新型コロナウイルス「オミクロン型」の影響を考慮したトレード戦略【11月29日~11月3日】
先週の為替相場レンジ(変動範囲)
| 始値 | 安値 | 高値 | 終値 | 変化率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 113.93 | 113.06 | 115.51 | 113.31 | ▲0.54% |
| EUR/USD | 1.1289 | 1.1186 | 1.1331 | 1.1317 | +0.25% |
| EUR/JPY | 128.62 | 127.79 | 129.60 | 128.22 | ▲0.31% |
| USD/CNH | 6.3910 | 6.3772 | 6.3999 | 6.3946 | +0.06% |
| CNH/JPY | 17.8340 | 17.6681 | 18.0729 | 17.7098 | ▲0.70% |
先週の為替相場サマリー
USD/JPY
- 先週のドル円相場は、1ドル=113.93円からスタート。週初にパウエルFRB議長の続投方針が報じられると、金融政策の継続性や安定性が意識されドル高が進行し114円台ミドルまで値を切り上げる。火曜日には強い米PMIなど好調な指標を受けて一段とドル買いが進行し115円を突破。水曜日~木曜日は115.30円を挟んで高値圏の推移が継続。金曜日にWHOから新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」が公表されると、市場は急激にリスクオフ。ドル円は今年最大の値幅を記録し113.06円まで下落したのち113.31円でクローズ。
EUR/USD
- ユーロ相場は、1ユーロ=1.1289ドルからスタート。週前半はユーロ売りドル買いが優勢でじりじりと値を下げ、水曜日には一時1.1200を下回る。金曜日には新型コロナウイルス変異型発生の報で相場は反転、一転してドルが売られユーロが買い戻される展開となると、1.1300を上抜け1.1331まで上昇したあと、1.1317でクローズ。
USD/CNH
- 人民元相場は、1ドル=6.3910元からスタート。今週は中国人民銀行が短期金融市場に潤沢に資金供給を続けたこともあり、人民元のじり安が続いた。週末は6.40を試すも抜けきれず、6.3946でクローズ。
先週のできごと
※物価指数とマネー統計は前年同月比、GDPは前期比、特段の記載がない経済指標は前月比または当月の数値22日
- 中国人民銀行は貸出基準レート(LPR)を1年3.85%に据え置き
- 香港消費者物価指数 +1.7%
- 米国10月中古住宅販売件数 年率換算件数634万件 前月比+0.8%
- 米2年債入札 最高利回り0.623%
- 米5年債入札 最高利回り1.319%
- バイデン米大統領は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長を再任する方針を決めた。ホワイトハウスが発表した。パウエル議長は2022年2月に4年の任期が切れる。トランプ前政権が起用したパウエル氏を続投させ、インフレ懸念が高まるなかで金融政策の安定と継続を重視する姿勢を示す。
23日
- 日本祝日(勤労感謝の日)
- ユーロ圏11月 Markit 購買担当者景気指数 製造業58.6 サービス業56.6(強い)
- 米国11月 Markit 購買担当者景気指数 製造業59.1 サービス業57.0(強い)
- 11月リッチモンド連銀製造業指数 11
- 米7年債入札 最高利回り1.588%
- 急激な通貨安に見舞われているトルコで混乱が広がっている。一時、対ドルで前日比15%超下落すると、リラ安に伴う物価の高騰を見込んだオンライン販売など一部の商取引が停止した。首都アンカラなど複数の都市では、強権体制下では珍しくなった反政府デモも起きている。
24日
- ニュージーランド準備銀行は政策金利を0.25%引き上げ、0.75%に設定
- 前週分新規失業保険申請件数 19.9万件
- 米国10月耐久財受注 ▲0.5%
- 米国10月個人消費支出(PCEデフレーター) +5.0%
- 米国10月新築住宅販売件数 年率換算件数74.5万件 前月比+0.4%
- 9月の独連邦議会選挙で第1党になった中道左派のドイツ社会民主党(社民党、SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党が連立政権の樹立で合意した。社民党のショルツ財務相が、16年間首相を務めたメルケル氏の次の首相に就任する。
