【11月08日~11月12日】成立した米国のBIB(超党派インフラ)と未成立のBBB(民主党)法案を考慮したトレード戦略
FX
先週の為替相場レンジ(変動範囲)
| 始値 | 安値 | 高値 | 終値 | 変化率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 114.11 | 113.29 | 114.46 | 113.40 | ▲0.62% |
| EUR/USD | 1.1559 | 1.1513 | 1.1617 | 1.1566 | +0.06% |
| EUR/JPY | 131.95 | 130.82 | 132.58 | 131.16 | ▲0.60% |
| USD/CNH | 6.4042 | 6.3909 | 6.4087 | 6.3925 | ▲0.18% |
| CNH/JPY | 17.7973 | 17.7104 | 17.8812 | 17.7312 | ▲0.37% |
先週の為替相場サマリー
USD/JPY
- 先週のドル円相場は、1ドル=114.11円からスタート。週初こそ自民党が衆院選で単独過半数を獲得したことで、株高円安の流れが続き114.46円まで上昇したが、このレベルでは売りが優勢となり次第に反落した。火曜日には豪準備銀行が市場の期待よりもハト派な姿勢を示したことで豪ドル売りが加速、豪ドル円の売りに引きずられる形でドル円は114円台を割り込んだ。その後は113円台後半での推移が続いたが、クロス円売りの勢いが強く、週末には113.29円まで下落し、113.40円でクローズ。
EUR/USD
- ユーロ相場は、1ユーロ=1.1559ドルからスタート。週初はユーロ買戻しが優勢で1.1620手前まで上昇した。しかしこのレベルでは上値が重くその後は1.15台後半での動きが続いた。木曜日にイングランド銀行が市場の予測に反し政策金利の据え置きを発表すると英ポンドが下落、ユーロも英ポンドに連れて下落し1.1550を割り込んだ。金曜日には強い米10月雇用統計を受けて1.1513まで下落する局面も見られたが、クローズに掛けては買いもどされ1.1566で引けた。
USD/CNH
- 人民元相場は1ドル6.4042元からスタート。週を通じて6.40を挟んでの小動きに終始した。中国金融当局はUSD/CNHの為替レートを見ながら短期金融市場のオペレーション(資金量の調整)を行っているように見える。週末は週初よりわずかに安い6.3925でクローズ。
先週のできごと
※物価指数とマネー統計は前年同月比、GDPは前期比、特段の記載がない経済指標は前月比または当月の数値1日
- 中国10月Caixin製造業購買担当者景気指数(PMI) 50.6
- 米国10月ISM製造業景況指数 60.8
- 衆院選は小選挙区と比例代表を合わせた465議席が全て確定。自民党が追加公認を含めて261議席を獲得し、単独で絶対安定多数に達した。立憲民主党は96、日本維新の会は41、公明党は32、国民民主党は11、共産党は10、れいわ新選組は3、社民党は1議席を得た。無所属は10だった。
2日
- 豪準備銀行(中央銀行)は中期(3年)債券の金利誘導目標(0.1%)を撤廃した。
- 日銀は9月21~22日に開いた金融政策決定会合の議事要旨を公表した。消費者物価の前年比が、エネルギー価格などの上昇を受けて「小幅のプラスに転じていく」との見方が委員の中で一致した。
- 複数の米メディアは東部ニュージャージー州の知事選で民主党・現職のフィル・マーフィー知事が勝利を確実にしたと報じた。マーフィー氏が優勢との予想に反して接戦になっていた。民主党のバイデン大統領の政権運営に対する有権者の不満を映した。
- トヨタ自動車など日本車メーカー4社が2日発表した10月の米新車販売台数は、前年同月比28%減の30万台だった。前年割れは3カ月連続。半導体不足による減産の影響が続き、9月の23%減から下げ幅が拡大した。
3日
- 日本祝日(文化の日)
- 中国10月Caixinサービス部門購買担当者景気指数(PMI) 53.8
- ユーロ圏9月失業率 7.4%
- 米国10月ADP雇用統計 57.1万人(強い)
- 米国10月ISM非製造業景況指数 66.7(強い)
- 米国9月製造業新規受注 +0.2%
