【10月18日~10月22日】各国の金融政策を考慮したトレード戦略
先週の為替相場レンジ(変動範囲)
| 始値 | 安値 | 高値 | 終値 | 変化率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 112.18 | 112.15 | 114.47 | 114.20 | +1.80% |
| EUR/USD | 1.1578 | 1.1524 | 1.1624 | 1.1600 | +0.19% |
| EUR/JPY | 129.95 | 129.77 | 132.81 | 132.47 | +1.94% |
| USD/CNH | 6.4454 | 6.4209 | 6.4643 | 6.4328 | ▲0.20% |
| CNH/JPY | 17.4158 | 17.4020 | 17.8001 | 17.7476 | +1.91% |
先週の為替相場サマリー
USD/JPY
- 先週のドル円相場は、1ドル=112.18円からスタート。週初から円売りが優勢となり意識されていた112.20のレジスタンスを上抜けると月曜日のNY時間には113円を突破、火曜日のNY時間には113.80円まで上昇。水曜日、木曜日ともみ合ったのち、金曜日に113.80を突破するとそのまま114円台に突入。一時114.47円レベルまで上昇したのち高値圏の114.25円でクローズ。とくだん新たな材料がない中で、とにかく円が売られた1週間だった。
EUR/USD
- ユーロ相場は、1ユーロ=1.1578ドルからスタート。週初はややドル買いが優勢となる中でユーロは売り優勢となり火曜日のNY時間に1.1524まで下落。しかしその後は買戻しが優勢で、木曜日に1.1600レベルまで買い戻されると、その後は1.16を挟んでの動きに終始し、1.16レベルでクローズ。
USD/CNH
- 人民元相場は1ドル6.4454元からスタート。週初はドル買いが優勢で火曜日に一時6.4643まで上昇。しかし水曜日に中国の9月貿易収支が好調なことが確認されると、徐々に人民元買いが優勢となり金曜日には6.4223まで下落。週末はやや買い戻され6.4328でクローズ。
先週のできごと
※物価指数とマネー統計は前年同月比、GDPは前期比、特段の記載がない経済指標は前月比または当月の数値11日
- 特になし
12日
- 韓国中銀、政策金利を0.75%に据え置き
- 日本9月企業物価指数 +6.3%(上昇圧力が見られる)
- ユーロ圏10月ZEW景況感調査 21.0
- 国際通貨基金(IMF)は改定した世界経済見通しで21年の実質成長率の見通しを5.9%と前回7月の予測から0.1ポイント引き下げた
13日
- 中国9月貿易収支 +667.6億ドル(非常に強い)
- 日本9月マネーストックM2 +4.2%
- 日本8月機械受注 ▲2.4%
- ユーロ圏8月鉱工業生産 ▲1.6%
- 米9月消費者物価指数 +5.4%(引き続き高い水準)
- 20カ国・地域(G20)は、アフガニスタン問題を巡り臨時首脳会議(サミット)をオンライン形式で開いた。会議で欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は人道支援として10億ユーロ(約1300億円)の拠出を表明した。日本は総額2億ドル(約220億円)の人道支援を約束した。
- 国際エネルギー機関(IEA)は、2050年に世界の温暖化ガス排出を実質ゼロにするには、30年時点で石炭を20年比で5割、石油を2割それぞれ減らす必要があるとの見解を示した。現状の施策では実現には遠く、各国に取り組みを強化するよう求めた。
- 米連邦準備理事会(FRB)は9月21~22日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公開した。11月初めの次回会合で量的緩和縮小(テーパリング)の開始を決める場合、「11月中旬または12月中旬」から資産購入額を減らし始め、2022年半ばごろにテーパリングを終える道筋を示した。
14日
- 豪州9月雇用統計 新規雇用者数増減▲13.8万人 失業率4.6%
