米国株式投資の真実を伝える [Vol.51]2022年6月20日配信
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米国株式投資の真実を伝える
[Vol.51]2022年6月20日配信
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川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」
***目次***
マーケット振り返り
今週のピックアップ記事
川田の気になる銘柄
投資のヒント
お散歩
ちょっと一息「FAの視点」
超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
活動情報
社会人になって40年以上読み続けている日経新聞の中から気になる記事をピックアップしコメントする企画だ。毎週土曜日午前9時〜9時45分にズームへの参加形式で実施している。
参加は無料なのでご興味あるかたはPeatixでお申込みください。
以下は先週土曜日にカバーした記事の表題をいくつか。
皆様が資産形成で成功するために一緒に学び啓発し合うオンラインサロンです。大好評のメルマガ「メディアで鍛える米国株式講座」だけでは伝えきれない内容や、米国株式投資の魅力を体感できる会員向けのセミナーを提供します。
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1.マーケット振り返り(6月13日~6月17日)
<主要指数>
・NYダウ -4.8%
・S&P500指数 -5.8%
・ナスダック総合指数 -4.8%
=駆け足バージョン=
週前半は金融政策に対する警戒感から金利が上昇して株価は下落しました。0.75%の利上げが発表された後に一時的に反発したものの、週後半も低調な経済指標を受けた景気後退懸念から続落となり、週間で大きく下落しました。
=ちょっとだけ詳しく=
前週末に発表された消費者物価指数が大幅な伸びだったことから利上げペースに対する警戒感が根強く、S&P500指数は1月の史上最高値から20%超下落して、弱気相場入りとなりました。
金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を前に利上げを織り込む動きが急速に進みました。
0.75%の利上げが発表され、今後も同様のペースでの利上げも示唆された結果が水曜日に発表された後は、一時的に反発しました。
しかし、その後に発表された小売売上高や住宅着工件数、鉱工業生産などが市場予想を下回ったため、景気後退懸念が広がりました。
金曜日が株価指数先物やオプションなどの清算日だったことから様子見姿勢が強く、急落後も軟調な値動きとなりました。
S&P500指数チャート5年間
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2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、川田が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
6月から、お散歩コーナーで本を紹介している熊倉貫宜さんのピックアップ記事とコメントも掲載します。
【1】日経新聞 半導体投資、台湾全土が沸騰 全20工場16兆円の衝撃
膨張する地政学リスク 6/8
先端の半導体の9割以上が台湾で生産される。今後、20の新工場が全て量産を始めれば、世界の台湾への依存度はさらに引き上がるのは確実だ。
中国からの統一圧力が強まるなか、台湾の外交は今、ほぼ米国頼みの状況にある。その状況下で唯一、台湾が米国と対等に話ができるカードが「半導体」となる。
中国からの統一圧力は喫緊の課題だ。むしろ「これだけ半導体の生産の集積化が進んでしまった台湾を、もう世界は見捨てることなどできない」(台湾の半導体業界関係者)とにらむ。
台湾にとって最大の対中防御策は、もはや米国から供与される武器などではなく、自前による最先端の半導体工場なのかもしれない。生き残りをかけた勝負の巨額投資が台湾全土で今、静かに、そして急ぎ足で進む。
