3章「成功する人は“感情”を置いてきた──トレード勝者のたった一つの共通点」
第3章:吹かぬ風に賭けた日
その日も、蒼の市壁は静かだった。
青灰色の空。動かぬ旗。まばたきひとつしない木の葉。
街全体が、まるで時間ごと凍りついたような午前だった。
にもかかわらず、フィアは動いた。
「今日しかない」と自分に言い聞かせ、
荷車に銀貨を詰め、取引所へと駆け込んだ。
灰羽の男からもらった帳面は、納屋の片隅に置いたまま。
条件は揃っていなかった。
起動点は現れていなかった。
だが、焦りが先に立った。
──誰かに先を越されたくない。
──成功している者たちは、きっともっと大胆なはずだ。
そうやって、自分だけの“風”を信じず、
他人の動きを模倣して、壁の前に立った。
だが市壁は、動かなかった。
街に風は吹かなかった。
誰もが静観している中で、ただひとり暴走したフィア。
取引は不成立。銀貨は動かず、むしろ手数料で目減りした。
荷車を押し戻す彼に、誰かが冷たくつぶやいた。
「風も読めないで、門を叩くなよ。」
4章へ続く
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天空の狭間
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