なぜ孫社長が判断ミスで大損?投資家が陥りがちな心理的ワナ
こんにちは、下山です。
「今回の決算の発表内容、ボロボロでございます。
まっかっかの大赤字でございまして・・・」
先週開催された
ソフトバンクグループの決算説明会は
孫正義社長のそんな言葉で始まりました。
『ソフトバンクグループ決算説明会の動画』
↓
https://webcast.softbank.jp/ja/detail/video/ref:20191106_01_ja)
そして説明会の冒頭では、
ここ最近報道されていたWeWork問題に関して
「自身の投資判断がまずかったことを反省している」
という言葉が語られました。
ただ、言葉とは裏腹に
孫社長からどこか余裕のある雰囲気も
感じられたのは自分だけではないはず。
その理由の1つは、孫社長が絶対視している「株主価値」
つまり「保有株式から純負債を差し引いた額」が、
前回の説明会時の20.9兆円から22.4兆円に増えている、
という事実にあります。
なぜ「株主価値」が増えているのか?
その最大要因は、アリババの保有株式が
2兆円増えていることにあります。
WeWorkのマイナス影響も
やはり小さくはありませんが、
それ以上にアリババ株によって
株主価値が増えているのだから、
心配するような状況にはない、ということですね。
また、創業以来の大赤字とはいえ、
世界に約5000社あるベンチャーキャピタルの
平均パフォーマンス(IRR)が大体年間13%であるのに対し、
その倍程度のIRRを出せていることも
強調されていました。
さすがに以前よりパフォーマンスは落ちたものの
まだまだ世界平均以上の実績は保てている、と。
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なぜWeWorkを高く買ってしまったのか?
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ただ、それでもWeWorkへの投資に関して
目に余るマイナスが出ていることは事実であり、
それに対して説明会の質疑応答でも
「なぜWeWorkを高く買ってしまったのか?」
という質問がストレートに投げかけられました。
孫社長はそれに対し、
2点ほど理由を挙げられていました。
1つは、
「我々が投資する直前のラウンドで
他の投資家もあまり変わらない金額で投資をしていた」
ということ。
もう1つは、
「経営者のアダム・ニューマン氏を過大評価してしまった」
ということ。
つまり、他のプロの投資家の判断基準に
引っ張られ、さらにアダム・ニューマン氏に惚れ込んで
彼のマイナス面が見えなくなってしまった、
ということですね。
「孫社長ともあろう方がそんなミスを・・・」
という感じもしましたが。
孫社長のレベルになれば
世に絶対出回らないような情報も
いくらだって持っているでしょう。
ですから、周りの投資家や
経営者のマイナス面など様々なことを
的確に判断できる確率は圧倒的に高そうです。
なのに、なかなかそれができなかった、
というのは意外な感じもしますよね。
ただ、これは人間心理の観点から言って
ある意味仕方ないことなんです。
なぜなら人間は情報を多く持っていればいるほど、
自分の考えに固執してしまうからです。
反対意見を受け入れられなくなってしまうんですね。
なぜか?
下記の一節にその答えがあります。
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矛盾しているようだが、豊富な情報が得られるようになると、
人は自分の意見にもっと固執するようになる。
なぜなら、自分の考えを裏づけるデータを簡単に見つけ出せるからだ。
ターリ・シャーロット
『事実はなぜ人の意見を変えられないのか(株式会社白揚社)』
2019年8月30日 第一版第一刷
P.27より
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情報をたくさん持っているほど、
自分の考えを否定する情報も増える一方で
もちろん自分の考えを正当化するような情報も増えます。
そして、人間はどうしても
自分の考えを正当化する情報に目がいきます。
当然ですよね。
誰だって自分の考えを否定されるのはイヤですから。
本当のところは分かりませんが、
もしかしたら孫社長も今回のWeWorkの件では
自身の考えを正当化する情報に目がいってしまい、
自身の考えに必要以上に固執してしまったのかもしれませんね。
ちなみに、
「世界的投資家のジョージ・ソロス氏は
自身が立てた仮説を否定するような証拠を探し続ける」
という話を、以前のメルマガで紹介したことがありますが、
自身の考えを否定するような情報を
あえて自分から探しに行く、という姿勢が
投資家に利益をもたらします。
あなたはいかがでしょう?
ご自身の考えを否定するような情報を
避けたりしていないでしょうか。
例えば「この銘柄を買いたい」
と思った瞬間から、
その銘柄を買うべき理由ばかりを
探したりしていませんか?
その銘柄の株価が下がることを示すような
ニュースなどは「デタラメだ」と言って
見なかったことにしたりしていませんか?
残念ですが、もしそのような姿勢で
投資と向き合っているのなら、
どんな素晴らしい手法を使ったとしても
安定した利益を得られる可能性は、
万に一つもありません。
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勝てるトレーダーの姿勢
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ちなみに、
「下山が教える波乗り投資法はダメだ、使えない」と
おっしゃる方がいらっしゃいますが、
話を聞いてみるとそういう方に限って、
ご自身の考えに固執されているケースが多く見受けられます。
例えば状況が悪化している中でも、
ご自身にとって都合の良い情報だけを積極的に見て、
自分を無理やり安心させていたり。
もし買いポジションを持っていたら
株価上昇をほのめかすような内容のニュースばかりを
意識的に見て自分を納得させようとしてみたり。
そんなことをしていれば
いずれ資金を失うのは目に見えている
ということは明らかなんですけどね。
先にお伝えしたように、どんな手法を使うにしても
自身の考えに固執するのは最悪の結末しか生みません。
「考えが間違っていた」
と気づいた頃にはもう手遅れです。
確実に利益を得られているトレーダーというのは、
常に、株価が上がる可能性と
下がる可能性、その両方に目を向け、
それぞれの状況に対して
どのように取引するのか、
ということをあらかじめ考えられています。
あなたがどのような手法を使うにしても
自身の考えに固執することのないよう
どうぞお気をつけください。
本日も最後までご覧くださいまして
ありがとうございます。
下山敬三
Is it OK?