ドル買い圧力とリスクセンチメントを考慮したトレード戦略【1月31日~2月4日】
FX
先週の為替相場レンジ(変動範囲)
| 始値 | 安値 | 高値 | 終値 | 変化率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 113.67 | 113.49 | 115.69 | 115.24 | +1.38% |
| EUR/USD | 1.1343 | 1.1121 | 1.1345 | 1.1143 | ▲1.80% |
| EUR/JPY | 128.92 | 128.24 | 129.24 | 128.41 | ▲0.40% |
| USD/CNH | 6.3410 | 6.3235 | 6.3762 | 6.3670 | +0.41% |
| CNH/JPY | 17.9296 | 17.9209 | 18.1651 | 18.0865 | +0.88% |
先週の為替相場サマリー
USD/JPY
- 先週のドル円相場は、1ドル=113.67円からスタート。先週末から下げ止まりの動きを見せていたドル円は週初も底堅く推移。水曜日のFOMCにかけては早期の金融引締めが意識され期待でドルが買われる展開になるとドル円は114円台を回復した。注目のFOMCではパウエルFRB議長は3月の利上げ開始や、バランスシート縮小への議論開始をアナウンスすると、マーケットはより一層ドル買いへと傾いていった。木曜日の日中に115円を突破したドル円は金曜日に115.69円まで力強く上昇、週末はやや戻して115.24円でクローズ。
EUR/USD
- ユーロ相場は、1ユーロ=1.1343ドルからスタート。水曜日のFOMCにかけてはユーロ売りがドル買いが優勢で水曜日には1.1300丁度を割り込んだ。注目のFOMCでは前述の通り市場参加者はドル買いに傾いたことで、ユーロ売りが強まると、木曜日の夜間には注目されたサポートポイントの1.1210をクリアに下抜け。金曜日にかけて1.1121まで下落したのち、僅かに反発し1.1143でクローズ。
USD/CNH
- 人民元相場は、1ドル=6.3410元からスタート。先週からの流れを引き継ぎ、水曜日のFOMCまでは人民元買いが優勢となり、一時6.3235までドル売り人民元買いが進行。FOMC後にはドル買いが強まると、上値レジスタンスとして機能していた6.35を超えて上昇、一時6.3762まで上昇したのち、6.3670でクローズ。
先週のできごと
※物価指数とマネー統計は前年同月比、GDPは前期比、特段の記載がない経済指標は前月比または当月の数値24日
- オーストラリア1月製造業PMI 55.3
- ドイツ1月製造業購買担当者景気指数(PMI) 60.5
- ユーロ圏1月製造業購買担当者景気指数(PMI) 59.0
- 英国1月製造業購買担当者景気指数(PMI) 56.9
- 米国1月製造業購買担当者景気指数(PMI) 55.0
25日
- オーストラリア10-12月期四半期消費者物価(CPI) +3.5%(政策目標の2~3%を上回ったことで、利上げが迫っていることを感じさせる)
- 米国11月ケース・シラー米住宅価格指数 +1.0%
- 米国1月消費者信頼感指数 113.8
- 米国1月リッチモンド連銀製造業指数 8.0
- 国際通貨基金(IMF)は25日改定した世界経済見通しで2022年の実質成長率を4.4%と、前回21年10月の予測から0.5ポイント引き下げた。高インフレが長引く米国と、新型コロナウイルスの封じ込めを優先する中国で大きく下振れする。新たな変異型に警戒を示し、ウクライナや台湾を念頭に東欧や東アジアの地政学リスクにも言及した。
- ドイツのショルツ首相とフランスのマクロン大統領はロシアがウクライナの再侵攻に踏み切れば「高い代償を払うことになる」と強くけん制した。
- 中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は中央アジア5カ国の首脳と国交樹立30周年を記念するオンライン協議を開いた。習指導部が広域経済圏構想「一帯一路」で重視する中央アジアでは大規模デモの起きたカザフスタンを中心にロシアの影響力が強まっており、巻き返しを図る狙いもある。
26日
- 日本12月企業向けサービス価格指数 +1.1%