- 米連邦準備理事会(FRB)は11月から量的緩和の縮小(テーパリング)に着手すると公表。月に米国債800億ドル(約9.1兆円)、住宅ローン担保証券(MBS)400億ドルの計1200億ドルを購入し、これまで約4兆ドルを市場に供給してきた。11月から購入月額を米国債100億ドル、MBS50億ドルの計150億ドルずつ減らし、22年6月にゼロとする計画。
- 中国の国家衛生健康委員会は2日に本土で109人の感染者が出たと発表した。1日あたりの新規感染が100人を超えるのは8月10日以来、約3カ月ぶり。
4日
- ロシア祝日(統一の日)
- ユーロ圏9月卸売物価指数 +2.7%
- イングランド銀行(BOE、英中央銀行)は市場の予想に反して政策金利の据え置きを公表した。ただ今後数回以内の会合での利上げを示唆した。
- 米国9月貿易収支 ▲809億ドル
- 米国前週分新規失業保険申請件数 26.9万件(パンデミック前の水準にちかい)
- 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」が原油の追加増産を見送った。新型コロナウイルスの感染再拡大で需要が弱含むのを警戒し、日米など消費国の増産要請に「ゼロ回答」を貫いた。
5日
- ユーロ圏9月小売売上高 ▲0.3%
- 米国10月雇用統計 非農業部門雇用者数増減+53.1万人 失業率4.6%
- カナダ10月雇用統計 非農業部門雇用者数増減+3.1万人 失業率6.7%
- バイデン米政権の看板政策の一つ、1兆ドル(約110兆円)規模の超党派インフラ法案が実現する。上院は8月上旬に可決しており、バイデン大統領の署名を経て成立する。
経済用語解説
- GDP=Gross Domestic Price(国内総生産);高成長が良い
- CPI=Consumer Price Index(消費者物価指数):2%目標を掲げる先進国が多い
- PCE=Personal Consumption Expenditures:個人消費支出、消費者物価と相関が高い
- PPI=Producer Price Indes(生産者物価指数):CPIに影響を与える
- PMI=Purchasing Manager Index(購買担当者景気指数):50が基準
- ZEW=Leibniz Centre for European Economic Research(欧州経済研究センター):0が基準
- NAHB=National Association of Home Builder:50が基準
- ニューヨーク連銀製造業景気指数:0が基準
- フィラデルフィア連銀製造業景気指数:0が基準
- リッチモンド連銀製造業指数:0が基準
- シカゴ購買部協会景気指数:50が基準
- ミシガン大学消費者態度指数:1966年を100として指数化
- S&P/ ケース・シラー住宅価格指数は、「20大都市圏住宅価格指数」がよく利用されている。景気に大きな影響がある住宅市場の動向を確認する上で重要な指標。
- 住宅販売保留指数:売買契約は終わっているが、引渡しが済んでいない物件数を指数化
- 欧州消費者信頼感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(速報の発表は前月比で報告される)
- 欧州景況感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(発表は実数で報告される)
- 消費者信頼感指数:1985年を100として指数化したもの
- 日本景気動向指数:2015年を100として指数化したもの
- 日本景気ウォッチャー調査:50が基準
- 日本法人企業景気予測調査:0が基準
注目の経済指標と政治イベント
8日
- 中国6中全会(~11日まで)
- 14:00 日本9月景気先行指数(CI)・速報値
- 23:30 クラリダFRB副議長がインフレターゲットや金融政策についてパネル・ディスカッション
- 24:30 パウエルFRB議長が「性別と経済に関する会議」で導入スピーチ
9日
- 08:50 日本9月国際収支・経常収支
- 14:00 日本10月景気ウオッチャー調査
- 19:00 ユーロ圏11月ZEW景況感調査
- 22:00 米国10月卸売物価指数(PPI)(前月比)
- 23:00 パウエルFRB議長が「性別と経済に関する会議」で導入スピーチ(BOE、BOC、ECBも参加予定)
