米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.42]2022年4月11日配信
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米国株式投資の真実を伝える
[Vol.42]2022年4月11日配信
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川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
***目次***
マーケット振り返り
今週のピックアップ記事
川田の気になる銘柄
投資のヒント
お散歩
超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
活動情報
社会人になって40年以上読み続けている日経新聞の中から気になる記事をピックアップしコメントする企画だ。毎週土曜日午前9時〜9時45分にズームへの参加形式で実施している。
参加は無料なのでご興味あるかたはPeatixでお申込みください。
以下は先週土曜日にカバーした記事の表題をいくつか
皆様が資産形成で成功するために一緒に学び啓発し合うオンラインサロンです。大好評のメルマガ「メディアで鍛える米国株式講座」だけでは伝えきれない内容や、米国株式投資の魅力を体感できる会員向けのセミナーを提供します。
2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
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1.マーケット振り返り(4月4日~4月8日)
<主要指数>
・NYダウ -0.3%
・S&P500指数 -1.3%
・ナスダック総合指数 -3.9%
=駆け足バージョン=
インフレを抑えるための金融引き締め姿勢が鮮明になったことから長期金利が大きく上昇しました。これを受けて株式市場では割高感が強まった成長株が売られる一方、金融株や生活必需品株が買われる動きが強まりました。
=ちょっとだけ詳しく=
金利動向が大きく影響した一週間となりました。
米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事は火曜日に、5月にもバランスシートの急速な縮小を開始し、状況に応じて年後半以降も利上げを続ける可能性があると発言しました。
水曜日に公表された3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録では、1回以上の0.5%の利上げやバランスシートを毎月950億ドル縮小することでほぼ合意したことが分かりました。
これらを受けて長期金利は2019年3月以来の2.7%台まで上昇しました。
株式市場では割高感の強い成長株に対する売りが強まってナスダック総合指数は3.9%下落しましたが、銀行株や生活必需品株などが下支えとなり、NYダウの下落率は小幅にとどまりました。
S&P500指数 過去1年
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2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】東洋経済ONLINE 意味あった?東証市場改革「完全骨抜き」の全内 4/4
「意味あった?東証市場改革「完全骨抜き」の全内幕」
プライム市場に、1部上場企業の84%に当たる約1,840社が、そのまま横滑りする格好。東証改革はほぼ現状維持の要因は大きく2つ。
1つ目は、東証が改革議論の主導権を失ったことだ。骨抜きへの圧力が強烈だったのは菅官房長官(当時)であり、経済産業省出身の官邸官僚たち。政治家たちから激しいプレッシャーを受ける中、金融庁として東証を本気で改革する気などさらさらなかった。
東証の経営陣の中にも、TOPIX改革に熱い思いを寄せる役員が複数おり、中でも熱心だったのが宮原幸一郎さん。2020年10月の大規模システム障害によって、経営から姿を消したことが、改革が骨抜きになった2つ目の要因だ。一方、改革が骨抜きになった要因は「JPX経営陣の覚悟のなさだ」と指摘の声もある。
【川田コメント】
私は日本株に投資しないので自分の投資ポートフォリオにも影響しない。文中に、「‟優秀な若者が地元で就職するとしたら、県庁、銀行、1部上場と相場が決まっている。その1部上場企業がもし“降格”になったときの影響は、君たちが考えているよりもはるかに大きい”と自由民主党本部で、国会議員の1人に呼び止められた金融庁幹部はいわれた」そうだ。
そう、これが日本だからこれでいいのではないか?もともと大胆な市場再編など最初から構想になかったということだろう。日本は日本らしく、で当然だと思う。
【2】日経新聞 融合する資本の論理と社会 上級論説委員 小平龍四郎 4/6
