勝率90%のEAが危険な理由。9勝1敗でも赤字になる計算と、商品ページで見る場所
FX聖杯研究所の所長です。50歳のシステムエンジニアで、「勝てそう」に見える自動売買の手法を、過去データで確かめて壊していく記録をつけています。
EA(FXの売買を自動で行うプログラム)を探して商品ページを見ていると、「勝率90%」のような高い勝率がよく目立ちます。この数字だけで選ぶと危ない理由を、計算で説明します。後半では、GogoJungleの商品ページのどこを見ればよいかも書きます。
この記事に出てくる数字は、すべて説明のための計算例です。 私自身の検証結果や成績ではありません。
結論
勝率(取引のうち、勝った回数の割合)が90%あっても、合計で黒字になるとは限りません。 9回勝っても、負けた1回が大きければ、勝ちの分はまとめて消えます。
だから、勝率を見るときは1回の負けの大きさも必ず見てください。見方は1つです。
1回の負けは、1回の勝ちの何倍か
この倍率が分かれば、黒字になるのに必要な勝率が計算で出ます。
勝率とは何か
勝率は、次の計算で出す数字です。
勝った回数 ÷ 取引した回数
10回取引して9回勝てば、勝率は90%です。言いかえると、10回に1回は負けます。
勝率が教えてくれるのは「何回勝ったか」だけです。1回の勝ちでいくら増え、1回の負けでいくら減ったかは、勝率からは分かりません。 ここが落とし穴です。
9勝1敗でも赤字になる計算
計算例です。10回取引して、9回勝ち、1回負けた手法です。
条件:取引10回、勝率90%。金額は取引コスト(買値と売値の差や手数料)を引いたあとの額です。
9回勝って9000円増えました。でも、最後の1回で1万円減ったので、合計は1000円の赤字です。
負けが何回目に来ても、合計は同じです。1回目に負けても10回目に負けても、10回が終われば1000円の赤字になります。
見るのは「1回の負けは、1回の勝ちの何倍か」
この計算例では、1回の負け(1万円)は、1回の勝ち(1000円)の10倍です。
負けが勝ちの何倍かが分かると、黒字になるのに必要な勝率が計算で出ます。考え方はシンプルで、「勝ちの合計」と「負けの合計」がちょうど同じになる勝率が、トントンの線です。
計算:倍率 ÷(倍率 + 1)。10倍なら 10 ÷ 11 = 90.9%。勝ち・負けとも、取引コストを引いたあとの平均の金額で比べます。
負けが勝ちの10倍なら、勝率は90.9%より上でないと黒字になりません。勝率90%は、この線にわずかに届かないので赤字になります。
逆から見ると、勝率90%の手法は、1回の負けが1回の勝ちのちょうど9倍でトントン、9倍を超えると赤字です。
勝率が低くても黒字になる手法もある
逆の計算例も出します。同じ10回の取引で、勝ったのは4回だけ、勝率40%の手法です。
条件:どちらも取引10回。勝率90%の手法は、勝ち9回×1000円=+9000円、負け1回×1万円=−1万円。勝率40%の手法は、勝ち4回×3000円=+1万2000円、負け6回×1000円=−6000円。金額は取引コストを引いたあとの額です。
勝率40%の手法は、10回のうち6回負けます。それでも、1回の勝ち(3000円)が1回の負け(1000円)の3倍あるので、合計は6000円の黒字です。
この手法の負けは勝ちの3分の1です。上の考え方で計算すると、黒字に必要な勝率は25%より上です。実際の40%はこの線を十分に上回っています。
勝率の高さと、儲かるかどうかは別の話です。 勝率は、1回の勝ちと負けの大きさと組み合わせて、初めて意味を持ちます。
なぜ勝率の高いEAは、負けが大きくなりやすいのか
勝率を高く見せる作り方には、よくある形が2つあります。
1つ目は、利益は小さいうちにすぐ確定し、損切り(決めた線まで負けたら自動で決済すること)は遠くに置く作りです。少し上がればすぐ利益になるので、よく勝ちます。そのかわり、負けるときは大きく負けます。
たとえばドル円で、10銭上がったら利益を確定し、1円下がるまで損切りしない作りです。1銭は0.01円なので、1円は100銭です。
1万ドル分(1万通貨)を取引していれば、1銭の値動きで100円の損益になります。この作りだと、勝ちは約1000円、負けは約1万円。上の計算例とほぼ同じ形です。
2つ目は、負けている取引を損切りせず、買い増して平均の値段を下げる作り(ナンピン)です。値段が少し戻れば全部を利益で閉じられるので、勝率はとても高く見えます。そのかわり、値段が戻らなかったときの1回の負けが、たくさんの勝ちをまとめて消します。買い増すほど取引の量が増えているので、口座のお金の大半を一度に失うこともあります。
どちらも、勝率を上げるかわりに、1回の負けを大きくしています。勝率が高いこと自体は悪くありません。 ただ、負けの大きさとセットで見ないと、危ない作りを見落とします。
大きな負けが、商品ページの期間に入っていないことがある
もう1つ、勝率の高いEAで気をつけたいことがあります。大きな負けはたまにしか来ないので、成績を載せている期間にまだ入っていないことがあるのです。
さきほどの計算例で考えます。商品ページの成績が、9回目の取引までの期間だけだったとします。
その期間だけ見ると、勝率100%、9000円の黒字です。赤字にする10回目の負けは、まだ見ていない期間にあります。
