ウクライナ情勢とアメリカの金融政策を考慮したトレード戦略【2月14日~2月18日】
FX
先週の為替相場レンジ(変動範囲)
| 始値 | 安値 | 高値 | 終値 | 変化率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 115.21 | 114.92 | 116.33 | 115.40 | +0.16% |
| EUR/USD | 1.1449 | 1.1330 | 1.1495 | 1.1351 | ▲0.86% |
| EUR/JPY | 131.90 | 130.39 | 133.15 | 131.02 | ▲0.67% |
| USD/CNH | 6.3607 | 6.3514 | 6.3769 | 6.3664 | +0.08% |
| CNH/JPY | 18.1137 | 18.0551 | 18.2826 | 18.1271 | +0.07% |
先週の為替相場サマリー
USD/JPY
- 先週のドル円相場は、1ドル=115.21円からスタート。週初は少しずつリスクを取る動きが優勢になる中、為替はドル買いが優勢となり、ドル円はじり高の展開となった。木曜日には日銀の指値オペと呼ばれる長期金利の低水準誘導策と、強い米国の1月消費者物価指数(インフレ圧力)が意識され、ドル円は年初来高値の1歩手前116.33円まで力強く上昇した。週末に掛けてはポジション調整の動きが優勢となる中、少しずつ水準を切り下げると、週末のウクライナ情勢緊迫化を嫌気して大きく売り込まれ115円丁度付近まで下落したあと、115.40レベルでクローズ。
EUR/USD
- ユーロ相場は、1ユーロ=1.1449ドルからスタート。木曜日までは小動きが続いたが、強い米国の1月消費者物価指数(インフレ圧力)が発表になると、1.1380まで下落したあと1.1495の年初来にワンタッチするなど荒い値動きとなった。週末はリスクオフ、クロス円の売りに押される形で下落し、1.1351でクローズ。
USD/CNH
- 人民元相場は、1ドル=6.3607元からスタート。春節明けはドル買いが強まり6.3769まで上昇する局面も見られたが、その後はややドル売り人民元買いが優勢となった。週を通じて大きな変動はなく、週末は6.3664でクローズ。
先週のできごと
※物価指数とマネー統計は前年同月比、GDPは前期比、特段の記載がない経済指標は前月比または当月の数値7日
- 中国1月Caixinサービス部門購買担当者景気指数(PMI) 51.4
- 日本12月 景気先行指数 104.3 景気一致指数 92.6
- ドイツ12月鉱工業生産 ▲0.3%
- フランスのマクロン大統領はウクライナ再侵攻を計画しているとの分析があるロシアについて、真の意図は北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)と共存することだと語った。
8日
- 日本12月国際収支・経常収支 ▲3,708億円
- 日本1月景気ウオッチャー調査 現状判断37.9 先行き判断42.5
- 米国12月貿易収支 ▲807億ドル
- 南米ペルーのカスティジョ大統領は首相にアニバル・トレス法務・人権相を指名した。2021年7月の政権発足から半年で4人目の首相となる。
- ルーマニアのドゥンク国防相は米国が同国に増派した部隊の第1陣が到着したと発表した。
- ウズベキスタンなど中央アジア3カ国が原子力発電所の導入を決めたり検討を始めたりしている。旧ソ連時代の共通送電網が老朽化しているうえ、現状の発電能力では増加する需要をまかない切れない。いずれも原発技術はロシアから導入することになりそうで、同国の中央アジアへの影響力が一段と強まりそうだ。
9日
- 日本1月マネーストックM2 +3.6%
- ドイツ12月貿易収支 +70億ユーロ
- 米国12月卸売売上高(前月比) +0.2%
- 日本政府はウクライナ情勢が緊迫するなか欧州に液化天然ガス(LNG)の一部を融通する方針を固めた。
10日
- 日本1月国内企業物価指数 +0.6%
- スウェーデン国立銀行は政策金利を0.00%に据え置き
- 米国1月消費者物価指数 +7.5%(非常に高いインフレ圧力)
- 前週分新規失業保険申請件数 22.3万件
- メキシコ中銀は政策金利を0.50%引き上げ+6.00%とした
- 南米ペルーの中央銀行は10日開いた金融政策決定会合で、政策金利を0.5%引き上げて3.5%にすると発表した。利上げは7会合連続となる。
- ロシアとベラルーシの合同軍事演習が10日、ベラルーシ国内で始まった。ベラルーシ南部の国境からウクライナの首都キエフまではわずか100キロメートルしかない。
- ウクライナ情勢の緊張緩和を目指し、同国と独仏ロシアの4カ国がベルリンで高官協議を開いた。情勢悪化の原因で2014年から続く親ロシア派武装勢力との東部紛争の和平実現へ打開策を探る。
- 日銀は臨時の国債買い入れを14日に実施すると発表した。指定した利回りで無制限に国債を買い取る「指し値オペ」と呼ばれるオペ(公開市場操作)を発動する。新発10年物国債を対象に、0.25%の利回りで原則として応札分をすべて買い取ると通知した。指し値オペの発動は2018年7月以来となる。
11日
- 2月の国際エネルギー機関(IEA)石油市場リポート
- 英国10-12月期四半期国内総生産 +1.0%
- 英国12月鉱工業生産 +0.3%
- ロシア中銀は政策金利を1.0%引き上げ+9.5%に設定
- 米国2月ミシガン大学消費者態度指数・速報値 61.7
- 米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は記者会見で、ロシアによるウクライナ侵攻について「いつ始まってもおかしくない」と述べた。「脅威は差し迫っている」とも語り、同国に滞在する米国人に48時間以内に退避するよう促した。
- 岸田文雄首相は羽田空港を訪れ、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う水際対策の体制や航空会社のワクチンの職場接種を視察した。全世界からの新規入国の原則停止を柱とする現行の水際対策は2月末に期限を迎える。
