高値を抜けたのに、なぜすぐ下がるのか — ロンドンとNYの始まりに狩られる高安と、反転の確かめ方【SMC-Session】
MT4/MT5のインジケーターを開発しているlab.aiueoです。
この記事では、高値を抜けた直後に反転する動きがなぜ起きるのか、そして手作業で追うと何が面倒なのかを書きます。 最後に、それを自動で追うために作った SMC-Session(MT4/MT5同梱)を紹介します。サインが外れた例も載せます。
GBPUSD M15・10月30日。 NYのキルゾーンで前週・ロンドン・アジアの高値を一度に抜いた後、押し安値を割った足に売りの矢印
抜けたので買った。そして戻ってきた
日本時間の夕方、ロンドンが動き出した。前日の高値を、はっきり上に抜けた。ここから伸びると思って買った。
ところが、高値の少し上で値が止まる。長い上ヒゲを残して、さっきの高値の下へ戻ってくる。損切りにかかった直後から、今度は下へ走っていく。
抜けたこと自体は、間違いではありませんでした。 ただ、その抜けは「伸びる始まり」ではなく、「反対へ走る前の一突き」だったわけです。
抜けた先に、注文がたまっている
分かりやすい高値・安値の少し外側には、損切りや逆指値の注文がたまりやすいと言われています。前日の高値で売っている人の損切りも、高値を抜けたら買おうという人の逆指値も、価格が高値を抜けた瞬間に「成行の買い」に変わります。
大きな売りを出したい側から見ると、ここは買いがまとまって出てくる場所です。そのため、高値を少し抜けたところで買いを吸収し、そこから下へ走る動きが起きやすい、と説明されています。「ストップ狩り」「流動性狩り(リクイディティ・スイープ)」と呼ばれる動きです。誰かが意図して狩っているのかは、外からは確かめようがありません。
狙われやすいのは、誰が見ても分かる高値・安値です。SMC-Session では次の4種類を使います。
| 記号 | 中身 | 効く期間 | 狙うキルゾーン |
|---|---|---|---|
| AsiaH / AsiaL | アジア時間(日本時間 9〜15時)の高値・安値 | アジア時間の後〜その日の終わり | ロンドン・NY |
| LonH / LonL | ロンドンKZの開始からNY KZの開始までの高値・安値 | NY KZの開始〜その日の終わり | NY |
| PDH / PDL | 前日の高値・安値 | その日 | ロンドン・NY |
| PWH / PWL | 前週の高値・安値 | その週 | ロンドン・NY |
時間帯にも偏りがあります。ロンドンとニューヨークの始まりの数時間は「キルゾーン」と呼ばれ、ここで前日やアジア時間の高安が抜かれることがよくあります。SMC-Session の既定は、ロンドン・ニューヨークそれぞれの現地時刻で 7:00〜10:00 の3時間です。
狩りと、本物のブレイクの違い
高値を抜けた時点では、狩りなのか本物のブレイクなのか区別がつきません。手がかりは、その後の終値です。
- 狩りなら、抜けた後に終値で元の内側へ戻り、直近の押し安値を割って下へ向きを変える
- 本物のブレイクなら、終値で外側に定着し、高値を更新し続ける
押し安値を割って向きが変わることを、SMCでは CHoCH(チェンジ・オブ・キャラクター) と呼びます。SMC-Session は、この CHoCH が確定するまで矢印を出しません。
手で追うと、時刻の計算で疲れる
考え方は単純でも、手作業で毎日続けるのは大変です。いちばん面倒なのは時刻です。アジアは日本時間、ロンドンのキルゾーンはロンドンの時刻、ニューヨークはニューヨークの時刻で決まり、英国と米国は夏時間に切り替える日が違います。
| 時期 | ロンドンKZ(日本時間) | NY KZ(日本時間) | 間隔 |
|---|---|---|---|
| 冬(11月初め〜3月中旬) | 16:00〜19:00 | 21:00〜24:00 | 5時間 |
| 夏(3月末〜10月下旬) | 15:00〜18:00 | 20:00〜23:00 | 5時間 |
| 切り替えがずれる期間(3月の約3週間・10月末〜11月初めの約1週間) | 16:00〜19:00 | 20:00〜23:00 | 4時間 |
2026年は、英国が10月25日に冬時間へ戻り、米国は11月1日に戻りました。その間の1週間は、ロンドンはもう冬時間の16時から、ニューヨークはまだ夏時間の20時からです。冒頭の画像の10月30日がちょうどその週で、青と茶の帯の間隔が普段より1時間短くなっています。
ほかにも、手作業では次の2つが重くなります。