- 米国MBA住宅ローン申請指数 ▲7.1%
- 米国12月新築住宅販売件数 81.1万件
- FOMCは政策金利をゼロ近傍に据え置き、まもなく政策金利を引き上げるのが適切だとの見通しを示した。2021年12月に発表したスケジュールで資産購入を引き続き減らすことでも合意し、高い物価上昇率と堅調な労働市場を背景に3月上旬に終了させる。バランスシートの規模を縮小するためのアプローチについて、より明確にする。委員会は将来の決定の基礎となる一連の原則を発表した。この高い水準の原則はFF金利が金融政策を調整するための主要な手段であり、バランスシートの縮小は金利引き上げが始まった後に実施すると明確にした。
- チリの中銀は5会合連続の利上げを決めた。上げ幅を1.25%から1.5%に広げて、政策金利は5.5%となった。
- カナダ銀行(中央銀行)は策金利である翌日物金利の誘導目標を従来の0.25%に据え置いた。声明文では雇用環境が大幅に改善していると指摘し、今後利上げに動く必要があると述べた。早ければ3月の会合で利上げに踏み切る可能性がある。
27日
- 米国12月耐久財受注 ▲0.9%
- 米国前週分新規失業保険申請件数 26.0万件
- 米国10-12月期四半期実質国内総生産(GDP) +6.9%(予想比上振れの強い数値)
- 米国10-12月期四半期コアPCE・速報値 +4.9%
28日
- 1月東京都区部消費者物価指数 +0.2%
- オーストラリア10-12月期四半期卸売物価指数(PPI) +3.7%
- ドイツ10-12月期国内総生産(GDP) +24.0%
- 米国10-12月期四半期雇用コスト指数 +1.0%
- 米国12月個人消費支出(PCEデフレーター) +5.8%
- コロンビア中央銀行は、政策金利を1%引き上げ、4%に引き上げると発表した。利上げは4会合連続。
- 世界の投資や貿易に伴う資金決済の通貨として、中国の人民元が2021年12月、日本円を抜いて世界4位になった。元の切り下げで取引が急増した15年8月以来、6年4カ月ぶりだ。人民元高の傾向が続くなか、海外から元建て債券への投資が伸びていることなどが背景にある。
経済用語解説
- GDP=Gross Domestic Product(国内総生産):高成長が良い
- CPI=Consumer Price Index(消費者物価指数):2%目標を掲げる先進国が多い
- PCE=Personal Consumption Expenditures:個人消費支出、消費者物価と相関が高い
- PPI=Producer Price Indes(生産者物価指数):CPIに影響を与える
- PMI=Purchasing Manager Index(購買担当者景気指数):50が基準
- ZEW=Leibniz Centre for European Economic Research(欧州経済研究センター):0が基準
- NAHB=National Association of Home Builder:50が基準
- ニューヨーク連銀製造業景気指数:0が基準
- フィラデルフィア連銀製造業景気指数:0が基準
- リッチモンド連銀製造業指数:0が基準
- シカゴ購買部協会景気指数:50が基準
- ミシガン大学消費者態度指数:1966年を100として指数化
- S&P/ ケース・シラー住宅価格指数は、「20大都市圏住宅価格指数」がよく利用されている。景気に大きな影響がある住宅市場の動向を確認する上で重要な指標。
- 住宅販売保留指数:売買契約は終わっているが、引渡しが済んでいない物件数を指数化
- 欧州消費者信頼感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(速報の発表は前月比で報告される)
- 欧州景況感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(発表は実数で報告される)
- 消費者信頼感指数:1985年を100として指数化したもの
- 日本景気動向指数:2015年を100として指数化したもの
- 日本景気ウォッチャー調査:50が基準
- 日本法人企業景気予測調査:0が基準
注目の経済指標と政治イベント
31日
- 08:50 日本12月鉱工業生産