これは前回の記事(PF=総利益を総損失で割った数字、の記事)で書いた、取引回数が少ない数字は、たまたまの結果に大きく左右される、という話と同じです。
前回の記事:https://www.gogojungle.co.jp/finance/navi/articles/126730
勝率の高い手法ほど、負けがまれにしか出ないので、少ない回数では本当の姿が見えにくくなります。
私が探している聖杯の条件に「まだ見ていない期間でも崩れない」を入れているのは、このためです。
商品ページで確認する3つのこと
勝率の高いEAを見たら、次の3つを確認してください。
- 平均利益と平均損失。 1回の負けが、1回の勝ちの何倍か
- その倍率で黒字に必要な勝率。 上の「黒字に必要な勝率」の図と比べて、実際の勝率が十分に上回っているか
- 損切りの決まりと、取引回数・期間。 損切りをしない作りや、買い増し(ナンピン)の作りではないか。大きな負けが入るほど、長い期間・多い回数で試しているか
平均利益と平均損失が分からないときは、勝率だけで判断しない方が安全です。
GogoJungleの商品ページでは、ここを見る
ここからは、GogoJungleの商品ページで、この記事の数字がどこに出ているかの話です。この節の項目の名前と場所は、2026年9月26日に売れ筋の商品ページ2件で確かめたものです。商品や時期によって、表示が違うことがあります。
商品ページの成績の欄には、勝率と並んで「平均利益」と「平均損失」が出ています。 この2つが、この記事の「1回の勝ち」と「1回の負け」にあたります。
使い方は、平均損失を平均利益で割るだけです。たとえば平均利益が1000円、平均損失が1万円なら、負けは勝ちの10倍です。上の計算どおり、勝率は90.9%より上でないと黒字になりません(説明のための計算例です)。
ページの下にある「システムトレード用語集」では、平均利益 ÷ 平均損失 を「リスクリワード率」と呼んでいます。この記事の倍率とは割る向きが逆で、上の計算例なら0.1です。成績の欄には、この数字そのものは出ていないので、自分で割ります。
成績の欄には「リスクリターン率」という項目もあります。名前は似ていますが、別の数字です。用語集では、期間中の損益の合計を、一番大きかった資産の目減り(最大ドローダウン)で割った数字としています。1回の勝ちと負けの比ではないので、取り違えないようにしてください。
成績は「全期間」「2年」「1年」「6カ月」「3カ月」「1カ月」で切り替えられます。勝率・平均利益・平均損失は、同じ「全期間」でそろえて見てください。 短い期間に切り替えると、上の「大きな負けがまだ来ていない期間」の図のように、大きな負けがまだ入っていない数字だけを見ることがあります。
もう1つ、商品ページには「フォワードテスト」のタブがあります。フォワードテストは、GogoJungleがEAを初期設定のまま、お金を使わない練習用の口座で動かした成績です。過去データでの検証とは別に、出品されたあとの期間で動かした結果なので、この記事の「まだ見ていない期間」に近い数字です。ただし出品されて間もない商品は、期間が短く取引回数も少ないので、上の図と同じく大きな負けがまだ入っていないことがあります。
最後に
FX聖杯研究所では、良い数字を見たら、まず「どういう条件で崩れるか」を探すことにしています。勝率90%の場合、崩れる条件は「1回の負けが、1回の勝ちの9倍を超えていること」でした。
この記事の計算と図はAIを使って作り、数字はすべてプログラムで検算しています。
必ず勝てる方法を約束することはしません。でも、聖杯はあると信じて探しています。
私が探している聖杯は、取引コストを入れても、まだ見ていない期間でも崩れない売買ルールです。高い勝率は、偽物の聖杯が身につけやすい飾りです。
次にGogoJungleの商品ページで勝率を見たら、すぐ近くの平均利益と平均損失を並べてください。それだけで、飾りだけの偽物を1つ外せます。偽物を1つ外すたびに、聖杯に1歩近づきます。
用語のまとめ
- EA:FXの売買を自動で行うプログラム
- PF:勝った取引の利益の合計 ÷ 負けた取引の損失の合計。1.0を下回ると赤字
- 勝率:取引のうち、勝った回数の割合
- 平均利益・平均損失:1回の勝ちで増えた金額の平均と、1回の負けで減った金額の平均
- リスクリワード率:平均利益 ÷ 平均損失(GogoJungleの用語集の呼び方)
- リスクリターン率:期間中の損益の合計 ÷ 一番大きかった資産の目減り(GogoJungleの用語集の呼び方)。リスクリワード率とは別の数字
- 損切り:決めた線まで負けたら自動で決済すること
- ナンピン:負けている取引を損切りせず、買い増して平均の値段を下げること
- 銭:0.01円。1万通貨の取引なら、1銭の値動きで100円動く
- 1万通貨:取引の量の単位。ドル円なら1万ドル分
- 取引コスト:売買のたびにかかるお金。買値と売値の差(スプレッド)や手数料
- フォワードテスト:作ったあとの期間で、EAを動かして取った成績。GogoJungleでは、お金を使わない練習用の口座で動かしている
※この記事は投資の助言ではありません。数字はすべて説明のための計算例です。