米雇用統計発表直前!【中原駿の今日のひと言】7月8日更新
重要な先行指標が崩れる米国
米国景気については、ソフトランディング可能との意見も多い。だが、重要な先行指標が崩れ始めている点を指摘しておきたい。
<ISM製造業景況感指数>
米国景気の先行指標として最も信頼度が高いのが、ISM製造業景況感指数だ。50を割ると景気後退、50を上回ると景気拡大とされる。6月の米製造業景況感指数は53.0と、まだ景気拡大といえる数字だが、前月から3.1ポイントも低下した。2020年6月以来2年ぶりの低水準かつコンセンサスの55.0を下回っている。
問題は新規受注の急降下だ。なんと新規受注は前月比5.9ポイント減の49.2に低下、20年5月以来の50割れとなった。企業は供給制約から昨年来在庫を積み上げてきているため、いったん受注が減少すると、あっという間に値崩れ、不況に陥るリスクがあることは再確認しておきたい。
ISM非製造業景況感指数も中身は良くない。6月の非製造業総合指数は55.3に低下した。5月は55.9、3カ月連続の低下だ。しかも雇用指数は5月の50.2から6月は47.4に低下し、こちらも20年7月以来2年ぶり低水準。現在のところ、採用がうまくいかない、求人が充足できない―ということになっているが、耐久消費財などで行われ始めたレイオフや住宅関連の雇用削減は遅かれ早かれ雇用のタイトさをはっきりと「失業者急増」といった世界に追いやることは間違いない。
なぜならば政策金利はさらに引き上げられ、政策金利引き上げの効果は通常3~9カ月後に出始めるからだ。6月の時点では3月の利上げの影響の一部が出たにすぎず、それでもこれだけの急降下を見せるのであれば、米国景気はFRBの標榜する「ソフティッシュ・ランディング」(やや柔らかい着地)ではなく、筆者が想定するでこぼこ道を激しく揺られながら「ハード・ランディング」する道を歩みつつあるのではないか。
Is it OK?