高い変動率とFOMCを考慮したトレード戦略【1月24日~1月28日】
先週の為替相場レンジ(変動範囲)
| 始値 | 安値 | 高値 | 終値 | 変化率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 114.18 | 113.60 | 115.06 | 113.68 | ▲0.44% |
| EUR/USD | 1.1413 | 1.1300 | 1.1435 | 1.1340 | ▲0.64% |
| EUR/JPY | 130.29 | 128.54 | 131.18 | 128.91 | ▲1.06% |
| USD/CNH | 6.3582 | 6.3355 | 6.3643 | 6.3386 | ▲0.31% |
| CNH/JPY | 17.9580 | 17.8962 | 18.1190 | 17.9179 | ▲0.22% |
先週の為替相場サマリー
USD/JPY
- 先週のドル円相場は、1ドル=114.18円からスタート。週初は反発上昇の流れが継続し、じりじりと上昇した。一部報道で噂された日銀内の利上げ議論は「全くない」ことが伝わると、一時115円台に乗せる局面も見られた。なお黒田総裁も記者会見でその噂を一蹴。ただその後は円安の材料出尽くし感と、米株の重さからリスクオフが優勢になり、為替は円買いが強まる展開に。金曜日には114円丁度を割り込むと、週末は113.60まで下落し、そのまま113.68でクローズ。
EUR/USD
- ユーロ相場は、1ユーロ=1.1413ドルからスタート。マーケット全体がリスクオフ優勢で、ドル買いが進む中で、ユーロはじりじりと売られた。水曜日に1.1400丁度を割りこむと勢いよく下落し、下を試す展開となった。ただ、1.1300では買いが優勢で、週末に掛けては買いもどされ1.1340でクローズ。下落する中でも、底堅さも印象的だった。
USD/CNH
- 人民元相場は、1ドル=6.3582元からスタート。週初はオペ金利の利下げの影響で人民元安に歯止めが掛かり6.35を挟んでの攻防が続いた。ただ週末に掛けては人民元買いが優勢となりクリアに6.35レベルを下抜けると一時6.3355まで下落したのち、6.3386でクローズ。人民元高が際立つ展開となっている。
先週のできごと
※物価指数とマネー統計は前年同月比、GDPは前期比、特段の記載がない経済指標は前月比または当月の数値17日
- アメリカ祝日(キング牧師記念日)
- 日本11月機械受注 +3.4%
- 中国10-12月期四半期国内総生産 2021年は8.1%成長、2020年からの2年間で5.1%成長
- 中国12月小売売上高 +0.6%
18日
- ユーロ圏1月ZEW景況感調査 49.4(強い数字)
- 1月ニューヨーク連銀製造業景気指数 ▲0.7(とても弱い数字)
- ブラジルで新型コロナウイルスの新規感染者数が13万2254人と過去最多を更新した。
- 日銀の黒田東彦総裁は記者会見で、将来の利上げに向けた議論を「全くしていない」と述べた。公表の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」には「コスト上昇の販売価格への転嫁が想定以上に加速し、物価が上振れる可能性がある」というシナリオを記したものの、2%の物価目標の達成は「かなり遠い」と強調。金融市場の一部にあった早期の緩和修正観測を否定した。
- 岸田文雄首相はオンライン形式の国際会議「ダボス・アジェンダ」で講演した。気候変動やデジタルといった「日本経済の弱点と言われている分野の克服に国民の挑戦と投資を集中的に引き出す」と語った。
19日
- 英国12月消費者物価指数 +5.4%(インフレが急ピッチで進んでいる)
- ドイツ12月消費者物価指数 +5.3%
- 南ア12月消費者物価指数 +5.9%
- 米国12月住宅着工件数 ▲0.1%
- 米国12月建設許可件数 +9.1%(米12月住宅関連指標は総じてよい)
- カナダ12月消費者物価指数 +4.8%
