そもそもなぜ利上げする?5分で理解『米利上げ』の基礎知識
こんにちは、下山です。
「アメリカの利上げ」に対する警戒が
市場で高まっています。
「米FRBは来年、何回利上げするのか?」
「実際に来年、アメリカで利上げされたら
株価にどういう影響があると考えられるのか?」
トレードされている方ならやっぱり気になりますよね。
ただ、気になっている割に
「実のところ利上げについてあまり理解していない」
そんな方も意外と多くいらっしゃいます。
「とにかく金利をあげるんでしょ?」
くらいの理解にとどまっている方も
少なくありません。
「もっと深く知りたいと思って調べても
なんだか説明が難しくてよく分からない」
と感じている方も
いらっしゃるでしょう。
そこで本日はアメリカの「利上げ」について
改めて基礎知識をあなたに授けます。
前提知識がない方でもご理解いただけるよう、
できるだけ簡単にポイントをお伝えします。
実は、トレードで勝つために
経済の知識はそれほど必要ではありません。
実際、株アカデミーでも経済知識に頼らない手法を教えていて
生徒さんが利益を出されています。
ただ、利上げのことくらいは、
資金の大きな流れを知る上でも
最低限知っておいても良いでしょう。
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何のための利上げか?
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利上げ、利上げと騒がしくなってきていますが、
そもそも、アメリカの中央銀行であるFRBは
何のために利上げをするのでしょう?
教科書どおりにいえば
「景気の過熱をさまし、インフレをおさえるため」
です。
実際、アメリカは今まさに
歴史的なインフレ状態にあります。
先日発表された、
2021年11月のCPI(消費者物価指数・総合)は
6.8%
これは39年ぶりに高い数字です。
39年ぶりです。
生きているうちに2回経験するかどうか、
それくらいレアな状況に
我々は直面しているということです。
行きすぎたインフレはしんどいですよね。
モノの価格が上がり、生活費が高くなるわけですから、
アメリカ国民の生活も苦しくなります。
だから今、そのインフレ熱をさますためにも
利上げが注目されているわけです。
でも、なぜ利上げが
インフレをおさえることにつながるのでしょう?
「よく分からない」
そう思うあなたはぜひ1つずつ
分解して考えてみてください。
まず、
「そもそもインフレはどういう状態か?」
ということから考えてみましょう。
インフレは、
モノの価格が高騰している状態を指しますね。
では、
「なぜモノの価格が高騰しているのでしょうか?」
世の中に出回る通貨の量が多すぎるからです。
通貨量が多すぎて、通貨の価値が下がってしまい
モノの価格が上がってしまうのです。
であれば、通貨の量を減らせば
インフレをおさえられると思いませんか?
じゃあ世の中に出回る通貨の量を
減らすにはどうしたら良いのか。
たとえば企業や個人が銀行から借りるお金、
これが減ればどうでしょう。
企業や個人が銀行からお金を借りなくなれば
世の中に出回る通貨の量は減っていきますよね。
では、企業や個人が積極的にお金を借りなくなる、
そんな状態を作りたければどうすれば良いでしょう?
金利を上げれば良いですよね。
金利が高くなるほど
返済しなければいけないお金の合計額が大きくなります。
こうなると、借金をすることに対して
慎重になる企業や個人が増えてきます。
「安い金利だから」
ということで気軽にお金を借りていた企業や個人が
慎重になり始めます。
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どの金利を上げるの?
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いかがでしょう?
FRBが利上げをする理由を
ご理解いただけていれば嬉しく思いますが、
ただ、話はここで終わりません。
まだ覚えておくべきことがあります。
金利といっても色んな金利があるわけですが、
アメリカの中央銀行であるFRBがどの金利を操作するのか?
ということもぜひ知っておきましょう。
FRBは、
"企業や個人が銀行からお金を借りるときに発生する金利"
を操作するわけではありません。
FRBは、
"FF金利(Federal Fund Rate)"
という金利を操作しているのです。
難しい単語が出てきましたが、
そんなに難しい話ではありません。
FF金利は、簡単にいうと
銀行が他の銀行からお金を借りるときに発生する金利です。
銀行といっても
いつも必ず資金が潤沢にあるとは限りません。
資金が足りなくて困る銀行もあります。
そんな銀行はどうするか?
他の銀行からお金を借ります。
で、このときに発生する金利がFF金利、
というわけです。
FRBの「利上げ」は
このFF金利を上げることになります。
ここで疑問に思われるかもしれません。
「さっきの話とつながらないんじゃない?」
と。
先ほど、
銀行が企業や個人にお金を貸すときの金利を上げることが
インフレ抑制になり得る、という話をさせてもらいましたので、
「FF金利じゃなくて、銀行が企業や個人にお金を貸すときの金利を
上げないといけないんじゃないの?」
と思われるかもしれません。
でも実際は、FF金利を上げると、
結果的に銀行が企業や個人にお金を貸すときの金利も
上がることになるのです。
銀行が他の銀行からお金を借りる際の金利が高くなれば、
企業や個人にお金を貸すときの金利も高くしなくてはいけません。
仮にある銀行が、
他の銀行から金利0.25%で借りてきたお金を
金利1%で企業に貸していたとします。
しかしFRBが利上げをして
他の銀行からお金を借りるときの金利が1%に上がったとします。
金利1%で借りてきたお金を
金利1%で企業に貸すわけにはいきませんよね。
ですから、FF金利を上げると
結果的に銀行が企業や個人にお金を貸すときの金利も
上がることになるのです。
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利上げがもたらす株価への影響
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では最後に、
利上げがもたらす株価への影響について。
実際に利上げが実施された場合、
株価にどんな影響があると考えられるのか?
教科書どおりならば
利上げは株価下落の要因となり得ます。
なぜか?
金利が高くなると、
企業が銀行からお金を借りづらくなり、
設備投資が進まなくなり、
企業の成長が遅くなることが考えられます。
また、利上げされると
企業は以前よりも多くの金額を
銀行に返済しなければいけないことになります。
これは企業にとって
利益を圧迫するマイナス要因となります。
また、利上げの影響を受けるのは
必ずしもアメリカの企業だけではありません。
世界中にアメリカ企業と取引のある企業があり、
連鎖的にダメージを受ける可能性が出てきます。
結果、アメリカだけでなく
世界的な株安につながることも
1つの可能性として考えられます。
ちなみに、アメリカの金利が上がれば
米ドルが買われる要因になりますので、
為替相場において利上げは
円安ドル高要因になるというのが
一般的な認識です。
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注意
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ただし、相場は必ずしも
教科書通りに動くわけではありません。
そのことはトレード経験者の方なら
よくご存知だと思います。
教科書的な知識の、なんとあてにならないこと。
ですから、
利上げ=株価下落
利上げ=円安ドル高
という公式はあくまで1つの可能性でしかなく、
いついかなる時も、決めつけは禁物だということは
忘れてはいけません。
相場はさまざまな要因が絡み合って
動くものですからね。
本日も最後までご覧いただき
ありがとうございました。
下山敬三