【5/12(月)】米中協議進展でドル買い継続?重要指標に注目の1週間
先週(~5月9日)までの相場のまとめ
(1) 為替:円安・ドル高の進行
5月第2週まで、安全資産の円が売られ、ドルが強含む展開となりました。米英通商交渉の合意や米中協議進展への期待感が投資家のリスク選好を高め、結果的に「円を売ってドルなど高金利通貨を買う」流れが継続。実際、ドル円は5月9日に一時1ドル=146円19銭まで上昇(円安)し、約1カ月ぶりの高値水準に。ユーロ円・ポンド円も上昇基調で、ユーロ円は163円台半ば、ポンド円は192円前後まで上値を伸ばしました。
一方で、米FRBは早期利下げを示唆しておらず、米金利はやや上昇気味でドル買い要因となっています。日銀は大規模緩和を継続中で、日米金利差も意識されやすい状況です。
(2) 債券:長期金利は世界的に上昇
世界的な「リスクオン」によって株式への資金流入が加速し、安全資産の債券は売られがち。日本の長期金利は1.35%付近まで上昇し、30年債利回りは2004年以来の高水準に。米国債利回りもFRBのタカ派色が後退しないことを背景に高止まりしています。
(3) 株式:リスク選好で堅調
米国株は、企業決算の好調さなどを追い風にS&P500が今年の高値圏を維持。米英合意や米中協議進展への思惑が残る中、特に日本株が強くTOPIXは11営業日連続の上昇、日経平均は3万7千円台を回復。通商リスク懸念が後退したことで、輸出関連株が買われやすい構図です。
アナリスト・ストラテジストの見解の変化
あおぞら銀行・諸我晃 氏
5月第3週のドル円レンジを「143円~148円程度」と予想し、投機筋による円売りポジション積み上がりを指摘。「米中交渉が好転すれば円安継続もあり得るが、交渉が暗礁に乗り上げれば一気に市場心理が変わるリスクがある」と警戒。
SBIリクイディティ・マーケット 上田真理人 氏
ドル円の想定レンジ「142円前半~146円半ば」。米英合意は特例的であり、即座にドル全面高にはつながりにくいとの見方。米中交渉の結果にも慎重で、「結果詳細が乏しければドル買いも限度がある」とコメント。
物価動向
13日公表の米CPIが予想を上回ればドル上昇を支える材料に、逆に弱ければ年内利下げ観測が強まりドル売りにつながる可能性。
日銀は同日に4月会合の「主な意見」を公表予定。そこにタカ派的姿勢が示されれば、過度な円安が修正される要素になると指摘される。
5月12日(月)の東京市場の動き
米中協議「進展」報道で円安先行 → 伸び悩み
週明け12日(月)の東京市場では、米中がスイスで協議を行い「著しい進展」を得たと伝わったことで、朝方にドル円は一時1ドル=146円27銭まで上昇(円安)。しかし、協議内容の詳細に乏しく、投資家の過度な期待にはつながり切らず、その後145円後半まで反落。専門家の反応
「一定の進展があったというが、続報が不可欠。ポジションを大きく傾けるには材料不足」と慎重な見方。
リスクオンの流れ自体は維持され、日経平均株価も寄り付き直後は300円超の上昇となったが、為替同様に伸び悩んでいる。
総評
円売りの流れは続くものの、根拠薄の「進展」報道に対しては市場参加者も手放しでドル買いには走らず。相場は好材料を歓迎しつつも慎重姿勢が見られ、乱高下する可能性をはらむ展開に。
今週の注目イベント
5月13日(火)
米4月CPI(消費者物価指数)
インフレ指標としてFRBの金融政策スタンスに大きく関係。結果が強ければ利下げ観測が後退しドル高要因、弱ければ年後半の利下げを市場が織り込みドル売り要因。
独5月ZEW景況感
4月は-14.0と急落。5月は米中交渉の前進を背景に上向きが期待されているが、もし再び低調ならユーロ売りにつながりやすい。
5月15日(木)
英1~3月期GDP速報
利下げ直後のBOEにとって重要な経済指標。もしマイナス成長となれば「追加利下げ観測」強まりポンド安要因。
米4月小売売上高 / 4月PPI / 5月NY連銀&フィラデルフィア連銀指数 / 新規失業保険申請件数
一斉に発表される米重要指標。
小売売上高が好調なら個人消費が底堅いとしてドル高・株高。逆に低迷なら景気後退懸念再燃でドル売りも。
PPI(生産者物価)もCPIと合わせてインフレ基調を探る指標。
地域連銀指数は製造業先行指標。回復が確認されれば景気下振れ観測が和らぐ可能性。
5月16日(金)
日本1~3月期GDP速報
もし予想以上に弱ければ、リスクオフ円高が一瞬進むリスク。逆に堅調なら日銀緩和維持の前提が変わらず、反応は限られるか。
米5月ミシガン大学消費者態度指数
消費マインドとインフレ期待を示す重要指標。インフレ期待が下がれば年後半の利下げ観測が浮上しドルの上値を抑えやすい。
こうした指標や交渉の続報次第で、今週はイレギュラーな値動きが起こり得るため要警戒。特にドル円を中心に、経済指標の結果による“イベントドリブン”な動きが意識される。
主要通貨ペアの短期見通し
(1)ドル円(USD/JPY)
