システムを悪用する人たち
TradeStationの販売を開始して3年経過した頃、大手同業他社の販売するTradeStationを見たくなって、ユーザー会のお仲間の部下という事にしてもらって製品デモンストレーションを見に行きました。見に行った先は、今はなき、共同通信マーケッツという会社で、そこのテクニカル分析チームのボスだった、Ian Copsey氏に出会いました。共同通信と言えばテレレートという情報端末、そしてテレトラックという分析ツールで当時情報端末の世界ではNo.2の会社でしたが、テレトラックのバージョンアップとしてトレードステーションが採用されて少し驚きましたが、それなりのチーム作り、資料作りが世界的にされていました。つまりそれだけ分析の分野ではTradeStationの存在は大きかったわけで、多くの会社が真似てみたり利用してみたりという状況がすでに始まっていました。
1994年頃はテクニカル分析を否定する人が多く、手口と需要だと言われていましたが、多くの人たちがテクニカルを使うようになる流れが出来ました。次にシステム売買を否定する人たちが多くあらわれるのですが、そう言われるという事は「使いたい」と思っている人が多い証拠でした。営業活動中に聞こえてくる「システム売買プログラムをシステム全体で販売する」という会社があり、そのシステム一式を年間サポート付きで9000万円と聞いていました。販売している人も知り合いの知り合いという距離の方で、同様の会社が何社かあるという話も聞こえてくるようになりました。確かに前述したTrading Truthに掲載され販売している売買システムが5万ドルや10万ドルというものがあったくらいですから、メンテナンスやデータ込で買い切り価格だから仕方ないのかなとも思いました。ところが、このシステムを購入した某大手先物会社をその後訪問したところ、システムトレードについてボロカスに言うのです。おかしいと思って訪ねてみると導入したシステム自動売買が全然動かず、メンテナンスにも来てくれない状態だと言います。マニュアルに準ずるものを見せてもらうと16種類のシステムが走っていてそのうち1種類だけは成績がいいのだがあとは損しか出さないというのです。なんとか直してくれないかと頼まれますがブラックボックスのなかのプログラムを触れるはずもありません。結局損金に計上してシステムの利用をやめた会社がちらほらとありました。
やはりブラックボックスとなるシステムの部分を明かす、明かさない商売はこの頃多く見るようになり、数多くの詐欺事件を目の当たりにしました。システム売買という売れ筋商品を利用して様々な人たちが活躍、そして暗躍する時代が21世紀まであと数年という頃にありました。もしかしたら今でもブラックボックスなプログラムが横行しているのでしょうか。
(次回、アメリカ金融バブルに発生したアルゴ)
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