株主重視の資本の論理を改め、企業は人など広く社会にもっと分配すべきだ――。岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の文脈では、こんな主張が幅をきかせている。しかし「資本」と「社会」はそれほど相反するものなのだろうか。
英国:7月に株主総会を控える大手スーパーのセインズベリーが、従業員の賃金引き上げを求める株主提案を受けている。また米国で注目したいのは「人権監査」や「公民権監査」と呼ばれる動きで、企業グループのなかで人種差別やハラスメントが起きていないかどうか、法律家など第三者の目でチェックする。
英国と米国は成熟した株式市場を持ち、投資家の力が強い点で共通する。いわゆる「シェアホルダー・キャピタリズム」(株主資本主義)を代表する国だ。その地で従業員や取引先に目配りする「ステークホルダー・キャピタリズム」(利害関係者資本主義)が急速に台頭している。
私たちが構想すべきは株主主義の弱体化ではない。むしろ、多くのステークホルダーを株主として受け入れ、市場を経由して様々な声が企業や国に届くようにすることだ。資本の論理と社会課題の解決が融合する「株主資本主義2.0」とも名づけられよう。
【川田コメント】
株主の要求や社会的な役割が利益追求を超えてより広範な社会的課題の解決に貢献する「ステークホルダー・キャピタリズム」(利害関係者資本主義)が急速に台頭しているというのだ。
一方で日本では、事業の社会的意義が昔から非常に重視されてきた。例えば「売り手よし、買い手よし、世間よし」のいわゆる「三方よし」のビジネスモデル が未来に永続する事業の必須条件と言われている。
しかし、英米で台頭しているのはあくまで株主が主体の動きだ。文中にもあるように‟多くのステークホルダーを株主として受け入れ、市場を経由して様々な声が企業や国に届くようにすること”で‟資本の論理と社会課題の解決が融合する「株主資本主義2.0」”ともいうべきものだ。
日本人には、各ステークホルダーを株主として受け入れる発想はないだろう。むしろ株主から距離を置いた経営者が企業という器を使い、自主的な判断で社会の課題を解決する仕組みではないだろうか?
【参考】
下図は日本人が理解している株主資本主義とステークホルダー資本主義の違いだ。「株主資本主義2.0」では、株主資本主義の下でステークホルダー資本主義を実践する方式だと私は理解している。
【3】日経新聞 短期投資家、五里霧中に 緩和下の戦略が通用せず 4/6
デイトレードや短期の順張り戦略など、金融緩和下で有効だった手法の苦戦が目立つようになった。短期筋の苦境を映す投資信託がある。三井住友DSアセットマネジメントの「テトラ・エクイティ」だ。S&P500種株価指数が一定以上に下落すれば先物を機械的に売り建て、逆に一定の上昇で買い建てる。持ち高は当日の引けで解消する短期の順張り戦略を取る。
2020年3月に新型コロナウイルスの感染拡大懸念で相場が急落したときは下落トレンドをいち早く察知し、高リターンをたたき出して人気が高まった。だが今年に入ってから基準価格はコロナ前に逆戻り。
「米国株式デイリートレンド戦略ファンド」や「トレンド・キャッチ戦略ファンド」など、いわゆる「トレンド戦略型」と呼ばれる投信はテトラの成功以降に量産。だが足元では軒並み基準価格が落ち込んでいる。金融引き締めは投資対象の選別につながり、短期筋は戦略の練り直しを余儀なくされている。
【川田コメント】
以下は「テトラ・エクイティ」の基本データだ。信託報酬は0.95%でそれほど高くない。そして運用残高は620億円だ。このようなファンドはある特定の相場環境で良い成績を出すが、その期間は永続しない。チャートを見ると、基準価額は設定直後の2020年3月頃まで急騰しているが、それ以降は概ね横這いで昨年夏からは下落基調だ。
ファンド設定前のシミュレーションでは好成績だが、実際に運用してみるとそうならないケースも多々あるのはこの業界の常だ。運用者は若くて頭脳明晰な理系人材かもしれないが、業界経験は長くないかもしれない。
運用者は発想が斬新で、既成概念に捉われない手法でマーケットの歪みを見つけ、それを刈り取ることで超過リターン(通常以上の儲け)を得ているのだろう。しかし、時間の経過と共にその歪みも徐々に消失するのがこの手法の宿命だ。
チャートを見ると、この運用モデルの賞味期限は意外と短かったかもしれない。それでも運用者は自分の負けを認めないかもしれない。運用会社はもう600億円も集めたので、その分の信託報酬はそれなりに入る。それならそれで、パフォーマンスが良すぎて投資家の利食いで資産が流失しなければビジネスとしてある程度成功なのだろうか?そんなことを考えながらチャートを眺めた。
多くの資産形成世代の投資家は、こういうファンドにはそもそも投資しなくていい。しかしどうしても応援したいなら、コアサテライトのサテライト銘柄の1銘柄分が資産配分の上限(全運用資産の1%程度)だと思う。