【川田コメント】
台湾での半導体の設備投資を地政学リスクと絡めて読み解くのは極めて大切な視座だ。今回のロシアのウクライナ侵攻を契機にエネルギー安全保障、食料安全保障さらには経済安全保障という考え方がにわかにクローズアップされているが、台湾にとっての半導体工場はそれ以上で、台湾の「命綱」なのだろう。
1989年の東西冷戦終了から30年以上経過した。その間にグローバル化が進展し、猛烈なスピードで中国が国際舞台の主役に躍り出た。また超大国の冷戦終了を境に世界は再び民族や宗教を理由に対立を深め、混迷の度を増している。
日本人が国際情勢を判断する場合には、英米の刷り込みからか、‟民主主義と市場経済の仕組みがベストで世界のどの国もそうあるべき”と考えがちで、それが相手国を判断する場合には良し悪しの判断基準になっていると思う。
しかし長年国際情勢を眺めてみると分かるが、現実には世界中が「民主主義と市場経済」に帰着しそうなわけではない。世界にはいろいろな統治方法があるべきで、民族や宗教そして歴史的な経緯を踏まえて各国固有の仕組みや制度が構築されている。そう割り切ったほうが世界情勢を正確に理解できる。それは、我々が中国やロシアを分析するときにも当てはまる。教条的にならず感情に走らずに世界情勢を柔軟に解読する姿勢がより正確な判断を導き出す。そう考えてメディアの記事を読むように心がけたい。
【2】日経新聞 宗教学者・山折哲雄氏に聞く 平和の戦略、歴史に学 6/11
長引く疫病と戦争の惨禍に揺れる現代を、超高齢者となった碩学(せきがく)は、どう見つめているのだろうか。宗教学者の山折哲雄さん(91)を訪ねた。
今、気がかりなのは、コロナ禍と戦争をめぐる議論の行方だ。頭に浮かんだのは、古代の民族大移動だった。「まずは、アーリア人」。中央アジアに定住していたアーリア人は紀元前、現在のインドやイラン高原に侵入して征服する。
「次はゲルマン民族とノルマン人の大移動がある」。紀元後、彼らは北欧方面から南下してヨーロッパ各地に侵入する。「その間に略奪、殺戮(さつりく)をしている。ローマ帝国は、略奪、殺戮をさらに大規模に繰り返した。その後、十字軍戦争もある。こうして地中海文明が形成され、ルネサンス、宗教改革、産業革命と続く」
「この間に西欧諸国がしたことは、アフリカ大陸の略奪と奴隷の売買、アメリカ大陸の征服。今のウクライナでの戦争における略奪と殺戮には、先例がある。コロナ禍とウクライナでの戦争は人類がこの2000~3000年の間にしてきたことと無縁ではない」
振り返るのは日本の歴史だ。「明治維新以前は、中国文明の圧倒的な影響下にあった。1000年以上、いわば日中同盟。明治以降は日欧同盟。敗戦後は日米同盟になった。日本列島にある辺境の文明は、大文明の傘に守られた従属関係の中で必死に生き延びてきた。」。
「日本は、平安時代の350年、江戸時代の250年は大きな戦争がなく、世界史的にも奇跡と呼べるような平和な時代が続いた。『ノン・バイオレンス』の日本モデルは、一千年の歴史の中に隠されている。第2次大戦での敗戦以外には、日本は長きにわたり外国の侵略を免れてきたんです。」
山折哲雄(やまおり・てつお)
宗教学者、評論家。1931年、米国サンフランシスコ生まれ。国際日本文化研究センター所長を経て名誉教授。著者に『愛欲の精神史』(和辻哲郎文化賞)、『親鸞をよむ』『「ひとり」の哲学』『激しく考え、やさしく語る』『生老病死』など。
【川田コメント】
山折さんは著名な宗教学者で日経「私の履歴書」(2018年3月)でその生い立ちや業績が紹介された。
今回のロシアによるウクライナ侵攻を歴史的、地政学的に捉えている。特に“辺境の文明、日本は、大文明の傘に守られた従属関係の中で、必死に生き延びてきた。”と。さらに“第2次大戦での敗戦以外には、日本は長きにわたり外国の侵略を免れてきた。”
こういうストレートで正直な解釈だとストンと腹落ちする。日本と日本の歴史を、夜郎自大に語ることなく、賛美、美化することもなく、‟従属関係の中で必死に”と表現するところが気に入っている。
この記事で本棚にあった2014年の彼の著作「日本文明とは何か」を思い出し、改めてページをめくってみた。そのはしがきには“文明の衝突、一神教と多神教、政教分離国家と政教一致国家、形而上学の復権”等々、難解な言葉が並ぶ。