- 岸田文雄首相は石油の国家備蓄を初めて放出すると表明した。首相官邸で記者団に「米国と歩調を合わせ、現行の石油備蓄法に反しない形で国家備蓄石油の一部売却を決定した」と語った。原油価格の高騰を受けて上がるガソリンの価格を抑える狙いがある。
25日
- 米国祝日(感謝祭)
- 韓国中銀は政策金利を0.25%引き上げ、1.00%に設定
- 日本10月企業向けサービス価格指数 +1.0%
- スウェーデン中銀は政策金利を据え置き
- 欧州連合(EU)が対アジア政策で中国重視の方針転換を鮮明にしている。25~26日にオンライン形式で開いたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、EU首脳は自由や人権など基本的な価値を共有する民主主義の国と協力を深める方針を表明した。
26日
- 11月東京都区部消費者物価指数 +0.3%
- 豪州10月小売売上高 +4.9%
- 岸田文雄首相は2022年春季労使交渉(春闘)に向けて業績が新型コロナウイルス禍前の水準に回復した企業に関し「3%を超える賃上げを期待する」と表明した。
- 米国で恒例の大規模セール「ブラックフライデー」が始まり、年末商戦が本番を迎えた。昨年に比べ人出の回復が鮮明で、外出機会の増加を受け衣料品や化粧品への消費が活発だ。一部の店舗では品不足で空き棚も目立つなど、物流混乱の爪痕もみられた。
- 世界保健機関(WHO)は南アフリカで新たに見つかった新型コロナウイルスの変異型を最も警戒レベルが高い「懸念される変異型(VOC)」に分類し、「オミクロン型」と名付けると発表した。多数の変異を持ち、再感染する能力が高い恐れがある。ベルギーでも感染者が見つかり、既に世界に広がっている可能性も出てきた。
- 米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、905ドル(2.5%)安の3万4899ドルで取引を終えた。下げ幅は今年最大で、一時は1000ドルを超える場面もあった。南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異型が見つかったことをきっかけに、アジアや欧州で株式相場が大幅に下落した流れが米国にも及んだ。
経済用語解説
- GDP=Gross Domestic Product(国内総生産):高成長が良い
- CPI=Consumer Price Index(消費者物価指数):2%目標を掲げる先進国が多い
- PCE=Personal Consumption Expenditures:個人消費支出、消費者物価と相関が高い
- PPI=Producer Price Indes(生産者物価指数):CPIに影響を与える
- PMI=Purchasing Manager Index(購買担当者景気指数):50が基準
- ZEW=Leibniz Centre for European Economic Research(欧州経済研究センター):0が基準
- NAHB=National Association of Home Builder:50が基準
- ニューヨーク連銀製造業景気指数:0が基準
- フィラデルフィア連銀製造業景気指数:0が基準
- リッチモンド連銀製造業指数:0が基準
- シカゴ購買部協会景気指数:50が基準
- ミシガン大学消費者態度指数:1966年を100として指数化
- S&P/ ケース・シラー住宅価格指数は、「20大都市圏住宅価格指数」がよく利用されている。景気に大きな影響がある住宅市場の動向を確認する上で重要な指標。
- 住宅販売保留指数:売買契約は終わっているが、引渡しが済んでいない物件数を指数化
- 欧州消費者信頼感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(速報の発表は前月比で報告される)
- 欧州景況感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(発表は実数で報告される)
- 消費者信頼感指数:1985年を100として指数化したもの
- 日本景気動向指数:2015年を100として指数化したもの
- 日本景気ウォッチャー調査:50が基準
- 日本法人企業景気予測調査:0が基準
