【脱炭素関連】EV車の知られざる真実。CO2ゼロは半分ウソ?
こんにちは、下山です。
「環境問題は金になる」
きたない言い方ですが、それが現実です。
もちろん全てとは言いませんが、
そういう側面があるのは事実です。
たとえば環境問題を理由に
ルールが1つ作られるだけで
莫大な利益を得る企業が存在します。
ルールが業界図を一変させます。
さて、先日開催されたCOP26において
ある声明が発表されました。
(COP26とは、気候変動に対して
世界がどう対応するのかを話し合う場ですが、
10月31日から約2週間にわたり開催されていました。)
発表されたのは
「販売される全新車を、
電気自動車(EV)などのゼロエミッション車に
することを目指す共同声明」
です。
EV車の流れが、確実にきていますね。
もはやこの流れは止められないように思えますが、
ただ、日本、そして日本の自動車メーカーは
この声明に署名しませんでした。
署名したのはイギリスをはじめとする24カ国と
自動車メーカー11社ですが、アメリカ、中国、ドイツも
署名を見送っています。
なぜでしょう?
そして署名を見送ったことについて
あなたはどう受け止めますか?
「署名しなかったのは覚悟が足りないからだ」
という論調も見かけました。
「環境のことよりも
自国、自社の利益が優先されたんだな」
と考える方もいらっしゃるでしょう。
ただ、本当に覚悟や利益が理由で
日本の自動車メーカーは署名しなかったのでしょうか?
確かにそういう面が無いとは言い切れませんが、
しかし環境問題は一筋縄ではいきません。
考えるべきことがあります。
もしEVしか作らない世界になれば
本当に環境問題は解決するのか?
どう思いますか?
実は、そうとも言えないのです。
なぜならEV車は大量のCO2を出すからです。
「意味がわからない」
と思われるかもしれませんので、
この意味を紹介させてもらいます。
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見方を変える
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自動車メーカー、マツダの社員の方が執筆された
ある論文があります。
ガソリン車とEV車を比較した論文ですが、
その概要部分から2つの文を引用させてもらいます。
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The calculated results showed that
CO2 emission from the assembly of BEV was
larger than that of ICV
due to the added CO2 emissions from battery production.
(中略)
Moreover, it was shown that the life cycle CO2 emission
of ICV was apt to be smaller than that of BEV
when the CO2 emissions for battery production were very large.
Ryuji Kawamoto, Hideo Mochizuki,
Yoshihisa Moriguchi, Takahiro Nakano,
Masayuki Motohashi, Yuji Sakai,
and Atsushi Inaba,
"Estimation of CO2 Emissions of Internal Combustion Engine Vehicle
and Battery Electric Vehicle Using LCA"
Sustainability 2019, 11(9), 2690;
https://doi.org/10.3390/su11092690
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翻訳ソフトなども利用して
読んでいただければと思いますが、
この論文では、車は走行する時以外
たとえば生産される時にもCO2が出ている、
ということが論じられています。
リチウムイオン電池で走るEV車の場合、
バッテリーを生産するときに大量のCO2が出て、
そのことを考慮すれば、EV車の方がガソリン車より
トータルでCO2の排出が大きくなる傾向がある、
とのこと。
「EV=エコな自動車」
というイメージをお持ちの方は多いでしょう。
しかし、生産過程まで考慮すれば
ガソリン自動車よりもEV車の方がエコだとは
必ずしも言えません。
これと似たような話は
ソーラーパネルにもありますね。
たしかにソーラーパネルは
CO2排出の削減に貢献するけれど、
実はソーラーパネルを生産する祭に
たくさんCO2を出していて、
トータルで見ると削減できるCO2と同等、
もしくはそれ以上のCO2を
パネル生産時に出しているケースがある、
という話。
「エコに見せかけて実はエコじゃないよね?」
という話も聞きますが、
EV車に関しても同じようなことが言える、
ということが論文を読むと分かります。
ですから、
全世界の車がEVになったら万事解決、
とは言えませんし、
「ゼロエミッション車を目指す共同声明」は
本当に環境のことを考えた声明であるとは
現段階で言い切れません。
本当に環境のことを考えるのなら、
自動車を生産する時に出るCO2も
考慮するべきですよね。
そして、今回の共同声明に
日本や日本の自動車メーカーが
署名しなかったことを
「無責任」「覚悟が足りない」
という一言で片付けることは
できなくなるのではないでしょうか。
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決めつけは禁物
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COP26が開催されたこともあり、
脱炭素、脱炭素、脱炭素
ここ最近、この言葉をよく聞きますす。
投資家の間でも「脱炭素」関連銘柄として
話題に上がるわけですが、
もしかしたらあなたも関心を寄せいているかもしれません。
もし、「どこの企業が伸びるのか?」
ということを考えるのなら、
「ルールや規制はどの企業に有利なのか?」
という視点も必要でしょう。
どれだけ素晴らしい技術も
ルールや規制の前では
お金を生み出せなくなることがあります。
逆に、
それほど注目されていなかった技術でも
ルールが味方をして利益を生むことがあります。
特に、脱炭素に関しては
これからも新しいルールが
作られていくことが想定されます。
そのルールによって一気に急浮上したり
一気に堕ちる企業が生まれることが想定されます。
ただし、どんな基準でトレードするにしても
決めつけは禁物です。
絶対こうなるだろう、ああなるだろう、と
「だろう取引」
をしているトレーダーで
きちんと利益を残せている方を
自分は見たことがありません。
「○○だろうけど、もしかしたらXXかもしれない」
というように多角的に考え、備えるべきです。
特に、規制が1つ入るだけで
状況がいくらでも変わり得るような分野で
1つの可能性にかけるようなトレードをするのは危険です。
もしトレードをする目的が
「ギャンブルのようなスリルを味わうこと」
ならば、それでもけっこうですが、
「きっちり安定した利益を残したい」
と思うのなら、するべきことは決まっています。
それでは本日も最後までご覧いただき
ありがとうございました。
下山敬三
Is it OK?