EAの運用テクニック②[柿澤真正]
柿澤真正さんプロフィール
かきざわ・まさのぶ。2009年よりFXの自動売買システムの開発を開始し、EasySniperやMultiAgent等をはじめ、多くの自動売買システムを証券会社やユーザに提供してきた。インヴァスト証券の自動売買サービス「シストレ24」にて、提供ストラテジーMultiAgentが2016年の年間アワードを圧倒的成績、評価で獲得。また、ひまわり証券の自動売買サービス「エコトレ」にて提供ストラテジーの「ひかえめビーナス」が2013年〜2014年の1年以上にわたり利用者数1位をキープ。利用者数は700名を超える。現在は、MultiAgentをさらに進化させたドリームエージェントFXを提供中。
この連載では、FXの自動売買システム、その中でもMetaTrader4(以下MT4)上で稼働する自動売買システムであるEAにスポットを当て、それを運用していくための知識・ノウハウを専業トレーダーの柿澤真正さんにナビゲートしていただきます。EAの運用を検討している方はもちろん、既にEAを利用している方もぜひ参考にしてください。
※この記事は、FX攻略.com2019年11月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
ポートフォリオ化には最適な順序がある
皆さん、こんにちは。今回は「EAの運用テクニック」の後編で、最終回となります。前編ではEAのポートフォリオ化が優れていることと、その理由について解説しました。今回は、実際にどのようにEAをポートフォリオ化していけばいいのか、その手順について見ていきたいと思います。
まず、EAのポートフォリオ化は以下の手順を踏みます。
①自身の「目標利益率」「リスク許容度」を決定
②運用候補となるEAを選定
③選定した個々のEAのバックテストを実施(「想定利益率」「想定リスク許容度」の算出)
④選定したEAポートフォリオの想定利益率、想定リスク許容度を算出
⑤目標利益率、リスク許容度と想定利益率、想定リスク許容度を比較
⑥納得いく水準まで❹~❺もしくは❷~❺を繰り返す
EAのポートフォリオ化を行うにあたって一番重要となるのが、自分自身がどのくらいの目標利益率とリスク許容度を持っているか、ということです。
大切なのは利益率とリスク許容度の比較
それでは、順に説明していきましょう。まず①ですが、EAのポートフォリオ化を行うにあたっては、全体としての利益率、リスク度合いの基準・指針となるものがなければ、ポートフォリオ化のゴールが見えません。そのため、ご自身の目標とする利益率と許容できるリスク度合いを決める必要があります。
目標利益率は、月利でも年利でもイメージしやすいもので構いません。また、リスク許容度は最大ドローダウンを目安にしましょう。
①でポートフォリオ化のゴールが決まったら、次に②の運用候補(ポートフォリオの組み込み候補)となるEAの選定を行います。スキャルピング・デイトレード・スイングトレードや、順張り・逆張り・レンジなど、タイプの異なるEAをまんべんなく、かつ複数ずつ出しておくと後々の作業がしやすくなると思います。
その後、②で選定した個々のEAのバックテストを行い、それぞれの想定利益率、想定リスク許容度の算出を行います。ポートフォリオが中長期にわたって有効なものとするためには、テスト期間は3年~5年はほしいところです。
③で個々のEAのバックテストを実施したのち、④の作業としてバックテストの結果を集約し、ポートフォリオとしての想定利益率と想定リスク許容度を算出します。ポートフォリオ全体の想定利益率と想定リスク許容度の算出にあたっては、個々のEAのバックテスト結果を集計するツールを利用すると便利です。ネットで検索すると無料のものがいくつか出てくるかと思いますので、ご自身に合ったものを利用すると良いでしょう。
その後、EAのバックテスト結果を用いて、いろいろな組み合わせでポートフォリオを構築し、ポートフォリオ全体の想定利益率と想定リスク許容度を見比べてみてください。
そして、最後の作業として①で導き出した自身の目標利益率、リスク許容度と、④で算出したポートフォリオ全体の想定利益率と想定リスク許容度を比較し、④が①の基準を満たしていればポートフォリオ化は完了です。
この段階で、ポートフォリオ全体の想定利益率と想定リスク許容度が自身の目標利益率、リスク許容度の基準を満たしていない場合、基本的にはポートフォリオの構成を変更すべく、EAの組み合わせを変えて、再度ポートフォリオ化の検討を行うことになります。ここまで完了すれば、いよいよEAのポートフォリオ運用の開始となります。
ポートフォリオは定期的に確認が必要
最後にポートフォリオ運用にあたり留意事項があります。それは、一度決めたポートフォリオは未来永劫にわたり有効ではないということです。ポートフォリオ化の目的はある程度の相場変動に耐えることにありますが、大きく相場状況が変化した場合にはポートフォリオそのものを見直して、パフォーマンスの改善を図る必要があります。あまり頻繁な構成変更はポートフォリオ化の利点を阻害しますが、定期的なチェックは必要だということを覚えておいてください。
Is it OK?