- トルコはアラブ首長国連邦(UAE)と640億リラ(約5400億円)分の通貨スワップ協定を結んだと発表した。リラの対ドル相場は2021年の1年間で4割超下落したが、エルドアン大統領が高金利を嫌っており、通貨スワップのほか財政出動、取引規制などでリラ相場を安定させようと腐心している。
- 世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスの専門家による13日の緊急委員会の結果を公表した。同委員会は新型コロナに関わる渡航規制を撤廃するか緩めるよう加盟国に勧告した。実施する価値がなく、経済的・社会的な負担を各国に強いるためだとしている。
- バイデン米大統領はホワイトハウスで記者会見し、ロシアのプーチン大統領が2014年に続きウクライナへの軍事侵攻に踏み切るとの見方を示した。「私の推測では彼は侵攻するだろう」と述べた。侵攻した場合はロシアの銀行によるドル取引を停止する措置を検討していると明かした。
20日
- 中国人民銀行が公表したLPR(ローンプライムレート:最優遇貸出レート)は5年物が0.05%低下し4.60%、1年物が0.10%低下し3.70%
- オーストラリア12月雇用統計 新規雇用者数増減 +36.61万人 失業率4.2%(非常に強い数字)
- ドイツ12月生産者物価指数 +24.2%
- ノルウェー中銀は政策金利を0.50%に据え置き
- ユーロ圏12月消費者物価指数 +5.0%
- トルコ中銀は政策金利を14.0%に据え置き
- 米国前週分新規失業保険申請件数 28万6千人
- 1月フィラデルフィア連銀製造業景気指数 23.2
- 米国12月中古住宅販売件数 ▲4.6%
21日
- 日本12月消費者物価指数 +0.8%(やや上昇圧力が見られる)
- 米国12月景気先行指標総合指数 +0.8%
- 岸田文雄首相はバイデン米大統領と初めてオンラインで80分程度協議した。経済版の閣僚協議「2プラス2」の新設で合意した。経済版の「2プラス2」は日本側から外相と経済産業相、米側から国務長官と商務長官が参加し、早期の開催をめざす。
経済用語解説
- GDP=Gross Domestic Product(国内総生産):高成長が良い
- CPI=Consumer Price Index(消費者物価指数):2%目標を掲げる先進国が多い
- PCE=Personal Consumption Expenditures:個人消費支出、消費者物価と相関が高い
- PPI=Producer Price Indes(生産者物価指数):CPIに影響を与える
- PMI=Purchasing Manager Index(購買担当者景気指数):50が基準
- ZEW=Leibniz Centre for European Economic Research(欧州経済研究センター):0が基準
- NAHB=National Association of Home Builder:50が基準
- ニューヨーク連銀製造業景気指数:0が基準
- フィラデルフィア連銀製造業景気指数:0が基準
- リッチモンド連銀製造業指数:0が基準
- シカゴ購買部協会景気指数:50が基準
- ミシガン大学消費者態度指数:1966年を100として指数化
- S&P/ ケース・シラー住宅価格指数は、「20大都市圏住宅価格指数」がよく利用されている。景気に大きな影響がある住宅市場の動向を確認する上で重要な指標。
- 住宅販売保留指数:売買契約は終わっているが、引渡しが済んでいない物件数を指数化
- 欧州消費者信頼感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(速報の発表は前月比で報告される)
- 欧州景況感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(発表は実数で報告される)
- 消費者信頼感指数:1985年を100として指数化したもの
- 日本景気動向指数:2015年を100として指数化したもの
- 日本景気ウォッチャー調査:50が基準
- 日本法人企業景気予測調査:0が基準
注目の経済指標と政治イベント
24日
- 世界保健機関(WHO)理事会(23日~29日まで)
- 07:00 オーストラリア1月製造業PMI
- 17:30 ドイツ1月製造業購買担当者景気指数(PMI)
