【9月27日~10月1日】自民党総裁選と米金利上昇を考慮したトレード戦略
先週の為替相場レンジ(変動範囲)
| 始値 | 安値 | 高値 | 終値 | 変化率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 109.97 | 109.13 | 110.79 | 110.74 | +0.70% |
| EUR/USD | 1.1732 | 1.1683 | 1.1756 | 1.1719 | ▲0.11% |
| EUR/JPY | 128.97 | 127.93 | 129.85 | 129.76 | +0.61% |
| USD/CNH | 6.4712 | 6.4526 | 6.4880 | 6.4620 | ▲0.14% |
| CNH/JPY | 16.9916 | 16.8244 | 17.1432 | 17.1379 | +0.86% |
先週の為替相場サマリー
USD/JPY
- 先週のドル円相場は、1ドル=109.97円からスタート。中国恒大集団に関する噂が飛び交う中で、市場の雰囲気はリスクオフ。ドル円はじりじりと下落し水曜日の東京時間にかけて109.13まで下落。しかしその後にPBOC(中国の中央銀行)が短期金融市場に大型の資金供給を行ったことを報告すると、中国当局の金融市場全般に対する支援姿勢が明確になったことで、急激に市場のセンチメントが改善、これをきっかけに円安相場となった。水曜日のNY時間には米連邦公開市場委員会(FOMC)の報告で11月のテーパリングアナウンスや2022年中頃のテーパリング完了が示唆されたことで米金利は上昇、為替はドル買いが強まった。ドル円はさらに上昇を続け木曜日に110円を突破、週末には110.79の高値をつけたあと110.74の高値圏でクローズ。
EUR/USD
- ユーロ相場は、1ユーロ=1.1732ドルからスタート。上下に大口のオプション契約が置かれる中、水曜日のFOMCまで小動きが続いた。注目のFOMCでは前述の通り、ドル買いが強まるとユーロは一時1.1683まで下落。しかし引き続き下値を切り崩すには至らず、次第に反発すると1.1750レベルまで買い戻される局面もあった。週末は1.1719と、週初とほぼ同水準でのクローズ。
USD/CNH
- 人民元相場は1ドル6.4712元からスタート。週初は中国恒大集団に関する噂が飛び交う中で、ドル買い人民元売りが優勢で、一時6.4880までドルが上昇する。しかし水曜日にPBOC(中国の中央銀行)が短期金融市場に大型の資金供給を行ったことを報告すると、中国当局の支援姿勢が明確になったことで、その後は人民元買いが強まる展開となる。木曜日には6.4526までドル売り、人民元買いが強まる局面もみられた。週末は6.4620でクローズ。
先週のできごと
※物価指数とマネー統計は前年同月比、GDPは前期比、特段の記載がない経済指標は前月比または当月の数値20日
- 日本・中国は祝日(敬老の日、中秋節)
- 米9月NAHB住宅市場指数 76
- カナダ下院の総選挙で、トルドー首相が率いる自由党が再び第1党となった。単独過半数には届かず、再び少数与党となる見通し。法案や予算の成立のために他党との協力に頼ることになる。
21日
- 中国は祝日
- 米4-6月期四半期経常収支 ▲1,903億ドル
- 米8月住宅着工件数 +161.5万件(強い)
- 米8月建設許可件数 +172.8万件(強い)
- 米議会民主党は、9月末の会計年度末を控えて今年12月3日までのつなぎ予算案をまとめ、2022年12月16日まで連邦政府の債務上限の適用を一時停止する措置を盛った。民主党が議席の過半を占める下院は21日夜に同法案を賛成多数で可決した。上院は与野党勢力が拮抗し、成立するかどうか見通せない。
22日
- 日本銀行は政策金利を▲0.1%に据え置き
- 米8月中古住宅販売件数 588万件
- 欧州9月消費者信頼感 ▲4.0
- 米連邦公開市場委員会(FOMC)は報告書とパウエルFRB議長の記者会見で次回11月FOMCでのテーパリングアナウンス及び2022年中頃のテーパリング完了を示唆した。
- ブラジル中央銀行は政策金利を1.0%引き上げ+6.25%に設定
- 中国の不動産大手、中国恒大集団は、期日を23日に控えた人民元建て債の利払いを実施すると発表した。金額は2億3200万元(約39億円)。恒大を巡っては1兆9665億元(約33兆4000億円)にのぼる負債を巡り信用不安が浮上しており、債券の利回りが急上昇していた。
