米国株でサキヨミ:米長期金利を読み解け!今買うべき米国個別株とは?
米長期金利を読み解け!今買うべき米国個別株とは?
先週末のNYダウはー98ドル安の3万2899ドルで続落。FRB(米中銀)による金融引き締め政策へ警戒感が広がるなか、中国でのロックダウン継続による景気下振れ懸念も市場心理を冷やし、消費関連株を中心に売りが広がった。
ナイキやウォルマート、アメックスなど消費関連株が大きく下げた。ウォルト・ディズニーも安い。セールスフォースやアマゾンといったハイテクの一角も、米長期金利の上昇を重荷に売られた。一方、エクソンなどエネルギー株、ベライゾンなどディフェンシブ銘柄は堅調だった。当社配信のレポート有料版では、やはりエネルギーのPBFエナジーなどが上昇。PBFエナジーは掲載から1ヶ月半で+50.7%の上昇となった。
米長期金利は先週末時点で3.13%、さらに週明けの本日には3.14%と、2018年以来の高水準で推移している。こうした状況をうけ米株式は軟調な推移が続く。中国でのロックダウン継続による世界景気下振れ懸念などもこうした流れに拍車をかけているが、足下の株売りの中核には、やはり米長期金利の上昇に見られるような米金融引き締めへの警戒感があると言っていいだろう。
金利が上がると、企業の借り入れコストが余計にかかることになり、企業の投資が鈍る可能性が意識されることから、株式は売られる。金利と株価の基本的な関係としては、このようなものだ。では、なぜこれほどまでに米長期金利が上昇しているのか。
背景にあるのは、米国でのインフレ(物価上昇)を受けた、FRBによる金融引き締め観測だ。
去年までの世界的な金融緩和を受けて、いわゆる「金余り」の状態になった市場では、手元に有り余るお金の価値が下がり、お金と交換されるモノの価値、つまり物価は、相対的に上がることとなった。問題は、とくに米国で物価が上がりすぎていることだ。
極端なインフレは景気後退を招く。しかし大規模緩和による金余りの状況は続いており、さらに米雇用の好調さや、ウクライナ情勢あるいは対ロ経済制裁による資源価格の上昇もインフレに拍車をかける。
インフレ高進による景気後退を回避するため、FRBは金融引き締めの意向を強める(タカ派姿勢)。この場合の金融引き締めとは、金利を引き上げ(利上げ)たり。市場に出回るお金の量を減らし(量的引き締め、バランスシート縮小)たりして、景気を引き締め、過度な物価上昇を抑え込もうという政策のことだ。
しかし足下のインフレは歴史的な水準で進行しており、通常見られるようなペースの金融引き締めでは到底間に合わないとみられる。そこでFRBはハイペースな金融引き締めを計画している。先日のFOMCにおける0.50%の利上げなどが、その例だ。今後もFRBは積極的な利上げを行う姿勢を示しており、従来の二倍幅となる0.50%の利上げばかりか、三倍幅の0.75%の利上げすら意識されている。
しかし金融引き締めのペースを誤ると、市場は混乱し、かえって景気後退のリスクが高まることになる。利上げしすぎれば景気が冷えすぎて景気後退、あるいは利上げが半端で奏功しなければ、今度は物価上昇が止まらずこれも景気後退となる。FRBの金融政策に対し、景気を冷やし過ぎもせず加熱もしない極めてデリケートなさじ加減が求められているのが、現在の状況である。
こうしたなか、米長期金利の急激な動きは市場のかく乱要因となり、先週末にかけての米国株は下落、さらに週明けとなる本日、日本時間の米株式指数先物も大幅に下落している。材料視されているのはもちろん、高水準での推移が続く米長期金利の動きだ。
今買うべき銘柄:エネ株や安定業績の成長株に注目
先週末の米株式市場では、ナイキ、ウォルマート、アメックスなど消費関連株が軒並み売られた。米長期金利の上昇で一段と売られやすいハイテク株でも、セールスフォースなどが下落した。NYダウはー98ドルと小幅安にとどまったが、その前日には大幅安となっており、先週の高安比は一時ー1500ドルに迫る場面も見られた。
株価の重荷となっているのは上述のとおり、米長期金利の上昇だ。では、なぜ米長期金利が上昇しているのか。それは、足下の米景気が強いからであり、今後の米国における政策金利がこの水準まで上がる、と市場が見込んでいるからだ。
言い換えれば、FRBが金融引き締めを進めても、政策金利がこうした高水準に達するまでは物価上昇が止まらないだろう、と市場が見込んでいるということでもある。ハイペースな利上げが続き、株価も下げ続ける、それが市場の懸念する最悪ケースのシナリオだ。
しかしこうしたなかでも買われている銘柄がある。代表的なのがディフェンシブ銘柄だろう。こうした銘柄はもともと、業績期待に対して株価が割安であり、金利上昇時にはなおさら割安に見えることから、現在のような状況では買われやすい。
また石油株、エネルギー株も買われる傾向が強まっている。こちらは資源価格の上昇によって利幅の改善が期待できるためだ。このほか、ハイテクであっても安定業績期待の銘柄は買われている。先週末の相場だとスマートフォンのアップルなどがその代表例だろう。
FRBの政策転換により、米株式市場の風景は様変わりした。GAFAMに代表されるハイテク成長株の多くは今や(アップルなどの安定株を除いて)下値リスクに怯える。一方、緩やかに株価上昇を続けてきた「面白みのない」ディフェンシブ株は、不透明感の強い今年の金融環境では、むしろ相場を支える銘柄として期待が集まっている。
ドル円・日本株の動向:ドル強さ変わらず 日本株は頭重さ意識
一方の外為市場では、ドル円の強い推移が続く。本日日本時間のドル円はすでにFOMC前高値の131.25を突破し、20年来高値圏でなお堅調な推移を示している。
ここまでで示したとおり、米国は今や急ピッチな利上げに踏み込まざるを得ない状況であるが、米利上げはダイレクトにドル買い材料となる。そのうえ本邦では、物価が上がらず日銀が金融緩和を続けざるを得ない状況が続いており、こちらは円売り材料となる。
本連載でも何度か指摘しているとおり、ドル円はいま売る理由を欠いた状況とも言え、131円は通過点にすぎないとの声も広く聞かれる。市場関係者からは、当面の上昇トレンドの天井を135円付近と見込む指摘も出ている。
一方で同水準を達成するまでには何度となく調整売り局面をこなす必要もあると見られる。足下では132円付近がひとまずの上値メドか。
日本株のほうは米株の地合いを受け継ぎ、週明け9日の相場は大幅下落となっている。とはいえこのところは、以前は顕著だった米株式市場との相関が崩れるケースもたびたび見られており、いま本格化している企業決算の内容次第では、割安感に注目した海外からの買いが相場を押し上げる可能性もある。
日本株の方も、ディフェンシブやエネルギー、安定業績銘柄といったところが選別買いの対象になってることは留意しておくべきだろう。
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