「バフェット5兆赤字」は半分フェイク?会計のカラクリに物申す。
こんにちは、下山です。
「緊急事態宣言」が1ヶ月延長されてから、
1週間が経ちました。
さすがにこのままだと日本経済がヤバいので
徐々に緩和の方向へと舵が切られていくようにも
思われますが・・・、
コロナとの戦いそのものが
長期化することは間違い無いでしょう。
誰も予想していなかったような世界が
これから更に待っているかもしれません。
そしてそんな中、世界的投資家である
あのウォーレン・バフェット氏でさえ
コロナの脅威を見誤り、損失を出していた
ということが明らかになりました。
「グローバル化によって航空会社の将来は明るい」
と考えるバフェット氏にとって、
航空関連銘柄は大のお気に入りでした。
2月末の株価下落時にも
デルタ航空の株を買い増していました。
その時は
「長期的に見て株価はいずれ戻るだろうから今が買い時だ」
と判断されたのでしょう。
ところがその後、
コロナウイルスの影響で
飛行機の利用者が激減する様子を見て、
バフェット氏は保有していた航空関連銘柄を
全て売却し、ロスカットしました。
「一生保有するつもりで買う」
で有名なバフェット氏としては極めて異例な対処です。
さすがのバフェット氏も
今回ばかりは航空会社の将来に対して
確信を持てなくなったようです。
さらに、ウォーレン・バフェット氏率いる
投資会社バークシャー・ハサウェイが先日発表した
2020年1~3月期の決算は
「最終損益が497億ドル(約5.3兆円)」
という結果でした。
バークシャー社にとって過去最大の赤字です。
これらのニュースに対して一部では、
「バフェット氏も、もう歳だし投資の手腕が鈍ってきてるんでしょ」
といった声も聞かれます。
確かに、バフェット氏はそろそろ90歳ですからね。
元気に生きているだけでもすごいと言える年齢ですし、
脳が衰えていてもおかしくない年齢ですよね。
でも、本当にバフェット氏の手腕は
衰えてしまったのでしょうか?
自分としては、
「バフェット氏もついに衰えた」
と決めつけるのは乱暴に思えます。
たとえば「5兆円」という巨額な数字だけが先行し、
その具体的な内容がしっかりと解説されていない記事も多く、
バフェット氏の主張が
世の中に届いていないようにも感じます。
そこで本日は、世の中にあまり届いてないであろう
バフェット氏の言葉を紹介させていただきます。
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裏を読め
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どんなニュースでも物事の一部始終が
報道されることはありません。
必ず一部が切り取られて報道されます。
ですから、より正確な情報を取りに行くため、
大元の情報に触れるべきです。
自分自身も全ての情報に
目を通しているわけではありませんが・・・、
できるだけ確かな情報を得るため、
そしてニュースに踊らされないためにも
その元となる資料にも目を通しておくべきです。
今回紹介したバフェット氏に関するニュースの
元となる資料はこちらですね。
BERKSHIRE HATHAWAY INC.『ニュースリリース』
↓
https://www.berkshirehathaway.com/news/may0220.pdf
BERKSHIRE HATHAWAY INC.『四半期報告書』
↓
https://www.berkshirehathaway.com/qtrly/1stqtr20.pdf
英語ですし、単位もドルで分かりづらく、
見る気にならない方も多いと思います。
そこで1つだけ、最も重要だと思われるメッセージを
「ニュースリリース」より紹介させていただきます。
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The amount of investment gains/losses
in any given quarter is usually meaningless
and delivers figures for
net earnings per share
that can be extremely misleading
to investors who have little or
no knowledge of accounting rules.
BERKSHIRE HATHAWAY INC.『ニュースリリース』
https://www.berkshirehathaway.com/news/may0220.pdf
1ページ目より引用
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大まかに訳すと
「四半期ごとの利益とか損失は意味ないし、
会計ルールの知識が乏しい、
もしくは無い投資家をミスリードしてしまう恐れがある」
と書かれています。
なぜ、四半期ごとの利益や損失に意味がないのか?
もしかしたらバフェット氏の負け惜しみでしょうか?
もちろん違います。
現在バークシャー社はアメリカで
2017年12月以降に始まる会計年度から
適用されることになった新たな会計原則に従い、
決算発表を行っています。
「GAAP」と呼ばれる会計原則です。
Generally Accepted Accounting Principles
の略ですが、意味は、
「一般に公正妥当と認められた会計原則」です。
この原則に従うと、
まだ決済していない含み益や含み損を
計上しなければなりません。
ですから、ここ最近のような
上下に激しく株価が変動する環境においては、
タイミングによって、
未実現の含み益や含み損により、
計上される利益が上下に大きくブレやすくなります。
そしてその金額が大きければ大きいほど
衝撃的なニュースとして
マスコミに大きく取り上げられてしまい、
数字だけが一人歩きし、
投資家に間違った判断をさせてしまいかねない、
とバフェット氏は危惧しているのです。
まさに今回も含み損によって膨らんでしまった
5兆円の赤字という金額が、
一人歩きしてしまったように感じられます。
5兆円という金額、ウソではありませんが、
タイミングによって大きくブレるため、
必ずしも現実を反映した数字とは
言い難い面があるのも事実です。
そもそもバフェット氏は
株を長期間保有することで知られる投資家です。
だからこそ短い期間における
株価の上振れ下振れなど気にしませんし、
投資家には気にしてほしくもないでしょう。
もちろん、航空関連銘柄の件など、
バフェット氏にも読み違いがあることは確かですし、
現在のバークシャー社が、
多額の含み損を抱えていることも確かです。
ただ、バフェット氏の長期投資のスタイルからいって、
現時点で「バフェット氏は衰えた」とは言えないでしょう。
まとめますが、
今回の話を通じてお伝えしたかったことは
センセーショナルな情報に惑わされてはいけない、
ということです。
衝撃的なニュースを見ると、人間、どうしても
冷静に物事を見られなくなってしまうものですが、
表面上の情報だけで物事を判断しないよう
癖をつけると良いでしょう。
それでは、本日も最後まで
ご覧くださいましてありがとうございます。
下山敬三