ドル円で順張り手法と逆張りナンピンを合体!聖杯EAは作れるのか検証してみた
今回は、EA開発者なら一度は考えるであろうテーマについて検証してみました。
それが、
「ドル円で順張り手法と逆張りナンピンを組み合わせたら、聖杯EAは作れるのか?」
というテーマです。
順張りで利益を狙いながら、逆張りナンピンでも利益を積み上げる。
もしこれがうまくいけば、トレンド相場でもレンジ相場でも利益を狙える、まさに理想的なEAになります。
では、実際にそんなEAは作れるのか?
結論から言うと、今回の検証では1つのEAに単純合体させても、聖杯EAにはなりませんでした。
むしろ、順張りと逆張りの良さがうまく噛み合わず、お互いの強みを打ち消してしまうような結果になりました。
今回は、その検証内容と、そこから見えてきたEA運用の考え方についてお話ししていきます。
ドル円は順張りEAが比較的作りやすい通貨ペア
まず前提として、ドル円は比較的、順張りロジックが機能しやすい通貨ペアだと感じています。
実際に私も、ドル円を対象にしたトレンドフォロー系のEAやインジケーターをいくつか開発してきました。
たとえば、代表的なものとしては、
- ゴールデンクロス・デッドクロスを使った2本の移動平均線ロジック
- パーフェクトオーダーを使った3本移動平均線ロジック
- 12本の移動平均線を使ったGMMAトレンドロジック
- レンジブレイク、ブレイクアウト系のロジック
こういったものがあります。
もちろん、どんな相場でも勝てるわけではありません。
ただ、長期バックテストを取ってみると、ドル円は大きなトレンドが発生したときに、順張りEAが利益を伸ばしやすい傾向があります。
つまり、ドル円はレンジよりもトレンド方向に乗ることで、比較的利益が出やすい通貨ペアということです。
ドル円順張りEAに逆張りナンピンEAを組み合わせたらどうなるのか?
ここで、多くの人がこう考えると思います。
「順張りEAがトレンド相場で利益を出すなら、レンジ相場で有利な逆張りナンピンEAを組み合わせればいいのでは?」
これはかなり自然な発想です。
トレンド相場では順張りEAが利益を出す。
レンジ相場では逆張りナンピンEAが利益を出す。
そうなれば、相場環境に関係なく安定して利益を狙えるEAが作れるのではないか?
つまり、
順張りEA + 逆張りナンピンEA = 聖杯EA
という考え方です。
EA開発をしている人なら、一度はこの発想にたどり着くと思います。
私自身も、逆張りEAはこれまでかなり作ってきました。
その中でも最近開発したものが、Grid Rush MT5です。
https://www.gogojungle.co.jp/systemtrade/fx/78797
MT4版のGrid Rashは、基本的にはユーロドルを対象にした逆張りナンピン系のEAですが、MT5版では最大10ポジションまで保有できる設計にしています。
そして検証してみると、この最大10ポジションのナンピンロジックは、ドル円でも一定の優位性があることがわかりました。
単ポジや3ポジション程度ではドル円の深いトレンドに耐えられない
逆張りナンピンEAで重要なのは、ポジション数の設計です。
単ポジションだけで逆張りをすると、ドル円のように一方向へ強く動く相場では、不利な戦いになりやすいです。
また、最大3ポジション程度のナンピン戦略でも、深いトレンドに巻き込まれると建値まで戻ってこないケースがあります。
つまり、ドル円で逆張りをする場合、浅い押し目や戻りだけを狙うのではなく、ある程度深い値動きまで想定しないと、長期バックテストでは耐えにくいということです。
その点、Grid Rushのように最大10ポジションまで持てる設計にすると、ドル円でもバックテスト上はある程度粘れる場面が出てきます。
もちろん、ナンピンなのでリスクはあります。
一方向に強烈なトレンドが出た場合、大きな含み損を抱える可能性もあります。
ただ、単純な逆張りよりも、複数ポジションで段階的に仕掛けることで、戻りを狙って利益を積み上げることが可能となるわけです。
順張りロジックも利益が出る。逆張りナンピンも利益が出る。では合体したら?
この結果を見ると、多くのトレーダーはこう思うはずです。
ドル円では、順張りロジックのバックテストがプラスになる。
さらに、最大10ポジションの逆張りナンピンロジックでも、バックテスト上は利益が出る。
それなら、この2つを1つのEAにまとめれば、もっと強いEAになるのでは?
