EAの過去データでの検証は「期間」と「品質」を見る。同じ100回の取引でもPFが2.33にも1.00にもなる計算例
FX聖杯研究所の所長です。50歳のシステムエンジニアで、「勝てそう」に見える自動売買の手法を、過去データで確かめて壊していく記録をつけています。
EA(FXの売買を自動で行うプログラム)の商品ページには、「バックテスト」という名前のタブがあります。バックテストは、過去データでの検証のことです。今日は、過去データでの検証の成績より先に見てほしい2つの数字、「期間」と「品質」の話です。
この記事に出てくる数字は、すべて説明のための計算例です。 私自身の検証結果や成績ではありません。
結論
過去データでの検証の成績は、どれだけの期間を、どれだけ細かいデータで試したかで、信用できる度合いが変わります。
見る数字は2つです。
- 期間: 何年何月から何年何月まで試したか
- 品質: 検証に使った値動きのデータが、どれだけ細かくそろっていたか(%で表す)
見落としやすいのは2つ目です。 品質が低いと、同じ取引でも勝ちと負けの数え方が変わります。計算例では、同じ100回の取引で、PFが2.33にも1.00にもなりました。
過去データでの検証とは
過去データでの検証(バックテスト)は、EAを過去の値動きの上で動かして、「その期間に動かしていたら、どんな成績だったか」を出すものです。取引ソフトの検証機能で行います。
ここで大事なのは、取引ソフトは、手元にあるデータの細かさまでしか、過去を再現できないことです。
1時間の足だけでは、どちらが先か分からない
過去の値動きのデータは、「決まった時間ごとの始値・高値・安値・終値」の形で入っています。このまとまりを「足」と呼びます。
取引ソフト(MT5)はふつう1分ごとの足まで使いますが、分かりやすくするため、ここでは1時間の足で説明します。1分の足でも、足の中の順番が分からないことは同じです。
計算例です。ドル円を買い、「5銭上がったら利益を確定、5銭下がったら損切り(決めた線まで負けたら自動で決済すること)」とするEAがあるとします。1銭は0.01円です。
ある1時間の足で、高値が買った値段より7銭上、安値が7銭下だったとします。利益確定の線にも、損切りの線にも届いています。
上が先に動いたなら、利益確定で勝ちです。下が先に動いたなら、損切りで負けです。高値と安値だけでは、どちらが先だったかは分かりません。
どちらを先とみなすかで、PFが変わる
PF(勝った取引の利益の合計を、負けた取引の損失の合計で割った数字。1.0で損益トントン)で比べます。
条件:取引100回、取引の量は1万通貨(1銭の値動きで100円の損益)、利益確定+5銭・損切り-5銭。100回のうち、勝ち負けがはっきりしている取引は80回(勝ち50回・負け30回)。残りの20回は、1本の足の中で両方の線に届いていて、どちらが先か分からない取引です。取引コストは入れていません。
20回をすべて「利益確定が先」とみなすと、70勝30敗でPF 2.33、合計2万円の黒字です。半分ずつ(10回ずつ)とみなすと、60勝40敗でPF 1.50、合計1万円の黒字です。すべて「損切りが先」とみなすと、50勝50敗でPF 1.00、合計0円のトントンです。取引コストを入れれば赤字です。
EAは同じで、変わったのは20回の数え方だけです。 本当はどちらだったかは、足の中の細かい値動きのデータが無いと分かりません。
1回に狙う値幅が小さいEAほど、この影響は大きくなります。1時間のあいだに、ドル円が上にも下にも5銭以上動くことは珍しくありません。1回50銭を狙うEAなら、両方の線に1時間で届くことは、ずっと少なくなります。
品質とは何か
品質は、検証に使った値動きのデータが、どれだけ細かくそろっていたかを%で表した数字です。取引ソフト(MT5・MT4。EAを動かすFXの取引ソフトの名前)の検証の報告書では、MT5なら「ヒストリー品質」、MT4なら「モデリング品質」という名前で出ます。
細かいデータがそろっていれば、1本の足の中でどちらが先に動いたかを、実際の値動きに近い形で再現できます。細かいデータが欠けていると、取引ソフトは足の中の動きを決まった手順で作って補います。その分、上の20回のような取引の勝ち負けが、実際と違ってくることがあります。
品質が高いほど、過去データの成績を信用しやすくなります。 品質が低いときは、その成績に足の中の推定が混ざっていると考えて読みます。
GogoJungleの出品の決まり:品質が低いほど、長い期間が要る
GogoJungleでは、EAを出品するときの過去データでの検証の期間に、品質による決まりがあります。私が出品の準備のために問い合わせて、2026年9月24日に回答をもらった内容です。GogoJungleのよくある質問のページとは書き方が違うので、出品する人は、その時点の決まりをGogoJungleに確かめてください。
品質が80%以上なら2年以上、80%未満なら7年以上の検証が要ります。品質が低いと、より長い期間で試すよう求められる形です。