- 18:00 ユーロ圏1月製造業購買担当者景気指数(PMI)
- 18:30 英国1月製造業購買担当者景気指数(PMI)
- 23:45 米国1月製造業購買担当者景気指数(PMI)
25日
- 09:30 オーストラリア10-12月期四半期消費者物価(CPI)
- 23:00 米国11月ケース・シラー米住宅価格指数
- 24:00 米国1月消費者信頼感指数
- 24:00 米国1月リッチモンド連銀製造業指数
26日
- オーストラリア祝日(Australia Day)
- 08:50 日本12月企業向けサービス価格指数
- 14:00 日本11月景気指数
- 21:00 米国MBA住宅ローン申請指数
- 24:00 米国12月新築住宅販売件数
- 28:00 米連邦公開市場委員会FOMC
27日
- 22:30 米国12月耐久財受注
- 22:30 米国前週分新規失業保険申請件数
- 22:30 米国10-12月期四半期実質国内総生産(GDP)
- 22:30 米国10-12月期四半期コアPCE・速報値
28日
- 08:30 1月東京都区部消費者物価指数
- 09:30 オーストラリア10-12月期四半期卸売物価指数(PPI)
- 16:00 ドイツ10-12月期国内総生産(GDP)
- 22:30 米国10-12月期四半期雇用コスト指数
- 22:30 米国12月個人消費支出(PCEデフレーター)
来週以降
- 2月3日:ECB
- 2月4日:北京冬季オリンピック開幕
- 3月5日:全人代
- 3月10日:ECB
- 3月16日:FOMC(経済予測データ付き)
- 3月18日:日銀金融政策決定会合
- 4月14日:ECB
- 4月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 5月4日:FOMC
- 6月9日:ECB
- 6月15日:FOMC(経済予測データ付き)
- 6月17日:日銀金融政策決定会合
- 7月21日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 7月21日:ECB
- 7月27日:FOMC
- 9月8日:ECB
- 9月21日:FOMC(経済予測データ付き)
- 9月22日:日銀金融政策決定会合
- 10月27日:ECB
- 10月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 11月2日:FOMC
- 11月8日:米中間選挙の投開票
- 12月14日:FOMC(経済予測データ付き)
- 12月15日:ECB
- 12月20日:日銀金融政策決定会合
先週の通貨強弱
- 先週はドル買いが進行(151/196ヶ国)
- 米株が売られリスクオフムードが強まる中で、ドルは諸通貨に対して買われている
- ロシア、ウクライナ問題を背景に欧州通貨、北欧通貨が軟調に推移している
- トルコや南アなど売りが一巡した通貨は買戻しが優勢
- まとめると先週の通貨強弱は右記の通り トルコや南アなど売りが一巡した新興国通貨 > 日本円 > 人民元 > 米ドル > ユーロ > ロシアルーブル
グローバルマクロ環境の整理(最新版)
- 引き続きリスクオフムードが漂う相場展開
- 主因は「米早期の利上げ観測」と、「バランスシートの正常化」
- さらに「ロシアのウクライナ進行計画」が欧州通貨に影を落とす
- 結果として投資家のリスクアピタイト(リスクをむさぼる食欲)は著しく悪化し、NASDAQ100の恐怖指数は34台、SP500の恐怖指数は28台まで上昇した
- リーマンショックやオミクロン級だとこれが80台まで上昇することもあるが、今回はさすがにそこまではいかないと判断している
- なぜならばショックが起こっている理由が金融の正常化であって、景気は悪くない点が大きく異なるから
- したがって大底にどんどんと近づいているという感覚で相場と対峙している
- 恐怖指数30超は買い場となることも多いが、40~50くらいまではより悪いシナリオとして想定しておきたいところ
- 以下にSP500の恐怖指数10年間のチャートを添付、40~50は買い場となっていることが分かる