- 中国9月消費者物価指数 +0.7%
- 中国9月生産者物価指数 +10.7%(上昇圧力が続いている)
- 日本8月設備稼働率 ▲3.9%
- 米国9月卸売物価指数 +8.6%(上昇圧力が続いている)
- 新規失業保険申請件数 29.3万件(パンデミック前の水準まで戻った)
- 衆院は解散され、与野党は事実上の選挙戦に入った。衆院選は「19日公示―31日投開票」の日程で実施する。岸田文雄首相は就任して10日後に解散に踏み切った。解散から投開票までは17日と戦後最短だ。異例の短期決戦は新型コロナウイルス対応や経済対策などが争点となる。
15日
- ユーロ圏8月貿易収支 +111億ユーロ
- 10月NY連銀製造業景気指数 19.8
- 米9月小売売上高 +0.7%(高水準を維持)
- 10月ミシガン大学消費者態度指数 71.4
- 北海道や福岡県など7道県が飲食店に要請していた新型コロナウイルス対策の期限が終了し、15日から通常どおりの酒類提供や深夜営業が可能になった。感染拡大ペースが緩まったことから、経済活動の正常化を目指す。
- 中国不動産開発会社のチャイナ・プロパティーズ・グループ(CPG)は子会社が発行した社債について、同日の償還期限までに元本と利息を支払うことができず、デフォルト(債務不履行)に陥ったと発表した。期限を迎えた社債は2億2600万ドル(約260億円)で、金利は年15%。CPGは債務の借り換えや資産売却が償還期限に間に合わなかったと説明。
経済用語解説
- GDP=Gross Domestic Price(国内総生産);高成長が良い
- CPI=Consumer Price Index(消費者物価指数):2%目標を掲げる先進国が多い
- PCE=Personal Consumption Expenditures:個人消費支出、消費者物価と相関が高い
- PPI=Producer Price Indes(生産者物価指数):CPIに影響を与える
- PMI=Purchasing Manager Index(購買担当者景気指数):50が基準
- ZEW=Leibniz Centre for European Economic Research(欧州経済研究センター):0が基準
- NAHB=National Association of Home Builder:50が基準
- ニューヨーク連銀製造業景気指数:0が基準
- フィラデルフィア連銀製造業景気指数:0が基準
- リッチモンド連銀製造業指数:0が基準
- シカゴ購買部協会景気指数:50が基準
- ミシガン大学消費者態度指数:1966年を100として指数化
- S&P/ ケース・シラー住宅価格指数は、「20大都市圏住宅価格指数」がよく利用されている。景気に大きな影響がある住宅市場の動向を確認する上で重要な指標。
- 住宅販売保留指数:売買契約は終わっているが、引渡しが済んでいない物件数を指数化
- 欧州消費者信頼感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(速報の発表は前月比で報告される)
- 欧州景況感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(発表は実数で報告される)
- 消費者信頼感指数:1985年を100として指数化したもの
- 日本景気動向指数:2015年を100として指数化したもの
- 日本景気ウォッチャー調査:50が基準
- 日本法人企業景気予測調査:0が基準
注目の経済指標と政治イベント
18日
- 党首討論会(日本記者クラブ)
- 06:45 豪州7-9月期消費者物価指数
- 11:00 中国7-9月期四半期国内総生産
- 11:00 中国9月小売売上高
- 11:00 中国9月鉱工業生産
- 23:00 米国10月NAHB住宅市場指数
- 29:00 8月対米証券投資
19日
- 衆議院の公示
- 中国の全人代常務委員会
- 21:30 米国9月住宅着工件数
- 21:30 米国9月建設許可件数
- 27:00 米国9月月次財政収支
20日
- 08:50 日本9月貿易統計
- 15:00 英国9月消費者物価指数
