相場巧者から何を学ぶか
株好きの個人投資家が、証券会社の店頭で情報交換していた時代のことです。
常連客の中には必ず、一目置かれている人がいて、周囲の個人投資家が同じ銘柄に乗る、つまり、チョウチンをつけるなんて行為がよく見られました。
厳しいルールなどない時代ですから、逆に職員一人一人が自制心をもって仕事をしていましたが、「〇〇さん、これ買ってますよ」なんて具合に、本人が文句を言わない状況、チョウチンがついてもジャマにならないタイミングなら、ほかの投資家にささやくこともある……マニュアルではなく、「仁義」による判断です。
さて、いつも利益を上げる名人にチョウチンをつけると、どうなるか。
ラクして儲かると期待するからやるのですが、そうはいきません。
例えば、名人が試し玉を入れたタイミングで乗っかったら、そのあとに安い場面があってイヤになって投げた。そのあと名人は、次の上げ始めでしこたま買って大儲け……ああ、悔しい。。。。なんてオチもあるわけです。
あるいは、絶好調で当たりまくりの名人にチョウチンをつけたら、久しぶりの空振りで沈没……名人は今までの利益の一部をはき出しただけで、元気に次の銘柄を手がけているのに、自分は資金を大きく減らしてしまった。。。こんなことも、“相場あるある”でしょう。
「名人といわれたころから曲がりだし」
誰もが「優良だ」と考える銘柄は、すでに天井を打っているとか、去年の成績が良かったファンドを選んだら今年はダメだったとか、いわゆるマーフィーの法則みたいなことが起こるものです。
本当の名人も、当たったり曲がったりと見込み違いは多々あるはずで、安易に乗っかるほうが悪いということですが、その名人と寝食をともにしていたら、根底の考え方やさまざまな対応方法など、大切な基礎をを学ぶこともできます。
これに近いかたちでチョウチンをつけるならば有益、そうでなければ悪いクセがつくだけ、といえるでしょう。
中源線のような、機械的売買法はどうでしょうか。
「その通りに売買すれば儲かる」といったイメージが強いと、軽いノリのチョウチン筋と同じ方向に行くでしょうが、「型」を覚えるために従うのなら、まさに名人に弟子入りしたような効果だって期待できるでしょう。
書籍『中源線建玉法』には、「最初の出動に慣れるためのやり方」が示されているので、それを紹介します。
相場の波乗りの出発点を決めると同時に、自分の感覚を養成するために、中源線が転換したら、必ず出動してみることから始めるのがよい。
(中略)
- 何回か同じ枚数で実行する
- 手数料が抜けたらすぐに売り場を探す(手仕舞いは遅すぎるより早すぎるくらいがよい。慣れたら次第に遅くしていく)
- 実行したあとで「ダマシかもしれない」と思ったときは直ちに切る
- しかし「今度は失敗するだろう」といって出動しないのは絶対にいけない。必ず同じ枚数で出動する
(『新版 中源線建玉法』第四部 実践と実験より引用)
まず、中源線の陰陽転換を、自分が出動すべき場面、自分の出番だと定義しておくのです。
わかるはずのない結果など想像せず、条件がそろったら出動と決めるわけです。
最終的に目指すのは、「自分の意思を加え、中源線を“道具”として利用する」ことですが、まずは「かたち」が整ったら出動して、中源線の「型」を体感せよ、ということでしょう。
しかし、手仕舞いはさっさとやりなさい、とも書かれています。
「自分の意思でポジションを閉じる」ことに迷うな、というわけです。
「科学の時代に、そんな古くさい修行をするの?」と反論する人もいます。
でも、地味な反復練習でさまざまなことを確認するプロセスは、まさに科学で説明できる正しい取り組み方ではないでしょうか。
よろしいですか?