戦後の日本人は、これら西洋の知識人が真正面から取り組んできた人類共通の課題に向き合うことをわざと避けてきたのではないか?これらの議論が深まらなければいま世界で起きている地政学や民族、宗教の争いの原因も理解できない。
いざ学習してみると、原書はおろか翻訳書でも難物だ。そういう時には彼のような碩学の手で編まれた本が良き道案内になるはずだ。
【3】日経新聞 ESGはビジネスの領域なのか 6/15
現代の「地球救済委員会」とも呼ぶべき3人、マーク・カーニー英イングランド銀行前総裁、世界最大の資産運用会社である米ブラックロックのラリー・フィンク、米大手銀行JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEO(最高経営責任者)。
彼らの目標は、地球温暖化を食い止め、より公正で開明的な資本主義を確立するという壮大なものだ。
だが、ビジネスに正義を持ち込む活動を「社会正義に目覚めた(Woke=ウォーク)資本主義」と呼び、偽善的とする声が上がり始め、3人はにわかに嘲笑の対象になっている。
ESG(環境・社会・企業統治)の概念は多くの投資家をひき付け、高い手数料を簡単に稼げる商売だった。
だが、ESGファンドにもてはやされた米テック株が大幅に下落する一方で、石油関連株が急騰。ファンドの収益は悪化し続けており、今や投資家は大混乱に陥っている。
ただ、多くの消費者・従業員・投資家が、自然環境や社会福祉が脅かされ、よりよい未来を築こうとする企業に魅力を感じている。
社会の問題を解決するのは政府の責任だという批判もあり、億万長者が企業の株主総会の舞台裏で影響力を行使して、自らの政治的主張を押し付けるべきではないという主張だ。
もちろん、地球を救うことは大切なことだが、少人数の「委員会」で救うとなるとエリートの「越権行為」の匂いが漂う。
【熊倉コメント】
日本国内でも「意識高い系」などという過剰な環境意識を揶揄する言葉がありますが、人間の感情は万国共通でしょうか?
それはさておき、ESG投資とは何か?経済産業省では下記のようにまとめております。
ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。特に、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会(オポチュニティ)を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されています。
日本においても投資にESGの視点を組み入れることなどを原則として掲げる国連責任投資原則(PR)に、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年に署名したことを受け、ESG投資が広がっています。
(経済産業省HPより、下線熊倉)
国連責任投資原則(PRI)の発足が2006年の事ですから、今世紀最大の投資テーマといっても過言ではありません。
また、具体的にESGの要素を考慮する投資手法については、サステナブル投資の世界的連携機関グローバル・サステナブル・インベストメント・アライアンス(Global Sustainable Investment Alliance:GSIA)から、7つの中核的なアプローチと定義が発表され共有されています。
(出典 2020年版グローバル・サステナブル・インベ ストメント・レビュー)
投資を通じて環境に配慮し、正しい企業活動を支援し、投資家が適正な利益を上げるならば、こんなに素晴らしいことはないわけですが、この記事に拠ると、直近の下げは投資家に大きな動揺を与えている様子です。
この長い記事からは下記の三点の課題が見られます。
ESGテーマ型投信・ETF等のパフォーマンスの適正性
環境問題のような世界的な課題を金融市場で消化する手段
巨大金融機関の経営者が、その政治的主張を押し通して我田引水のようにビジネスを操ることの功罪
いずれも判断が難しい課題ですが、長期的に「よりよい未来」を志向するとすれば、常に監視を怠るべきではない課題とも言えるでしょう。
あるいは金融市場による自然淘汰が為されるのでしょうか?
