EAのバックテストレポートの見方[柿澤真正]
柿澤真正さんプロフィール
かきざわ・まさのぶ。2009年よりFXの自動売買システムの開発を開始し、EasySniperやMultiAgent等をはじめ、多くの自動売買システムを証券会社やユーザに提供してきた。インヴァスト証券の自動売買サービス「シストレ24」にて、提供ストラテジーMultiAgentが2016年の年間アワードを圧倒的成績、評価で獲得。また、ひまわり証券の自動売買サービス「エコトレ」にて提供ストラテジーの「ひかえめビーナス」が2013年〜2014年の1年以上にわたり利用者数1位をキープ。利用者数は700名を超える。現在は、MultiAgentをさらに進化させたドリームエージェントFXを提供中。
この連載では、FXの自動売買システム、その中でもMetaTrader4(以下MT4)上で稼働する自動売買システムであるEAにスポットを当て、それを運用していくための知識・ノウハウを専業トレーダーの柿澤真正さんにナビゲートしていただきます。EAの運用を検討している方はもちろん、既にEAを利用している方もぜひ参考にしてください。
※この記事は、FX攻略.com2019年8月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
レポートを見ればEAの評価ができる
前回までの説明で、バックテストを実施できるようになったと思います。バックテストが終わると当然、そのEAの評価をしなければいけませんが、バックテストの結果が出てくるレポートを見てみると、たくさんの数字が羅列されていて見方が分からない!と多くの方が感じるはずです。そこで今回は「EAのバックテストレポートの見方」について説明していきたいと思います。
画像①は実際のバックテストレポートです。このレポートを見れば、どのEAをどの期間でどんな通貨ペアと時間足を用いて、どんなパラメータ設定で実行したのかが全て分かります。この辺りはレポート上段部分を見れば特に説明は不要でしょう。EAの評価上重要なのは、その下からです。ここからがEAの成績に関連する事項となります。多くの項目がありますが、特に評価上重要と思われるものをピックアップして説明していきます。そのピックアップ項目となるのが、画像①の赤枠で囲まれた部分です。順に見ていきましょう。
利益関連の評価項目
まずは「初期証拠金」と「純益」です。EAを評価するには「初期資金(=初期証拠金)がいくら」で、それが「どのくらいの期間」で「いくら増えた(=どのくらいの利益が出た)」のか、を把握することが必要です。これらを把握することで、該当期間における利益率を計算できます。計算式は「利益率=純益/初期証拠金×100」となります。画像①の例では、初期証拠金1万ドルに対して、純益が1万3754ドルなので、利益率は137.54%ということになります。
さらに、このバックテストの期間は画像①の上から二つ目の項目を見ると分かるように、2013年1月~2018年4月の64か月間です。したがって、平均月利は約2.15%(137.54%/64か月)、平均年利は月利の12か月分なので約25.8%(2.15%×12か月)ということになります。
続いて「プロフィットファクター」です。自動売買の評価項目としては非常にメジャーでよく出てくる概念ですが、一般にはあまりなじみのない言葉なので分かりにくいかもしれません。総利益が総損失に比べてどれくらい出ているかを表すもので、「プロフィットファクター=総利益/総損失」で計算できます。これを見れば、どれくらい効率良く利益を稼いでいるかが分かり、数字が大きいほど効率が良いEAといえます。総損失を総費用に置き換えると、より少ない費用でより多くの利益を出せるので効率が良い、という形で理解しやすくなるかと思います。一方で、プロフィットファクターが1.0より小さいEAは、総損失の方が大きいことになり、そのバックテスト条件下では成績が悪い、という評価になります。
画像①の例では、総利益1万7985ドルに対して総損失が4231ドルとなっており、この計算結果が、プロフィットファクターの4.25と一致しているかと思います。
リスク関連の評価項目
次に「最大ドローダウン」です。これは期間中の最大損失額であり、この自動売買システムのリスク度合いを測るものです。画像①の例では、最大ドローダウンは1689ドルとなっているので、仮にこの最大ドローダウンが自動売買運用を始めてすぐに発生してしまった場合には、資金(1万ドル)の16.89%の損失が発生する可能性があるということになります。すなわち、このEAは16.89%のリスクが発生する、と置き換えることができます。
過去にもお話ししましたが、より長く自動売買運用を行っていくためには、EA評価の際に利益側からではなく、リスク側からアプローチした方が良いと個人的に思っています。その観点から、仮に自身が許容できる最大リスクが15%である場合には、「許容リスク15%<EAの最大リスク16.89%」となり、このEAは利用しない、という判断になります。
最後に「勝率」です。これは一般的にもよく聞く言葉ですので、説明は不要でしょう。当然、勝率は高ければ高いに越したことはありませんが、EA評価においては単純に勝率が高ければ良い、というものでもありません。なぜなら、仮に勝率90%のEAで、9回の利益合計が900ドルであったとしても、1回の損失額が1000ドルなら最終的にマイナスになる結果も起こり得るからです。そのため、勝率はプロフィットファクターとセットで見る必要があります。ぜひ、今回の内容を参考にEAを評価してみてください。
Is it OK?