- 業者のサーバー時刻で1日が区切られるので、業者によって「前日」がずれる。SMC-Session は1日の区切りをニューヨーク時間の17:00に固定し、業者のGMT時差も自動で判定します
- 高値・安値8本それぞれが「キルゾーンの中で抜かれたか、外で抜かれたか」まで覚えておく必要がある。キルゾーンの外で抜かれた高安は、もう狙いません
SMC-Session の判定は4ステップ
売りの場合で書きます(買いは上下を入れ替えます)。
| ステップ | 何をするか |
|---|---|
| 1. 高安を引く | 4種類の高値・安値を線にし、まだ抜かれていないか(open)、抜かれたか(TAKEN)を追う |
| 2. 狩りを待つ | キルゾーンの中で、まだ効いている高値が上に抜かれたら売りの「待ち」に入る。続けて別の高値も抜かれたら1つにまとめる |
| 3. CHoCH で確かめる | 直近の押し安値を終値で割り、狩った水準より下で確定した足に売りの矢印。水準の外で大きく引けたら(ATRの2倍)ブレイクとみなして取り消し、180分で時間切れ |
| 4. TP/SL を決める | SLは狩ったヒゲの先の少し外。TPは反対側でまだ狩られていない安値のうち、一番近く RR 1.0 以上のもの(無ければ RR 2.0) |
1つのキルゾーン・1方向あたり、サインは1本までです。サインは M1〜M30 で出します(目安は M5・M15)。冒頭の画像の売りサインは、TPにしたアジアの安値に先に届いています。
画面とパネルの読み方
EURUSD M15。 青い帯がロンドン、茶色の帯がNYのキルゾーン。保有中の最新サインにTPとSLの線
チャートの上には、キルゾーンの帯、アジア時間の枠、4種類の高安の線、矢印、最新サインのTP/SLの線が出ます。線が途中で終わっていれば、そこで抜かれたという意味です。
パネル。4種類の高安の価格と状態、今日のキルゾーンの日本時間、直近のサイン
左下のパネルは、文字化けを避けるため英語で表示しています。高安の状態は open(まだ狩られていない)・TAKEN(狩られた)・forming(時間帯がまだ終わっていない)が基本です。いちばん使うのは Status の行です。
| Status | 状態 |
|---|---|
| outside killzone - next NY KZ 21:00 JST | キルゾーンの外。次のキルゾーンの開始(日本時間) |
| London KZ - watching 4 levels | キルゾーンの中。狙われうる高安が4本ある |
| SELL setup - AsiaH taken, CHoCH below 1.33890 (150 min left) | アジアの高値が狩られ、売りの反転待ち。終値が 1.33890 を下回って確定すれば売りサイン。あと150分で取り消し(パネルでは2行に折り返して表示) |
| London KZ - SELL limit reached | このキルゾーンの売りサインは上限(1本)に達した |
| London KZ - no levels left | 使える高安がすべて狩られた |
サインは外れます
XAUUSD M5。 前週の安値を狩った後の買いサインは、反転が続かずSLに先に届いた
ゴールドの5分足で、前週の安値(PWL)が狩られた後に出た買いサインです。反転は続かず、SLに先に届きました。チャートには × の印が残ります。
SMC-Session は、チャートに入れた直後に直近20日ぶんのサインを再現し、TPとSLのどちらに先に届いたかを ✓ と × で表示します。パネルに出すのは件数だけで、勝率の割合は出しません。冒頭の画像のパネルも TPが先3件・SLが先5件で、SLが先の件数が多い期間もそのまま出します。8件しかない期間の数字なので、多い少ないを言えるものではありません。
過去の矢印も、その足の時点の情報だけで
チャートの古い足から1本ずつ、その足が確定した時点で見えていた情報だけをたどって判定します。押し安値・戻り高値は右側の2本がそろって初めて確定させ、過去の足の時間帯はその日の夏時間(英国・米国それぞれ)で判定します。
開発では MT4・MT5 それぞれに自動テストを作り、足を途中で切って計算したサインと全部の足で計算したサインが一致するか、計算を始める位置をずらしても同じか、水準と時間帯が別の方法(Pythonのタイムゾーン計算)で求めた値と一致するかを確かめています。
お使いのサインツールでも、スクリーンショットを撮って1日置き、時間足を切り替えて戻したときに撮った範囲の矢印が増えていないかを見れば、後出しかどうか確かめられます。
この製品がやらないこと
