FRB3月利上げ?~ 慎重かつ計画的に利上げに向かうFRB 近藤駿介氏

配信日:2017/03/04 11:06
「FRBの目標にあと一歩と迫った1月の個人消費支出デフレーターなど今週の
景気指標は総じて堅調だったが、改善が著しく速まったわけでもない。FRBの
態度ひょう変には2つのイベントが影響したようだ」(4日付日経電子版
「鬼の居ぬ間 利上げ急ぐ理由」)
金融政策を「相場の材料」として捉えている人達の典型的な見解といったとこ
ろ。FRBの現状と経済情勢を鑑み、避けなければいけないリスクの優先順位を
考えることができている人にとっては、FRBが3月利上げに動くのは自然のこ
と。
3月に利上げをすれば、FFレートの誘導目標は1%(正確には0.75%~1.0%)
となる。FEBが準備預金に付利しているレートはFFレートを基準にしているた
め、次回は1.0%となる。
日本では中央銀行が準備預金に付利することについては何の批判も出てこない
が、米国ではFRBの付利は政府への納付金減額というかたちで国の財政に負担
を与えるものだという認識がある。
FRBは年3回の利上げを見込んでいるが、今後も「利上げ」だけで対処するかは
定かではない。3回利上げしてFFレートが1.5%に達したら、政府への納付金は
さらに減ることになるからだ。
さらに、FRBが米国経済に対して緩和過ぎず、引き締め過ぎない「自然利子
率」が1%前後だと考えているとしたら、政府への納付金を減らすというコス
トを払いながらどんどん利上げをしていくとは考えにくい。
FRBが気にしているインフレは、消費者物価のようなフローのインフレではな
くストックインフレのはずである。それは、ストックインフレを引き起こす可
能性を秘めた超過準備預金が法定準備預金の13倍に達しているからだ。
ストックインフレの主役は不動産価格ということになるが、こちらを抑えるた
めに必要なのは、短期金利よりも長期金利を上昇させる、つまりイールドカー
ブをスティープ化させることだ。
現状でFRBが利上げによって短期金利を引き上げても、早めの利上げというこ
とで期待インフレ率が低下し、それを反映して長期金利は思ったように上昇し
ない可能性がある。
これを解決するためには、政策金利の利上げではなく、FRBによる保有債券の
償還金の再投資減額、あるいは廃止が必要になってくる。これによって長期金
利は上昇圧力が掛かることができるからだ。
現在FRBは国債とMBSを保有しているが、MBSの再投資縮小、廃止は、長期金利
に上昇圧力を加えるとともに、直接的に不動産に働きかけることができる。
トランプ大統領の登場によって、FRBがこうした引き締め的な政策に動く必要
性は高まってきており、日経のいうような「にわかづくり」でも「豹変」でも
ない。FRBは慎重に様々なことを勘案した金融政策をとっている。世界の経済
が底割れしないのもFRBの金融政策のおかげだともいえる。
金融政策を「相場の材料」として捉えてはならない。結果的に「相場の材料」
になるだけだ。なぜならば、中央銀行の金融政策の変更は、世の中のお金の流
れを変えようとするものだからだ。それが上手くいけば「相場の材料」にな
る。
ただし、日銀のように市場からの信認を失った中央銀行による、小手先の金融
政策変更は、お金の流れを変えることが出来ないので単なる「相場の材料」で
終わってしまう運命にある。
「相場の材料」にしかならないのか、世の中のお金の流れを変える結果「相場
の材料」になるのか。日米の金融政策の変更を同列で捉えるのは危険である。
Is it OK?