指数
- 17:00 南ア11月消費者物価指数
- 22:30 カナダ11月消費者物価指数
- 22:30 米国12月ニューヨーク連銀製造業景気指数
- 22:30 米国11月小売売上高
- 28:00 FOMC
- 28:30 パウエルFRB議長講演
16日
- 08:50 日本貿易統計
- 09:30 オーストラリア11月雇用統計
- 17:30 スイス中銀、金融政策決定会合
- 17:30 ドイツ12月PMI
- 18:00 ユーロ圏12月PMI
- 20:00 トルコ中銀、金融政策決定会合
- 21:00 英中銀、金融政策決定会合
- 21:45 欧州中央銀行、金融政策決定会合
- 22:30 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
- 22:30 米国11月住宅着工件数
- 22:30 米国前週分新規失業保険申請件数
- 22:30 米国12月PMI
- 28:00 メキシコ中銀、政策金利
17日
- 時間未定 日銀、金融政策決定会合
- 19:30 ロシア中銀、金融政策決定会合
来週以降
- 1月17日―21日:ダボス会議
- 1月18日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 1月26日:FOMC
- 2月3日:ECB
- 3月10日:ECB
- 3月16日:FOMC(経済予測データ付き)
- 3月18日:日銀金融政策決定会合
- 4月14日:ECB
- 4月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 5月4日:FOMC
- 6月9日:ECB
- 6月15日:FOMC(経済予測データ付き)
- 6月17日:日銀金融政策決定会合
- 7月21日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 7月21日:ECB
- 7月27日:FOMC
- 9月8日:ECB
- 9月21日:FOMC(経済予測データ付き)
- 9月22日:日銀金融政策決定会合
- 10月27日:ECB
- 10月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 11月2日:FOMC
- 12月14日:FOMC(経済予測データ付き)
- 12月15日:ECB
- 12月20日:日銀金融政策決定会合
先週の通貨強弱
- 先週はドル安が進んだ(139/196ヶ国)
- 先週の通貨強弱は右記の通り ノルウェーなど産油国 > 人民元 > ユーロ > 米ドル > 日本円 > トルコリラ
- ドル安でドル円が上昇しているのが今の相場のポイント。反対にドル高では新興国通貨売り円買いの影響で、ドル円が売られてしまう可能性に留意したい。
- また資源価格の推移と新興国通貨の上下にも高い相関がみられる。先週は原油価格に持ち直しの動きが見られたことで産油国のNOKが買われた。
- 豪ドルはRBA金融政策決定会合を経て上昇地合いに転換。ただし何か大きな変化が見られているわけではないので過度な上昇期待は禁物。
グローバルマクロ環境の整理(最新版)
- 相場のテーマは「オミクロン」から徐々に「米金融政策」へと戻ってきている。既存のワクチンがオミクロンに対しても有効性を保てていることや、ワクチン接種が進み重症化率や致死率が低下していることが背景。
- そう言った状況の中で、市場参加者の米国政策金利引き上げ見通しは、1回目の利上げが2022年5月、2回目の利上げが2022年9月へと前倒しになってきている。インフレ圧力が強く、またFED高官からも早期のテーパリング完了を匂わせる発言が出てきたことも影響している。
- リスクオフ要因としては「オミクロン」「恒大集団など中国の不動産市況の悪化」「ロシア・ウクライナ問題」
- リスクオン要因としては「民主党(Build Back Better)法案」が議会を通過する可能性や「資源価格の持ち直し」
- 今週は水曜日に米FOMCを控えており、まずは米金融政策の変化を捉えたトレードをしたい
グローバルマクロ環境の整理(補足)
- コロナ新規感染者数の推移(7日移動平均)はピークアウトに向かっている(添付チャートDaily New Cases )
- 新規死亡者数は落ち着いておりオミクロンの感染拡大が以前ほど大きな死者数増加につながらないように見える(添付チャート Daily Deaths )
COVID-19 新規感染者数, Worldmetersより抜粋
COVID-19 新規感染者数, Worldmetersより抜粋
市場参加者のFOMC利上げ予想, CME Group より抜粋
チャート分析
USDインデックス(日足)
- ドルインデックス=ドルの総合的な強さを示す指標(バスケットの中身:EUR57.6%, JPY13.6%, GBP11.9%, CAD9.1%, SEK,4.2%, CHF3.6%)
- ドル高基調の中で95.50~96.90レンジで推移している
- 95.50付近では買いから入っていきたい
USD/JPY 中期(日足)
- 先週は値を戻したものの日足で上値を切り下げつつある
- 戻り売りが無難に見える
USD/JPY 短期(時間足)
- 上に走る場合は113.80~114.00をクリアに上抜けられるか注目
EUR/USD 中期(日足)
- 下落基調の中で1.1210~1.1370で推移している
- 1.1350より上は売りたい
EUR/USD 短期(時間足)
- より狭いレンジでは1.1230~1.1350
- 1.1330~1.1350から売ることも検討出来る
USD/CNH 中期(日足)
- 6.35のレンジ下限をブレイクしたものの、一旦は上に反発した格好。背景に外貨の準備預金率引き上げがある。
- チャートだけを見れば戻り売りが良さそうであるが、米金利の上昇を控える中でこれ以上の人民元高を見込めるのか疑問もある。
USD/CNH 短期(時間足)
- 短期的には6.3790~6.38の戻り売りがワークしそう
今週の戸田の取引戦略
全体方針
- 年末で市場参加者が少なく、そのためボラタイルな相場になることを想定し、ポジションは少な目に
- 全体的に方向感が出にくいことを想定し、レンジの上で売り、下で買いを徹底
USD/JPY
- 先週末の終値:113.38
- 目線:横ばい~やや下
- 想定レンジ:112.70~113.80
- 現在ポジション:USD/JPY ±0
- 米金利上昇でむしろドル円は売られる可能性が高いと判断
- 短期的にはやや下目線
- トレンドは大きくないと判断し、押し目買い、戻り売りを積極的に狙っていきたい
EUR/USD、EUR/JPY
- 先週末の終値:EUR/USD 1.1311
- 目線:EUR/USD 横ばい~下 EUR/JPY 下
- 想定レンジ:EUR/USD 1.1230~1.1350
- 現在ポジション:EUR/USD ±0 EUR/JPY ±0
- 1.1330より上は売り、1.1230前後では利食いを徹底したい
- EUR/JPYは129.00前後まで上昇する場面があれば売りで入りたい
CNH/JPY、USD/CNH
- 先週末の終値:USD/CNH 6.3750
- 目線:USD/CNH 横ばい~下、CNH/JPY 横ばい
- 想定レンジ:USD/CNH 6.3000~6.4000
- 現在のポジション:USD/CNH ± 0.0 CNH/JPY +1.5
- USD/CNHは週明けに6.3790がレジスタンスとして機能するか確認し、売りから入りたい
- ただし米金利が上昇してくる中で、人民元への過度な期待は禁物であり、人民元が売られる場合には早期撤退の方針
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