思い付いちゃったものはしょうがない。本日三つ目! 【中原駿の今日のひと言】7月20日更新
不景気風と光明
不景気な話が次から次へと出始めている。
米アップルは来年、一部の部門に関して採用と支出のペースを落とす計画という。関係者によれば、今回の計画は「不確実性の高い時期により慎重に経営を進める戦略の一環」。ただ、これは会社全体の方針ではない。全てのチームが影響を受けるわけではなく、アップルは依然として来年、複合現実(MR)ヘッドセットを含む積極的な製品発表を予定している。ただそれでも、ハイテクの雄、アップルにしてはコロナ禍以降最大の変化といえる。問題はこうした一連の人員・支出の削減がアップル1社だけの現象ではないことだ。アルファベットやアマゾン、メタ・プラットフォームズ、スナップといった他の大手テクノロジー企業も、このところ予算抑制や採用ペース減速に動いている。とりあえずアップルの人員削減は「補充をしない」といった極めて保守的なものだが、例年10~20%人員を増やしてきたアップルにしては相当後ろ向きといえる。そしてこの時点で23年の予算達成に関して一部の部門が未達という見込みも早い。社内では相当後ろ向きの議論が出ているに違いない。世界販売シェアが20%に達することもあった日本での値上げによる販売減も見込んでいるに違いない。
それでも一部いい話もないわけでは無い。ネットフリックスが19日発表した4-6月(第2四半期)会員数は97万人落ち込んだものの、減少幅は市場予想の220~230万人の半分以下だ。同社の英語版シリーズで最も人気の高いSFドラマ「ストレンジャー・シングス」の新シーズンが大きく寄与したとのこと。株価は時間外取引で一時12%上昇。最も長い目で見た慎重論は消せないだろう。同社は7-9月(第3四半期)の会員数について、100万人増しか見込んでいない。これはコンセンサス180~200万人のこれまた半分で「復調は想定を下回る」(アナリスト)といえる。まだまだいばらの道という訳だ。
国際通貨基金(IMF)のパザルバシオグル戦略政策審査局長はインドネシアのバリ島で開かれたパネル討論会で、食品やエネルギーの価格高騰や新興国への資本フロー鈍化、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の持続、中国の景気減速で政策当局者の「困難さが大きく増した」。「相次ぐ衝撃が世界経済に実際に打撃を与えている」と述べ、次の報告書では今年の成長率を大幅に引き下げる、という。IMFは既に4月の報告書で、今年の世界経済成長率予想を3.6%と、ウクライナでの戦争前の4.4%から下方修正している。おそらく、下方修正の大幅さは米国の第1.第2四半期のほぼゼロ成長などを考えると、2%前後まで落ち込むのではないか。
しかし、悪い話が次から次へと出る―というのは株式市場にとっては「底値の兆し」ともいえる。いまだ財政出動や金融緩和の時期に到達していないが、これだけ価格調整し、悪い話と悲観論が堂々とマスコミを賑わすということは、底値反発の時間帯に入りつつあるといえる。
Is it OK?