- 19:00 ユーロ圏第4QGDP
- 22:00 ドイツ1月消費者物価指数
1日
- 中華圏が春節入り(中国は6日までお休み)
- 09:30 オーストラリア12月小売売上高
- 12:30 豪準備銀行(中央銀行)、政策金利発表
- 16:00 ドイツ12月小売売上高
- 16:45 フランス1月消費者物価指数
- 17:55 ドイツ1月失業率
- 18:00 ユーロ圏12月失業率
- 24:00 米国1月ISM製造業景況指数
- 24:00 米国12月JOLT求職
2日
- 08:50 日本1月マネタリーベース
- 19:00 ユーロ圏1月消費者物価指数
- 22:15 米国1月ADP雇用統計
- 30:30 ブラジル中央銀行政策金利
3日
- 09:30 オーストラリア12月住宅建設許可件数
- 09:30 オーストラリア12月貿易収支
- 19:00 ユーロ圏12月卸売物価指数(PPI)
- 21:00 イングランド銀行(BOE、英中央銀行)金利発表
- 21:45 欧州中央銀行(ECB)政策金利
- 22:30 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
- 22:30 米国前週分新規失業保険申請件数
- 22:30 米国10-12月期四半期非農業部門労働生産性
- 24:00 米国1月ISM非製造業景況指数
4日
- 北京冬季オリンピック開会式
- 09:30 豪準備銀行(中央銀行)、四半期金融政策報告
- 16:00 ドイツ12月製造業新規受注
- 19:00 ユーロ圏12月小売売上高
- 22:30 カナダ1月雇用統計
- 22:30 米国1月雇用統計
来週以降
- 3月5日:全人代
- 3月10日:ECB
- 3月16日:FOMC(経済予測データ付き)
- 3月18日:日銀金融政策決定会合
- 4月14日:ECB
- 4月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 5月4日:FOMC
- 6月9日:ECB
- 6月15日:FOMC(経済予測データ付き)
- 6月17日:日銀金融政策決定会合
- 7月21日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 7月21日:ECB
- 7月27日:FOMC
- 9月8日:ECB
- 9月21日:FOMC(経済予測データ付き)
- 9月22日:日銀金融政策決定会合
- 10月27日:ECB
- 10月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 11月2日:FOMC
- 11月8日:米中間選挙の投開票
- 12月14日:FOMC(経済予測データ付き)
- 12月15日:ECB
- 12月20日:日銀金融政策決定会合
先週の通貨強弱
- 先週もドル買いが進行(134/196ヶ国)。FOMCを経てマーケットはドル買いで反応している。
- メジャー通貨の中で、特に大きく売られたのがユーロ。ドル高に加えて、ロシア、ウクライナ問題なども影を落とした。
- ドル円が大きく上昇したことで、クロス円は全体的に底堅い展開
- ただし南アや豪ドルなど独自の金融政策を執り行う通貨は、売りが優勢となった。
- まとめると先週の通貨強弱は右記の通り 米ドル > 人民元 > 日本円 > ユーロ > 南アランドや豪ドル
グローバルマクロ環境の整理(最新版)
- 株式市場では引き続き変動率の高い不安定な相場が続いている
- 具体的には先週はS&P500の恐怖指数が一時38.94まで上昇する局面も見られた
- ただし週末にかけてはやや落ち着きを取り戻し、27.66まで低下している
- 市場参加者が恐怖におびえる理由は引き続き「FEDの早期引締め観測」と「ウクライナ問題」の二つ
- このうちFEDの早期引締め観測については、先週のFOMCを経てFEDのスタンスが確認されたことでやや霧が晴れた状況と言えそう
- ウクライナ問題についても2月9日にベルリンで高官による会合が予定されており、そこまでは事態の急激な悪化はないと考えるのが妥当であろう
- そういった背景もあって市場にやや落ち着きが戻ってきているように感じる
- したがって来週はどちらかと言えばリスクオフの反発が期待できると思う
