EAの組み合わせ方[柿澤真正]
柿澤真正さんプロフィール
かきざわ・まさのぶ。2009年よりFXの自動売買システムの開発を開始し、EasySniperやMultiAgent等をはじめ、多くの自動売買システムを証券会社やユーザに提供してきた。インヴァスト証券の自動売買サービス「シストレ24」にて、提供ストラテジーMultiAgentが2016年の年間アワードを圧倒的成績、評価で獲得。また、ひまわり証券の自動売買サービス「エコトレ」にて提供ストラテジーの「ひかえめビーナス」が2013年〜2014年の1年以上にわたり利用者数1位をキープ。利用者数は700名を超える。現在は、MultiAgentをさらに進化させたドリームエージェントFXを提供中。
この連載では、FXの自動売買システム、その中でもMetaTrader4(以下MT4)上で稼働する自動売買システムであるEAにスポットを当て、それを運用していくための知識・ノウハウを専業トレーダーの柿澤真正さんにナビゲートしていただきます。EAの運用を検討している方はもちろん、既にEAを利用している方もぜひ参考にしてください。
※この記事は、FX攻略.com2018年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
相場状況に合わせて使い分ける必要あり
皆さん、こんにちは。2018年6月号から連載をスタートさせていただきました『はじめよう!EA生活』も早くも今回で5回目となります。前回は「EAの選び方」と題しまして、EAの成績の見方・評価の仕方について説明させていただきました。損益率に注目してしまいがちですが、それ以上に運用を続けていくにあたってはドローダウンを重視してほしいという点をお伝えしました。
今回は「EAの組み合わせ方」としまして、EAを用いた自動売買運用を行っていく上で、EAをどのように組み合わせていけば良いのかについてお話ししていきたいと思います。タイトルを見て、「そもそもEAって組み合わせる必要があるの?」「その時々で調子の良いEAを使えばいいんじゃないの?」と疑問に思われる方もおられるかもしれません。また、「EAって一度動かし始めたらずっと同じものを使い続ければいいんじゃないの?」と思う方もおられるでしょう。
まず、「EAって一度動かし始めたらずっと同じものを使い続ければいいんじゃないの?」という疑問についてお答えすると、EAとは特定のトレードロジックを搭載した自動売買システムです。「特定のトレードロジック」ですので、基本的に途中でEAが自らトレードロジックを柔軟に変更していくことはなく、どんなときでも同じトレードを続けます。
ちょっと回りくどい言い方をしてしまいましたが、要するにEAにはあらかじめ「前提とする相場状況・環境があり、その前提とする状況に適合するようなトレードロジックを実装している」ことになります。ということは、前提とする相場環境が変化すれば、そのEAは思うようなパフォーマンスを発揮できない可能性があるということです。したがって、基本的に相場状況に応じて、その相場に適合するEAを使い分けていく必要があるのです。
どの期間を基準に好調と判断するか
上記を踏まえると、「その時々で調子の良いEAを使えばいいんじゃないの?」という疑問は、ごく真っ当です。ただここで、見逃すことのできない大きな壁があります。それは、どのタイミングをもって「調子の良いEA」と判断するかということです。週間ベースで利益が出ていたらなのか、月間ベースで利益が出ていたらなのか、それとも数か月単位で見る必要があるのか…。そして、自身で定めた期間においては調子が良いと判断できても、利用を始めた翌日から不調に転じるかもしれない、という問題もあります。
また、相場とEAの適合性を判断する基準として、EAがどのような相場(トレンド相場、レンジ相場など)を前提としたものなのかを認識することも重要で、その相場に適合するEAを利用するという方法も考えられます。しかし、この場合は「今の相場をどれだけ的確に判断できるか」という知識と経験、そしてセンスが求められます。こう考えると、「その時々で調子の良いEAを使う」という一見合理的に思える行動も、実際にはなかなか難しい、ということになります。
こうした理由から、EAは単独で利用するのではなく、前提とする相場やタイプの異なるものを複数組み合わせて利用することが望ましいです。そうすることにより、さまざまな状況に対応可能な「リスクヘッジ」の効いた運用を行うことができるというわけです。
いかにリスクヘッジできるかが重要
では具体的に、どのようにEAを組み合わせていけば良いのでしょうか。そのキーワードとなるのが、先ほど述べました「リスクヘッジ」です。EAを組み合わせる目的は、相場状況の変化などによる急激な損失を可能な限り抑え、長期的に運用を続けて結果的に資産を増やすことにあります。要するに、中長期的に可能な限りなだらかな損益曲線を実現することです。そのためには、前提とする(得意とする)相場が異なるタイプのEAやスキャルピング・スイングなどトレードタイプの異なるEA、利益や損失が出るタイミングの異なるEAを複数組み合わせる必要があります。あるEAで損失が出てしまったときに別のEAの利益でその分をカバーできるような組み合わせが理想的です。
EAの組み合わせ作業は経験が必要な上に時間を要するので大変ではありますが、このような「EAのポートフォリオ化」を行うことで、状況変化に強い運用が可能となります。次回、第6回ではEAをさらに深く理解するために、EAの作り方の概要に関してお話ししていく予定です。