読み方の注意が1つあります。2年・7年は、出品できる下限です。 下限を満たしていることと、その成績が「まだ見ていない期間でも崩れない」ことは別の話です。私は自分の検証では、12年分のデータで確かめる基準を先に決めています。
GogoJungleの商品ページでは、ここを見る
商品ページには「バックテスト」「フォワードテスト」などのタブがあります。タブの名前は、2026年9月26日に売れ筋の商品ページ2件で確かめたものです。2026年10月1日にその2件をもう一度開くと、検証した期間は2件とも載っていましたが、品質の値が載っていたのは1件だけでした。売れ筋の商品でも、品質が書かれているとは限りません。
商品ページを開いたら、「バックテスト」のタブなどに、次の2つが載っているかを探してください。
- 検証した期間。 何年何月から何年何月までか。2年ちょうどなのか、10年を超えるのか。載っていなければ「コミュニティ」のタブで出品者にたずね、答えが無ければ、その成績は判断に使いません
- 品質の値(%)。 取引ソフトの報告書では「ヒストリー品質」や「モデリング品質」の欄にあたる数字です。載っていなければ、これも出品者にたずねます
品質が80%未満だったり、たずねても分からなかったりしたら、次は「ストラテジーについて」のタブを見ます。ここには、利益確定の幅と損切りの幅の項目があります。
項目の名前は「テイクプロフィット」(利益確定の幅)と「最大ストップロス」(損切りの幅)です。この幅が小さいEAほど、上の計算例のように、足の中の順番で成績が大きく変わります。
そのときは、過去データの成績を割り引いて見てください。あわせて「フォワードテスト」のタブの成績と並べます。フォワードテストは、GogoJungleがEAを初期設定のまま、お金を使わない練習用の口座で出品後に動かした成績で、足の中の順番を推定する必要がありません。見るときの注意は、9月29日の記事「勝率90%のEAが危険な理由」に書きました。
9月29日の記事:勝率90%のEAが危険な理由
私の検証では、分からないときは損切りを先にする
私の検証プログラムでは、1本の足の中で両方の線に届き、どちらが先か分からないときは、損切りが先だったとみなします。 上の計算例でいえば、一番厳しい「PF 1.00」の数え方です。
理由は、聖杯の条件に「取引コストを入れても、まだ見ていない期間でも崩れない」を入れているからです。有利な方に数えて良く見える手法は、本番で崩れるおそれがあります。不利な方に数えても残る手法だけを、次に進めます。
いまは、この数え方を含めて、自分の検証プログラムの結果と、取引ソフト(MT5)の検証機能の結果を、1回の取引ごとに突き合わせています。どこでずれるかを知るためです。結果の数字は、測り終えて確かめるまで出しません。
最後に
今日の計算例で、成績が崩れる条件は「どちらが先か分からない取引を、有利な方に数えていること」でした。同じEAでも、数え方を変えただけで黒字2万円がトントンになります。
計算例と図はAIを使って作り、数字は私がプログラムで検算しました。
聖杯が見つかる約束はできません。それでも私は、聖杯はあると信じて、不利な方に数えても残る売買ルールを探しています。私にとっての聖杯は、取引コストを入れても、まだ見ていない期間でも崩れない売買ルールです。
品質の低いデータで小さく勝つ成績は、20回の数え方しだいでPF 2.33にも1.00にもなりました。次に商品ページを開いたら、成績の数字より先に、期間と品質が載っているかを探してください。載っていなければ、それも判断の材料です。数え方で良く見えているだけの成績を1つ見分けられれば、その分だけ、聖杯を探す場所がしぼれます。
用語のまとめ
- EA:FXの売買を自動で行うプログラム
- 過去データでの検証(バックテスト):EAを過去の値動きの上で動かして、成績を出すこと
- 足:決まった時間(たとえば1時間)ごとの始値・高値・安値・終値のまとまり
- 品質:検証に使った値動きのデータが、どれだけ細かくそろっていたかを%で表した数字。MT5では「ヒストリー品質」、MT4では「モデリング品質」
- MT5・MT4:EAを動かすFXの取引ソフトの名前。過去データでの検証の機能もある
- PF:勝った取引の利益の合計 ÷ 負けた取引の損失の合計。1.0を下回ると赤字
- 損切り:決めた線まで負けたら自動で決済すること
- テイクプロフィット:利益確定の幅。GogoJungleの「ストラテジーについて」のタブの項目名
- 最大ストップロス:損切りの幅。同じタブの項目名
- 銭:0.01円。1万通貨の取引なら、1銭の値動きで100円動く
- 1万通貨:取引の量の単位。ドル円なら1万ドル分
- 取引コスト:売買のたびにかかるお金。買値と売値の差(スプレッド)や手数料
- フォワードテスト:出品されたあとの期間で、EAを動かして取った成績。GogoJungleでは、お金を使わない練習用の口座で動かしている
※この記事は投資の助言ではありません。数字はすべて説明のための計算例です。