1.3兆赤字は終わりの始まり?ソフトバンク『3つの爆弾』
こんにちは、下山です。
『ソフトバングループ、営業損失1兆3646億円』
先週、衝撃的な数字が発表されました。
決算説明会で孫社長の笑顔はほぼ見られず
とても暗い雰囲気でした。
(ソフトバングループ
2020年3月期 決算説明会動画
https://group.softbank/news/webcast/20200518_01)
ほんの3ヶ月前、「潮目が変わった!」
と威勢良く語っていた孫社長とは
別人のように感じられました。
ソフトバンクの時価総額は
過去、ITバブルが弾けた際、
100分の1にまで暴落したことがありました。
孫社長はその時のことを振り返り、
「むしろやってやろう!という気になった。」
と以前語っていたように記憶していますが、
今回はあまりそういった雰囲気は感じられず、
相当こたえているような印象を受けました。
「このショックはむしろ新しい時代への
パラダイムシフトを加速すると捉えて挑戦していきたい」
と話してはいましたが、声のトーンは低く、
プレゼンテーションの時間もいつもより短く、
状況の厳しさを感じざるを得ません。
では実際のところソフトバンクGは
どれほどヤバい状況にあるのか?
今回は、発表された決算の数字を拾いながら
特にリスクが高いとみられる
3つの爆弾について考察いたします。
ソフトバンクGの株価は
日経平均株価にも大きな影響を与えますし、
営業損失1兆3646億円は史上稀に見る数字です。
しかも、事業の失敗ではなく、
投資の失敗から生まれた赤字ですから、
株トレーダーとして大いに学べることがあります。
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WeWork問題
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営業損失1兆3646億円(2020年3月期の連結決算)
という数字について。
どうしたらここまで巨額な損失になるのでしょうか?
この損失の大部分は、
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資によるものです。
現在、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは
世界のベンチャー企業88社に投資をしていますが
その中でも特に目立つのはやはりWeWork問題ですね。
これは「孫社長、最大の失敗」
と言っても過言ではないでしょう。
では、具体的にどれくらいの金額を投資し、
どれだけの損失を被ったのか?
今回発表された『決算短信』に、こう記載されています。
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2020年3月末現在、
これらのWeWorkへの投資の累計額は103億米ドル、
その帳簿価額は24億米ドルです。
(ソフトバンクグループ
『2020年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)』
https://group.softbank/system/files/pdf/ir/financials/financial_reports/financial-report_q4fy2019_01_ja.pdf
P.9より)
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もともとWeWorkの価値は約470億ドルと
見積もられていました。
が、
昨年9月末にはその価値は、約78億ドルまで下落。
その後も見直しのたびに評価額は下落し、
2020年3月末時点では
コロナウイルス感染の影響もあり、
約29億米ドルになったとのこと。
470億ドルが29億ドルにまで下落・・・
とんでもない暴落ですね。
これから先、評価額がさらに
下げられることも十分あり得ます。
そもそもWeWorkが存続できるのか、
ということすら怪しいところです。
コロナウイルスにとどめを刺され、
帳簿価額の24億米ドルが
キレイさっぱりなくなってしまう可能性も想定されます。
さらに、ソフトバンクGは
昨年合意した株式買い取り計画を撤回したことに対し、
訴えられていて、訴訟リスクという
お荷物もまだ背負ったままです。
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UBER危機
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もう1つの誤算がUBERです。
ここ最近、自分の近所でもUBER EATSのお兄さんが
自転車で走っているのをよく見かけます。
コロナの影響でフードデリバリーの需要は
世界中で高まっていますので
「UBERはさぞかし儲かっているのだろう」
という印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、
現実は甘くありません。
そもそもUBERの主力サービスは
フードデリバリーではありませんし、
ライバルも多い激戦ジャンルです。
実際にウーバー・テクノロジーズは
今年の1月には
インドのフードデリバリー事業を売却しています。
UBERの強みは配車サービスです。
日本ではあまり馴染みがありませんが、
海外に行く人の話を聞くと
やはりUBERは重宝するようです。
タクシーに乗って
ぼったくられる心配があり、
安心して利用できない国であれば
特にありがたみが感じられるサービスです。
インドでUBERを利用したことのある友人に
話を聞くと、車両はいつもSUZUKIの軽で
運転も荒く、決して乗り心地は良くなかったとか・・・
また、アプリで間違った行き先を指定してしまって、
ワケの分からない場所で
容赦無く降ろされてしまい、
1時間ほどスーツケースを持ったまま
歩き回った、という思い出話を聞かせてくれました。
ただ、それでも見知らぬ土地で
普通のタクシーに乗る不安を考えると
ありがたいサービスのようです。
しかし、配車サービスは
コロナの影響をもろに受け
先週18日にウーバー・テクノロジーズは
3000人の人員削減を発表しています。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドは
今年3月末時点でUBERに
累計約95億ドルの投資をし、
約14億ドルの損失を出していますが、
コロナの第二波があれば、
損失額が増える可能性は極めて高いでしょう。
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アリババ頼みの危険
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最後はアリババ。
以前のメルマガでもお伝えしましたが、
大前提として、ソフトバンクグループは
アリババ頼みの企業です。
結局アリババの株価が上がるか下がるかに、
ソフトバンクグループの命運がかかっていると言って
過言ではありません。
アリババの株価は3月にいったん大幅下落したものの、
ここ最近、ある程度は持ち直しています。
コロナ感染症の第二波によって
株価が再び下落する可能性も考えられますが、
中国のアマゾンとも言われるアリババですから、
今後新型コロナ感染症の第二波がやってきて
再び都市が封鎖されたとしても、
むしろ需要は拡大するものと想定されます。
ですから、アリババの事業継続性に関しては
あまり心配いらないのかもしれません。
ただ、当然リスクはあります。
米中関係悪化もその1つですね。
昨年、
「トランプ政権がアメリカの証券取引所に上場している
中国株の上場廃止を検討」
との報道もありましたが、
今後、米中関係がさらに悪化した場合、
何が起こるか分かりません。
そうでなくても再び世界同時株安に陥り、
アリババ株が暴落する可能性も十分にあります。
FRBが無制限に
金融緩和を行なっている状況を考慮すると、
いずれどこかでその歪みが爆発すると考えるのが自然でしょう。
アリババ株が大暴落するようなことがあった場合、
どのように対処するのか、
孫社長が対策を考えているのかその点は分かりませんが、
もし考えられていないとしたら
ソフトバンクGは
いずれさらなる苦難を迎える可能性が極めて高いでしょう。
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常に最悪の想定を
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WeWork問題、UBERやアリババの株価下落、
などなど、
ソフトバンクは現在リスク盛り盛り状態です。
「用心」
という言葉を孫社長は使っていましたが、
現時点でのリスクヘッジは不十分に感じられます。
ソフトバンクグループが
すぐに倒産する状況にあるとは思いませんが、
最悪の事態が起こった時、
どう対処するのかが見えないことに不安を覚えます。
「投資家たるもの常に最悪を考えなければいけない」
ということを
ソフトバンクGの一連の投資内容から改めて感じます。
本日も最後まで
ご覧くださいましてありがとうございます。
下山敬三