- 17:00 南ア9月消費者物価指数
- 18:00 ユーロ圏9月消費者物価指数
- 21:30 カナダ9月消費者物価指数
- 27:00 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
21日
- EU首脳会議(~22日まで)
- 20:00 トルコ中銀、政策金利公表
- 21:30 10月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
- 21:30 米国新規失業保険申請件数
- 23:00 米国9月景気先行指標総合指数
- 23:00 米国9月中古住宅販売件数
- 23:00 ユーロ圏10月消費者信頼感
22日
- 08:30 日本9月全国消費者物価指数
- 17:00 ユーロ圏10月PMI
- 19:30 ロシア中銀政策金利
- 22:45 米国10月PMI
来週以降
- 10月27日―28日:日銀金融政策決定会合
- 10月28日:ECB
- 10月30日―31日:G20首脳会議
- 10月31日:衆院選投開票
- 11月2日―3日:FOMC
- 12月14日―15日:FOMC
- 12月16日:ECB
- 12月16日―17日:日銀金融政策決定会合
- 1月17日―21日:ダボス会議
先週の通貨強弱
- 全体的にドル安(124/196ヶ国)
- 南ア、オセアニア、ロシア、ノルウェーなど資源国通貨が強い
- 弱いのは「円」。円安は新たな局面に入った可能性がある。
- 円安の要因は、日本の量的緩和の継続、貿易黒字の縮小、経済の停滞、大学ファンドの創設(9兆円相当の外貨運用)に加え、政治の混迷と、利上げまでの道のり遠い(日本国債保有者が日銀と金融機関で75%を超えており、利上げ実施すると痛むので、利上げに踏み切れないと踏んだ投資家が円売りに傾いている)と言った要因が挙げられる。
- クロス円は総じて堅調に推移。ドル円が1.8%、その他通貨は2%~4%上昇している
- まとめると通貨強弱は右記の通り 資源国通貨> ユーロ > 人民元 > 米ドル > 日本円 > トルコ(政治的混乱を抱える国)
グローバルマクロ環境の整理
- 先週は米長期金利が低下したことで、米株が持ち直し、最終的には「リスクオン相場」になった。
- 米長期金利(10年債利回り)が1.6%前後から1.5%前後まで低下した(買われた)理由をどう捉えるか?私は1.5%~1.6%だと金融機関の債券投資家が中長期で考えて買いで判断していると思う。
- となると米長期金利がじりじりと上がっていく相場にならないように思う
- とすれば米株は底堅い推移(大きくは売られない相場)が続きそうであるし、リスクオンの地合い、すなわち円売りの地合いも続くように思う
- 引き続き鍵を握るのは「コロナ」と「米中対立によるサプライチェーンの分断」そしてそれらの影響を受ける「米金融政策」。
- コロナ新規感染者数の推移は減少傾向が続いている(下に添付したチャート Daily New Cases は 7日間の移動平均で下向きになっている)(リスクオン要因)
- 今週も多くの国で消費者物価指数の発表が控えており、要注目
- 世界のサプライチェーンの分断が、世界的な物価高要因になっている。結果としてグローバルに生産者物価が高止まりし、企業収益が圧迫され、株価下押し圧力が掛かる可能性に留意しておきたい。(インフレとそれに伴う企業収益の圧迫、短期金利の上昇が見込まれる)
- しかし日本は仮にインフレが伝播しても、利上げを行うことは難しい。なぜならば金利が上昇すると債券価格が下落し、保有者である日銀と民間の金融機関が痛むからだ。
- ゆえに円を売って、素直に利上げを行える通貨を買っていくのが良いと判断する。
- 投資家の米金融政策見通しは2021年11月FOMCでテーパリングのアナウンス、2022年後半の利上げ開始がコンセンサス。(現在の市場参加者の利上げ見通しは2022年7月が中心値で、前月よりFOMC1回分早まった)(ドル高要因)
COVID-19 新規感染者数, Worldmetersより抜粋
市場参加者のFOMC利上げ予想, CME Group より抜粋
チャート分析
USDインデックス(日足)