- 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は11日公表された独メディアとのインタビューで、緩和縮小は「段階的にしか進められない」と語った。金融市場ではECBが年末までにマイナス金利を解消すると織り込み、長期金利も上がっている。ラガルド氏は「我々が慌てて動けば、景気回復はかなり弱まってしまう」と語り、市場の動きをけん制した。
- バイデン米大統領とフランスのマクロン大統領はそれぞれロシアのプーチン大統領と電話でウクライナ情勢などについて協議する。
経済用語解説
- GDP=Gross Domestic Product(国内総生産):高成長が良い
- CPI=Consumer Price Index(消費者物価指数):2%目標を掲げる先進国が多い
- PCE=Personal Consumption Expenditures:個人消費支出、消費者物価と相関が高い
- PPI=Producer Price Indes(生産者物価指数):CPIに影響を与える
- PMI=Purchasing Manager Index(購買担当者景気指数):50が基準
- ZEW=Leibniz Centre for European Economic Research(欧州経済研究センター):0が基準
- NAHB=National Association of Home Builder:50が基準
- ニューヨーク連銀製造業景気指数:0が基準
- フィラデルフィア連銀製造業景気指数:0が基準
- リッチモンド連銀製造業指数:0が基準
- シカゴ購買部協会景気指数:50が基準
- ミシガン大学消費者態度指数:1966年を100として指数化
- S&P/ ケース・シラー住宅価格指数は、「20大都市圏住宅価格指数」がよく利用されている。景気に大きな影響がある住宅市場の動向を確認する上で重要な指標。
- 住宅販売保留指数:売買契約は終わっているが、引渡しが済んでいない物件数を指数化
- 欧州消費者信頼感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(速報の発表は前月比で報告される)
- 欧州景況感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(発表は実数で報告される)
- 消費者信頼感指数:1985年を100として指数化したもの
- 日本景気動向指数:2015年を100として指数化したもの
- 日本景気ウォッチャー調査:50が基準
- 日本法人企業景気予測調査:0が基準
注目の経済指標と政治イベント
14日
- 25:15 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、発言(欧州議会にて)
15日
- 独ロ首脳会談(モスクワ)
- 08:50 日本10-12月期四半期実質国内総生産
- 09:30 豪準備銀行(中央銀行)、金融政策会合議事要旨公表
- 13:30 日本12月鉱工業生産
- 13:30 日本12月設備稼働率
- 19:00 ユーロ圏2月ZEW景況感調査
- 19:00 ユーロ圏12月貿易収支
- 22:30 米国1月卸売物価指数
- 22:30 2月ニューヨーク連銀製造業景気指数
16日
- NATO国防相理事会(17日まで)
- 東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議(カンボジア・プノンペン、17日まで)
- 10:30 中国1月消費者物価指数
- 10:30 中国1月生産者物価指数
- 16:00 英国1月消費者物価指数
- 17:00 南ア1月消費者物価指数
- 19:00 ユーロ圏12月鉱工業生産
- 22:30 米国1月小売売上高
- 23:15 米国1月鉱工業生産
- 28:00 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
17日
- ミュンヘン安全保障会議
- 08:50 日本1月貿易統計
- 08:50 12月機械受注
- 09:30 オーストラリア1月雇用統計
- 20:00 トルコ中銀、金融政策発表
- 22:30 米国前週分新規失業保険申請件数
- 22:30 米国1月住宅着工件数
- 22:30 米国1月建設許可件数
- 22:30 米国2月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
18日
- 08:30 日本1月全国消費者物価指数
- 16:00 スウェーデン1月消費者物価指数
- 24:00 米国1月中古住宅販売件数
来週以降
- 3月5日:全人代
- 3月9日:韓国大統領選の投開票
- 3月10日:ECB
- 3月16日:FOMC(経済予測データ付き)
- 3月18日:日銀金融政策決定会合
- 4月14日:ECB
- 4月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 5月4日:FOMC
- 6月9日:ECB
- 6月15日:FOMC(経済予測データ付き)
- 6月17日:日銀金融政策決定会合
- 7月21日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 7月21日:ECB
- 7月27日:FOMC
- 9月8日:ECB
- 9月21日:FOMC(経済予測データ付き)
- 9月22日:日銀金融政策決定会合
- 10月27日:ECB
- 10月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 11月2日:FOMC
- 11月8日:米中間選挙の投開票
- 12月14日:FOMC(経済予測データ付き)
- 12月15日:ECB
- 12月20日:日銀金融政策決定会合
先週の通貨強弱