10日
- 08:50 日本10月マネーストックM2(前年同月比)
- 10:30 中国10月消費者物価指数(CPI)(前年同月比)
- 10:30 中国10月生産者物価指数(PPI)(前年同月比)
- 22:30 米国10月消費者物価指数(CPI)(前月比)
- 22:30 米国前週分新規失業保険申請件数
- 25:00 ロシア7-9月期実質国内総生産(GDP、速報値)
11日
- 米国祝日(退役軍人の日)
- 中国最大のネット通販セール「独身の日」
- 08:50 日本10月国内企業物価指数
- 11:00 中国10月鉱工業生産指数
- 16:00 英国7-9月期四半期国内総生産(GDP)
- 19:00 ECB経済予測
- 28:00 メキシコ中銀、政策金利発表
12日
- APEC首脳会議
- 19:00 ユーロ圏9月鉱工業生産(前月比)
- 24:00 11月ミシガン大学消費者態度指数・速報値
- 24:00 米国9月JOLT求職
来週以降
- 12月14日―15日:FOMC(経済予測データ付き)
- 12月16日:ECB
- 12月16日―17日:日銀金融政策決定会合
- 1月17日―21日:ダボス会議
- 1月18日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 1月26日:FOMC
- 2月3日:ECB
- 3月10日:ECB
- 3月16日:FOMC(経済予測データ付き)
- 3月18日:日銀金融政策決定会合
- 4月14日:ECB
- 4月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 5月4日:FOMC
- 6月9日:ECB
- 6月15日:FOMC(経済予測データ付き)
- 6月17日:日銀金融政策決定会合
- 7月21日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 7月21日:ECB
- 7月27日:FOMC
- 9月8日:ECB
- 9月21日:FOMC(経済予測データ付き)
- 9月22日:日銀金融政策決定会合
- 10月27日:ECB
- 10月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 11月2日:FOMC
- 12月14日:FOMC(経済予測データ付き)
- 12月15日:ECB
- 12月20日:日銀金融政策決定会合
※ここから先(「先週の通貨強弱」「グローバルマクロ環境の整理」「チャート分析」「今週の戸田の取引戦略」)は有料記事になります
先週の通貨強弱
- 先週はドルに際立った動きがない中で、円が買われた
- ブラジルやメキシコ、南アなど新興国通貨も買われた
- オーストラリアやイギリスは市場予想よりもハト派な中銀の姿勢で売られた
- 原油価格が少し落ち着いてきたこともあり、ノルウェーやロシアなど産油国も売りが優勢になっている
- まとめると通貨強弱は右記の通り 南アなど一部の新興国通貨> 日本円 > 人民元 > ユーロ > 米ドル > 産油国通貨 > 市場予想よりもハト派だった英ポンド&豪ドル
グローバルマクロ環境の整理
- 現在の相場の大きなテーマは「サプライチェーンの分断」と「資源高」、それらの影響を受けたグローバルな「インフレ圧力の高まり」および結果としての「金融政策の差異」。
- FRB(米国の中銀)は供給制約がいつ落ち着くか不透明と判断している
- ECBは来年一杯を掛けて供給制約が落ち着くと判断している
- 複数の先進国の中銀は、現在のインフレ圧力の高まりについて、供給制約だけでなく、需要の回復も大きな要因であると指摘
- オーストラリアの中銀は、景気の腰折れを避けるべく、なるべくなら緩和を引き延ばしたい意向。背景には相対的に低いインフレ圧力が挙げられる
- イギリスの中銀は、今後、数ヶ月以内での利上げを示唆。イギリスはファイブアイズ通貨の中でもっとも利上げが早そう
- FRBはテーパリング(量的緩和縮小)の開始を発表。来年6月の完了を見込んでいる
- 市場参加者の米国政策金利引き上げ見通しは、1回目の利上げが2022年7月、2回目の利上げが2022年12月が中心値(見通しは先週よりやや後ろ倒しになった)