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3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
今週の銘柄
ディア<ティッカー:DE> Deere & Company
概要
コンバインやトラクターなどの大型農機や建設や林業向けの重機なども製造する、1837年設立の世界最大の老舗農機メーカーです。南北アメリカや欧州を中心に世界で100カ所以上の拠点を有し、7万5000人以上が働いています。
(図1:ディアの2021年度の製品別売上)
同社の魅力
ディアは創業が19世紀前半に遡る老舗企業ですが、農機以外にも建設機械などに多角化を進めているほか、農機を通じて農業の生産性を引き上げることを目標に、農機の改良とハイテク化を進めてきました。その結果、収益力が向上しています。
具体的には、農機本体(ハードウエア)の改善や動かすためのソフトウエアだけでなく、効率的な農業生産のための農機使用のガイダンス、異なる農機同士の連携とデジタル化、自動化や農機自体による判断を交えた農作業などです(図2参照)。最終的に目指すのは農機の完全な自立走行(操業)です。これらを実現するために、人工知能(AI)関連企業などの戦略的な買収も行ってきました。
これらを通じて農業の生産性を高めることで、農機の高価格が実現できるほか、農業のコンサルタント事業などの付加価値の高い事業による収益力の強化を目指しています。ESGの観点からも、農薬使用量の減少や、農業従事者の人手不足対策および食糧生産の増加による社会貢献などで、注目すべき企業となっています。
(図2:ディアの農機改良ステップ)
好業績
上記の取り組みは、株主付加価値(SVA)を重視する経営方針を2001年に採用した後に始まりました。農機メーカーは農産物市況などの影響を受けるため、循環的な側面がありますが、徐々に収益力(営業利益率)やSVAの水準が上昇してきたことが分かります(SVAは負債や株式などの資本コストを上回る利益を表す概念で、プラスであれば、株主の期待以上の利益を上げ、株主還元の原資が積みあがることになります)。
(図3:ディアの売上高と営業利益率の推移)
(図4:SVAと総資産利益率の推移)
こうした好業績を背景に、増配や自社株買い戻しを通じて株主にキャッシュを還元してきました。
(図5:ディアの年間配当額の推移)
(図6:ディアの株主還元=キャッシュフローの半分以上を還元=)
割安感
2021年度の好業績は農産物価格の恩恵を受けた面もありますが、着実に付加価値の高い事業の伸びが背景にあります。こうした事業の市場規模は技術進歩とともに拡大すると思われ、ディアの利益水準の底上げが期待されます。
これらの好業績や株主還元にがあるにもかかわらず予想PERは14倍台です。これは昨年の好業績の反動を投資家が警戒していることが要因の一つになっていると思われます。市場規模の拡大と収益力の強化を考えると、割安な水準だと思われます。
リスク
生産量の急増や景気後退による需要減少などを背景とした農産物価格の急落は、同社株に短期的な影響があると思われますが、豊富なキャッシュによる配当や自社株買いは株価の下支えになると思われます。
(出所:会社資料、図3と図4は会社データからエグゼトラスト作成)
DEの基本データ(出所:会社データ、Yahoo! Finance)
(6月17日現在)
株価 322.72ドル
時価総額 986億ドル
総収入 457億ドル
予想PER 14.1倍
予想利回り 1.37%
本社:イリノイ州 モリーン
上場:1933年6月
株価チャートは5年
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
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株価大幅下落を受けて
S&P500指数は5.8%安と2020年3月以降で最悪の週間下落率となり、3674.84で引けた。S&P500指数採用銘柄の90%以上が値下がりした日が、6月8日以降に5回あった。そして年初来でも大きく下落している直近のマーケットをおさらいする。