この624億円をS&P500指数のETFの投信で運用していれば、日本人の資産はもうちょっと増えているはずだ。つくづく思うけど、日本の投資家はリスクリターンのバランスを欠いた投資をし過ぎる。本当にもったいない。
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3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
メドトロニック<ティッカー:MDT> Medtronic plc
概要(100字程度)
メドトロニックは1949年創業の医療機器の大手です。ペースメーカーやステントなどの心臓血管関連製品、外科手術用機器、脳などの神経系向け機器、糖尿病関連機器などの研究開発と製造を行い、世界150カ国以上で販売しています。
同社の魅力
バランスの取れた製品群と地理的展開
メドトロニックは社内の開発や合併・買収を通じて各種の医療機器を手掛けています。特に2014年にアイルランドのダブリンに拠点を置くコヴィディエン社の買収に成功して現在の製品ラインナップの基礎を固めました(現在の登記上の本社はアイルランド)。この結果、バランスの取れた製品群が世界各地で販売されています。また、ペースメーカーなどの医療器具にとって重要な強いブランド力を持っており、長期的な事業拡大の背景となっています。
(図1:メドトロニックの部門別売上比率、2022年度第3四半期)
(図2:メドトロニックの地域別売上比率、同)
(図3:経カテーテルの心臓ペースシステム)
堅調な業績とキャッシュフロー
こうした事業内容を背景に長期的な業績は堅調なものの、同社も新型コロナウイルス感染症まん延の影響を受けました。感染症よりも緊急性が低いと判断された手術などが延期されたためで、同社の直近四半期である2021年11月~2022年2月期(2022会計年度の第3四半期)の収入は、前年同期から0.2%の減収となりました。
しかし、厳格な生産コストなどの管理の結果、研究開発費等の増加にもかかわらず利益率が上昇し、純利益では増益を達成しました。
負債比率が低くバランスシートが健全なほか、株主還元のためのフリーキャッシュフローも豊富で、44年間連続して増配しています。同社は最近、5月か6月に四半期配当の増配を発表しています。
(図4:2022年度第3四半期の調整後業績(非GAAP))
(図5:メドトロニックの長期目標)
長期的な目標としては、売り上げの内部成長率(合併や買収を除いたもの)が年5%でEPSの成長率が8%、研究開発費を長期的に増加させる一方で、年間の株主リターンを10%としています。
割安感
こうしたファンダメンタルズ面の優良企業であるにもかかわらず2021年の株価は調整局面となりました。要因は新型コロナウイルスによる減収に加え、一部の製品に対する米食品医薬品局(FDA)からの警告などです。
その結果、予想利益に対する株価収益率は市場平均を下回り、一時18倍を割り込みました。現在は20倍程度に回復しているものの、市場平均をやや下回る水準です。
しかしFDAからの警告も深刻なものではないとの見方が広がっており、株価回復の背景の一つとなっています。
リスク
新型コロナウイルスの予期せぬ変異株の再度のまん延による医療現場の混乱やFDAや患者などからの警告や訴えに株価が反応するリスクはあります。そうした事態を除けば、金利上昇という現在の相場環境では、足元の着実な業績に投資家の注目が集まると思われます。
MDTの基本データ(出所:会社データ、Yahoo! Finance)
(4月8日現在)
株価 112.47ドル
時価総額 1508.8億ドル
総収入 317.9億ドル
予想PER 19.19倍
実績利回り 2.20%
本社:アイルランド ダブリン(米国本社はミネソタ州 ミネアポリス)
上場:1960年4月
株価チャートは5年
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
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4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
今回は、弊社のYouTubeチャンネルの「アメリカ株式40年投資」シリーズでおなじみの大倉真さんの寄稿です。
S&P500とナスダック100の想定レンジ
調整相場入りしたアメリカ株式市場
今年のアメリカ株式市場は年初に高値を付けた後、長期金利の上昇、インフレ率の高騰、ロシアのウクライナ侵攻、原油などのコモディティー価格の上昇などを受け、3月半ばにかけて大きく下落しました。その後、連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが発表されると、今度は逆に大きく反発しています(図表1)。
図表1 S&P500の推移