- ドルインデックス=ドルの総合的な強さを示す指標(バスケットの中身:EUR57.6%, JPY13.6%, GBP11.9%, CAD9.1%, SEK,4.2%, CHF3.6%)
- 93.4~94.7のレンジで推移している
- 米経済指標は強く、基本的にドル高目線でよいと考えるが、米国よりも早期に利上げに動いている国もあるので、過度なドル高は想定しない
USD/JPY 中期(日足)
- 2019年4月、2020年2月の高値である112.20をクリアに上抜けて上昇
- ターゲットの114.40レベルをワンタッチした
- 次は115.50が視野に入る
- 2015年6月の高値125.86を目指す展開になると想定(一気には行かないと思うが、中長期で円安を想定)
USD/JPY 短期(時間足)
- 114.40のレジスタンスを突破し、115.50を窺う展開になると想定
- 戻る場合の目安は114.00、113.50、113.00としたい
- 113.50まで下がってきたら好機と捉え、大きく張っていきたい
EUR/USD 中期(日足)
- 先週は買戻しが優勢となった
- 戻りは鈍く1.1600、1.1630では売り先行で良いと判断
- ただし、円が大きく売られているので対ドルにこだわる必要もなさそう
EUR/USD 短期(時間足)
- 1.1530~1.1630のレンジと判断
- 売りから入り、利食いは1.1530前後を想定
- 上下ともにレンジブレイクの際は、判断を見直し
USD/CNH 中期(日足)
- 広い範囲では6.35~6.60のレンジと判断
- 6.4250のサポートを試す展開が続いている
- 先週、一旦6.4250を割りこんで、のち跳ね返されたが、戻りも鈍く今週再度下値を試す展開を想定
- 下に抜けた場合の目安は6.35
USD/CNH 短期(時間足)
- コアレンジは6.4250~6.4650と設定
- 6.4450をレンジの中心と考え、この辺りでは売り先行で行きたい
- ただそこまで戻らないでいきなり下を試す展開を想定している
今週の戸田の取引戦略
全体方針
- 引き続き原油と天然ガスの価格に注目し、上昇した場合にはインフレ圧力が高いと判断し、企業業績の悪化、株安、リスクオフの展開に備えたい
- それから米金利動向に注目。特に2年債と10年債の利回りに注目し、それぞれドルと、米株との連動性を確認していきたい
- 日本の金融緩和の長期化を見込み、円売りを先行させる
- 人民元は買いを先行させる
- ユーロは大きなチャートブレイクもあり売りを先行させる。
- 利上げを行っている通貨を買っていく(NZドル、ノルウェークローネ)
- 通貨の勢いは右記と判断 人民元 > 米ドル > ユーロ > 円
USD/JPY
- 先週末の終値:114.20
- 目線:上
- 想定レンジ:113.50~116.20(上を広く見ています)
- 現在ポジション:USD/JPY +3.0
- 方針:まずは週明けは様子見、114.40をクリアに上抜けるか確認
- 下押しする場合には114.00、113.50、113.00を目安に買い下がり
- 上に走る場合には損切を早めにセットし上昇についていく
EUR/USD、EUR/JPY
- 先週末の終値:EUR/USD 1.1600
- 目線:EUR/USD 横ばい~下 EUR/JPY 横ばい~上
- 想定レンジ:EUR/USD 1.1530~1.1630
- 現在ポジション:EUR/USD ▲1.0 EUR/JPY ±0
- 方針:ユーロは売り先行、1.1530前後では利食い先行
CNH/JPY、USD/CNH
- 先週末の終値:USD/CNH 6.4328
- 目線:USD/CNH 横ばい~下、CNH/JPY 上
- 想定レンジ:USD/CNH 6.3500~6.4650
- 現在のポジション:USD/CNH ± 0.0 CNH/JPY +2.0
- 方針:CNH/JPYは週明け様子見、ポジションを保持
- ドル円が下押しする局面があればを押し目買い、上に伸びる場合は買いでついていきたい。
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