S&P500指数は今年1月3日の高値から23.4%も下落。その他の大幅下落はこの20年では他に3回だけ。
さらに遡ると1987年のブラックマンデーと70年代のオイルショック
セクター別、スタイル別パフォーマンスは以下の通り
バリューよりグロースが売られている。セクター別ではエネルギーが唯一良好なパフォーマンス。そのエネルギーセクターも先週は大きく売られ、逃げ場がない状態だ。
バリュー銘柄グロースが
資産別 週間変化率
主要指数の日次変化率
ナスダック総合指数の変動率と下落率が大きい。濃いオレンジ色が下落率の大きい日。だいぶオレンジが目立ってきて2008年当時と似ている。相場が底打ち反転する場合は、緑色で大幅上昇の日が出現する。まだその兆候が見られない。
S&P500指数:コロナ前の高値を下回っている銘柄の比率
S&P500指数構成銘柄のうち高値から20%以上下落している銘柄の比率が50%を上回っている。ただし指数自体は2020年2月のコロナ危機より8%程度上に位置する。時価総額の大きいアップル、アルファベット等が踏ん張っているからだ。普通の銘柄に投資していれば指数より大きく下落しているはずだ。
今後の懸念材料
■業績予想の引き下げ
目先の最大の懸念材料は企業業績だろう。現時点のアナリスト予想は、2022年のS&P500指数の1株当たり利益(EPS)が11%増の228ドル、2023年には9.6%増の250ドル近くとなっている。
ただし2007年以降に見られなかった業績の急変がありうる。次回の決算発表後のカンファレンスコールで会社側はより多くの懸念材料に言及するかもしれない。
■株価収益率の低下
業績予想が低下するなら株価収益率(PER)にも下方圧力がかかることになる。そうなれば現在15.4倍になっているS&P500指数は、見た目ほど割安でないことになる。
ちなみにゴールドマン・サックスはS&P500指数のEPSが239ドルでPERが17倍台になればS&P500指数は4165に達することも可能だとしている。先週金曜日の終値よりも13%高い水準だが楽観的なケースだ。
もし2023年のEPSが225ドルでPERが14倍まで低下すると、S&P500指数は金曜日の終値から14%下落した3150になる可能性がある。
S&P500指数 戦後の弱気相場の乗り越え方
ここまで直近の相場と今後の懸念材料を紹介した。ただし、そうは言ってもやはり不死身の米国株式市場だ。こういう試練は何度も乗り越えてきた。では実際の株価パフォーマンスはどのようなものだったのだろう。
S&P500指数の弱気相場のその後
下記のテーブルは
①20%下落までに要した日数
②20%下落が止まるまでの日数や追加の下落率
③弱気相場の最大下落率と要した日数
④20%下落に達したあとの翌週、翌月、翌3か月、翌半年、翌年のパフォーマンス
等だ。
四半期大幅下落の後
S&P500指数 四半期パフォーマンスが15%以上のマイナス
昨日までのS&P500の下げ幅は5月末から11%以上下落し、この四半期(4月〜6月)では19%下落している。過去を振り返れば、この後は大きく反発したケースが多い。
第二次世界大戦後に四半期ベースで15%以上の下落は9回目。過去8回の15%以上の四半期下落の次の四半期は平均で6.22%の上昇だ。その後2四半期の平均は15.15%の上昇を記録している。次の半年間と1年間で、S&P500指数は毎回上昇した。
S&P500指数 2四半期パフォーマンスが20%以上のマイナス
今回、2022年上半期のS&P500指数はここまで23%下落している。過去2四半期に20%以上の下落があった場合、その後の株価回復が同様に期待できる。
第2次世界大戦以降、S&P500指数が2四半期で20%以上下落したときは、次の年(または次の4四半期)には少なくとも22%上昇している。
まとめ
インフレ高進を止めるための利上げは必然的に経済活動を抑制する方向に働く。そうなれば、業績予想の下方修正とPERの収縮が株価へのダブルパンチで効いてくる。
現状は‟お先真っ暗”が投資家心理だろう。一方で株価バリュエーションはこの何年も見られなかった割安状態になりつつある。米国株式市場はこういう試練を何度も何度も乗り越えてきた。