私もそう考えて、いくつかのパターンで検証してみました。
たとえば、
- 順張りロジックと逆張りロジックを1つのEAにして動かす
- 順張りの条件でエントリーし、逆張りのロジックを決済の条件に使う
- 逆張りナンピン中だけ順張りでピラミッディングする
- 順張りポジションと逆張りポジションを両建てで管理する
- 最大ポジション数やエントリー条件を調整する
こういった形で、さまざまな組み合わせを試しました。
しかし、結果としては、どうしてもうまくいきませんでした。
1+1=2にはならない。むしろ相殺して威力が下がる
今回の検証で一番強く感じたのは、EAのロジックというのは、単純に足し算すれば強くなるものではないということです。
順張りEA単体では利益が出る。
逆張りナンピンEA単体でも利益が出る。
だからといって、それを1つのEAにまとめたら、利益が2倍になるかというと、そうではありませんでした。
むしろ、お互いのロジックがぶつかり合ってしまい、良い部分を打ち消してしまう動きになります。
順張りが伸ばしたい場面で、逆張りが逆方向にポジションを持ってしまう。
逆張りが戻りで利益を狙うタイミングで、順張りが余計なエントリーをしてしまう。
結果として、ロジック同士がぶつかり合い、全体としての成績が伸びない。
これが、今回の検証で見えてきた大きなポイントです。
以下の資産チャートは、ドル円の順張りと逆張りのロジックを組み合わせたEAのバックテスト結果です。
つまり、
勝てるロジック同士を組み合わせても、必ずしも勝てるEAになるわけではない
ということです。
聖杯EAは存在しないのか?
この検証を通して、改めて感じたのは、いわゆる聖杯EAを1つのロジックで作るのは非常に難しいということです。
多くのEAクリエイターが、聖杯EAを求めてさまざまな手法を組み合わせます。
順張り、逆張り、ナンピン、ブレイクアウト、押し目買い、戻り売り、アノマリー、マルチタイムフレーム分析。
こういったロジックを組み合わせれば、どんな相場でも勝てるEAが作れるのではないかと考えます。
しかし、実際にやってみると、うまくいきません。
トレンド相場で強いロジックは、レンジ相場では弱くなる。
レンジ相場で強いロジックは、トレンド相場では大きく負ける。
この特性を1つのEAの中で完全に制御しようとすると、どうしても無理が出てきます。
今回の検証では、まさにそこがはっきり出ました。
では、FXで勝つためにはどう考えればいいのか?
ここで大事なのは、
聖杯EAがない=FXで勝てない
ということではありません。
むしろ、EA運用で重要なのは、1つのEAにすべてのロジックを詰めることではなく、ポートフォリオとして独立したEAで考えることです。
つまり、1つのEAでトレンド相場もレンジ相場もすべて対応しようとするのではなく、役割の違うEAを複数組み合わせるという考え方です。
たとえば、ドル円ではトレンドフォロー型のEAを動かす。
一方で、ユーロドルではレンジに強い逆張りナンピンEAを動かす。
あるいは、ドル円で順張りEAと逆張りナンピンEAを別々のEAとして管理する。
これが現実的な考え方だと思います。
1つのEAにまとめるより、別々に運用した方がいい理由
順張りEAと逆張りナンピンEAを1つにまとめると、ロジック同士が干渉してしまう可能性があります。
しかし、別々のEAとして運用すれば、それぞれの特徴を活かしやすくなります。
順張りEAは、トレンド相場で利益を狙う。
逆張りナンピンEAは、レンジ相場で利益を狙う。
このように役割を分けることで、1つのEAの中で無理に判断させる必要がなくなります。
もちろん、ポートフォリオを組めば絶対に勝てるという話ではありません。
ただ、1つのEAにすべてを詰め込むよりも、EAごとの特性を理解して、資金配分や通貨ペアを分けて運用する方が、現実的だと思います。
ドル円とユーロドルでは、そもそも勝てるロジックが違う
私がこれまでEAを開発してきた中で、重要だと思う通貨ペアは、ドル円とユーロドルです。
ポンド円やユーロ円などのクロス円も魅力はあります。
ただ、スプレッドや値動きの飛びやすさ、取引量などを考えると、EA運用ではやはりドル円とユーロドルが扱いやすいと感じています。
特にドル円は、トレンドフォロー型のEAが機能しやすい特性があります。
一方で、ユーロドルはレンジ相場が多く、単純な順張りロジックがなかなか機能しにくい印象があります。
実際に、ドル円で利益が出るトレンドフォローのロジックを、そのままユーロドルに当てはめても、うまくいかないケースが多いです。
以下の資産チャートは、ドル円で優位性のあるトレンドフォローのEAでEURUSDを動かした場合のバックテスト結果です。
ユーロドルで順張りEAを探してみた結果
そこで、ユーロドルでも順張りEAが作れるのか、または既存のロジックで使えるものがないかを調べてみました。
MQL5.comには、MT4・MT5向けのEAソースコードが大量に公開されています。
いわゆる無料で使えるEAのソースコードですね。
MT5とMT4を合わせると、2,000個以上のEAが眠っています。
ただ、この中から本当に使えるEAを探すのは、砂漠の中から1粒の砂を探すような作業です。
そこで、AIエージェントのOpenAIのCodexを使って、ユーロドルで順張りロジックとして使えそうなEAをAIに探してもらいました。
結果として、いくつか候補は出てきました。
しかし、実際に検証してみると、
- そもそもトレードしないEA
- 順張りではなく、MACDの行き過ぎから反転を狙う逆張りEA
- 日足ベースで動くものの、実用性が低いEA
- 成績がまったく伸びないEA
こういった結果になりました。
つまり、順張りEAを指定して探しても、実際には逆張りロジックが混ざっていたり、まともにトレードしなかったりするわけです。
もちろん、一個一個丁寧に精査していけば、ユーロドルでも使える順張りEAは見つかるかもしれません。
私の経験上、ユーロドルで明確に機能するスイング型の順張りEAを見つけるのは難しいと感じました。
ユーロドルは逆張り・レンジ向きの方が考えやすい
ユーロドルは、ドル円と比べると、長期的にはレンジ性が強いと感じています。
そのため、ユーロドルではトレンドフォローよりも、戻り売り・押し目買いのカウンタートレンドや、レンジ内での逆張りロジックの方が組み立てやすい印象があります。
この考え方をもとに開発したのが、Grid Rushです。
Grid Rushは、ユーロドルを主軸にした逆張りナンピン系のEAです。
レンジ相場では細かく利益を積み上げやすい一方で、強い一方向のトレンドには注意が必要です。
つまり、いわゆる「コツコツドカン型」のリスクはあります。
ただ、ユーロドルでは逆張り系のEAが機能しやすいのは確かだと思います。
押し目買い・戻り売りは逆張りなのか?