- 素直に考えれば利上げに動いているイギリスが買われやすく、テーパリングや利上げを後ろ倒しにしているオーストラリアが売られやすくなりそうだ
- コロナ新規感染者数の推移は落ち着いている(下に添付したチャート Daily New Cases は 7日間の移動平均。かなり落ち着いてきているように見える)
- まとめると、引き続き為替は「金融政策の差異(含む市場織り込み)」で動く相場、株は景気回復をうけた底堅い展開を想定する
COVID-19 新規感染者数, Worldmetersより抜粋
市場参加者のFOMC利上げ予想, CME Group より抜粋
チャート分析
USDインデックス(日足)
- ドルインデックス=ドルの総合的な強さを示す指標(バスケットの中身:EUR57.6%, JPY13.6%, GBP11.9%, CAD9.1%, SEK,4.2%, CHF3.6%)
- 前回トップの94.50を上抜けたものの、レジスタンスの94.70で一旦は跳ね返された格好
- 94.70を上抜けるためにはなにかひとつ大きなドル買いの材料が必要かも知れない
USD/JPY 中期(日足)
- 直近のレンジを112.20~114.40と判断
- 上目で考えると113.30~114.40
- 先週末は113.30付近でクローズとなっており、このレベルで支えられるかが注目
USD/JPY 短期(時間足)
- 下値切り下げの場合は、急落に注意
- 下値メドは113.00、112.20
- 上値メドは114.00、114.40
EUR/USD 中期(日足)
- 下落基調が続いていると判断
- 先週は1.1530のサポートを下抜けする局面もみられた
EUR/USD 短期(時間足)
- 戻り売りの目安は引き続き1.1580~1.1620、1.1670
- 引き続き戻り売りを狙って行きたい
USD/CNH 中期(日足)
- 広い範囲では6.35~6.60
- 狭いレンジでは6.35~6.4250
- 引き続きドル安人民元高のトレンドが継続していると判断
USD/CNH 短期(時間足)
- 直近1ヵ月は大きな動きなく6.3950を中心に上下200Pips程度の動きに終始している
今週の戸田の取引戦略
全体方針
- 先週は米10月雇用統計を始め、強い米国経済指標が並んだが、週末ということもあってか、ドル買いの勢いが弱まった
- 週末にBIB(Bipartisan Infrastructure Bill 新規 USD5,500億ドル)法案が可決され、週明け米株高に反応する可能性が高い状況
- これらの状況を考えると週初はドル買いに動く可能性が高いと判断
- 週央~週後半はドルインデックスが節目の94.70を超えられるかどうか見極めたい
- 超えられない場合にはレンジを想定しレンジの上で売り、下で買いを徹底
- 為替は全体的に調整地合いが続いており、ロットを抑えて対峙していく所存
USD/JPY
- 先週末の終値:113.40
- 目線:横ばい~上
- 想定レンジ:112.20~114.40
- 現在ポジション:USD/JPY ±0
- 方針:週初はドル買い方針。BIB法案の影響でレート水準が変化している可能性があるのでその場合にはエントリーを再検討したい。
- 114円台では利食い優勢で様子見。114.40円をクリアに上抜けるかみきわめたい。
EUR/USD、EUR/JPY
- 先週末の終値:EUR/USD 1.1566
- 目線:EUR/USD 横ばい~下 EUR/JPY 横ばい
- 想定レンジ:EUR/USD 1.1400~1.1620
- 現在ポジション:EUR/USD ±0 EUR/JPY ±0
- 方針:戻り売り。1.1580~1.1620では売り先行のオペレーションを行いたい。
- 利食いの目安は1.1530。それより下は少額で追随したい
CNH/JPY、USD/CNH
- 先週末の終値:USD/CNH 6.3925
- 目線:USD/CNH 横ばい~下、CNH/JPY 横ばい~上
- 想定レンジ:USD/CNH 6.3600~6.4200
- 現在のポジション:USD/CNH ± 0.0 CNH/JPY +4.0
- 方針:中国金融当局の緩和姿勢を注視しつつ、人民元買い持ちを保持。
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