23日
- 日本は祝日(秋分の日)
- 南アフリカ準備銀行(中央銀行)は政策金利を3.5%に据え置き
- スイス国立銀行(中央銀行)は政策金利を▲0.75%に据え置き
- ノルゲバンク(ノルウェー中央銀行)は政策金利を+0.25%利上げ(先進国ではパンデミック以降で初めて)
- 欧州9月製造業購買担当者景気指数 58.7
- 欧州9月サービス業購買担当者景気指数 56.3
- イングランド銀行(BOE、英中央銀行)は政策金利を0.10%に据え置き
- 米新規失業保険申請件数 35.1万件
- 米9月製造業及購買担当者景気指数 60.5
- 米9月サービス業購買担当者景気指数 54.4
- 米8月景気先行指標総合指数 +0.9%
- 台湾当局は環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟に向け、正式に申請手続きを行ったと発表した。
24日
- 日本8月全国消費者物価指数 0.0%
- 米8月新築住宅販売件数 +1.5%
- 中国人民銀行(中央銀行)は、暗号資産(仮想通貨)の決済や取引情報の提供など関連サービスを全面的に禁止すると発表した。違法な金融活動と位置づけ、刑事責任も追及する。海外の取引所がインターネットを介して中国国内でサービスを提供することも違法とする。
- 国際原子力機関(IAEA)の年次総会は、北朝鮮に対し非核化へ具体的な行動を求める決議を全会一致で採択した。核開発を継続しているのは明らかに国連安全保障理事会の決議違反だとし、「深い遺憾」を表明した。
- 日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国首脳は、ホワイトハウスで初の対面による会議を開いた。共同声明で東・南シナ海を含め「ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対抗する」と強調した。4カ国の首脳、外相の会議を毎年開催すると合意した。
経済用語解説
- GDP=Gross Domestic Price(国内総生産);高成長が良い
- CPI=Consumer Price Index(消費者物価指数):2%目標を掲げる先進国が多い
- PCE=Personal Consumption Expenditures:個人消費支出、消費者物価と相関が高い
- PPI=Producer Price Indes(生産者物価指数):CPIに影響を与える
- PMI=Purchasing Manager Index(購買担当者景気指数):50が基準
- ZEW=Leibniz Centre for European Economic Research(欧州経済研究センター):0が基準
- NAHB=National Association of Home Builder:50が基準
- ニューヨーク連銀製造業景気指数:0が基準
- フィラデルフィア連銀製造業景気指数:0が基準
- リッチモンド連銀製造業指数:0が基準
- シカゴ購買部協会景気指数:50が基準
- ミシガン大学消費者態度指数:1966年を100として指数化
- S&P/ ケース・シラー住宅価格指数は、「20大都市圏住宅価格指数」がよく利用されている。景気に大きな影響がある住宅市場の動向を確認する上で重要な指標。
- 住宅販売保留指数:売買契約は終わっているが、引渡しが済んでいない物件数を指数化
- 欧州消費者信頼感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(速報の発表は前月比で報告される)
- 欧州景況感指数:2000~2020年の平均を100としてその上下を図る(発表は実数で報告される)
- 消費者信頼感指数:1985年を100として指数化したもの
- 日本景気動向指数:2015年を100として指数化したもの
- 日本景気ウォッチャー調査:50が基準
- 日本法人企業景気予測調査:0が基準
注目の経済指標と政治イベント
27日
- 20:45 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、公聴会にて、経済・金融政策に関して報告
- 21:30 米8月耐久財受注
28日
- 時間未定 日銀・金融政策決定会合議事要旨
