【NIKE 2026年10-K完全解剖 第3回】:手元資金56億ドルをMMFに置く理由 ― モノを売るビジネスのリアル
株式
ICHIRO|決算書解剖ラボ
第1回では自社株買いの急ブレーキによる手元流動性75.6億ドルの死守、第2回では期明けに全額着金した約10億ドルにのぼるIEEPA関税還付のカラクリを解き明かしました。
期末時点で確保された75.6億ドルの現金および現金同等物に、期明け直後の還付金を加えれば、ナイキの手元には実質的に80億ドル(約1.2兆円)を優に超える潤沢な流動性が存在していることになります。
では、世界最高峰のグローバル企業であるナイキは、この途方もない現金を一体どこへ預け、どのように管理しているのでしょうか。
企業の財務諸表を読み解く際、多くの投資家は貸借対照表(B/S)の「Cash and equivalents(現金および現金同等物)」という一行の合計額だけで満足してしまいます。しかし、有価証券報告書の深部にある「注記4 ― Fair Value Measurements(公正価値測定)」(68ページ)を開くと、そこには教科書の金融理論だけでは説明がつかない、極めて生々しい運用実態が記録されています。
同社が保有する流動資産の過半――実に56億ドル(約8,000億円)もの資金が、米国債ではなく「MMF(マネー・マーケット・ファンド)」という単一のビークルに集中配分されていたのです。
王者の財務部門(コーポレート・トレジャリー)は、なぜ短期国債(T-Bills)を直接買い占めるのではなく、あえてMMFを選び取ったのか。その背景には、モノを世界中で作り、運び、販売するサプライチェーン企業ならではの切実な資金繰りの現場がありました。
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