以前、株式相場の10年サイクルは金融相場、調整相場、業績相場、そして弱気相場の4局面で構成されると説明しました(図表2)。この「株式市場の4局面」の考え方に基づいてアメリカ株式市場の動向を振り返ると、昨年11月に連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和の縮小(テーパリング)を開始し始めたあたりから、株式市場は金融相場から調整相場へ移行していると考えられます。
図表2 株式市場の4局面
調整相場では金融政策スタンスの変更を受けて市場の変動性が上昇し、ある程度PERなどのバリュエーションが縮小するまでは、上値の重い展開が続きます。よって年初時点で、「今年のアメリカ株式市場は1年を通して変動性が高く、最終的にフラットであれば御の字ではないか」と予想しました。
図表3は年初から3月末までのS&P500とナスダック100(QQQ)のパフォーマンスです。年初から3月半ばにかけて下落(S&P500が3月8日時点で▲12.5%、ナスダック100が3月14日時点で▲20.03%)し、その後、反騰に転じています。予想以上のインフレ率の上昇やロシアのウクライナ侵攻などの予期しない材料はありましたが、ここまでのところの株価の動きは概ね想定の範囲内と考えています(リターンとリスクは全てドル建てとします)。
図表3 S&P500とナスダック100の1~3月のパフォーマンス
S&P500とナスダック100の想定レンジ
「ここまでのところ株価の動きは概ね想定の範囲内」と述べましたが、S&P500とQQQの動きについて、期待リターンと標準偏差(リスク)を用いて少し詳しく見てみましょう。「今年のアメリカ株は最終的にフラットであれば御の字」は、「今年のS&P500の期待リターンは良くて0%」と言い換えることができます。それに対し、S&P500のリスクは15.02%(2000年1月から2022年3月までの標準偏差・年率)です。これら期待リターンとリスクの数値を用いて、年初から年末にかけてS&P500が動く範囲を計算すると図表4のようになります。
図表4 S&P500の想定レンジ
図中のMは予想される中心的経路(現実の株価がその上をまっすぐ動くことは当然ありません)、M±SDは期待リターンから上下1標準偏差乖離した経路、M±2SDは期待リターンから上下2標準偏差乖離した経路です。ここでは期待リターン=0%なので、Mは1年を通して水平となります。
この図から、今年に入ってのS&P500の現実の動きは概ねM-2SD(中心から下方に2標準偏差乖離した水準)を下限に推移してきたことが分かります。これはS&P500が今年は通常想定すべき発生確率約95%の下限近くで推移してきたことを意味します。先に示した年初来の下落率が最悪の▲12.50%もほぼM-2SD上にあります。(なお、このM-2SDよりもさらに下がる確率は約2.5%しかありません。)
同様の分析をナスダック100で行うと図表5のようになります。便宜上ナスダック100についても期待リターン(年率)を0%とします。リスクは23.26%(2000年1月から2022年3月までの標準偏差・年率)です。ナスダック100についてもS&P500とほぼ同様の動きが見て取れ、最悪下落率▲20.03%はほぼM-2SD上にあります。つまり、ナスダック100も想定しておくべきレンジの下限まで実際に下がったと言えるのです。
図表5 ナスダック100の想定レンジ
最後に
今年の1~3月に起こった株式市場の下落は統計的には決して異常なものではありません。むしろ、ここまでの下落は株式市場でリスクを取るのであれば十分想定しておくべきものなのです。もし、このような下落に耐えられないのであれば、おそらくそれはリスクの取りすぎです。
特にS&P500と比較するとナスダック100の標準偏差は1.5倍程度大きいことには注意が必要です。さらにナスダック100に2倍のレバレッジをかけたものになれば、S&P500に対して3倍ものリスクを取ることになってしまいます。資産運用を継続するためには、①自分がどれくらいのリスクを取っているのか理解し、②自分が許容できる範囲内にポートフォリオのリスクを抑えることが大切です。
【大倉真】
愛媛県出身。1984年大阪大学経済学部卒業。2005年 埼玉大学大学院経済科学研究科より博士(経済学)。シティバンク、エヌ・エイ、シティトラスト信託銀行、ソシエテジェネラル信託銀行(現SMBC信託銀行)に勤務。年金・公的資金など機関投資家に加え、プライベートバンクで富裕層向けの資産運用にも従事。2017年、京都・東山で投資会社EagleCapital株式会社を設立。CFA協会認定証券アナリスト。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
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5.お散歩コーナー
◇◇最近行ったお店、映画、美術館、書籍編◇◇
~熊倉 貫宜の巻~
元証券マンで読書家である熊倉貫宜さんの寄稿です。
まぼろしの投資指南書?