- その他、日本の金融政策についてはこれまであまり意識されなかったが、物価上昇を受けて今後は注目度が高まっていくことを想定、注意深くみていきたい
- 「米民主党(Build Back Better)法案」についても引き続きウォッチ
グローバルマクロ環境の整理(補足)
- 金利先物市場参加者の89%は今年3月の米国利上げ開始(25bps)を見込んでいる(先週比でさらに上昇)
- 一部で噂される50bpsの利上げはまずないだろう。仮に自分が金融政策担当者であったら、市場にインパクトを与えすぎるかも知れない愚策と思う。
- 米利上げ観測は来年5回が中心値
- ただしそこから先の利上げペースは落ち着く予想が多い
- コロナ新規「感染者」数の推移(7日移動平均)は引き続き急増している(添付チャートDaily New Cases )
- コロナ新規「死亡者」数の推移(7日移動平均)も上向きに転じてきた(添付チャートDaily New Cases )



チャート分析
USDインデックス(日足)
- ドルインデックス=ドルの総合的な強さを示す指標(バスケットの中身:EUR57.6%, JPY13.6%, GBP11.9%, CAD9.1%, SEK,4.2%, CHF3.6%)
- 94.70のサポートに支えられたのち、過去のサポートである95.50を上抜け、95.64でクローズ
- まずは94.70~96.90のレンジ継続を想定
USD/JPY 中期(日足)
- 目先は113.50で反転上昇するかがポイント
- 下抜けた場合の防波堤は113.50、112.70
- 特に112.70は「上昇の始まった109.00」 ~ 「直近高値116.35」の半値戻しの水準でもあり要注目
- 112.70をクリアに下抜ける場合は買い持ちを撤退する方針
USD/JPY 短期(時間足)
- まずは今週113.50をキープ出来るか注目
- 週末のドル円は下げ止まりの兆候が見られていたので、週明けの反発に多少は期待が出来そうな形状
EUR/USD 中期(日足)
- 1.1370のレジスタンスより下に再び戻ってきてしまった格好
- 緑のトレンドラインも一旦は上抜けたが、再度下へと戻ってきた
- 下落トレンドが終了したかどうか見極めが必要で、ドル高に引きずられて再度下押しする可能性も考慮しておきたい
EUR/USD 短期(時間足)
- 1.1370のレジスタンスは引き続き意識しておきたい
USD/CNH 中期(日足)
- 6.3500をクリアに下抜け
- 人民元の買い持ちを維持するのが無難
USD/CNH 短期(時間足)
- 6.35をバックにドル売り人民元買いでもワークしそうだ
今週の戸田の取引戦略
全体方針
- 全体的にリスクオフの状況でマーケットの変動率は高い
- ゆえに上下で細かく利食いを入れることで1週間の利益を残したい
- 株や仮想通貨などのリスク資産はそろそろ底が近いと考え仕込みを始めていく
USD/JPY
- 先週末の終値:113.68
- 目線:横ばい
- 想定レンジ:112.50~115.00
- 現在ポジション:USD/JPY ±0
- さらなる下押しを警戒しつつ、下では買いを仕込んでいきたい
- 112.70をクリアに下抜けた場合にはドルの買い持ちを撤退
EUR/USD、EUR/JPY
- 先週末の終値:EUR/USD 1.1340
- 目線:EUR/USD 横ばい EUR/JPY 横ばい
- 想定レンジ:EUR/USD 1.1210~1.1480
- 現在ポジション:EUR/USD ± 0 EUR/JPY ±0
- 1.1370と前述のトレンドラインを意識する
- 上抜けるようなら買いでついていく
CNH/JPY、USD/CNH
- 先週末の終値:USD/CNH 6.3386
- 目線:USD/CNH 横ばい~下、CNH/JPY 横ばい~上
- 想定レンジ:USD/CNH 6.2500~6.3800
- 現在のポジション:USD/CNH ± 0.0 CNH/JPY ± 2.0
- 人民元買いを保持
- 6.35をクリアに上抜けてくるようなら撤退を検討
ご留意事項
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