えんむすびAI 開発ストーリー 第4回 ― AIに何を任せ、何を任せないか(「縁結び処」の権限)
前回は、損切りをなくした代わりに「止める判断」と「余裕資金」で守る、という話でした。今回は、その「止める判断」を受け持つAIの話。ただし、私はAIに何でも任せたわけではありません。むしろ逆で、権限はぎりぎりまで絞りました。なぜ「賢いAI」ではなく、「権限の小さいAI」にしたのか。その線引きの話です。
えんむすびAIのAIに与えた権限は、実は一つだけです。「いま、新しく買うのを止める/見送る」。これだけ。
相場が荒れている、急に大きく動いた、スプレッドがいつもより開いている――そうした「危ない気配」を感じたとき、AIは新規のエントリーをそっと止めます。攻めの判断(どこで・どの銘柄を買うか)はロジックが決め、AIはその買いを「今やるか、待つか」というゲートだけを握る。言ってみれば、攻撃には口を出さない“入口の番人”です。
むしろ大事なのは、こちらです。AIに渡さなかった権限が3つあります。
- ① 勝手に損切りしない:前回書いたとおり、回帰を待つ手法では、途中の損切りがいちばん戻る直前で回復を逃します。だからAIに損切りの権限は渡していません。
- ② 勝手に方向を変えない:買い専用は、このEAの芯です。AIが気をきかせて売りに回る、といった裁量は持たせていません。
- ③ 走っている回復を止めない:いちばん危ないのが、回復のための買い足しをAIが途中で止めてしまうこと。これをやると、戻る寸前で梯子を外すことになります。
つまりAIの権限は、「これから始める買いを、止める・待つ」だけ。すでに動いている回復のプロセスには、いっさい手を出さない。ここを混同させなかったことが、この設計の肝です。
AIに大きな力を与えるほど、想定していなかった場面で“良かれと思って”動き、かえって壊すことがあります。賢さは、暴走の余地にもなる。
権限を「止める・待つ」だけに絞ると、AIがもし判断を間違えても、最悪が「何もしない(見送る)」に倒れます。余計なことをしてポジションを壊す方向には、そもそも動けない。これはフェイルセーフの考え方です。求めたのは賢さよりも、できること・できないことの線引きの明確さでした。
※AIの役割は「攻める」ことではなく、「危ないときに、新しい買いの手を止める」こと。
AIが「待つ」と決めたとき、なぜ待つのかを日本語でチャートのパネルに出します。これを「縁結び処」と名づけました。「いまは見送り」「新規を止めています」と、理由つきで表示される。
数字の羅列ではなく、夜桜の季語(花日和・花曇り・花冷え)で相場の温度感を一目で伝えます。理由が見えるから、含み損を抱える時期でも「ああ、いまは花冷えなんだな」と腹落ちできる。判断を隠さず、目に見える場所に置く――この見せ方の話は、次回くわしく書きます。
AIの仕事は、攻めることではありません。危ないときに、新しい買いの手を止めること。それだけに権限を絞りました。賢いAIではなく、できることがはっきりした「権限の小さいAI」。だから「次に何をしてくるか分からない」という不安が、小さくて済みます。
ただし、念のため繰り返します。AIが新規を止めても、すでに抱えた含み損が消えるわけではありません。全面円高には弱く、最悪は破綻もありうる設計です。AIは万能の安全装置ではなく、あくまで「入口の番人」。その前提で、必ず余裕資金で見てください。
※本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的としたものではありません。掲載している運用結果は過去の実績であり、将来の利益を保証するものではありません。FX・CFD取引はリスクを伴います。投資判断はご自身の責任において行ってください。