令和元年6月3日附で発表された一つの報告書が大変な波紋を引き起こしたのは皆様もご記憶のことと思います。
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」
新聞・雑誌・テレビ等々のマスメディアでセンセーショナルに報じられた元ネタはこの報告書にあります。
「老後資金の2,000万円不足」といった点ばかりが大々的に取り上げられましたが、要は「長期の資産形成をもって自分の身は自分で守れ!」と、国民を突き放したお上のお達しでした。
一方、民間では企業が「もう面倒見切れないので副業でも何でもやってくれ!」とこちらも終身雇用・企業家族を見返りに滅私奉公してきた勤労者の切り捨てが進行しております。
「国が君のために何ができるかを問うなかれ、君が国のために何ができるかを問え。Ask not what your country can do for you. Ask what you can do for your country.」と述べた米国第35代大統領ジョン・F・ケネディの至言を、“国”と“君”を入れ替えたような国家では大騒ぎになるのも至極当然かもしれません。
その報告書の概要に「ライフステージ別の留意点」とあり、①現役期として留意すべき三点が挙げられております。
●早い時期からの資産形成の有効性の認識
●少額からでも長期・積立・分散投資などによる安定的な資産形成
●自らにふさわしいマネープランの検討
いきなりこんな宿題を突き付けられた国民の衝撃は大きなものでした。
結果、書店には玉石混交の投資指南本が溢れ返り、怪しい金融商品・業者が跋扈する結果となったのです。
現実問題として個人投資家は、そんな混乱する世界で自分を護りながら、どのような投資指南書を紐解けば良いのでしょうか?
米国では国民性からか(?)、引退後の人生を謳歌するための投資、バラ色の引退生活を目指すための投資、このような趣旨の優れた解説書が投資教育や資産運用の現場でいくつか挙げられております。
私はそのような選書のエッセンスは次の三点と考えております。
(1) 家計の財務諸表、財務戦略、危機管理計画の策定
(2) 人的資本の最大化戦略
(3) 効率的市場仮説(Efficient-Market Hypothesis)指数取引の開発
皆様には先刻ご承知と拝察いたしますが、要は自身の家計を管理し、人生の節目の必要資金や事故・病気で倒れた際の生活資金を担保し、目の前の仕事の報酬が最大化するよう努力し、余裕があれば市場指数を金融商品化したモノに投資せよということです。
このような流れで、NISAや iDeCoといった日本独自の制度にも言及した、日本語で書かれた指南書が正しい選択と思料することが出来ます。
さて、私がこのような投資指南書を最初に手にしたのはいつのことか振り返ってみますと「投資戦略の発想法/木村剛(著)」あたりではと思いあたります。
本書は2001年に発表された後、改訂版、2008年版、2010年版と版を重ねてまいりました。
しかしながら、著者の木村剛氏が日本振興銀行事件に関与したことにより有罪判決を受け、また版元であるナレッジフォア社も2013年に倒産したため、本書は、いわば”まぼろしの投資指南書”となってしまいました。
最も直近の発刊である「投資戦略の発想法 2010」では、投資に関する記述は効率的市場仮説に立ちながら「5分割ポートフォリオ」(資産を5つの分野に分散投資する。)とか「自己流20銘柄ポートフォリオ」(自分の働きたい会社を20社選んでみよう。)といった、いささか古臭い感が否めませんし、黎明期のETFの紹介コラムは有るものの、市場指数への投資についての言及はありません。
しかしながら、Amazonやメルカリでも多数、意外な価格で出品されており、それは現在でも本書を口コミで勧められ読んでいる方がいらっしゃるという証左でしょう。
そのAmazonやメルカリのコメント欄を覗くと、上記三箇条のうち(1)と(2)について詳細に記載されているからという感想が多いようです。
なかなか自分に合った投資の指南書が見つけられないという方は、本書を中古市場で入手し参考にしては如何でしょうか?