ここで少し整理しておきたいのが、押し目買い・戻り売りの考え方です。
押し目買いというのは、上昇トレンド中に一時的に下がったところを買う手法です。
戻り売りというのは、下降トレンド中に一時的に上がったところを売る手法です。
短期的に見ると逆張りに見えるかもしれません。
しかし、長期足ではトレンド方向に沿ってエントリーしているため、本質的には順張りです。
いわゆるマルチタイムフレーム分析ですね。
長期足では順張り。
短期足では一時的な逆行を狙う。
このような構造なので、単純な逆張りEAとは別物として考える必要があります。
EAを分類するときに、短期のエントリーだけを見ると逆張りに見えることがあります。
しかし、長期の方向性を見ている場合、それはトレンドフォロー型のロジックと考えた方が自然です。
今回の検証でわかったこと
今回の記事では、ドル円で順張り手法と逆張りナンピンを組み合わせて、聖杯EAが作れるのかを検証しました。
結果としてわかったことは、次の通りです。
まず、ドル円は順張りEAが比較的機能しやすい通貨ペアです。
ゴールデンクロス・デッドクロス、パーフェクトオーダー、GMMA、ブレイクアウトなど、トレンドを狙うロジックが成立しやすい場面があります。
一方で、逆張りナンピンも、最大ポジション数や設計次第ではドル円で一定の優位性が出ることがあります。
しかし、その2つを1つのEAに単純合体させても、成績は思ったように伸びませんでした。
むしろ、順張りと逆張りのロジックが相殺し合い、お互いの強みを活かせない結果になりました。
つまり、聖杯EAを作るのは、非常に難しいということです。
現実的なのは、EAのポートフォリオ構築
では、どうすればいいのか。
私の考えでは、現実的なのはEAのポートフォリオ構築です。
ドル円では順張りEAを使う。
ユーロドルでは逆張りナンピンEAを使う。
単ポジEAと複数ポジションEAを組み合わせる。
トレンド型、レンジ型、アノマリー型を分けて考える。
このように、EAごとに役割を分けて運用する方が現実的です。
もちろん、ポートフォリオを複雑にすれば勝てるわけではありません。
相場にはトレンド相場もあれば、レンジ相場もあります。
すべての相場に1つのEAで対応しようとするのではなく、それぞれの相場に強いEAを組み合わせていく。
これが、EA運用ではかなり重要な考え方だと思います。
まとめ:聖杯EAではなく、聖杯ポートフォリオを目指す
今回の検証では、ドル円で順張り手法と逆張りナンピンを合体させて、聖杯EAが作れるのかを検証してみました。
結果として、1つのEAにまとめるだけでは、聖杯EAにはなりませんでした。
順張りEA単体では利益が出る。
逆張りナンピンEA単体でも利益が出る。
しかし、組み合わせると、1+1=2にはならない。
むしろ、お互いの良さを打ち消してしまうことがあります。
ここがEA開発の難しいところです。
ただし、これは悲観的な結果ではありません。
むしろ、EA運用においては、1つの聖杯EAを探すよりも、複数のEAを組み合わせたポートフォリオを作る方が現実的だということです。
ドル円にはドル円に合ったロジックがある。
ユーロドルにはユーロドルに合ったロジックがある。
順張りには順張りの強みがあり、逆張りには逆張りの強みがあります。
大事なのは、それらを無理に1つのEAに詰め込むことではなく、役割を分けて活かすことです。
聖杯EAを探すのではなく、
聖杯に近づくポートフォリオを作る。
これが、今回の検証から見えてきた結論です。
※本記事はEA開発およびバックテスト検証に関する技術的・教育的な内容であり、特定の投資行動を推奨するものではありません。FX・CFD・自動売買には損失リスクがあります。運用判断は必ずご自身の責任で行ってください。
よろしいですか?