- 先週は全体で見ればドル売り優勢(122/196ヶ国)であるが、ウクライナ情勢を絡めてまちまちの動きとなった。
- まず真っ先に目につくのは欧州通貨の下落で、ウクライナ情勢の緊迫化を受け軒並み売られている。
- 一方でブラジル、南ア、オーストラリアといった地政学リスクの少ない新興国通貨は買われており、投資が冷え込んでいるというわけではなさそうだ。
- まとめると先週の通貨強弱は右記の通り 南アなどの新興国通貨 > 人民元 > 米ドル > 円 > ユーロと欧州通貨
グローバルマクロ環境の整理(最新版)
- 引き続き市場参加者の関心事は「ウクライナ情勢」と「FEDの金融政策」の二つだろう。
- 冬季五輪開催の影響もあってか週前半は楽観的なムードが流れたが、週後半にはウクライナ情勢の緊迫化が嫌気されリスクオフが強まった。
- 具体的にはS&P500の恐怖指数が週初23.22→週末27.36に上昇した
- また強い米1月消費者物価指数の発表を受け、米利上げ観測が急速に高まった1週間でもあった。
- 金利先物市場では米3月0.50%の利上げを94%の確率で見込んでいる。
- ウクライナ問題についてはユーラシア大陸の首脳や高官による話し合いが行われていることを考えると、いきなり軍事進攻が始まるようには見えない。
- 一方で始まった際のリスクは甚大であり、当然さまざまなリスク資産が下落していく可能性を考慮していく必要はある。
- ピンチはチャンスでもある。最悪の可能性を考慮しリスクをコントロールしつつも、リスク資産はあくまで押し目買い方針で臨みたい。
- 後述するが、Covid-19の被害もやや落ち着いてきていることから、ウクライナ情勢が落ち着けば徐々にリスクオンになっていく可能性は意識しておきたい。
- その他、日本の金融政策についてはこれまであまり意識されなかったが、物価上昇を受けて今後は注目度が高まっていくことを想定、注意深くみていきたい
- 「米民主党(Build Back Better)法案」についても引き続きウォッチ