注目の経済指標と政治イベント
29日
- 世界保健機関(WHO)総会
- 16:00 トルコ10月貿易収支
- 22:00 ドイツ11月消費者物価指数
- 24:00 米10月住宅販売保留指数
30日
- 08:50 日本10月鉱工業生産
- 09:30 オーストラリア7-9月期経常収支
- 09:30 オーストラリア10月住宅建設許可件数
- 10:00 中国11月製造業購買担当者景気指数
- 14:00 日本10月新設住宅着工戸数
- 16:45 フランス11月消費者物価指数
- 19:00 ユーロ圏11月消費者物価指数
- 23:00 9月ケース・シラー米住宅価格指数
- 23:45 11月シカゴ購買部協会景気指数
- 24:00 米国11月消費者信頼感指数
- 24:00 パウエルFRB議長発言 Coronavirus and CARES Act Before the U.S. Senate Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs
1日
- 09:30 オーストラリア7-9月期四半期国内総生産
- 10:45 中国11月Caixin製造業購買担当者景気指数
- 22:15 米国11月ADP雇用統計
- 24:00 米国11月ISM製造業景況指数
- 28:00 米地区連銀経済報告
2日
- OPECプラス閣僚会議
- 08:50 日本11月マネタリーベース
- 09:30 オーストラリア10月貿易収支
- 19:00 ユーロ圏10月卸売物価指数
- 22:30 米国前週分新規失業保険申請件数
3日
- 10:45 中国11月Caixinサービス部門購買担当者景気指数
- 16:00 トルコ11月消費者物価指数
- 22:30 米国11月雇用統計
- 22:30 カナダ11月雇用統計
- 24:00 米国11月ISM非製造業景況指数
来週以降
- 12月14日―15日:FOMC(経済予測データ付き)
- 12月16日:ECB
- 12月16日―17日:日銀金融政策決定会合
- 1月17日―21日:ダボス会議
- 1月18日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 1月26日:FOMC
- 2月3日:ECB
- 3月10日:ECB
- 3月16日:FOMC(経済予測データ付き)
- 3月18日:日銀金融政策決定会合
- 4月14日:ECB
- 4月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 5月4日:FOMC
- 6月9日:ECB
- 6月15日:FOMC(経済予測データ付き)
- 6月17日:日銀金融政策決定会合
- 7月21日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 7月21日:ECB
- 7月27日:FOMC
- 9月8日:ECB
- 9月21日:FOMC(経済予測データ付き)
- 9月22日:日銀金融政策決定会合
- 10月27日:ECB
- 10月28日:日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望付き)
- 11月2日:FOMC
- 12月14日:FOMC(経済予測データ付き)
- 12月15日:ECB
- 12月20日:日銀金融政策決定会合
※ここから先(「先週の通貨強弱」「グローバルマクロ環境の整理」「チャート分析」「今週の戸田の取引戦略」)は有料記事になります
先週の通貨強弱
- 先週もドル高が進行(140/196ヶ国)
- 理由は好調な米経済指標と、米インフレ圧力の高まり
- ただし週後半は新型コロナウイルス「オミクロン型」の感染拡大懸念から米金利が急落し、米ドル高が反転しつつある状況で週末を迎えている
- トルコリラはストップを巻き込み暴落
- メキシコペソも中銀総裁の変更を受けて投資家に売り込まれている
- オミクロン型の被害拡大ならびに、経済への悪影響はぬぐえないものの、大きな流れは新興国通貨売り、米ドル買い
- 円はリスクオフで短期的に大きく買われている
- まとめると通貨強弱は右記の通り 日本円 > ユーロ > 米ドル > 人民元 > 資源国・新興国通貨 > トルコリラ
グローバルマクロ環境の整理(最新版)
- 相場のテーマは少なくとも短期的に新型コロナの第4波「オミクロン」へと移った。