決して悲観することはない。長期の資産形成を実践している人には、またとない投資の好機が訪れていると思う。ただし拙速は禁物だ。時間をかけてゆっくり買い進めよう。
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5.お散歩コーナー
◇◇最近行ったお店、映画、美術館、書籍編◇◇
~熊倉 貫宜の巻~
元証券マンで読書家である熊倉貫宜さんの寄稿です。
ソングライン / ブルース・チャトウィン
『金の北米、女の南米、耐えてアフリカ、歴史のアジア、何もないのがヨーロッパ、問題外のオセアニア』
これは、いささか現代では不謹慎な標語ですが、一昔前バックパッカーとして世界を旅する日本の若者が共有していた有名なフレーズです。
斯様に日本人バックパッカー=貧乏旅行者の間では、旅の目的地として、オセアニア地域の人気は低いモノでした。
シドニーやメルボルンといった大都会の美しい風景や美食を求めた短期の休暇旅行は、時差も余りないことから、人気のようですが、映画マッドマックス的な荒涼たる大地を旅しようという若者はあまりいらっしゃらなかったようです。
本書が日本で初めて翻訳・紹介された1994年( 芹沢真理子訳、めるくまーる社)以降、2000年のシドニー五輪で先住民アボリジニの問題が注目されてから、徐々に彼の地を目指す方も出現して来たようです。
先住民アボリジニについては、私も教科書的知識を有しておりましたが、オーストラリアのロックバンド、ミッドナイト・オイル:Midnight Oil*の活動などから更に興味を惹かれました。
ミッドナイトオイル:Midnight Oil*
オーストラリア、シドニー出身のロックバンド。リード・ボーカルのピーター・ギャレットは、オーストラリアの環境・国家遺産・芸術大臣を務めた。シドニー五輪の閉会式でアボリジニへの差別を糾弾する曲を熱演した。
本書に綴られている物語は、そのアボリジニの驚愕の文化を紹介しながら、著者ブルース・チャトウィンの放浪への憧憬、異文化との出会い、生と死の連環、といった哲学的命題が紀行文の中に詰め込まれております。
チャールズ・ブルース・チャトウィン(Charles Bruce Chatwin)
1940年5月13日 - 1989年1月18日、英国シェフィールド生まれ。
オークションで有名なサザビーズに勤務、美術鑑定士として成功。
その後エジンバラ大学で考古学を専攻、新聞社の特派員を経て作家活動に入る。
第1作『パタゴニア』はイギリスのホーソンデン賞、E・M・フォースター米国芸術文学アカデミー賞などを受賞、ニューヨーク・タイムズ・ブックレヴュー最優秀書籍に選ばれる。
1989年にHIVで他界するまで5作の小説を発表した。
(Wikipediaなどから熊倉作成)
さて、その大筋たるアボリジニの文化とは何でしょうか?それが本書の題名である「ソングライン」、歌で繋がれる路なのです。
自然崇拝や精霊の存在という信仰を持つアボリジニの人々にとり、大地の何気ない樹木、動物、岩にも全て精霊が宿り、有名なエアーズロックに代表される聖地が多数あるとされています。
彼らは文字や地図という手法ではなく、歌によりその地域の情景、多くは精霊の往来や立ち寄った泉・食糧・宿など土地の記憶を表現し記録しているのです。
彼らは広大な大地の中を、出会った者同士の歌の交換により情報を入手し、地図も無く自由に移動することが出来るというのです。
チャトウィンは、そんな何も所有しない、何にも執着しないという、禅の「本来無一物」のような究極の自由を獲得して大地を放浪する生活に強烈な憧憬を抱きました。
しかしながら、西欧社会から来た著者は、近づけば近づくほど迷路に入り込むようなソングラインの世界に幻惑され、最終的には死という放浪の果ての約束された目的地に思いを馳せます。
現在タイミングよく、1974年から商業ベースに乗りにくい世界の映画を上映してきた岩波ホールで、閉鎖前の最後の上映作品としてチャトウィンのドキュメンタリーが上映されております。
この作品はチャトウィン没後30年に、生前親交を結んだドイツの映画監督ヴェルナー・ヘルツォーク(アギーレ/神の怒り、フィツカラルド 、コブラ・ヴェルデ)が制作したドキュメンタリー映画で、私も鑑賞いたしましたが、大変に味わい深い作品です。
読んでから観るか?観てから読むか?
歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡
2022年6月4日(土)~2022年7月29日(金)
【熊倉 貫宜】
1980年大和証券入社。企業派遣留学としてシカゴ大学経営大学院にてMBA取得。シンガポール、香港駐在を通しアジアビジネスに関わる。
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6. ちょっと一息「FAの視点」
ファイナンシャルアドバイザーの本橋竜一さんが資産運用に関してお客様の疑問に答えるコーナーです。
長く染みついた「デフレ」というぬるま湯を脱するヒントをコラムで…
Q.最近の値上げラッシュに困っているのですが...
A. 昨今の日常生活において「インフレ」を実感しない日はありません。インフレとはインフレーションの略で、私たちが普段購入している日用品やサービスの価格(=物価)が上がることを指します。
モノの値段が上がるので、それを買う為に必要なお金をよりたくさん用意しなければならず、これはモノに対してお金の価値が下がっていることを表します。
インフレ対策は一筋縄ではいきません。例えばエネルギー等の資源高。世界情勢の不安定化により、原油等のエネルギー価格は高騰しています。燃料高により、モノを運ぶ物流コストも上昇します。また世界的な食物需要も増大し、小麦や大豆等の穀物価格も上昇傾向です。
日本はこれらの多くを海外から輸入しており、その代金の殆どを米ドルで支払っています。故に最近の円安傾向は、インフレにダブルパンチで効いてくるのです。
我が国には、エネルギー等の資源がありません。毎月の電気料金やガソリン価格が気になる方もいるでしょう。日々食卓にのぼる食用油・小麦や水産物等、多くが海外産なのです。
もはや天ぷらうどん(油、うどん粉、エビ他)すら、日本食とは言えないのかもしれませんね。
今や日本にいながらの日常生活も海外と密接に繋がっています。
こうした事実をしっかり認識し、短期で儲けるギャンブルとしてではなく、購買力を維持するために長期的な視点でインフレに勝つ「正統派な資産運用力」こそ、誰もが身に付けるべき必須スキルではないでしょうか。
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身の回りのありとあらゆるモノが値上がりしまくっています!
報道によると、食品主要105社による2022年1月-6月の食品値上げは、遂に1万品目を超えました… こんな時代であればこそ、コツコツ節約系のFPではなく、(私のような)資産運用サポートで購買力アップ系FAの出番!
川田さんと一緒に、皆さまの資産運用力向上に尽力したいと思います。
【本橋竜一】
1998年に大学を卒業後、横浜銀行にて金融業界でのキャリアをスタート。その後、外資系金融機関のプライベートバンカーへ転身。間もなく世界を震撼させるリーマンショックが勃発し、第一線のセールスとして成功を諦め、正統派な資産運用を伝えるファイナンシャルアドバイザーを目指そうと決意。数名の顧客を頼りに約20年の金融機関勤務から独立。信用・人脈ゼロながら、海外のPB・FAビジネスモデルを徹底研究、顧客体験の向上に資する創意工夫を重ねる日々。
現在は、特定の金融機関に属さず、真にお客様の価値観を大切にした資産運用・形成サポートを専業とする、独立系ファイナンシャルアドバイザーとして、お客様へのプライベート金融コンサルティングに従事している。
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7. 超富裕層が実践する「プライベート投資戦略」とは
IFAに特化した営業支援を行っている市川宏さんが、超富裕層が活用している投資戦略を、皆様に簡単にお伝えするコーナーです。
海外の富裕層は、プライベートバンクなどを通じてレバレッジを使った投資を行っています。日本では意外と知られていませんが、多くの富裕層がこの仕組みを使っています。今回はその手法の一例をご紹介します。
レバレッジを使った投資の考え方
レバレッジ投資としてまず思い浮かぶのは、信用取引やレバレッジ型投資信託・ETFという方が多いと思います。イメージとして、「リスクが高い」「怖い」と思われるかもしれません。
確かにFXなどは、元本に対しての動きが1の場合、3倍のレバレッジをかけて同じ投資をすれば、3動くことになります。短期的に大きな利益を狙いやすい分、投資元本以上の損失の可能性もあります。