S&P500の恐怖指数

市場参加者のFOMC利上げ予想, CME Group より抜粋
グローバルマクロ環境の整理(Covid-19)
- Covid-19の被害はやや少なくなってきている(リスクオン要因)
- コロナ新規「感染者」数の推移(7日移動平均)には頭打ちの傾向が見えてきた(添付チャートDaily New Cases )
- コロナ新規「死亡者」数の推移(7日移動平均)も下向きに転じてきた(添付チャートDaily New Cases )

COVID-19 新規感染者数, Worldmetersより抜粋

COVID-19 新規死亡者数, Worldmetersより抜粋
チャート分析
USDインデックス(日足)

- ドルインデックス=ドルの総合的な強さを示す指標(バスケットの中身:EUR57.6%, JPY13.6%, GBP11.9%, CAD9.1%, SEK,4.2%, CHF3.6%)
- 先週は95.50のサポートで反発し、やや買い戻された
USD/JPY 中期(日足)

- 引き続き日足ベースでは上を試す展開が継続している
- RSIをみても適温を維持しており、順調なペースで上昇していると見ることもできる
USD/JPY 短期(時間足)

- 緑色のトレンドラインに沿って推移している
- ウクライナ情勢には警戒が必要であるが、現在の水準が押し目になる可能性も考慮しておきたい
EUR/USD 中期(日足)

- 長らく続いた下落トレンド(緑色のライン)を明確に上抜けたと判断
- ただし上昇トレンドが始まっているかどうかは別の話で、しばらく様子見でもよいと考える
EUR/USD 短期(時間足)

- 直近は1.1480前後の直近高値がレジスタンスとして意識されている
- ウクライナ情勢に注意が必要であるが、水準としては買いやすくなってきた
USD/CNH 中期(日足)

- 引き続き下落基調が続いていると判断
- ただし、昨年末から同水準での推移が続いており、下げ余力が少なくなってきたように見える
USD/CNH 短期(時間足)

- 6.3500~6.3790でのレンジ相場が継続中
今週の戸田の取引戦略
全体方針
- ドルの押し目買い方針を継続
- 円は売り先行
- リスク資産は損失を限定しつつ、買いから入っていく
USD/JPY
- 先週末の終値:115.40
- 目線:横ばい~上
- 想定レンジ:114.50~116.50
- 現在ポジション:USD/JPY ± 0.0
- ドルインデックスの推移と、ドル円のトレンドライン(時間足、緑色)とサポートをみながら、押し目買い方針
EUR/USD、EUR/JPY
- 先週末の終値:EUR/USD 1.1351
- 目線:EUR/USD 横ばい EUR/JPY 横ばい~上
- 想定レンジ:EUR/USD 1.1370~1.1530
- 現在ポジション:EUR/USD ± 0 EUR/JPY ±0
- 明確なトレンドが出ておらず様子見としたい
CNH/JPY、USD/CNH
- 先週末の終値:USD/CNH 6.3664
- 目線:USD/CNH 横ばい、CNH/JPY 横ばい~上
- 想定レンジ:USD/CNH 6.2500~6.4000
- 現在のポジション:USD/CNH ± 0.0 CNH/JPY ± 0.0
- 明確なトレンドが出ておらず様子見としたい
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