家買うなら消費増税前、本当にベストな選択か?
**********************
いま六百人の村人が、
命にかかわる病気にかかっている。
治療法はふたつある。
治療Aを選べば、確実に二百人の命を救える。
治療Bでは、三分の一の確率で
六百人全員を救えるが、
三分の二の確率で、ひとりも救えない。
さて、どちらの治療法を選ぶだろう、AかBか?
バリー・シュワルツ
『なぜ選ぶたびに後悔するのか
(株式会社ランダムハウスジャパン)』
2012年10月23日 第1刷発行
P.82より
**********************
こんにちは、下山です。
「家を買うなら増税前の今がチャンスですよ。」
そんな言葉が飛び交っているようです。
「夢のマイホーム」に
心が揺れ動いてしまう方も多いかと思いますが、
家を買うのならやっぱり増税前でしょうか?
当たり前ですが、どうせ買うなら、
増税前の方がお得なのは間違いありませんね。
「土地の代金」は非課税ですが、
「建物の代金」には
しっかり消費税がかかります。
8%から10%へ2%の増税ですから、
例えば建物の代金が3000万円とすれば
60万円の上乗せです。
3000万円を元にして考えると
3000万円も3060万円も
心理的にたいして差が無いように
思えてしまうかもしれませんが、
日常生活の感覚で考えれば
60万円は無視できない金額でしょう。
その他にも
「仲介手数料」なども課税対象ですし、
「固定資産税」の算出にも
購入価格が関わってきます。
ですから、増税前の購入が
お得なのは間違いありません。
ただ・・・、
だからと言って増税前に焦って買うのは
いかがなものでしょう?
多くの方が当たり前のように
ローンを組んで家を購入されますが、
そもそも住宅ローンを組んで大丈夫なのか、
ということはめちゃくちゃ真剣に考えるべきです。
例えばあなたが
「ローンを組んで家を買う」
と誰かに話したとき、
「そんなの危険だからやめときなさいよ」
なんて言われることは
きっとほとんどないでしょう。
ローンを組んで家を買うことは
世間一般的にリスクとして
認識されていない傾向があります。
でも、よく考えてみてください。
住宅ローンは
ものすごくリスクの高い取引です。
例えば年収500万円の方が
頭金なしで4000万円の家を買うとしたら
レバレッジ8倍です。
多くの方が
「危険だ」
「資金を溶かす」
と批判する、株の信用取引でさえ、
レバレッジ3倍です。
そう考えると、
住宅ローンに対する
イメージも変わるのではないでしょうか。
「でも株の場合は日々価格が激しく変動するけど
住宅ローンは違うから」
と思われる方も
いらっしゃるかもしれませんが、
住宅だって価格は大きく変動します。
確かに値上がりする人気物件もありますが、
基本的に家は買った瞬間に
価値が下がりますし、
「10年で半値、20年で価値がゼロになる」
なんていう通説も
あながち間違いではありません。
もちろん、
これから先、
100%確実に入ってくる収入が
あらかじめわかっているのであれば
問題はありませんが、10年後、20年後に
今と同じ水準の給与がもらえている保証がある会社員の方は
どこにもいませんよね。
先日も日産自動車が
世界で1万人の人員削減を発表しましたが、
安泰だと思われる企業に
勤めていても
解雇されて職を失うリスクは
いくらでもあります。
ローン組んでリストラされて・・・
しかも家を売っても
ローンの残額に満たず
借金だけが残る、
そんな悲惨なことにならないよう、
慎重になるべきです。
でも・・・、
世の中には
やっぱりマイホームに夢を見る方が多いようで。
先日の日経新聞によると
*******************************
国全体の住宅ローン残高は
昨年末で約200兆円と8年続けて最高となり
家計が抱えるリスクは無視できなくなってきた。
一つは金利上昇の可能性。
契約者の6割は途中で金利変更がありうる変動型を選ぶ。
(7月26日付日刊 日本経済新聞 不動産 過熱の代償(4)より)
*******************************
とのこと。
低金利であることも
住宅ローンを組むことを
きっと後押ししているのでしょう。
今、日本国内で
住宅ローンの残高が
かなり膨れ上がっています。
ですが、ぜひあなたは
そんな世の中の流れに流されないよう
お気をつけください。
ローンを組んで家を買うのなら、
リスクをきちんと認識した上で。
========================
あなたは自分で選択した気になっているだけ。
========================
ローンを組んで家を買うのかどうか、
ということもそうですが、
人生には
大きな決断しなければいけない瞬間が
必ず何度か訪れます。
そしてその選択次第で
その後の人生が大きく変わるわけですが、
残念ながら、その時に素晴らしい選択が
できる方はなかなかいません。
何らかの力に誘導されて最適ではない選択肢を
選んでしまうことの方が多いでしょう。
自分の意思で選択しているように見えて
実は相手の都合で選ばされてしまうのです。
「いえ、私は自分の意思で選ぶことが
できている自信があります!」
とあなたはおっしゃるかもしれませんが、
一つテストをさせてください。
冒頭で
村人を救う治療の話を紹介しましたが、
ぜひご覧になり、
治療AとB、どちらかを選択した上で、
次の質問にも答えてみてください。
**********************
いま六百人の村人が、
命にかかわる病気にかかっている。
治療法はふたつある。
治療Cを選べば、
確実に四百人が死ぬ。
治療Dでは、
三分の一の確率で
ひとりも死なせずにすむが、
三分の二の確率で、全員が死んでしまう。
さて、どちらの治療法を選ぶだろう、CかDか?
バリー・シュワルツ
『なぜ選ぶたびに後悔するのか
(株式会社ランダムハウスジャパン)』
2012年10月23日 第1刷発行
P.82より
**********************
いかがでしょう?
Dを選びたくなってしまったのではないですか?
治療AとC、治療BとDは
結局同じことを言っていて、
ただ言い方が変えられているだけです。
でも、
言い方が変わっただけなのに
多くの方は違う選択肢を選んでしまいます。
世の中には
このような人間心理を巧みに活用した広告や誘導が
たくさんあります。
あなたが何か選択をしなければいけない時は、
ぜひこのことを思い出してみてください。
とはいえ、気をつけていても
人間が本能に抗うことは
とても難しいことです。
ですから、選択することを
できるだけ避ける、というのも1つの手です。
スティーブ・ジョブズ氏が
いつもイッセイミヤケの服を着ていたのは
有名な話ですが、
大事な決断に集中するために
選択肢を減らしていたわけですね。
自分が主催する株アカデミーでも
1つの銘柄で集中して
取引を行う手法を教えています。
銘柄選定の作業が一切無ければ
そのぶんだけ
重要な決断に力を注げますよね。
本日の内容が、
あなたができる限り
後悔のない選択をするための
参考になっていましたら嬉しく思います。
それでは本日も
最後までご覧くださいまして
ありがとうございます。
下山敬三