- 米10年債利回りは大幅に低下して(1.50%を割り込んで)おり、リスクオフモードが市場を支配している。
- オミクロンの相場への影響はニュースを追っていくのが良いと考えるが、少なくとも短期的にはリスクオフが優勢になりそうだ。
- 一方でコロナワクチン接種率は先進国で高まっているし、ウイルスに対する経験値も積み上がっていることから過度なリスクオフ期待は避けたいところ。
- 本来のテーマである「サプライチェーンの分断」と「資源高」、それらの影響を受けたグローバルな「インフレ圧力の高まり」および結果としての「金融政策の差異」にいつ戻れるか注目して見ていく必要がある。
- また、米民主党(Build Back Better)法案が議会を通過するかどうかも引き続き一つの焦点。一旦は市場がリスクオフになっており、議会を通しやすくなったように感じる。
- 短期的にはオミクロンによる影響を注視しつつ、併せて取引する通貨のインフレ圧力の高まりを確認していくべき局面と考える。
グローバルマクロ環境の整理(補足)
- コロナ新規感染者数の推移は上向きに転じてきており、第4波の懸念について強烈に意識されてきた(添付チャートDaily New Cases )
- しかし新規死亡者数は落ち着いてきており今回の感染拡大が以前ほど大きな被害にならないのかもしれない(添付チャート Daily Deaths )
- 引き続き市場参加者の米国政策金利引き上げ見通しは、1回目の利上げが2022年6月、2回目の利上げが2022年9月が中心値のまま変わっていない
チャート分析
USDインデックス(日足)
- ドルインデックス=ドルの総合的な強さを示す指標(バスケットの中身:EUR57.6%, JPY13.6%, GBP11.9%, CAD9.1%, SEK,4.2%, CHF3.6%)
- 一旦は97.00を目前に跳ね返された格好
- ドル高の流れが一変するような雰囲気は今のところない
USD/JPY 中期(日足)
- 現在の水準、113.30前後も一つのチャートポイント
- 下落する場合には112.20が意識される
USD/JPY 短期(時間足)
- より近い目安は112.70
EUR/USD 中期(日足)
- 2020年6月の安値1.1210前後で跳ね返された格好
- 戻りの目安は1.1370(半値戻し)
- 大きな戻りなら1.1530(前回下落のきっかけ)
EUR/USD 短期(時間足)
- より短期では1.1370、1.1490、1.1530が戻りの目安となる
USD/CNH 中期(日足)
- 引き続き6.3500~6.4250でのレンジ推移が続いている
- 短期的にはキリのよい数値6.40が意識される
USD/CNH 短期(時間足)
- 上昇トレンドを形成し始めたようにもみえる
- 6.40より上は警戒したい
今週の戸田の取引戦略
全体方針
- ポジション縮小、リスクオフに備え
- 円買い先行
- 原油価格や米金利動向を見ながら戻りで米ドル売り円買いに転じたい
- ただし過度なリスクオフ期待は禁物、すぐに上についていける心構えを持ちたい
USD/JPY
- 先週末の終値:113.31
- 目線:横ばい~やや下
- 想定レンジ:112.20~114.40
- 現在ポジション:USD/JPY +2.0
- まずは週明けに全額損切を執行
- 中長期では上目線ではあるが、今週に的を絞ると、売りが無難と判断
- 下で買い、上で売りを徹底したい
- 下の目安は112.20・111.10、上の目安は114.40
- 損切りは必ず設置し早めに執行
EUR/USD、EUR/JPY
- 先週末の終値:EUR/USD 1.1317
- 目線:EUR/USD 横ばい EUR/JPY 横ばい
- 想定レンジ:EUR/USD 1.1210~1.1370
- 現在ポジション:EUR/USD ±0 EUR/JPY ±0
- 1.1370より上では戻り売りを検討
CNH/JPY、USD/CNH
- 先週末の終値:USD/CNH 6.3946
- 目線:USD/CNH 横ばい~やや上、CNH/JPY 横ばい~下
- 想定レンジ:USD/CNH 6.3750~6.4500
- 現在のポジション:USD/CNH ± 0.0 CNH/JPY +5.0
- まずは週明けにポジションを縮小、新型コロナの続報を見守りたい
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