えんむすびAI 開発ストーリー 第5回 ― なぜ「説明できるAI」にしたのか(ブラックボックスへの不信)
前回は、AIの権限を「新しい買いを止める・待つ」だけに絞った話でした。今回はその続き――なぜ、その判断をわざわざ目に見える形にしたのか。理由を隠して結果だけ出す“ブラックボックス”が、私はどうしても信用できませんでした。これは技術の話というより、含み損を抱えて待つ人間が、心を保つための話です。
世の中の自動売買やAIシグナルの多くは、矢印や売買結果だけを見せて、「なぜそう判断したのか」を出しません。調子のいいときは、それでも構わないでしょう。問題は、うまくいかない時間帯です。
含み損が増えていく。サインが止まる。そのとき理由が見えないと、人は最悪の問いに飲み込まれます。「これは壊れたのか、それとも、ただ待っているだけなのか」。判断できないまま不安だけがふくらみ、たいていいちばん戻る直前で、手動で切ってしまう。黒い箱は、性能以前に、人の心を折るのです。
えんむすびAIは、損切りをしない型です。含み損を抱えて、回復を待つ。これは設計上、人がいちばん不安になる時間が長いということでもあります。
その不安のなかで、もしEAが何も語らなかったら。「なぜまだ持っているのか」「なぜ今は買わないのか」が分からないまま含み損だけ見ていたら――どんなに数字の上で正しくても、人の手が先に動いて、回復のシナリオを自分で壊してしまいます。だから私は、説明可能性を“飾り”ではなく“安全装置”として組み込みました。
「いまは花冷えだから、新しい買いを止めています」。そう理由が見えれば、含み損の時期でも腹落ちして待てる。説明は、EAの飾りではなく、人間の側のリスク管理なのです。
では、どうすれば説明できるのか。答えはシンプルで、理由を言える作りにしておくこと。えんむすびAIは、機械学習の“なんとなく”ではなく、「もし○○なら、△△する」というルールの連鎖で動いています。だから、ある判断には必ず対応する理由があり、それをそのまま日本語に変換できます。
「ボラティリティが急に開いたので、新規を見送り」。「この銘柄は出遅れているので、買いの候補」。一つひとつの動きに、後づけでない理由がある。それをチャート上のパネル「縁結び処」に出します。賢く見せることより、いつでも理由を言えることを選びました。
※「縁結び処」は判断の理由を日本語で表示するパネル。画面イメージは開発中のもので、実際とは異なる場合があります。
正直に書くと、これは過去の自分への戒めでもあります。裁量で大きく負けていたころ、私のトレードには「なぜ買ったのか、自分でも説明できない」ものが、たくさんありました。なんとなく上がりそう、みんなが買っている――感情が手を動かしていたのです。
理由を言えない判断は、振り返ることも、直すこともできません。だから今度は、EAに必ず理由を言わせることにしました。説明できるAIは、相場に向き合う私自身を、もう一度ルールの側に縛りつけるための仕掛けでもあります。
説明できるAIを選んだのは、性能の自慢のためではありません。理由が見えないと、人は待てないから。とくに損切りをしないこのEAでは、含み損の時間をどう過ごすかが成否を分けます。「いま、なぜこうしているか」がいつでも見える――それが、続けられる設計だと考えました。
ただし、念のため繰り返します。理由が見えても、抱えた含み損が消えるわけではありません。説明は心を保つための装置であって、利益を約束するものではない。全面的な円高には弱く、最悪は破綻もありうる設計です。だからこそ、必ず余裕資金で見てください。
※本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的としたものではありません。掲載している運用結果は過去の実績であり、将来の利益を保証するものではありません。FX・CFD取引はリスクを伴います。投資判断はご自身の責任において行ってください。