【重要指標】米国平均賃金の上昇は、手厚すぎる失業給付が原因?
こんにちは、下山です。
「働こうと思えば働けるけど、
今はたくさん失業給付もらえるから働いたら損だよね。」
今、アメリカではそんな人たちが大勢いて、
人手不足が問題になっていると言います。
"週300ドルの失業給付上乗せ措置"が、
今年の9月まで延長されていますが、
毎週300ドル上乗せでもらえるなら
あえて働かない人がいて当然ですよね。
厚生労働省の資料によると
全米の平均失業給付額は週351.25ドル(2017年)です。
*参照:
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/20/dl/t2-03.pdf
仮にこの数字に300ドルが上乗せされたら
週651ドル、月2604ドルもらえることになり、
何もせず毎月、約30万円近くも支給されることになります。
その結果、レストランなどが
求人募集をかけても人が集まらない、
トラック運転手が集まらず物流が滞る、
といったことが起こっているようです。
ただし、執筆時点で25の州が
"9月の期限を待たずに失業給付上乗せ措置の打ち切ること"を
発表しています。
ですから9月に向けて順次仕事復帰する人が増え、
人手不足も解消されることが想定されます。
長い間、失業保険を受け取って
悠々自適な生活をしていた人にとって
休み明けの仕事はちょっときつそうですね。
そういえば、
上乗せ措置の早期打ち切りを発表している25州の知事はいずれも共和党で、
バイデン政権の政策への反発もあるようです。
アメリカが真っ二つに分裂していることも感じさせます。
このように、手厚い失業給付のため働く人が戻ってこない、
ということが1つの問題となっているアメリカですが、
このことが原因で"平均賃金が上がっている"
という話を聞きます。
どういうことでしょう?
失業給付が手厚いので、
普段の収入が低い低所得者ほど労働に戻らず、
その結果、高所得者の賃金が
全体の平均賃金に色濃く反映され、
平均時給が上がっている、とも言われています。
なるほど、と。
確かにそのような仮説も立てられますが、
これが本当に正しいのかどうか、
"平均賃金が上がっている理由"について
本日はデータから考察してみましょう。
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『平均賃金』上昇は、
本当に手厚すぎる失業給付が理由?
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2021年6月4日に発表された5月の雇用統計は
下記のような結果になりました。
農業分野以外の雇用者数は、前月より55.9万人増加、
失業率は5.8%(4月の6.1%から低下)、
平均時給は前月比+0.5%、となっています。
確かに平均時給は前月比+0.5%上がっていますが、
この原因を探るべく、
2021年5月の雇用統計についてもっと細かくデータを見てみましょう。
『アメリカ合衆国労働統計局』のサイトを見ると、
最新の「業種別の平均賃金」を
確認することができます。
*参照:
『Average hourly and weekly earnings of all employees on private nonfarm payrolls
by industry sector, seasonally adjusted』
https://www.bls.gov/news.release/empsit.t19.htm
最も平均賃金が低いセクターは?
「レジャー・接客」です。
「レジャー・接客」の平均時給は18.09ドルで
最も低くなっています。
雇用統計で発表された平均時給は
30.33ドルですから
「レジャー・接客」の平均時給は
全平均と比べて、およそ6割くらいですね。
先ほどの「低賃金労働者ほど仕事に戻っていない」
という仮説が正しいとすれば、
平均時給が低い「レジャー・接客」の雇用者数は
あまり増えていないはずですね。
では実際に、「レジャー・接客」の雇用者数は
どう変化したのか確認してみましょう。
↓
*参照:
『Employees on nonfarm payrolls by industry sector and selected industry detail』
https://www.bls.gov/news.release/empsit.t17.htm
「レジャー・接客」の雇用者数(5月)の伸びは
前月比29.2万人増です。
4月の1408.5万人から29.2万人増ということで、
約2%の伸び率です。
この数字を全体の伸び率と比べてみましょう。
5月雇用統計の雇用者数は55.9万人増でしたが、
4月の全体の労働者は1億4433.5万人でしたから、
約0.3%の伸びです。
ということは、全体平均約0.3%の伸びのところ、
「レジャー・接客」の雇用者数は
約2%の伸びているということになります。
これを見る限り、平均賃金が最も低いセクターである
「レジャー・接客」の人々が
労働市場に戻っていない、とは言いきれませんね。
そして、
「低賃金労働者ほど仕事に戻っていないから、平均賃金が上がっている」
という説の信憑性も低そうです。
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本当の理由なんて誰も知らない。
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ではなぜ平均賃金は上がっているのか?
確実に言えるのは、ほとんどのセクターで
平均賃金が上昇している、ということです。
きっとあなたは
こんなざっくりとした答えに納得しないでしょう。
でも今回いちばんお伝えしたかったことは
まさに、そのことに対する警告です。
つまり、明確な答えを求めすぎる、その姿勢に対する警告です。
投資の世界では多くの方が確かな答えを求めます。
日経平均はなぜ上がった?
金利はなぜなぜ上がった?
ビットコインはなぜ下がった?
AMC株はなぜ暴騰した?
あらゆることに明確な理由を求めます。
そして専門家にその答えを聞いて、安心したがります。
明確な答えがないと
納得しないトレーダーの方が
たくさんいらっしゃいます。
安心したい気持ちもわかりますが、
大抵の物事は様々な理由が複雑に絡んでいるものです。
「これが理由です!」
と言い切れない事象はたくさんあります。
ある程度説明のつく事象もありますし、
「誰が見てもこれが理由だよね」
と言えることもありますが、
裏側がよく分からないことも
たくさんあります。
ですから、
「投資の世界で起こっている出来事に対して明確かつ完璧な答えがほしい」
と思い、その答えを追い求めるのは
はっきり言って時間の無駄でしかありませんし、
その姿勢はやがて身を滅ぼします。
経済の勉強をされて知識をつけ、
情報を集めることは否定しませんが、
勉強したところで
経済の全てを理解できるようにはなりませんし、
利益には結びつきません。
もし本当に、経済の知識、情報が
利益につながるのなら、
世の中の経済学者はみんな大富豪に
なっているはずですよね。
それでは本日も
最後までご覧くださり
ありがとうございました。
下山敬三
よろしいですか?