注文は出しません。EAではなく、チャートに表示するインジケーターです。売買の判断と注文は、ご自身で行ってください。
勝率の数字を表示も宣伝もしません。検証の誤りひとつで崩れる数字より、ご自身のチャートで確かめられる記録(件数)を出す設計にしました。
使い方の流れ
- 朝に高安を確かめる:前日・前週の高安のうち、どれがまだ open かを見る。日本時間の15時を過ぎるとアジアの高安が加わる
- キルゾーンを待つ:キルゾーンの外では、Status に次の開始時刻(日本時間)が出る
- 狩りを見る:Status が SELL setup / BUY setup に変わり、反転の基準の価格と残り時間が出る(Alert_OnSweep で通知も可)
- サインを見る:TP・SLの位置がご自身の考える節目と合っているかを確かめてから検討する
- 振り返る:✓ と × の印と件数で、その銘柄・時間足でサインがどう終わってきたかを見る
サインが出たときは、ポップアップ・スマートフォンへのプッシュ通知・サウンドでお知らせします。文面は文字化けしないよう英数字だけです。
SMC-Signal と同じチャートで使えます
EURUSD M15 に SMC-Signal(左上のパネル)と SMC-Session(左下のパネル)を入れた例
SMC-Signal はオーダーブロックや FVG への押し目・戻りで、SMC-Session は時間帯の流動性狩りからの反転で入るツールです。入り方が違うので食い合いません。パネルの既定の位置は SMC-Signal(左上)と重ならない左下で、線や記号はローソク足の後ろに描きます。CP-Signal と一緒に入れると時間帯の帯が重なるので、どちらかの帯を消してください(SMC-Session なら ShowKillzones を false)。
過去の相場を再生する検証ツール BT-Replay(MT5用)の検証用チャートでも動き、再生中はアラートを鳴らしません。
動作環境
| プラットフォーム | MetaTrader 4 / MetaTrader 5(Windows版)。両方のファイルを同梱 |
| 対応銘柄 | FXの通貨ペア・ゴールド・株価指数など(表示中のチャートの足だけで計算) |
| 時間足 | サインは M1〜M30(目安 M5・M15)。H1以上は高安・帯・パネルのみ |
| リペイント | しない(確定した足だけで判定) |
| パラメータ | 55項目(日本語の説明つき) |
| アラート | ポップアップ / プッシュ通知 / サウンド |
| DLL / 外部インジケーター | 不使用 / 不要 |
MT4版とMT5版は、判定・表示・パラメータが同じです。ただ、MT4とMT5は同じ業者でも別のサーバーから価格を受け取るため、矢印の位置が一致しないことがあります。
なぜ作ったか
SMC-Signal は、オーダーブロックや FVG への押し目で入るツールです。SMC のもう1つの代表的な入り方、狙われやすい高安が狩られた後の反転を扱う道具が、私の製品にはありませんでした。国内でも OANDA証券の MT4 が2026年11月に終わるため、MT5へ移ってもそのまま使えるよう、最初から両方を1つの商品に入れています。
既定値は、勝ち負けを見ずに決めました。最初は待ち時間90分・取り消しはATRの1倍でしたが、実際のデータ(EURUSD・GBPUSD・USDJPY の3週間)では待ちの大半が取り消しか時間切れで終わり、サインがほとんど出ませんでした。狩りは水準の外へ一度しっかり伸びてから戻るので、待ち時間をキルゾーンと同じ180分、取り消しをATRの2倍に広げました。見たのは件数とSLの広さだけで、TPとSLのどちらに先に届いたかは見ていません。
もう1つ。出品用の画像を撮っていたら、パネルの「TP hit」が「TP hi」になっていました。チャートの文字は1行63文字までで、超えた分は何の知らせもなく切れます。文言のテストは合格していたので、画面を見るまで気づけませんでした。テストが通っていても、画面は見る。今回いちばん強く感じたことです。
本製品は、時間帯と高値・安値の水準にもとづいて相場を分析するための補助ツールです。投資助言や運用成果の保証を行うものではありません。
表示されるサイン・TP/SL・結果の件数は、過去および現在の価格から機械的に算出した目安であり、将来の値動きを予測するものではありません。結果の判定にはスプレッドや約定のずれを含みません。本製品を利用した取引によって生じたいかなる損害についても、制作者は責任を負いません。投資判断はご自身の責任において行ってください。