【熊倉 貫宜】
1980年大和証券入社。企業派遣留学としてシカゴ大学経営大学院にてMBA取得。シンガポール、香港駐在を通じてアジア・ビジネスに関わる。
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6. 超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
IFAに特化した営業支援を行っている市川宏さんが、超富裕層が活用している投資戦略を、皆様に簡単にお伝えするコーナーです。
プライベート投資戦略のうちの一つの商品、プライベート・ファンド投資についてお伝えします。
プライベート・ファンド(Private Fund)とは、私募ファンドのことで、投資家から資金を募って運用する事業のなかで、資金を募る対象者が狭く限定されているものをいいます。投資先は株式・債券・不動産などの投資商品のほかに、特定の事業・絵画・高級車・宝石・ローン・仮想通貨など多種多様です。
具体的な投資先はファンドごとに定められていますが、通常一人では買えないような資産や金額のものに、複数人で資金を集めて投資できるという点がメリットとなります。
公募ファンドと私募ファンド
ファンドには大きく分けて「公募ファンド」と「私募ファンド」があります。公募ファンドの代表的な商品に挙げられるのが「投資信託」です。投資信託は証券会社や銀行などの金融機関を通じて多くの投資家からお金を集め、集まったお金でプロのファンドマネジャーが運用する商品です。投資信託にはさまざまな種類があり、自分好みの投資をしている投資信託に投資することができます。
「たくさん種類がある」「誰でも少額から投資できる」「基本的にいつでも解約することができる」ことなどが、公募型ファンドの特徴です。
私募ファンドとは、機関投資家や富裕層など、少数の一般投資家からの出資に限定したファンドのことです。公募型のファンドではすべての一般投資家が投資することができるため、知識が少ない一般投資家を保護するために、さまざまな法律上の規制があります。しかし私募型ファンドは機関投資家などプロの投資家を相手にしており、1つの私募ファンドで募集することができる投資家は基本的に50人未満です。
こうした対象の違いから、私募型ファンドには法律による規制が少なくなっています。
こうした背景から運用の自由度が高く、リスクが高い運用や絶対収益を求める運用など、多様な運用を行えることが私募ファンド=プライベート・ファンドの特徴です。
プライベート・ファンドの投資先
プライベート・ファンドは特定の投資家から資金を集め、それを元に運用する。というスキームですが、投資対象や投資手法はファンドごとに異なります。
最も多い種類は「ヘッジファンド」でしょう。株式や債券などを投資対象とし、単純に買って持つだけでなく、売り建てやレバレッジを利かした運用などを行うことによって高い絶対収益を追求します。
また、最近では非金融分野を投資対象にしたものも増えています。例えば、絵画などの美術品を投資対象とし、それらの値上がりを期待して保有するファンドもあります。絵画や楽器などは価値が変わりづらく、時間がたつにつれて価値が上がりやすいという特徴があります。こういったものを趣味で集める人もいますが、個人で投資対象として購入するには莫大な資金と目利きが必要になります。
リスク分散と利益の多様化
このようにプライベート・ファンド投資は様々なものに投資をして利益を得ることができます。株式相場などに影響されにくい運用を行っているため、ポートフォリオ全体の運用リスクを軽減することができます。
プライベート投資戦略では、このようなファンドの中でも、非金融領域に投資するファンドを選好しています。これにより他の金融投資では得られない収益を得ることができます。
ただし、プライベートファンドについては、案件自体少ないので、もし金融機関から紹介があれば、詳細を聞いてみることをお勧めします。内容の判断が難しい場合は、是非私たちにご相談ください。
【市川宏】
株式会社Winviser代表取締役。SMBC日興証券にて茨城、福岡、東京の各支店にて資産運用コンサルティングに従事した後、超富裕層向け金融商品のマーケティングを行う。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)業者に転籍し、超富裕層の資産運用のアドバイスを行った後、日本の金融業界の発展のためIFAに特化した支援会社を設立。現在は、IFAを支援する傍ら、自身の経験を元に個人投資家に資産運用のサードオピニオンを行っている。
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7. 今後の活動情報
◇ストックボイス:4月20日(水)11:00
◇日経CNBC:4月20日(水)電話インタビュー
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★ご質問は、以下の【質問ルール】をご一読後、
info@kawata-magazine.comまでお願いします。
【 質問ルール 】
◆全ての質問への回答はいたしかねます。あらかじめご了承ください。
◆いただいた質問は、当社サイト、YouTube動画等のSNS・書籍等に、個人を特定できない形で掲載する可能性があります。
◆ご購読が確認できない方の質問には回答いたしません。
◆明らかな広告・宣伝とみなされる部分は割愛する対象となります。
◆未購読にもかかわらず悪質な質問を投稿された方には、然るべき措置をとらせていただきます。
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★免責事項
◆当社は、本メールマガジンにて提供する情報にて、株式、債券、ファンド、ETF等の有価証券、およびセクター等に関する売買等の推奨はしておりません。また、投資判断はメールマガジン購読者(以下、会員)の責任にて行うものであり、当社は一切の保障責任を負わないものとします。
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■ 発行元:株式会社日比谷テクノロジー・ファイナンス
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