- 21:00 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、ECBフォーラムにて、パンデミックを乗り越えるための金融政策に関して冒頭のイントロを担当
- 22:00 7月ケース・シラー米住宅価格指数
- 23:00 米9月消費者信頼感指数
- 23:00 9月リッチモンド連銀製造業指数
29日
- 時間未定 自民党総裁選投開票
- 18:00 欧州9月消費者信頼感
- 18:00 欧州9月経済信頼感
- 23:00 米8月住宅販売保留指数
- 23:30 米週間原油在庫量
- 24:45 ECBフォーラム「パンデミックを乗り越えるための金融政策」にて、黒田日銀総裁、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁発言
30日
- 08:50 日本8月鉱工業生産
- 10:00 中国9月製造業購買担当者景気指数(PMI)
- 10:45 中国9月Caixin製造業購買担当者景気指数(PMI)
- 16:10 【挨拶】黒田総裁(全国証券大会)
- 18:00 欧州8月失業率
- 21:30 米新規失業保険申請件数
- 21:30 米4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、確定値)
- 21:30 米4-6月期四半期コアPCE・確定値(前期比年率)
- 22:45 9月シカゴ購買部協会景気指数
1日
- 中国&香港 国慶節入り(本土は7日まで祝日)
- 08:30 日本8月失業率
- 08:50 7-9月期日銀短観・四半期大企業業況判断
- 18:00 欧州9月消費者物価指数(HICP)
- 21:30 米国8月個人消費支出(PCEデフレーター)
- 23:00 米9月ミシガン大学消費者態度指数・確報値
- 23:00 9月ISM製造業景況指数
来週以降
- 9月29日:自民党総裁選
- 9月30日:自民党総裁任期満了
- 10月1日:自民党新総裁の任期
- 10月27日―28日:日銀金融政策決定会合
- 10月28日:ECB
- 10月30日―31日:G20首脳会議
- 11月2日―3日:FOMC
- 12月14日―15日:FOMC
- 12月16日:ECB
- 12月16日―17日:日銀金融政策決定会合
- 1月17日―21日:ダボス会議
※ここから先(「先週の通貨強弱」「グローバルマクロ環境の整理」「チャート分析」「今週の戸田の取引戦略」)は有料記事になります
先週の通貨強弱

- ドル高が優勢(142/196ヶ国の通貨価値が下落)
- ドル高が進む中でもリスクオンが継続、クロス円は底堅く推移
- 利上げを実施したNOK(ノルウェー・クローネ)が強い
- 利下げを実施したTRY(トルコ・リラ)が弱い
- まとめると通貨強弱は右記の通り ノルウェーなど利上げを実施した先進国 > 人民元・米ドル・ユーロ > 日本円 > トルコなど利下げを実施した新興国
グローバルマクロ環境の整理
- 中国不動産大手・恒大集団のデフォルトについて、世界の注目が集まっている。恒大集団の件はもちろん、中国の「景況感」については引き続き注意深くみていく必要がある。(人民元安要因)
- ただしPBOC(中国の中央銀行)が金融市場を支える姿勢をしめしたことは好感されている。少なくとも国慶節まではこの姿勢が継続するとみられる。(リスクオン要因)
- 世界的に半導体不足が深刻。日本の自動車各社は在庫の積み増しに動き、中国では携帯電話の製造が困難になるなどミクロ経済の影響も見てとれる。このような現象が、半導体の価格上昇はもちろん、製品原価の高騰要因になっており、世界的な物価高要因になっている。
- 結果としてグローバルに生産者物価が高止まりし、企業収益が圧迫され、株価下押し圧力が掛かる可能性に留意しておきたい。(株安要因)
- 物価上昇圧力を受け、FOMCは早期のテーパリング完了を示唆。市場では利上げ観測が高まり、米債利回りが上昇している。連れて米ドル高が進み、ドル円も高値を試す展開になった。これらも株式市場には少なからず下押し圧力が掛かるはずだ。(ドル高、株安要因)
- 自民党総裁選の開票は29日。基本的に誰が総裁になってもアベノミクスを踏襲する方向。混乱が収まる分は円安・株高要因と捉えておきたい。特に高市氏の場合はバラマキ的な政策が多く、円安・株高で反応すると想定。
