EAの運用テクニック①[柿澤真正]
柿澤真正さんプロフィール
かきざわ・まさのぶ。2009年よりFXの自動売買システムの開発を開始し、EasySniperやMultiAgent等をはじめ、多くの自動売買システムを証券会社やユーザに提供してきた。インヴァスト証券の自動売買サービス「シストレ24」にて、提供ストラテジーMultiAgentが2016年の年間アワードを圧倒的成績、評価で獲得。また、ひまわり証券の自動売買サービス「エコトレ」にて提供ストラテジーの「ひかえめビーナス」が2013年〜2014年の1年以上にわたり利用者数1位をキープ。利用者数は700名を超える。現在は、MultiAgentをさらに進化させたドリームエージェントFXを提供中。
この連載では、FXの自動売買システム、その中でもMetaTrader4(以下MT4)上で稼働する自動売買システムであるEAにスポットを当て、それを運用していくための知識・ノウハウを専業トレーダーの柿澤真正さんにナビゲートしていただきます。EAの運用を検討している方はもちろん、既にEAを利用している方もぜひ参考にしてください。
※この記事は、FX攻略.com2019年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
EA運用を効率的に運用するテクニック
皆さん、こんにちは。これまでの実践編では、EAの評価の仕方から評価にあたっての実績(バックテスト)の出し方などを見てきました。これまでのところで、EAをテストし評価する方法はご理解いただけたと思います。
とはいえ、「これらの評価を基に実際にどのようにEAを運用していけば良いのか?」と、疑問を抱かれている方も少なくないでしょう。
実践編の締めくくりとしまして、今回から「EAの運用テクニック」に関して説明していきたいと思います。もちろん、EAの運用テクニックはさまざまありますし、相性もあると思いますので、あくまでもこれまでそれなりにEAに携わってきた人間の一例として参考にしていただければ幸いです。
相場状況に合わせたEA選びは難しい
EA運用にあたって最もパフォーマンスの良い運用方法は、その時々の相場状況に応じたEAを選択して運用していく方法です。これは理想形ではありますが、現実として「現在の相場状況を的確に判断していくことが困難」「EAがどのような相場状況に適合するのかを100%的確に把握することは困難」という事情がある中で、この理想形を追い求めても満足いくEA運用を行うことはできません。
正直な話、現在の相場状況を的確に判断できる方であれば、EA運用を行うよりも裁量トレードを行った方が、圧倒的に大きなパフォーマンスを出せると思います。恐らくEA運用を行う多くの方が、裁量トレードの失敗や自信のなさから始められるのであろうと考えると、「その時々の相場状況に応じて適切なEAを選択し運用していく」ということは、非現実的であると思われます。
ポートフォリオ化で相場状況に対応できる
そこで私がEA運用を行うにあたり、常にご提案させていただいているのが「EAのポートフォリオ化」です。これは特性の異なる複数のEAを組み合わせて一つの口座で同時運用することで、あらゆる相場で平均的に利益が出せるようにしていこうというものです。簡単にいうと、レンジ相場に強いEAとトレンド相場に強いEA、さらにはレンジブレイクに強いEAを織り交ぜて運用することによって、どんな相場状況でも平均して利益を出していくことができます。
このようにタイプの異なるEAを同時運用することは、運用前に各EAの特性などを調査することが必要になりますが、その下準備さえしてしまえば今がどんな相場状況なのか、という判断が不要になります。
EA運用にあたって考慮すべき二つの要因である「現在の相場状況を的確に判断」「EAがどのような相場状況に適合するか」のうち、前者が不要になるということは運用者としては逐次の相場状況を判断する必要がなくなり、負担が減るばかりでなく、判断ミスによる損失も防ぐことができるということになります。
もちろんポートフォリオ化すると、常に相場状況に合わないEAも稼働していることになりますので、それらに関しては無駄な損失を一定期間出し続けることにもなります。ですが、それは最適な運用を行っていくにあたっての「必要経費」と考えて割り切ることで、結果的にはEA本来の「可能な限り労力をかけずしてトレードで利益を積み上げていく」ことが可能となるわけです。EAのポートフォリオ化は「利益の極大化」ではなく「利益の最適化」を図っていく手法といえるかと思います。
実際にポートフォリオを組んでいくにあたっては、ご自身の目標とする利益率や許容できるリスク度合いを基に、相場特性や通貨ペア、さらにトレードスタイル(スイング、スキャルピングなど)の異なるEAを組わせていくのですが、その辺りの具体的なポートフォリオ化にあたっての手順の詳細に関しては、次回説明させていただきます。
EAのポートフォリオ化の作業にあたっては、一つのEAを単発で運用するよりも、より明確なご自身の目標利益率や許容リスク度合いが必要となります。
なぜ必要か?についての説明は、次回に譲りますが、まずは皆さんの目標とする利益率(月利でも年利でもイメージしやすい方で良いと思います)と許容できるリスク度合い(最大ドローダウンでも構いません)をイメージしておいていただければと思います。
ใช่ไหม?