しかし、富裕層が使うレバレッジ投資は少し違います。
レバレッジ投資を行うと、投資元本が実質的に増えることになりますが、その分リスクを少なく取ります。例えば、元本に対して1動く投資を、3倍のレバレッジをかけて0.5動く投資をします。そうすると、利益になった場合、取引自体のリスクは半分(1→0.5)になりますが、レバレッジ3倍になっているので実質的に元本に対する利益は増えています(1→1.5)。
このように、富裕層は資産を有効活用した投資を行っています。少し具体例を挙げてみます。
現金を担保にレバレッジをかける手法(信用取引、FXなど)
まず、少額からでも取引可能で、よく知られている投資手法が「信用取引」「FX」などです。
個人投資家でも行っている方は多いのではないでしょうか。これらの手法は、短期的に少しの利益を狙うようなスウィングトレードなどで活用されています。早ければ1日単位でこまめに利益を積み重ねる手法などがあります。
レバレッジをかけるために結構高い金利を支払う必要があるため、長期取引には向いていません。やるなら短期です。
なので、富裕層の方はあまりこのような短期取引は行いません。日中リアルタイムで取引ができる時間的余裕のある方ならできると思いますが、そういう人は少ないと思うので、投資という意味では少し違うのかもしれません。
株などを担保にレバレッジをかける手法(証券担保ローン)
もうひとつは、保有する金融資産を担保に資金を借り入れ(レバレッジ)、運用資金そのものを増やす方法です。
金融資産は、担保としての価値を活用することができます。変動が低い金融商品ほど担保掛目は高くなり、国債ならば80%、上場株式などでも60%程度の掛け目で資金を借り入れることができます。
これらの担保は回収可能性が高く、今のような借入金利が低いときは、比較的低金利での借り入れが可能です。この結果、担保資産からの運用収益を確保したうえで、レバレッジを掛けた資金で運用と借入の差額を得ることができるわけです。このようにして運用資金を増やせば、一取引ごとの利回りはそれほど高くなくても、自身の運用資金からみた運用利回りを大きく高めることができます。
最初に書いたように、取引ごとのリスクを下げ、投資全体の利益を増やすことができます。自社株などを保有している上場企業オーナーは、ほぼこの手法を行っています。
不動産を担保にレバレッジをかける手法(不動産担保ローン)
不動産投資家にはよく知られた手法ですが、保有している土地やマンションなどを担保に現金を借り、それを投資の原資にすることができます。
私の知り合いでも不動産を担保に、新たな不動産物件を買い、不動産収入を増やし続けている人もいます。
この手法は不動産を所有している人だけにしかできない手法ですが、不動産は価値が変わりづらいので銀行からも担保価値として評価されやすく、レバレッジをかけやすいです。
一方、不動産の欠点は「流動性」なので、流動性の低い不動産を担保に、流動性の高い金融商品で利益を狙う。これも「資産の有効活用」です。
過度なリスクは禁物
このように、保有資産を有効活用できるレバレッジ投資の手法ですが、最も気を付けれければいけないのがリスクの取りすぎです。
実質的な元本が増える分、担保にしている資産、借りた現金で投資している資産、これらの両方とも下落した場合には大きな損失につながります。
リスクをうまくコントロールした上でレバレッジ投資を行う。これを忘れてはいけません。
【市川宏】
株式会社Winviser代表取締役。SMBC日興証券にて茨城、福岡、東京の各支店にて資産運用コンサルティングに従事した後、超富裕層向け金融商品のマーケティングを行う。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)業者に転籍し、超富裕層の資産運用のアドバイスを行った後、日本の金融業界の発展のためIFAに特化した支援会社を設立。現在は、IFAを支援する傍ら、自身の経験を元に個人投資家に資産運用のサードオピニオンを行っている。
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8. 今後の活動情報
◇ストックボイス:7月6日(水)11:00~
◇日経CNBC:6月29日(水)電話インタビュー(改野さん)
6月30日(木)大倉さん電話インタビュー(改野さん)
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