- リスクオン相場が本流になるかどうか注目。引き続き鍵はコロナ収束と米金融緩和の長期化。
- コロナ新規感染者数は縮小傾向が続いている(下に添付したチャート Daily New Cases は 7日間の移動平均で下向きになっている)
- 投資家の米金融政策見通しは11月のテーパリング決定&アナウンス、2022年後半の利上げ開始がコンセンサス。(利上げ見通しが急速に早まってきた)
COVID-19 新規感染者数, Worldmetersより抜粋
市場参加者のFOMC利上げ予想, CME Group より抜粋
チャート分析
USDインデックス(日足)
- ドルインデックス=ドルの総合的な強さを示す指標(バスケットの中身:EUR57.6%, JPY13.6%, GBP11.9%, CAD9.1%, SEK,4.2%, CHF3.6%)
- 米金利上昇を受け93.4のレジスタンスを試す展開が続いている
- 今週は93.4をクリアに抜けてくるか注目
USD/JPY 中期(日足)
- 広いレンジで107.50~111.65
- 引き続き109.00~111.00がコアレンジ
- 111.00を試す展開になっており、ここを上抜けるか注目
- 抜けた場合は年初来高値の111.65が意識される
USD/JPY 短期(時間足)
- さらに狭めたレンジの109.10~110.50は109.10がサポートとして機能し、110.50をブレイク
- 110.80~111.00を突破できるかが目先の注目
EUR/USD 中期(日足)
- 広いレンジは1.1630~1.2350
- レンジ下限を試す展開が続いている
EUR/USD 短期(時間足)
- コアレンジは1.1670~1.1900
- 狭いレンジでは1.1670~1.1750
- 2週連続で上下に大きいオプション契約がありレンジ相場感が強くなっている
USD/CNH 中期(日足)
- 広い範囲では6.35~6.60のレンジと判断
- 直近は6.4250周辺がサポートとして機能している
USD/CNH 短期(時間足)
- 短期レンジは6.4250~6.5200
- コアレンジは6.4250~6.4870
- 引き続き恒大集団の話題などネガティブなニュースで人民元安に振れる展開には警戒しておきたい
今週の戸田の取引戦略
全体方針
- 引き続き日本・中国・米国の株式市場の動向に目を光らせ、リスクオフの兆候を早めに感知できるよう努める(リスクオフに警戒)
- ドルは米金利上昇に余地がある考え上目線
- 日本政局の混乱と金融緩和の長期化を見込み、日本株は上目線、円もどちらかと言えば売り優勢を想定
- 人民元は米中対立と権力闘争による国内景気落ち込みの可能性を考慮する(大きく崩れないと思うが急な下落は警戒しておきたい)
- ユーロは経済指標に持ち直しの動きが見られているので、下がったところでは買い先行したいが、ドル次第であることを十分考慮する
USD/JPY
- 先週末の終値:110.74
- 目線:上
- 想定レンジ:110.50~111.65
- 現在ポジション:USD/JPY +1.0
- 方針:111.50付近まで下がることがあれば買い下がり、上は買い上がりでついていく
EUR/USD、EUR/JPY
- 先週末の終値:EUR/USD 1.1719
- 目線:EUR/USD 横ばい~下 EUR/JPY 横ばい
- 想定レンジ:EUR/USD 1.1670~1.1750
- 現在ポジション:EUR/USD ±0 EUR/JPY ±0
- 方針:レンジ継続を想定しEUR/USDに絞って1.1670付近で買い、1.1750で売りを徹底。米ドルの動きや、オプション&オーダー状況を見ながら少額取引。
CNH/JPY、USD/CNH
- 先週末の終値:USD/CNH 6.4620
- 目線:USD/CNH 横ばい、CNH/JPY 横ばい~上
- 想定レンジ:USD/CNH 6.4250~6.4870
- 現在のポジション:USD/CNH ± 0.0 CNH/JPY +2.0
- 方針:USD/CNHは戻り売りを検討(オシレーターと水準をみて判断)、CNH/JPYの買い持ち(中長期のポジション)を維持、CNH/JPYの押し目買いを検討。
- 中国景気の悪化と恒大集団のデフォルトが市場に与える影響を警戒しつつ、下落局面ではCNH/JPYを買い増したい
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