- その他、日本の金融政策についてはこれまであまり意識されなかったが、物価上昇を受けて今後は注目度が高まっていくことを想定、注意深くみていきたい
- 「米民主党(Build Back Better)法案」についても引き続きウォッチ
S&P500の恐怖指数
グローバルマクロ環境の整理(補足)
- 金利先物市場の87.6%の参加者は今年3月の米利上げ開始(25bps)を見込んでいる
- 一部(12.4%)の参加者は今年3月の50bpsの利上げを見込んでいる
- 米利上げ観測は来年5回が中心値
- ただしそこから先の利上げペースは落ち着く予想が多い
- コロナ新規「感染者」数の推移(7日移動平均)にはやや頭打ちの傾向も見えてきた(添付チャートDaily New Cases )
- 一方でコロナ新規「死亡者」数の推移(7日移動平均)が上向きに転じてきた点は要注意だ(添付チャートDaily New Cases )
- 利上げを意識することも重要であるが、やはり根本の要因であるコロナについても注目してみていかなくてはならないだろう。
市場参加者のFOMC利上げ予想, CME Group より抜粋
COVID-19 新規感染者数, Worldmetersより抜粋
COVID-19 新規死亡者数, Worldmetersより抜粋
チャート分析
USDインデックス(日足)
- ドルインデックス=ドルの総合的な強さを示す指標(バスケットの中身:EUR57.6%, JPY13.6%, GBP11.9%, CAD9.1%, SEK,4.2%, CHF3.6%)
- 96.90のレジスタンスを突破し、上に放たれた格好
- 目先はドル買いの勢いが強くなりそう
USD/JPY 中期(日足)
- 下値をじりじりと切り上げ、昨年の高値116.35円を窺う展開に
- 上抜ければ走る可能性が高いと考える
USD/JPY 短期(時間足)
- 緑色のトレンドラインを上放れしたのち明確に上昇
- まずは今週115.00円がサポートされるか注目
- 素直に上についていくのが無難と思う
EUR/USD 中期(日足)
- 下落トレンド(緑色のライン)が継続していると判断
- 1.1210のサポートを下抜けて下落の勢いが強まっている
EUR/USD 短期(時間足)
- 短期的にテクニカル(RSI)は売られ過ぎを示唆しているが、このままズルズルと下落する可能性にも留意しておきたい。
USD/CNH 中期(日足)
- 6.35を下抜けた後に反発しているが、トレンドは下向きのまま
- 一時的な人民元安と判断している
USD/CNH 短期(時間足)
- 反発上昇が継続する場合の上値メドは手前が6.3790、次いで6.4000となる
今週の戸田の取引戦略
全体方針
- 引き続き相場の変動率は高くなる可能性に留意
- 株や仮想通貨などのリスク資産の動きを注視することで市場参加者のセンチメントを見極めたい
- 為替はドル買いの流れが継続することを想定
- 押し目ではドル買い、垂れてきたところで利食いをいれていきたい
USD/JPY
- 先週末の終値:115.24
- 目線:横ばい~上
- 想定レンジ:114.70~116.35
- 現在ポジション:USD/JPY +2.0
- ドル買いポジションを保持
- 押し目買い方針を継続
EUR/USD、EUR/JPY
- 先週末の終値:EUR/USD 1.1143
- 目線:EUR/USD 横ばい~下 EUR/JPY 横ばい
- 想定レンジ:EUR/USD 1.1050~1.1210
- 現在ポジション:EUR/USD ± 0 EUR/JPY ±0
- 戻り売り方針
- 週明けに全体のポジションと相談しつつユーロ売り、ドル買いへと傾けたい
CNH/JPY、USD/CNH
- 先週末の終値:USD/CNH 6.3386
- 目線:USD/CNH 横ばい、CNH/JPY 横ばい~上
- 想定レンジ:USD/CNH 6.2500~6.4000
- 現在のポジション:USD/CNH ± 0.0 CNH/JPY ± 2.0
- 人民元買いを保持
- USD/CNHが6.40をクリアに上抜けてくるようなら撤退を検討
ご留意事項
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